ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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※オリジナルストーリーです。


規格外の規格外

 リズベットは五十二層にある山のフィールドでメイスを片手に佇んていた。

 ここにはゲームでよくいるゴブリンの進化系のようなモンスターが住んでいて多種多様な鉱石を守っている、という設定がある。

 リズベットの目的はもちろんその鉱石で、ゴブリンからドロップする使用になっていた。

 聞くところによると、ゴブリンと言うだけあって大した強さでもないがポップ率が高いという。

 そのおかげか、最前線がここだった時はレベリングのために攻略組が押し寄せていたらしい。

 しかし、今の最前線は更に上に行っており、中層プレイヤーももう少しお手軽なところでレベリングをするので、リズベットのような鍛冶屋ぐらいしか来ることはなくなっている。

 鍛冶屋達も欲しかった分が集まれば帰るので、本来であればゴブリンがうざうざといるはずだった。

 

 そう、いるはずだったのだ。

 

 安全マージンは十二分にとっているが、ソロで来ているということもありリズベットはわりかし気合をいれてきていた。

 にも関わらず、いざ付いてみればゴブリンは皆無で、まるでゴミのように鉱石が落ちまくっていた。

 突発的なイベントか、何かのバグなのか。

 リズベットは頭をフル回転させて考えてみる。

 しかし、頭に浮かんだのは上層で今も迷宮に潜っているであろうキリトやアスナであればこの謎現象にも対応できただろうな、という感想ぐらいだった。

 この謎の空間に足を踏み入れても大丈夫なのか、と考える。

 そして、キリトならどうするだろうかと考える。

 彼なら自分の身をかえりみずに誰かが犠牲になるくらいならと、この空間に足を踏み入れるだろう、と安易に想像できた。

 ならばと、リズベットのすることは決まった。

 安全マージンは十二分だ。

 バグではなくイベントだったとしても、この層にあったレベルのものだろう。

 大丈夫。

 と自分に言い聞かせて、謎の空間にリズベットは入っていった。

 

 足元に落ちている鉱石を拾いたい衝動を抑えながら、リズベットは慎重に進んだ。

 鉱石を拾わないのは、これがトラップで拾った瞬間にわんさかゴブリンがでてくるかもしれないからだ。

 これが拾っても大丈夫なやつだったら拾う。だから今は回りに気を配れ。

 自分にそう言い聞かせて慎重に一歩、また一歩と奥に進んでいく。

 気を張り詰めていたせいか、いつもより長く時間を感じつつ、一番レア鉱石を落とすここのボスゴブリンがいるところまであと少しのところまで来た。

 それを意識したと同時に、カンカンと、剣と剣がぶつかり合う音がリズベットの耳に届いた。

 誰かが戦っている。

 それがわかった瞬間、リズベットは音のするほうに駆け出していた。

 助けなければとか、この謎な現状の出所だとかそういう考えはなかった。

 ただ、何かに吸い寄せられるようにリズベットは走っていた。

 音の出所はボスゴブリンがいるところのようで、何度か来たこともあるのですでに慣れた道を駆け抜ける。

 

「一体何が」

 

 パシャン

 

 リズベットがたどり着いたのと同時に、おそらくではあるがボスゴブリンが消滅した。

 今もかすかに残っている青のパーティクルの向こう側に黒衣の男が剣を鞘に戻すのが見える。

 全身黒服。

 そうおもった瞬間に彼がキリトかと思ったが、よくみると違うことに気がついた。

 キリトのように紙装備、もしくはそれ以下の服装で、キリトには失礼かもしれないが、そこに立っている男は長身だった。

 青のパーティクルが彼の周りをきらきらととんでいる様子はとても絵になっていた。

 それはもう、画家が描いた一枚の絵のように。

 ぼけっとリズベットが男をみていると、男はウィンドウを操作し始めた。

 ドロップ品の確認なのか、その場でオブジェクト化をしていく。

 ここでなぜオブジェクト化をわざわざするんだと疑問に思ったのもつかの間、その男はいくつか出したオブジェクトをその場に捨て始めた。

 捨てたものの中にはボスゴブリンから出たのであろうレア鉱石も含まれており、それに気がついたときにはリズベットは走り出して、男の胸倉をつかんで、高い位置にある頭を自分に引き寄せていた。

