寝すぎた……か」
時計を見ると、時刻は午前四時。
外はまだ暗い。
「風呂、入ってねぇ……」
昨晩は帰ってすぐ寝た。
とりあえずシャワーだけでも浴びよう。
そう思い、リビングに出た時に異変に気付いた。
「あれ、灯りつけたっけ……?」
夜明け前にしてはあまりにも明るい。
たが、灯りのスイッチは「切る」になっている。
おかしい。
灯りも無い。
日も出ていない。
なのに、なぜこんなにもはっきりと闇の中が見えるのか。
「し、しっかり寝たから……だよな……」
俺は自分にそう言い聞かせて、風呂場に向かった。
風呂を出ると、外がうっすらと明るみ始めた。
……朝日でも浴びてリフレッシュするか。
「うーん……いい朝だ……」
だんだんと日が差す。
俺は目を細め、手を目の前に翳した。
しゅぼっ。
「ん?なんだ、今のマッチみたいな音?」
周りを見渡すが、それらしき物は無い。
それよりももっと、顔の近くで音がした気が……。
視線を戻すと、眼前に一面の赤が覆った。
「は?炎?」
俺の手が。
「燃え……てる……?」
それを視認した瞬間、激しい痛みと熱が。
「ぐぁぁぁぁっ!?熱っ!?なんで!?」
室内に走り込み、水道から水を出し、鎮火する。
「うわ……グロいな……」
これは酷い。
手首から先が炭化している。
「もう痛みもねぇ……」
聞いた事がある。
人間は末期の痛みを脳が遮断するとかナントカ。
つまり、そういうことだろう。
「はぁ……こんな手じゃあ学校なんか行けねぇな……」
俺はゆっくりと手を持ち上げる。
たが、再び異変に気付いた。
「傷が……治ってる?」
もうこれアレだ。幻覚とか見ちゃってる?俺。
だが、皮膚が自棄に綺麗だ。
「ああ、わかった……」
俺はここまでの現象が全て現実だと仮定し、一つの結論を導きだした。
「俺、吸血鬼になったんじゃね?」
試しに包丁を持ってきて、指を切ってみる。
鋭い痛みが走り、血が滲んでくる。
だが、数秒経つと傷は完全に塞がった。
「……つまり……」
圧倒的回復力。喧嘩に役立つね!って違うし!
「……どうすっかなー……」
これじゃあ日中に外に出られない。
……よし、再チャレンジ!
俺はもう一度外に出た。
お、燃えない。よし、学校は行けそうだ。
「いや、学校は無理だな……」
よく見るラノベの吸血鬼には、大抵「吸血衝動」なるものが存在する。
確か、条件としては……興奮する、空腹を感じる。だったか?
いや、知らんけど。
さて、試しに女の子の写真でも……持ってない。
お腹は……空いてるけど、衝動はない。
あれ、行けんじゃん。俺最強。違うか。
そうと決まれば遅刻しないように学校に行こう。
いつもよりのんびり支度をできるな。
じゃあ、朝飯でも食うか――。
――やばい。これはやばい。
「……のんびりしすぎた」
現在七時半。
のんびりとかってレベルじゃねぇよ!
全力疾走しながらふと思った。
(疲れねぇな。いつもならもうバテてるんだが)
これが吸血鬼化の影響か、超便利(笑)。
だけど、周囲の人間には知られないようにしなきゃな……。
やべぇ、自分だけの秘密とか……かっけぇ。
おっと、あそこに居るのは……。
「天音、おはよう」
「あ、霊君。おはよう……あれ、なんか雰囲気が違う?」
いきなり正体ばれそう。
「そ、そうか?いつもと同じだろ?」
「うーん……なんか人間やめてる感じがする」
「俺はどこのブランドーさんだよ」
俺は人間を辞めるぞぉー!って違うわ。
「ふーん……ま、霊君は霊君でいいんだけどね」
「そりゃそうだ。俺は俺以外の何者でもないからな」
俺がそう言うと、天音が俺の事をジト目で見てきた。
なんだよ。可愛いじゃねぇか。
「なんだ?」
「んー、なんでもない」
「なんでもないのに人の顔をまじまじと見るな」
「ごめんごめん。あ、そうだ!霊君、今日の放課後空いてる?」
「あ、ああ。むしろ予定がある日の方が少ないぞ」
「……なんで今日は某ラノベの主人公みたいに捻くれてんの?」
「え、そんなに捻くれてた?」
「うん、かなり」
「……無意識だったわ。で、なんで放課後?」
「ああ、買い物に行くから付き合って」
「荷物持ちですねわかります」
「理解が早くてよろしい」
なんでそんな上から目線なんだよ。
「あ、美桜ちゃんだ!おーい、美桜ちゃーん」
「天音ちゃん、おはよう」
一樹の彼女の美桜さんだ。今日も可愛いな……。
一樹が妬ましい……。
「霊斗君もおはよう」
「ああ、おはよう。昨日はなんか進展したか?」
「そ、その……き、キスを……」
「は?魚?」
「なんで半ギレ……」
「一樹が……おでこに……(///∇///)」ポッ
「キシャァーッ!」
「(びくっ)れ、霊君!?落ち着いて!」
「落ち着いてられるかぁーっ!リア充がぁぁぁっ!」
「ちょっと黙れ(ドスの効いた声)」
「はい」( ;´・ω・`)
怖い!怖いよ、天音さん!
「美桜ちゃん、良かったね!」
「うん!天音ちゃん達のおかげだよ!」
うんうん、俺達のおかげ。だから一樹は感謝しろ。
おや、学校に着いた。じゃあ、女子二人は置いて先に行くか。
俺が先に廊下を歩いていると、見慣れた後ろ姿が……。
「おう久遠、おはよう」
「霊斗か、おはよう」
「一樹は?」
「さぁ?私とは一緒に来ていないぞ」
「あ、昨日の口調の変化はやっぱりふざけてたのか」
「ま、まぁな(作者が間違えたとは言えない)」メメタァ
ん、どこからか変な擬音が……。
「まぁいいや、行こうぜ」
今日の目標、誰にも変化に気づかれないように生活する。
頑張るぞ!だって、さっき危なかったからな……。
主人公の視点で書くのって難しい。
では、また次回!