ソードアート・オンライン~知られざる天才剣士~   作:モフノリ

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バレットオブバレッツ

 無事にエントリーを終えたシノンは小さく息を吐いた。

 すっかり時間を忘れて少女に付き合って買い物をしてしまっていたせいでエントリーに間に合わないかもしれないとおもったときは本当に肝が冷えた。

 彼女がバギーを乗りこなしてくれたおかげで間に合ったので感謝しかない。

 

「間に合った?」

 

 一応隣でエントリーしている少女に声をかけると、びくりと肩を震わせた。

 

「あ、はい。今し終わったところです」

 

「それは良かったわ。じゃあ行きましょ」

 

 なにやら少し落ち込んだ様子だが、何かあったのだろうか。

 エントリーの際に打ち込む住所の間違いに今気がついたとかそんなものかもしれない。

 そんな詮索をしたところで何にもならないので、シノンは思考を予選へと切り替えた。

 今度こそ勝つのだ。

 

「ところで、君は何ブロックになったの?」

 

 もし、途中であたることになってしまうと二人とも本線に進めなくなってしまう。

 

「えっと、Fブロックの三十七番ですね」

 

「同じブロックか。でも、その番号なら決勝まで当たらなくてすみそうね」

 

 逆に言えば、彼女が無事に進むことができれば予選トーナメントの決勝で当たることができる。

 ギャンブルゲームで驚異的な回避術を見せ、操作が難しいといわれていたバギーの見事に乗りこなした彼女と戦うことがすでに楽しみになっている。

 出場者を全員倒して、後ろに着いてきている少女も倒して、そして誰よりも強いあいつを倒す。

 そして、強くなる。

 緩んでいた気を締め直したシノンは会場への扉をくぐった。

 

 

 

 

 会場はすでに熱気にあふれていて、すでに武器を構えている人が多い。

 ガラの悪い連中が多いこともあって、女二人で歩いているのは異様に目立ち、こちらをちらちらとみてくるのが癇に障る。

 初心者である少女は現状のような雰囲気に慣れていないようで、怖がっているらしくギャンブルゲームやバイクを走らせているときのような豪胆な態度はなりを潜めている。

 彼女のためにもさっさと控え室に移動して着替えを済ませるのがいいだろうと判断したシノンは、特に何を言うでもなくずいずいと足を進めた。

 そうしながらも、脳筋ゴリラの姿を無意識に探してしまっている自分に気がついたときは、思わずしかめっ面をしてしまう。

 しかめ面のまま、今度は意識的に彼の姿を探す。

 予選開始までそこまで時間がなく、当然あいつはいるものだと思っていたにも関わらず、ざっと見たところでは見つけることができなかった。

 長身で細身で精悍な顔立ちのアバターだからすぐにわかると思ったが、そうでもなかったらしい。

 予選はトーナメント戦なので同じブロックで当たることになってしまうとできれば決勝戦で風穴を開けたいのにそれができなくなってしまうので、何ブロックなのかぐらいは聞いておきたい。

 少女を引き連れたまま、控え室に入ったシノンはどしりといすに座った。

 着替え終わったら探すことにしよう。

にしても

 

「ほんとお調子者しかいないんだから」

 

 あんな奴らばかりでは強くなれないではないか。

 

「えっと、あれがお調子者なんですか?」

 

「そうよ。メイン武器を始まる前から見せびらかして、対策してくださいって言ってるようなもんでしょ。あなたも、始まる直前の転移の時に装備することをおすすめするわ」

 

「は、はぁ」

 

 まあ、自分や脳筋ゴリラなどの有名なプレイヤーには関係ないことなのかもしれないが。

 対策されたところで負けるつもりもない。

 

「さ、私達も早く着替えましょ」

 

 そう言ってウィンドウを操作して着ていた私服を外した。

 

「うわぁあ?!」

 

 女子同士だが、さすがに堂々と装備を外すのは恥ずかしかったので背中を向けていたが、突然変な声を上げた少女に思わず振り返る。

 