 

「あんたはいったいなにしてんの?!」

 

「え?」

 

 以外にもリズベットの存在に気がついていなかったらしく、きょとんとした顔でこちらを見返した。

 

「な、なにっていわれてもな」

 

「なんで鉱石捨ててんのか聞いてんのよ!」

 

 ようやく納得がいったようで、男はそれが通常であるかのようにとくに感情がない表情になった。

 一瞬怒ったのかと思い、怖気づきそうになったが、馬鹿なことをしているのは目の前の男だということを思い出して、リズベットは胸倉を離すことはしなかった。

 

「そのことか。別にいらんからだ。すでにストレージもほとんど埋まっていてな。換金できる、というのは知ってはいるが、金稼ぎじゃなくてレベリングに来ているからいちいち換金しに戻る時間がもったいない」

 

 さらっとあまりにもな理由を言ってきたので、さすがのリズベットも固まるしかできなかった。

 すでにストレージがいっぱいになってしまうほどアイテムを持っており、そうなるまで街に戻ってもいない。

 ということはとてつもない時間、この場所にいるのでは、とふと思う。

 

「い、一応なんだけど、そんなことはないとは思ってるんだけど、そこらじゅうに落ちてた鉱石もあんたが・・・・・・?」

 

「ああ、捨てた」

 

 あの量を捨てた。

 リズベットの思考が固まるのは仕方のないことだろう。

 

「そろそろ手を離してもらえないだろうか」

 

 しばらくたった後に、黒衣の長身男に声をかけられたリズベットは、胸倉をつかんだままだったことを思い出した。

 

「え、あ・・・・・ごめんなさい」

 

 胸倉から手を離したところでもう一度リズベットは我に返った。

 

「じゃなくて!」

 

「なんだ。うるさいな」

 

「うるさいな、じゃないわよ!貴重な鉱石ポイポイ捨ててんじゃないわよ!もったいないわね」

 

 そういいながら、リズベットは鉱石を拾いだす。

 この珍妙な景色を作り出したのは目の前の男だということはすでに判明しているので、拾ったところで突然モンスターがわいて出るなんてことはない。

 このとき、この状況があまりにも異様なことにキリトと出会ったばかりで感覚が少し変わってしまったリズベットが気がつくことはできなかった。

 

「ほら、あんたも突っ立ってないで拾いなさい!私のストレージとあんたのストレージいっぱいになるまで詰め込むわよ」

 

 規格外さと全身真っ黒な男にキリトがかぶっているせいで怖気づくことなくリズベットは指図していた。

 

「まて、俺は待ち時間の間にレベルを――」

 

「関係ないわよ。安心しなさい、あんたのストレージの鉱石も私が買い取ってあげるから。馬鹿な行動をしてた罰として安くだけどね」

 

 にやりと笑って男を見ると、男の眉間のしわは深くなったが、ため息をついて鉱石を拾い始めた。

 リズベットの勢いには従ったほうがいいと思ったのだろう。

 それから二人分のストレージをいっぱいにするのには一時間と少しの時間がかかった。

 この量を集めようと思えば何倍もの時間がかかるので、一時間など大した時間ではないだろう。

 

「じゃ、今から私の工房に戻るからあんたもついてきて」

 

「・・・・・・わかった」

 

 かなり仏頂面ではあるが、この一時間もの間、特に文句を言うこともなく一緒に鉱石を拾い続けてくれていたので、いいやつなのはリズベットは分かっていた。

 また、変な奴と知り合ったな、と思いながらもリズベットは自分の工房に帰るためにこの層の主街区にむかって歩き始めた。

 

 

 ずっと無言で着いてくる男にリズベットが話しかけれたのは、リンダースについてからだった。

 

「そーいえば、あんたなんであんなところにいたの?」

 

「いまさらか。レベリングだと言っただろう。本当はもっと上に行きたいんだが、普段は一緒にいる奴が許してくれなくてな。一人のときは自分のレベルより五以上の層でレベリングするなってうるさいんだ。俺が悪目立ちするのと、人前に出るのが嫌らしくてな。レベリングする場所まで決めてくる始末だ」

 

 どんな過保護だ。

 と言いかけたが"自分のレベルより五以上の層"でレベリングをするなといわれている、という言葉を思い出して、リズベットは眉間にしわを寄せた。

 この世界での安全マージンはその層に十足したレベルだといわれている。

 それは彼は今なんと言った?

