バンドリ!〜輝く星と白い球〜   作:VOSE

9 / 88
どうも、VVVFです。
本当に色んな方々が見てくださって、本当にありがとうございます!
UAも順調にうなぎのぼり…かどうかはわかりませんが、これからも頑張っていくのでよろしくお願いします!
では本編どうぞ!


第7話〜出来ない理由〜

…花咲川女子学園にまた手伝いに来た僕は、今度は同級生と一緒に連れて来た。

僕だけだとかなりきついところがあったので、同級生に事情を言うと、僕だけいい思いしやがってとぶつくさ文句言いながら引き受けてくれた。

そんなわけで、僕はいつものように花咲川女子学園に来ると、1つのポスターがあった。

香澄達のバンド『poppin′party』のライブのお知らせだった。

ポスターには香澄達の名前も載っていたのだが、そこにはバンドに加わっていない沙綾の名前があった。

 

流星「…あれ?沙綾…やってたっけ?」

 

僕は少し気になったので、香澄の同級生の情報で体育館に来た。

ステージには大はしゃぎしている香澄と、ステージの下で香澄を見ている有咲、たえ、りみがいた。

 

香澄「あ!流星君!」

有咲「今日も来てたのか」

りみ「お疲れ〜」

たえ「お疲れ様」

流星「まぁ…今日は俺の同級生を勢揃い揃えて来たからさ…それより、香澄…ポスターの件なんだけどさ」

香澄「見た見た!?りみりんすっごく上手いんだよ!」

流星「あ、あれりみが書いたんだ」

りみ「わ、私は…香澄ちゃんにお願いされて…」

流星「へえ…結構上手かったよ」

りみ「ありがと〜」

流星「…じゃなくて!なんでバンドのメンバーに沙綾を入れてんだ!?」

香澄「あ、それ、私が入れたんだ!沙綾がやってくれるって!」

流星「俺は聞いてねえぞ!」

香澄「あはは…ごめんごめん…」

流星「とりあえず…沙綾本人に聞いて来るよ…お前らはそこで練習やってんだろ?」

有咲「そのつもりなんだがな…」

流星「んじゃ、俺は失礼するよ」

 

僕は香澄達と別れた後、沙綾の元へと行った。

 

流星「…あ、いたいた…沙綾!」

沙綾「あ、流星!ありがとうね、応援呼んでくれて。本当に助かったよ」

流星「いいって。それより…沙綾って、香澄のバンドに入ることになったのか?」

沙綾「え!?ええっと…」

 

沙綾は僕のその質問に不自然な挙動を見せた。

何か隠してあるような素ぶりをしていた。

 

流星「…沙綾?」

沙綾「あ、ご、ごめん…私は入らないよ?」

流星「え?でも香澄が一緒にやるって…」

沙綾「まだ先の事だよ。今回のライブは、私は出ない」

流星「はい出た〜香澄のトンチンカン…」

沙綾「あはは…でも一緒にやるのは本当だよ…いつになるかわからないけど…」

流星「…」

 

僕は沙綾を見て何か違和感を感じながらも、その日はスルーすることにした…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日の放課後…

僕は手伝っていた仕事が終わり、帰ろうとしてた時だった。

 

???「…あの!」

 

1人の女子生徒が来た。

淡い栗色でセミショートヘアのその女子生徒は、僕が帰るのを見計らって来たらしい。

 

流星「…君は?」

???「海野夏希と言います…沙綾について話がしたくて…」

流星「…沙綾について?」

 

僕は夏希ちゃんに沙綾の事についての話を聞いた。

沙綾は元々夏希ちゃん達のバンドのメンバーで、ドラムをやっていたという。

1年前までは順調にバンド活動をしていたのだが…

ある日、とあるお祭りで夏希ちゃん達のバンドはライブをする事になったのだ。

ライブ直前でみんな緊張している中、沙綾は観客の方を見ると、家族が来ていないのがわかったのだ。

沙綾は心配になって母親に連絡すると…泣きじゃくる純と紗南の声がしたのだ。

沙綾の母親は元より体が弱くよく貧血を起こすのだが、いつも無茶しているのだ。

その無茶がたたって体を崩し、倒れたのだ。

沙綾はすぐに家に帰り、イベントのライブは残った夏希ちゃん達でやったのだ。

夏希ちゃん達はライブ後すぐに沙綾の元へ行きライブの話をし、今度もう一回やろうと約束したのだが、沙綾は冬、夏希ちゃん達に何も言わずにバンドをやめたのだった…

 