「どうかした?」

 

 振り向いた先には、両手で顔を覆っている少女がいた。

 あれだろうか。同性でも、たとえこれが仮想の肉体でも他者である人の裸を見るのは苦手なタイプなのだろうか。

 そんなことをのんびり考えていると、少女が敏捷値のあらんかぎりで腰を折った。

 

「黙っててごめんなさい!!私、じゃなくて、俺、こういう者です!!」

 

 叫ぶように言った少女は実になれた手つきでウィンドウをこちらに見えるように滑らせた。

 突然の自己紹介に驚きながらも、シノンは目の前の人の事が書かれているウィンドウに目を走らせる。

 

「へぇ、キリトって名前なんだ。変わった名前ね。・・・・・・えっ、メイル?えっ?」

 

 性別欄に書かれている『Male』という文字を何度も確認して、目の前にいる少女――いや、キリトという少年とウィンドウを視線が何度も行き来する。

 

「男?!ほんとうに?そのアバターで?!」

 

 キリトから否定の言葉は返ってこず、ただただ頭を下げ続けているので、本当なのだろう。

 次の瞬間、シノンは自分の姿を思い出して顔が熱くなるのがわかった。

 アバターだからといって、本当の自分の体ではないからといって、男に見られるのはやはり恥ずかしい。

 恐る恐る、といった様子でキリトが顔を上げた瞬間、シノンは自身のアバターのステータスをフル稼働して叫びながら目の前の男の頬を叩いた。

 

 

 

 

「着いてこないで」

 

「いや、でも」

 

「着いてこないで」

 

「他に知り合いいないし」

 

「着いてこないで」

 

「どこ行けばいいか分からないし・・・・・・」

 

 不機嫌極まりないシノンはしつこく着いてくる”少年”キリトのほうに振り向く。

 まるで少女のようなアバターの少年の頬にはくっきりともみじの形をした跡が残っている。

 困ったようにこちらを見ているキリトを見て、シノンは小さくため息をついた。

 

「仕方ないわね」

 

 ずうずうしさと全身真っ黒の姿に、いまだに姿を現さない彼となんとなく姿が重なった。

 まあ、彼であれば、シノンの裸体を見たら謝ることなどせず、ご丁寧に感想を述べてくるか、特に気にする様子を見せないかだろう。

 シノンは適当な場所を見つけて雑に予選の説明をキリトにする。

 こちらは下着姿を見られたのだ。すこしぐらい適当にでも許されるだろう。

 というか、コンバートとはいえ、BoB当日に初めてログインするほうがおかしいのだ。

 下調べぐらいきちんとしてこいと怒ってもいいと思える。

 

「大体わかったよ。ありがとう」

 

 きちんと礼を言ってくるあたり、ただの悪い奴ではないのはわかる。

 

「ちゃんと決勝まであがってきなさいよ。ここまでレクチャーさせたんだから最後の一つも教えないと気がすまないわ」

 

「最後?」

 

「敗北を告げる弾丸の味」

 

 キリトをにらみながらそう言うと、彼はにやりと微笑んだ。

 今までのきれいな笑い方ではなく、楽しげで悪戯をする少年のような笑い方が嫌に様になっているのは、きっとこの憎たらしい彼のほうが素だからなのだろう。

 

「それは楽しみだな。君のほうは大丈夫なのない?」

 

「当然よ。予選落ちでもしたら引退する」

 

 予選で件の脳筋ゴリラと当たらないとも限らないが、だからといって負けるつもりはない。

 彼とは本戦で戦いたいと思うが、予選であたってしまったらあきらめるしかないのが現実だ。

 強くなるためにこの世界で戦っているのだ。

 

「今度こそ、強い奴らを、あいつを殺してやる」

 

「物騒なことをいうもんじゃないぞ」

 

 無駄に聞きなれた声が突然聞こえたとおもうと、ドスッと頭に衝撃が走った。

 