 自分のレベルより五以上の層といったはずだ。

 

「えっと、あんたのレベル聞いてもいい?」

 

 本来であれば、それはタブーだ。

 しかし、聞いてしまうのは当たり前だろう。

 少なからず、リズベットは良くて嫌な顔をされるか、悪ければ怒られると思っていた。

 が、男は気にすることなく

 

「四十七」

 

 と、あっさり答えた。

 しかも、先ほどまでいた層とぴったり五下のレベルを。

 特に気にすることなく、男は話を続ける。

 

「さっさと最前線に一人で行きたいんだがな。あ、そういえばいくつレベルが上がったか忘れてたな」

 

 そういって、男はウィンドウを操作し始める。

 

「むっ、最前線にいけるレベルにはまだ足りないか」

 

 独り言のようにつぶやいた言葉を聞いて、ぼんやりと今の最前線の階層から五を引いた数を計算した。

 その計算をしている時点で、目の前にいる男は何を言っているんだと思いだす。

 その場でわめき散らしたかったが、ここは街中で目立ってしまうことを気にして、ぐっとこらえた。

 ぶっちゃけ、どうせ嘘だろうと思っている部分もリズベットにはあった。

 

 

 

 

 

 

「お前は鍛冶屋をしていたのか」

 

 リズベットの工房に着いたときに、男は無表情ながらに驚いた様子だった。

 

「そうよ。だから鉱石ほしがってたんじゃない。安値で買い叩いてやるから覚悟しなさい」

 

 男を工房に招きいれ、リズベットは一人自分の部屋に戻って装備をはずす。

 そういえば、男の名前を聞くことすらしていなかったとふと思い出す。

 

「あんた、そういえば名前は?」

 

「・・・・・・レイン」

 

 工房に戻って男に聞くと、立てかけてある剣を見ていて、振り返ることもなく答えた。

 

「剣にそんな興味あるの?」

 

「まあな。俺はこの世界のシステムとやらはいまだにさっぱりでな。剣を新調するときは普段一緒にいる奴に任せてしまっている。お前がその知識持ったらどんな無茶しだすかわからないから教えない、と言われて教えてもらえないし、情報屋たちにも口止めされてるらしくてな」

 

 レインの表情はただでさえ無愛想なのにも関わらず、眉間にしわを寄せているせいで、怖さしか感じられない。

 まあ、すごい量の鉱石を捨てて歩くような男だ。

 実際に知識が乏しいのはリズベットにも察することはできた。

 今の話を聞いたところでは、よほど無茶をしまくる馬鹿、ということしかわからない。

 情報屋にまで手を回されているというのはよっぽどなのだろう。

 規格外に規格外を重ねまくっているような目の前に立つレイン。

 背が高くて体格もしっかりしているし長い足はどこぞのモデルかと思うほどだ。そして、精悍な顔立ち。

 最初の出会いのせいでよく見ていなかったが、これほどのイケメンがこのゲーマーしかいないような世界になぜいるのかといまさらながらに思ってしまう。

 

「なんだ?」

 

 ぼけっとレインをみていたリズベットは、レインに声をかけられて我に返った。

 

「な、なんでもないわよ!ほらさっさとトレードウィンドウ出しなさい」

 

 首をかしげながらもレインは慣れたとはいえない手つきでウィンドウを操作していく。

 しばらく待って、リズベットの前にトレードウィンドウが表示された。

 

「あんた、まだ操作慣れないの?」

 

 トレードウィンドウに入っているアイテムをみてレインに渡す金額を頭の中で計算しながら、何の気なしに聞いてみた。

 

「あぁ・・・・・・。基本的には機械が苦手で」

 

 あまりにも会話を続ける気を感じないことに対してリズベットはなんとなく、無理やりにでも会話を続けてやろうと思った。

 

「へぇ。そういえば、最前線に行きたいって言ってたわよね?安全マージンはその層に十足したレベルって言われてるけど、なんであんたは自分のレベルより五足した層なの?」

 

