ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~ 作:モフノリ
天使を迎えに来た死神
誰もいないはずの空間に黒い何かが立っている。
確か彼はボス部屋の前でキリトと共に壁を走ってやってきた人だったはず。
助けてくれた名前も知らない彼が、今は死神にみえてしまうのは、死の直前だからだろう。
「なあ、お前、俺のかわりに神様にならないか?」
全身真っ黒で死神に見えるのに”神様ならないか?”だなんてふざけたことをいっている。
思わず笑ってしまうのは仕方がないだろう。
「いやいや、その見た目で神様はないんじゃないかな?僕から見たら君は死神だよ?」
実際、スリーピングナイツのみんなやアスナ、それからALOのみんなとお別れしてきたばかりだ。
死神がくるにはベストなタイミングだろう。
「死神か。言い得て妙とはこういうこというのかもしれん」
端正な顔の男がくすくすとやさしく笑う。その顔は死神には見えなかった。
そして、彼は優しい顔のまま、手を差し伸べてきた。
「"ユウキ"という魂を残したいと思うなら、俺の手をとってみないか?」
突拍子もない言葉に木綿季は固まる。
「それは・・・・・ボクが・・・」
「すまんが、君を生かすことはできない。だが、ユウキの魂をちょろまかして残しておくことはできる。その条件はユウキが俺の代わりに神様になることだけどな」
ころころと表情を変えながら、真っ黒な奴はしゃべる。
「いやな、俺は神様なんて柄じゃないんだ。正直やりたくない。本気でやりたくない。どちらかといえばお前が言った死神のほうが俺は近いんだ。なのになんで俺が正反対な神様なんてやらなきゃならん」
「そんな神様なんて代わりに、なんて感じでできちゃうものなの?」
死ぬ間際にしてはなかなか面白い話だな、なんて思い始めてのんきに会話を続けてみる。
「まあな。俺に神様になれって言ったやつにやりたくないと全力拒否したら、なら代わりを連れてこれたらいいぞ、ってるし」
つまりだ、と男は不敵な笑みを木綿季にむける。
「これは俺がお前に神様なんてめんどくさいもんを押し付けようとしてるだけなんだ。だから俺は"ユウキ"の魂をこの世界に残してくれるとすごく助かる」
「それはすごく君の自分勝手な意見だね」
「そうだ。これは俺の我が儘だ」
「神様になりたくない死神の我が儘か」
「そそ」
「すごくおもしろいね」
木綿季はくすりと笑い、ずっと差し出されていた手に手を重ねた。
「どうせボクはしんじゃうし、人生最後に面白い話に乗っかっても罰は当たらないと思わないんだけど、どう思う?」
「罰があたるも何もお前が神様になるんだ。罰を当てるほうだぞ」
「そうだった」
男に引っ張られてふわりと体が浮き、男にお姫様だっこされる。それと同時にまぶたも重くなる。きっと死が近い。
「ねえ、やっぱり神様はさすがに仰々しいから天使とかじゃだめかな?」
「さあな。それはユウキが交渉する部分だ」
「でも、天使の羽もいいけど、妖精の羽のほうが好きだな」
「そうだな。妖精たちは生き生きしていて綺麗だ。飛んでるお前のもちろん生き生きしてて綺麗だった」
「ボクのことみてたんだ」
「見てた。だから俺はお前のところに来たんだ。さあ、そろそろ寝よう。大丈夫。起きたら新しい世界が始まってる」
優しい声がじんわりと耳に入ってくる。
「死神は思ったよりも優しい存在だったんだね」
体を包む暖かさに縋りながら落ちていく意識に抗うことなく沈んでいく。
「別に優しくなんかないさ」
静かに沈む意識の中、最後に聞こえたその声はどこか孤独を孕んでいた。
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「お前、リアルでも人外の動き出来てたもんな……」
じとりとした目で額を赤くさせた少年がぼそりと零す。
「ちょっと!!アンタいくらなんでも無茶しすぎよ!」
強くなった少女が駆け寄りながら叫ぶ。
「えっ……どうして…?」
空を切った手のやり場を失った少女は思わず口にする。
「あら、あなた……私と一緒なのね。せっかくだから仲良くしましょ?」
微笑む歌姫は至極楽しそうにお喋りをする。
電子の世界で剣を振るっていた戦士が、現実世界でも剣を振るう。
-------------coming soon-----------
お久しぶりです。
マスターとなり緑の弓兵にうつつを抜かしていたのに気がつけば執行されていたモフノリです。
そして以上、マザーズロザリオ編でした。
でした!!!!!!!
ところで、10月6日からアリシゼーションのアニメが始まりますね!!!!
超楽しみでございます!!!
PVからも感じ取れる今までのSAOとはちがってリアル寄りのキリトの剣を振る動き!!!
楽しみすぎて楽しみすぎてスキップボタンがほしいです
さて、突然始まり一瞬で終わったマザーズロザリオ編ですが
アリシゼーションのアニメが始まるということで
「ッシャオラ!オーディナルスケールやるか!!!」
という無謀の行動をしようとしたゆえのものになります。
後々アリシゼーション編やりたいのであればマザーズロザリオのこの件は必須。
そしてオーディナルスケールの前にマザーズロザリオがあるので必然的にぶち込ませていただきました。
つまり、アリシ編では?!あの子が?!
そういうことです。
あと、エクスカリバーはどうするかはわからない状態です。
長々とあとがきを失礼いたしました。
読んでいただいた方、コメントをくださった方、評価してくださった方、ブクマしてくださった方。
ありがとうございます。
かなり短いマザーズロザリオ編ですが、これにて終了になります。
この話は原作をあまり変えたくないという私の我が儘で、もし楽しみにしていた方がおられたら申し訳ないです。
レインがしたのはキリトと一緒に
「悪いがここは通行止めだ」
ってやったことぐらいです。
要望が多ければ描くかも知れませんが・・・・
次回!オーディナルスケール、起動!!