「ちょっとあんた!いきなりなにしてくれ・・・・・・て?」

 

 声のした後ろに向かって振り返ると、見慣れたようで見慣れない脳筋ゴリラがいた。

 普段の動きやすさが重視されている身体にぴったりとフィットした装備なのは変わらない。

 変わっているのは普段は両手に装備されている剛健パラドックというナックルはシノンの頭を叩いたのであろう右手つけられていないのをみるに、シノンを殴るためだけに外されていることぐらいだ。

 しかし、そんな装備をしていないかしているかの違いなどよりも、いつもはセットされたのか、ただぼさぼさなのかわからない髪がきれいに整えられているせいで固まってしまう。

 普段はちゃらいようにしか見えない彼が、好青年のように髪の毛を整え、優しく微笑んでいるのだ。戸惑うに決まっている。

 シノンが固まっている間に、彼の視界にキリトが入ったようで、すすすっとすばやい動きで隣にちゃっかりと座る。

 容姿は好青年だが、女たらしな部分をどうにかするつもりはないらしい。

 そんな様子の彼を見て、シノンはあえて何も言わずに成り行きを見守ることにした。

 片方は人の下着姿をみた男で、もう片方は普段からやりたい放題の男。

 男に口説かれて困ればいいし、男を口説いてげんなりとすればいいと思ったのだ。

 

「こんなむさくるしいゲーム内に可憐な人が現れるとは思いませんでした」

 

 なぜかキリトの手を取って敬語を使う彼を不思議に思うが、面白そうなので放っておく。

 キリトはといえば、かっこいいとはいえ、男に言い寄られて顔が引きつっている。

 ざまあみろ、とシノンはほくそ笑む。

 

「え、い、いや・・・・・・可憐だなんてことは・・・・・・」

 

「そんなご謙遜なさることはないじゃないですか。だって、男なのにそんな容姿なんですから。それはもう合法的にネカマプレイし放題でちゃっかりシノンの下着姿を見ちゃうことぐらい簡単ですもんね」

 

 爽やかな顔でそんなことを言った彼に、キリトだけではなくシノンも固まった。

 そんな二人のことを見てから、彼はいつもの不敵な笑みを見せる。

 

「で、キリトとシノン。お前達は何ブロックになったんだ?」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!あんた達知り合いなの?!」

 

「ま、待て!!俺はGGOに知り合いなんていないぞ!いたら最初から頼ってる!」

 

 騒ぎ出す自分達のことを面白そうに彼が見ているのが癇に障る。

 いつもそうだ。いつもこいつに振り回される。

 

「どういうことか説明しなさいよ!!レイン!!」

 

「レインだって?!!」

 

 面白いぐらいにさっと顔から血の気の引いたキリトと整えていた髪の毛をいつものぼさぼさに戻した不敵に笑うレインをみて、キリトも彼に振り回されてきたのをシノンはなんとなく察してしまった。

 

 

 

 

 あんぐりと口を空けたまま固まっているキリトを見てレインはにやりと笑い、キリトに振り回されたらしいシノンに黙ったままというのも気が引けるので混乱しているシノンに手短に説明をする。

 キリトには後で適当に話せばいいだろう。

 

「前のゲームでの知り合いだよ。俺もコンバートしたって話したろ?」

 

「あ~、そういうこと」

 

「っ!っていうかなんでレインがいるんだよ!」

 

 ようやく我に返ったらしいキリトが騒ぎ出す。

 予選が始まる直後ということもあり、会場も盛り上がっているおかげで目立つことはなかった。

 

「俺がどこにいたっていいだろ」 

 

「いやいや、俺、GGOにコンバートするって言ったよな?!そのときに言ってくれても良かったじゃないか!」

 

「なんでいちいち教えなきゃならん。教えたらお前のめんどうみることになるだろ」

 

「俺がお前の面倒見たこと忘れてない?!」

 