 嘘だと思いつつ、にやりと口をほころばせながら聞いてみると、一瞬ではあるが、眉間にしわを寄せたレインが今までの不敵とも言える空気を変えることなく説明しだした。

 

「最近、がんばろうかと思い始めてな。最初のころから最前線の知り合いと遊びでデュエルはしてたからそれなりに戦えるんだが、敵とは大して戦ってなかったからレベルは低いんだ。今から最前線に行くってなったらちょっと高めのほうがレベルも上がりやすいってことでちょっと上の層でレベリングしてる。その最前線の知り合いにも大丈夫だって見極めてもらってるから心配は何もいらん」

 

「じゃあそれまでは何してたの?」

 

「・・・・・・パルクールの練習をしてた」

 

「は?」

 

「街中でパルクールの練習してた」

 

 どこか不機嫌なレインはつぶやくように言った。

 その顔を見て、これ以上は聞かないほうがいいということがわかった。

 

「そ、そう・・・・・。さっきの鉱石の代金、これぐらいでいいかしら?」

 

 最初から言っていたように少し安めの設定にして出してみる。

 

「いや、代金はいらん」

 

 あっさりとそういったレインは代金を受け取らずにトレードを済ませてしまった。

 

「えっ?」

 

「その代わり、武器について教えてくれないか?俺のパラメーターと照らし合わせて一緒に検討してほしい」

 

 真剣な眼差しを真正面から受けて思わずリズベットは固まってしまった。

 こんな精悍な顔立ちにドキッとしない女の子はいないだろう、とリズベットは自分に言い聞かす。

 

「そんなこと言ったって、どんなものがいいとかあるの?」

 

「ある。今のじゃ軽いし小さい。俺は強くなるためにここに来たのに、スタート地点にも立てていない」

 

 あまりにも真剣なレインの表情を見て、リズベットはあきれるようにため息をついた。

 

「仕方ないわね。なんであんたの知り合いに止められてるのかは知らないけど、このアインクラッド一の鍛冶屋であるリズベット様がレクチャーしてあげるわ」

 

「よろしく頼む、リズベット」

 

 はじめて自分の名前を教えたなと思いながらも、ずっと無表情だった彼もきちんと笑えるんだと、どこか片隅で思った。

 

 

 レインはリズベットに自分のパラメーターと剣の相性を教えてもらっていた。

 現在、レインは今のところ筋力値にし極振りしている。現実のものと同じぐらいになれば敏捷というものを上げるつもりだ。

 ロザリアの一件で気になったこの世界特有の気配を感じる方法をキリトに聞いてみたところ、索敵スキルという システムに頼りきったものだったので、レインは現実世界では使えないと判断し、取得することはしなかった。

 キリトにはソロで行動するなら必須だと言われたが、そんなものに頼っては強くなれないと貫き通すと、隠蔽スキルだけはとるということで妥協してくれた。

 まあ、レインとしてはそれを使う気はさらさらないのだが。

 筋力値極振りのステータスや、所得スキルのガバガバさについてリズベットに怒られたが、好みの問題だと押し切った。

 余談ではあるが、パルクールを練習してたというのは、キリトにそう説明しろと言われたからだ。レインとしては正直この説明が気に入っていない。

 そして、途中参加だと言うのは誰にも言うなときつく言われている。

 

「にしても、あんた相当戦いにくかったんじゃない?今使ってる片手剣とか、あんたのステータスからしたら半分以下の性能よ?」

 

 たまにため息をついたり、うめき声を上げたりしていたリズベットが呆れたように説明しはじめる。

 

「たぶんだけど、戦いにくくさせることでレベリングしてる場所が適切だと思わせるようにしてたみたいね。あんたのレベルは言ってたとおり安全マージンより低いし、持ってる武器も大したことないくせによくもまあ、あの鉱山地帯であんな珍妙な光景が作り出せたわね」

 

 リズベットの説明を聞いて、意図的にキリトがやっていたのだろうと察し、レインは眉間にシワを寄せた。

 なぜ、それほどまでに最前線に行かせたくないのかレインには分からなかった。

 

「なぜあいつはそんなことを」

 

 思わず呟いたレインにリズベットが盛大にため息をついた。

 