流星「…そんな事が…でも、なんでそれを俺に?」

夏希「…あなたなら…沙綾をもう1度…笑顔でバンドやらさせてもらえると思って…」

流星「うーん…正直…俺もその話は…手が出せない…」

夏希「え?」

流星「…これは…沙綾の気持ちの問題だよ…」

 

僕は先ほどの沙綾の素ぶりを見て何となくそう思ったのと、自分も似たような記憶があったからだ…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日…

文化祭が明後日に迫っている中、僕がまた募集をかけたところ、男子のみならずクラス全員が手伝ってくれる事になったのだ。

それを見ていた他クラスも、手伝ってくれる事になったし、さらには先生達も何と花咲川女子学園の先生にわざわざ連絡を取ってくれる始末になり、僕から始まった文化祭準備がたった数日で学校規模に膨らんでしまった。

 

流星「…すげー…江戸川橋高校…」

 

と、僕は思わず唸ってしまった。

おかげで文化祭の準備はかなり進んでいった。

そんな中、僕はずっと沙綾を見ていた。

何か考え事をしていて、掃除もあまりはかどっていない。

 

江戸川橋高校生徒「…流星!これあっちに持ってくよ!」

流星「あ、あぁ!伝えておく!」

 

おかげで僕も昨日の話が頭から離れず、上の空だった。

その日の放課後の事だった…

僕は香澄達とアイスを食べるべく、コンビニに寄っていた。

みんなは普通のアイスを頼んでいる中…

 

香澄「…流星君のアイス…何?」

有咲「…なんか…」

 

と、みんながドン引きするほどのアイスを僕は食べていた。

僕が食べていたのは『おでんアイス』なるもので、アイスの形大根、こんにゃく、ちくわの三兄弟に串が刺さったおでんそのものだった。

味もおでんの味に再現しており、僕は意外とこれにハマっている。

 

流星「これ、意外と美味いよ。食べる?」

たえ「食べようかな」

有咲「いや、食わねえよ!?」

香澄「興味あるけど…」

りみ「私はいいかな…」

 

と、みんなでワイワイ騒いでいると、香澄が…

 

香澄「ねぇ!ちょっと寄り道していい?」

 

と言ってきた。

香澄が向かった先は、江戸川楽器店。

ここら界隈ではそこそこ有名な楽器店で、香澄のランダムスターのケースを直してもらったのもここだったりする。

香澄が急に走ってその楽器店に行ったので、僕らも追いかける事になった。

僕は野球ではキャッチャーをやっているが、足には自信があり、いつの間にか競争になっていた香澄とおたえを普通に抜かしていった。

着いた順番は僕、おたえ、香澄、りみ、有咲といった感じだ。

僕らは江戸川楽器店に着き、しばらく話していると…

 

夏希「…市ヶ谷さん?」

 

夏希ちゃんがいた。

夏希ちゃんを見た有咲はすぐに香澄の後ろに隠れ、しばらくして顔を出すや否や…

 

有咲「…ごきげんよう」

流星「って、キャラ変わってんじゃねぇか!」

 

突然のキャラ変に僕は思わず突っ込んでしまった。

そして、夏希ちゃんの後ろに、1人誰かがいた。

ピンク色の髪の女子生徒だった。

僕はその人を見て一瞬でわかった。

 

流星「…あれ?彼女って『グリグリ』のメンバーの…」

りみ「二十騎(にじっき)ひなこ先輩だよ〜」

 

そのひなこ先輩は、僕らに近づくや否や…

 

ひなこ「集え少女よ!大志を抱け!フォー!」

流星「って、あんたもキャラ変かーい!」

 

また僕は思わず突っ込んでしまった。

 

りみ「あのね…ひなちゃんは、いつもあんな性格なんだ…」

流星「え!?ついていけねぇ…」

 

その後、ひなこ先輩に乗っかった香澄とひなこ先輩で店内がかなりゴチャゴチャしたのは言うまでもなかった…

 