「いやぁ、いったい何のことだか」

 

「お前な!」

 

 さすがにうるさくなってきたのでレインは両手をつかってわざとらしく耳をふさぐ。

 レインが何も言わなくなったことで、キリトも口を開かなくなったがじっとこちらを見つめてくる。

 見た目は女みたいではあるが、男に見られても何もうれしくはない。

 

「えっと、兄弟?」

 

「違う!!」

 

「違う」

 

 何度目になるかわからないデジャヴを感じ、レインは眉間にしわを寄せた。

 隣ではキリトがうなだれているので大体同じ心境なのだろう。

 こういう時はさっさと話題をかえるにかぎる。

 

「そんなことより、お前達のブロックどこだよ。三人とも同じだったら本戦に一人行けないだろ」

 

「俺達は二人ともFブロックで当たるとしても決勝でらしいけどお前、俺達が途中で負けるとは思ってないのか?俺一応今日が初めてのログインなんだけど」

 

 そんなキリトの言葉に、今度はレインが固まる番だった。

 キリトの言う通り、自分は彼らが自分以外に負けないと思っている。

 それのどこに疑問を感じているのかがわからない。

 

「負けるのか?」

 

「負けない!」

 

「負けないわよ!」

 

 威勢よく言い返してきた二人にレインはニヤリと笑う。

 

「なら問題ないだろ。ちなみにだが、俺はCブロックだから安心しろ。ま、優勝するのは俺だがな!」

 

 優勝するためにBoBに参加することを決めたわけではないが、参加するからには負けるつもりなどは毛頭ない。

 

「相変わらずね」

 

「ほんと変わったよな」

 

 同時に反対の言葉を言った二人は顔を見合わせた。

 キリトは昔のレインを知っていて、シノンは今のレインしか知らない。

 そんな二人だから正反対の言葉が出てきたのだろう。

 

「で、この人とはどういう関係で?」

 

 キリトに、この人、と言われたのが気に食わなかったのか、シノンは顔を顰めながらウィンドウを操作してプロフィールをキリトに見せた。

 

「シノンよ。あんたの脳天ぶち抜く人の名前だから覚えておいて損はないわ」

 

 いつも以上に過激なシノンにレインは誰にもわからない程度に微笑んだ。

 彼女が言いたいことを言うということは、それだけ相手に気を許しているということだろうからだ。

 シノンにとって気を許している相手はレインが知る中では自分とあと一人しかいない。

 そのもう一人はレインにとっては面倒な奴でしかないので、できれば深く関わりたくはないのだが、そうおもっているときに限って、ということはよくあることで。

 自分たちのところに近づいてくる足音を聞いて、レインは隠すことなく、超絶めんどくさい、という表情を顔に貼り付けた。

 

「やっとみつけた!シノン、遅かったから心配したよ」

 

「こんばんわ、シュピーゲル」

 

 レインとキリトの二人に対してのとげとげしい態度ではなく、やわらかい空気で挨拶をするシノンと、レインにはぺこりと頭を下げただけのシュピーゲルにレインの眉間のしわは深くなった。

 さっさとシノンからキリトを引き剥がして死銃の話を二人でしとけばよかったと後悔してもすでに遅い。

 

「ちょっとそこの人の世話してたせいで遅れたのよ」

 

「どうも、そこの人です」

 

 大人しくなったキリトを見るに、おちょくりがいのありそうなシュピーゲルにイタズラをしようというという魂胆なのだろう。

 

「えっと、シノンのお友達さん?それとも、レインさんの知り合い?」

 

「レインの知り合いではあるみたいだけど、私の友達ではないわ。それとそいつ、男よ」

 

「お、男ぉ?!」

 

「えっと、キリトです。男です」

 

 へらりと笑うキリトをすっと目を細めてみた後、シュピーゲルはレインに説明を促すように視線を向けた。

 おそらく、なぜシノンに男の知り合いを会わせたのか、とでもいいたいのだろう。

 