「よっぽどあんたが無茶するってことがその最前線の知り合いには分かってたんでしょうよ。レベルで言えば最大の譲歩って思えるわ。多分攻撃を受けても多少なら耐えられるところにしてるのよ。この性能の低い武器のおかげで、あんたは物足りないって感じなかったんじゃない?」

 

 確かに、敵の耐久性のことを考えれば物足りないことは無く、むしろまあ、そんなものだろうという感想が得られる。

 何度かかすり傷を受けた時は意外な量のHPを持っていかれ、まともに攻撃を受けられるのは一回だと常に思っていた。

 

「物足りなくなって上の層に行けば一撃で死ぬから、ということか」

 

「おそらくそういうことでしょうよ」

 

 レインは考える。

 キリトが最大の譲歩かつ、レインの実力も考慮した上で散々悩み、現状にしているのであれば、それを変えてしまうのはいい事なのだろうかと。

 この世界について間違いなくキリトはずば抜けて知識があるとレインでもわかっている。

 情報屋にも手を回せることもあるし、最前線で戦っている一人の戦士だ。

 その彼が、順序よくレインをここで強くなれるようにしてくれているのであれば、知識の少ない自分は彼に従うべきではないのかと思える。

 でも、それでは強くなることができない。

 

「その知り合いの言う層できちんと戦うなら私もあなたにあった武器を定期的に提供してあげなくもないわよ?」

 

 突然のリズベットの言葉にレインはきょとんとすることしか出来なかった。

 

「どういう事だ?」

 

「あんたが無茶するから効率が悪くても無理やり性能の低い武器を渡してるってことでしょ?無茶せずに言う事聞いて、ちゃんとした武器をもって戦えば効率が上がって早く最前線にいけるでしょ」

 

 なぜ彼女は出会ったばかりの自分にそんな提案をしてくれるのだろうかと、ふと思う。

 いや、リズベットだけではない、シリカも自分の身を心配してくれていた。

 キリトに関しては間違いなく足でまといになっているであろうに世話をしてれている。

 彼に迷惑をかけないためにも早く強くならなくてと思う部分もレインにはあった。

 

「この世界ではやはり、武器で変わるか?」

 

「変わるなんてもんじゃないわよ。最前線じゃ使い物にならない武器だってわんかさあるわ。なんでそんなにもこの世界について知らないのかは分からないけど、もう少しこの世界に興味をもちなさいよ。たとえ嘘の肉体でも、私達の心はここで生きてるんだから」

 

 優しく笑いながらいってくるリズベットをみて、レインはまたもこの少女に驚かされる。

 たしかに、レインは、最低限の知識でこの世界を乗り越えようとしていた。

 この仮想世界は通過点で、現実世界に戻ったら意味の無いものになる。

 ましてや、レインは異邦人だ。

 この世界の武術以外の知識は大していらないの思っていた。

 キリトからの情報で大丈夫だと思っていた。

 だか、それは自分らしくないのではないかとふと思う。

 レインは真剣な眼差しでこの世界で生きているリズベットを見る。

 

「この世界での知り合いが俺には少ない。色々教えてくれるのは知り合いの最前線で戦ってる一人だけだ。それだけじゃダメだと思って情報屋に当たってみたが、そこにも手が回っていて大したことは教えてくれない。だからリズベット、この世界について、システムについて教えてくれないか?」

 

 リズベットは一瞬きょとんとしたが、にこりと笑った。

 

「最初は武器だけについてだったけど、それだけじゃなくなっただけだしね。任せなさい。私もその過保護な最前線の奴にぎゃふんと言わせてやりたいわ」

 

 男らしいく拳を突き出してきたリズベットに苦笑しながら、レインはその拳に自分の拳をぶつけた。

 

「よろしく頼む」

 

 それからのレインの成長速度は著しく上がり、キリトが逆に苦労したのはまた別の話。




さて、時間が開くといいながらはやくも書いてしまいました

前回はシリカでしたが、今回はリズベットです

ヒロインのように出てきていますが、違います。
キリトにとってのアスナのようなヒロインは作りませんのであしからず。


私はレインとフィーネの組み合わせ派なのです。
フィーネ以外は認めん( ゚д゚)

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