そしてひなこ先輩は、ポピパメンバーにあだ名を付けていった。

ちなみに、バンド名の『poppin′party』をそのまま言うのが正直めんどくさいので、僕らは今後『ポピパ』と略称で言う事になった。

ひなこ先輩が付けたあだ名はこうだ。

香澄は『きらきら星の香澄ちゃん』

たえは『花園ミステリアスたえちゃん』

有咲は『蔵弁慶の有咲ちゃん』

りみはお姉さんのゆりさんと関わっているため『マイシスターりみちゃん』

僕の場合は特にないそうだ。逆に良かったけれど…

その後もひなこ先輩が荒らしていく中…

 

香澄「先輩、ドラムやってください!」

 

と、香澄が謎のスカウトをしたのだ。

 

流星「香澄!?先輩今『グリグリ』メンバーだよ!?」

ひなこ「いいよ!」

流星・有咲「即決!?」

 

ひなこ先輩はまさかのオーケーサインを出したのだが…

 

ひなこ「うーん…でも、近くにもっと最適な人いるよー」

 

と、言ったのだ。

その一言で僕はたった1人、ある人物を思い浮かんだ…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日の夜…

僕は尚之と話をしていた…沙綾についての事で…

 

尚之「…難しいな…それ…」

流星「…時間が解決する…というのも正直癪なんだけどね…」

尚之「…すまんな…今回は俺らではどうしようも出来ない…」

流星「…今日、ポピパのメンバー全員沙綾についての話を聞いたんだ。多分、明日には…沙綾のところに行く…」

尚之「どうすんの?お前は」

流星「付き合うさ…あいつらが納得するまでな…」

 

僕はベランダで星空を見上げながら考えたのだった…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日…

江戸川橋高校総動員で花咲川女子学園の文化祭の手伝いをしたおかげか、見事に入り口の門が完成。

他のクラスもほぼ終わりだった。

もちろん、香澄達のクラスも終わりみんなでお疲れのハイタッチをした。

みんながみんなでワイワイ騒いでいる中、1人だけ先に帰る人がいた。

…沙綾だった。

その様子を見ていた僕と香澄は、互いに顔を見合わせ、うんとうなづいた。

その日の放課後…

僕と香澄は家の前にいた純と紗南と遊んでいた。

すると…

 

沙綾「…どうしたの?」

 

沙綾が出てきた。

僕らは中に入れさせてもらい、中で話をする事にした。

まぁ、1番ギリギリな質問を商店街の道路で、しかも弟達がいる前では話せないからな…

 

沙綾「…そっか…なつと話したんだ…」

香澄「…ごめんね…」

 

僕もそこにいたのだが、空気はまず重たかった。

とてもじゃないほどギクシャクしていた。

その中で、香澄がどうにか振り絞って話を続けた。

 

香澄「…バンド…やってたんだね…」

沙綾「…聞かれなかったから…」

流星「…聞かれなかったから…か…」

香澄「…なっちゃん…心配してくれてたよ…何も言わないで行っちゃって…今のままじゃ…嫌だなって…」

 

香澄がそう言うのを、沙綾は静かに聞いていた。

 

香澄「…私、沙綾がドラム叩いているところが見たい!」

沙綾「…っ…」

香澄「やろ?…沙綾!」

沙綾「…他の人探してよ…」

香澄「沙綾がいい!新しい曲だって沙綾が…」

沙綾「無理だよ…練習してないし…みんなに迷惑かける…」

香澄「いいよ!」

沙綾「やだよ…もう、バンドやるつもりないから」

香澄「…何で…」

 

香澄は懸命の説得をし続けていたが、沙綾はそれに応じなかった。

僕はそこから割って入った。

 

流星「…これ以上…迷惑かけたくないからだろ?」

沙綾「…」

流星「俺もな…正直なところ…沙綾に似た境遇を味わっていてね…」

沙綾「え?」

香澄「流星君?」

流星「…俺の父ちゃん、結構体を使う仕事をしててね…一時期体を壊して家にいた事があってね…その時なんか、部活や趣味なんてもってのほかだった…友達と遊ぶなんて出来なかった…なんかその時の境遇に似てるんだよ…」