「言っておくがな、こいつらが知り合ったのに俺は関係ないからな」

 

 こちらとて二人が出会った経緯は知らないのでそちらの説明を促されたところで答えられない。

 そのあたりの説明はシノンからしてもらえばいいと判断したレインはキリトの腕を掴んで立ち上がった。

 

「おい、ちょっと!」

 

 突然の行動だからかキリトが声を上げるがレインはさも聞こえていないと言わんばかりに無視を決め込む。

 

「俺達のことに関しては前のゲームでの知り合いでしかないから変な勘ぐりはするなよ」

 

 予選開始までもう時間はないし、キリトとシノンが知り合ったせいで無駄に時間をくったので、キリトに話したいこともこのままでは話せなくなってしまう。

 

「じゃ、また後でな」

 

 いつものようにぐしゃっとシノンの頭をかき混ぜてから、キリトを引っ張ってその場から離れた。

 シュピーゲルからの視線を感じるが知ったことではない。

 会場の中で誰もいないような場所までキリトを引っ張っていく。

 

「おい、なんだよ。なにか話があるのか?」

 

 誰にも話を聞かれないであろうところまで来てから口を開いたキリトがこちらの意図を理解してくれていたらしい。

 

「話が早くて楽だな。死銃の件だがな、お前と銀座で会う前に一度俺は標的になってる」

 

「はぁ?!」

 

 さっきから騒いでばっかりだなと他人事ようにレインはさらりと流す。

 

「まあ、有名な奴ばっかり狙ってやがるみたいだし、俺が狙われて当然といえば当然なんだが。そのへんの酒場で飲んでたらいきなり撃たれた」

 

「撃たれたのか?撃たれたら死ぬのに?」

 

「ああ。撃たれる前から気がついてたんだが、圏内だったし、撃たれたらどんなもんか気になったからな。ま、それでも俺はこの通り生きてるからなんの問題もない。時間がないから手短に話すが大人しく聞けよ?」

 

 そう促すと、伊達にアインクラッドの時代で共に行動していたわけでもないキリトは真剣な面持ちで先程までの馬鹿のように騒ぐでもなく、こくりと頷いた。

 

「お前、今どこでログインしてる?」

 

「えっと、菊岡に用意された病院で看護師の監視されらながらログインしてる」

 

「なら大丈夫だな。お前は撃たれても死なんから気にせず暴れろ」

 

「レインは今回の事件のこともうわかってるのか?」

 

「ぼんやりとぐらいだがな」

 

 時間を見ると開始まであと1分を切っている。

 キリトの安全はわかったし、懸念はなくなった。

 狙われたからといって自主的に解決しにいくつもりはなく、だからといって目の前で人が殺されていくのは気に食わないから邪魔をするつもりしかレインにはない。

 

「キャラネームはわからんが気配で判別できる。こっちから探すのも馬鹿みたいだから今は放置だ」

 

「じゃあ、お前がまた狙われることは?」

 

 その質問にレインはキョトンとした表情でキリトを見返した。

 真剣にこちらの事を心配している様子のキリトに不敵な笑みを見せた。

 

「問題ない。俺を殺せないとわかった時点であいつらは狙いにこないさ」

 

「お前がそう言うなら大丈夫だな」

 

 呆れたように笑うキリトがこちらの言うことをあっさりと認めたことを疑問に思う。

 そこまで信用されるほどのことをしただろうかと。さすがに信用しすぎではないかと。

 レインが、信用しすぎるな、と忠告しようとしたと同時に転移のための光が身体を覆い始めた。

 どうやら、予選開始の時間になったらしい。

 時間はもうないので開けた口で忠告しようとしていたこととは違う言葉を選んだ。

 

「予選なんかで負けるなよ?」

 

「負けねぇよ」

 

 不敵な笑みを見せあった二人の黒衣の戦士はこつんと拳をぶつけ合い、戦場に転移した。


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