沙綾「…それじゃあ…流星君も今は…」

流星「いや…今はそう言うことは考えてないんだ…父ちゃんは今でも仕事をしているんだけど…俺は父ちゃんにある事を言われてね…」

沙綾「どういうこと言われたの?」

流星「今は言えないな…沙綾の母ちゃんも同じ事を考えているはずだし…」

 

僕はそう言って、沙綾に笑顔を見せた。

しかし…

 

沙綾「…それでも…私は…無理だよ…」

 

沙綾は静かにそう言った。

 

香澄「どうして…バンド…嫌いになったの…」

 

香澄のその発言に、ついに沙綾は堪忍袋の緒が切れた。

 

沙綾「そんなわけないじゃない!」

 

沙綾はこう言った。

あの時のライブをメチャクチャにした挙句、みんなは自分を心配してそれで楽しいのか。

純や紗南といった小さい弟、妹がいて、体の弱い母親が苦労しているのに自分だけ楽しんでいいのか。

やらなければならない事がたくさんあるのに足手まといになって、それで楽しいのか…と…

沙綾は我を忘れて泣きながら怒っていた。

僕はそれを見て、はぁとため息を1つ吐いた。

 

流星「…沙綾…お前の気持ちはわかった…全てはみんなのためなんだろ?」

沙綾「そうよ!何が悪いの!?」

流星「別に悪いってわけじゃねえ…でも…何か履き違えてないか?」

沙綾「どういうことよ!」

流星「確かに、夏希ちゃん達はバンドが楽しかった。でも…ただ単にバンドを楽しむんだったら、他の奴らだっている。その気になりゃ、メンバーを切り捨ててまで、自分が目指すところまでやる奴らだっている…何で夏希ちゃん達はお前を最後まで見捨てなかった?」

沙綾「…」

流星「香澄にはもうバレている事だけど…俺は野球をやっていて、キャッチャーをやっている。野球はチームでやるスポーツで、その時に絆が必要になる。絆がなきゃ、野球なんて出来るわけがない。誰かがミスすれば、みんなが助ける。誰かが落ち込んでいる時は、みんなで励ます…俺だって、ミスしてみんなと顔を合わせる事すら出来なかった時だってある…それでもみんなは気にすることなどない。誰にだって億劫になる事がたくさんある。それを支え合えるのが、仲間や友達…さらに仲間や友達を支え合えるのが、絆だってな…」

沙綾「…絆…」

流星「沙綾が気後れする気持ちはわかる。だけど、それだからこその仲間だっている事を分かってほしい…もう、ここにいんだから…」

 

僕は香澄を見て、もう一回、沙綾を見た。

 

流星「…俺は沙綾の気持ちなんて動かす事は出来ない…それは沙綾が決める事…俺の話は1つの気持ちの持ちようの話だ…こっから先は、俺はもちろん、香澄も決めない。いいな、香澄」

香澄「…流星君…」

流星「…沙綾がどう答えるなんて結構。それが本当に正しいかどうかは…沙綾が決める事だ。正直、そんな事で泣き叫ぶくらいだったら、ダチに相談して、みんなで気持ちを共有して、どうするかを決めた方がいいけどな…」

 

僕は静かに沙綾に言った。

その後、有咲、たえ、りみにその話が筒抜けで聞こえていたらしく、3人に冷やかされた。

香澄は最後、ステージで待っていると伝え、沙綾の家から出た…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

その日の夜…

かつての仲間の一人とまた連絡が取れて、そいつと話をしていた。

 

???「…友達を思って離れたのか…お前とは真逆だな」

流星「うっせえ」

???「ははは…変わらんな」

流星「お前もだろ。はぁ…結局…どうしたらいいものか…」

???「まぁ、考え方の1つだろうよ…俺は…家族がキーになるだろうと考えるね」

流星「なるほどな…それより、夏休みどう?」

???「あいつから聞いてるぜ。もちろん、やるわ」

流星「サンキュー」

 

僕は電話越しにその友達と笑いあったのだった。




いかがでしたでしょうか?
今回のこの作品…実は、今のところ出している小説の中で一番文字数が多くなった…と思う作品です。
意外と長い…と思いながら書きましたw
とりあえず、今日はここまで!
では次回お会いしましょう!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。