バンドリ!〜輝く星と白い球〜   作:VOSE

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前書きは1話目にて書いております。


特別編〜激突!江戸川橋高校VS静真高校!後編〜

…尚之がチーム初のヒットにして、初の得点を挙げた。

拓海さんはほんの少しだけ、悔しそうな顔を見せた。

 

尚之「っしゃぁ!」

 

1塁を回っている尚之が雄叫びを上げる声が、3塁側のベンチにいる俺らに聞こえた。

尚之はホームに戻った後、次の須藤先輩とハイタッチしてベンチに戻った。

 

流星「ナイスバッチ!尚之!」

尚之「なぁに、まだまだこれからだよ」

 

ムードメーカー3人衆の1人、尚之のホームランによってチームは勢いに乗っていった。

5番、須藤先輩は絶妙なバッティングコントロールでボール球をヒットにすると、6番、亮一のセーフティバントでノーアウト1、2塁。

7番、東先輩の二遊間に抜けるヒットで2点目をもぎ取った。

拓海さんはもうそろそろスタミナが切れてくる頃だろうから、この回の2点は非常に大きな意味を成していた。

8番、島川先輩は見事な流し打ちを見せたが、レフトの日向くんがファインプレーを見せて1アウト1、2塁。

9番の一彦は空振り三振に切って取られた。

そして、1番の俺に打順が回って来た…

 

流星「…ふうっ…」

 

俺がネクストバッターサークルから打席へ向かおうとする時、それを見た拓人さんが吹奏楽部のみんなに合図を送った。

その後に流れたのは…世界大会でも流してくれた、千葉ロッテマリーンズのチャンステーマ1という、チャンスの時に流れる応援歌である。

 

夜空(うおっ!?球場が一瞬揺れた!?)

 

夜空さんがそう錯覚するほど、江戸川橋高校の吹奏楽の応援歌に気合が入っていた。

そして俺は…左のバッターボックスに入った。

 

守(なっ!?)

夜空(左に入った!?右打ちじゃねぇのかよ!?)

 

と、夜空さん達静真高校のみなさんはもちろん…

 

雄介「ちょ…あいつなんで左に入ってんの!?」

尚之「さ、さぁ…」

 

尚之たちも驚きを隠せなかった。

 

流星(本当は両打ちなんだけど…ここしばらく右しか打ってないんだよね…)

 

俺は思わず笑顔になりながら、拓海さんを見た。

拓海さんはそんな俺を見て少し笑った後、すぐに真剣な表情を見せた。

1球目…高めのストレート。これがギリギリ入ってストライク。

2球目…アウトコースのカットボール。ストライクゾーンからかなり離れてボール。

3球目…インコースのストレート。入るのがわかっていたが、ここはあえて見逃した。

これで1ボール2ストライク。

拓海さんはそこまで表情を変えていないが、多分スタミナがないのだろう。1回のストレートと今のストレートに球威の差が出ていた。

それだと多分、あのボールも…

拓海さんはふうっと息を吐いて、4球目を投げた…

インローの縦スライダー…俺はそれを…すくい上げるように叩いた。

ボールは大きな放物線を描き…左中間を破った。

 

流星(あー…ヒットか…)

 

と、内心がっかりしてしまったが、俺はそのまま全力ダッシュ。

1塁と2塁にいた亮一と島川先輩がホームに戻り、俺は3塁まで進んだ。

相手が前進守備をしていたのが功を奏した。

 

流星「ふうっ…」

 

俺はふとベンチを見ると、大盛り上がりの尚之や香澄達が見えた。

11対4…点差はあるが、やはり点が入るのは嬉しい。

 

流星「さぁて…俺はちょっくら仕掛けますか…」

 

俺は小さくそう呟いた。

沼津海星高校はここで拓海さんを降板させた。代わりに入ってきたのは左キラーの高田健人さんだ。

多分、次の河内先輩対策なのだろう…

ただ、河内先輩は左キラーなんてものは正直通用しないと思う。だって、この人バントで内野安打にさせるほどなんですから…

俺はその河内先輩にとあるサインを送った。河内先輩はそれを見てすぐにうんと頷いた。やはり、河内先輩も面白いと思ってくれたんだろう…

健人さんが投球練習を終え、河内先輩は打席に入った。

健人さんの第1球目…インコースのスライダー。

その球を受けた守さんがボールを返したまさにその時…俺は3塁を蹴った。

 

守「っ!?バック!バック!」

 

健人さんは慌ててボールをキャッチャーに送り、守さんはそれを取ろうとしたが…焦りでボールを取り損ねたのだ。

その間に俺がホームインし、1点をもぎ取ったのだ。

球場が一気にしんと静まった後、すぐにわっと江戸川橋高校の応援が湧いたのだ。

 

流星「すみません、河内先輩…」

柳哉「いいって。今回は1点が欲しかったし、奇襲としては上出来だろ?」

流星「はい!」

 

俺は河内先輩とそう話した後ベンチに戻り、尚之達から色々と怒られたり質問されたりとてんやわんやになった。

河内先輩はそれを気にもせず、健人さんの球速差が大きいチェンジアップをセーフティバントで処理したのだ。

 

守「待て!出る!」

 

と言った守さんの言葉を無視するかのように、ボールは本当にギリギリのラインで止まった。

 

聡「嘘だろ…」

健人「今のバント絶妙すぎ…」

 

左キラーの健人さんでも、バントが絶妙で決められたらどうしようもなかった。

続く3番、蓮二は初球のカーブをレフト前に引っ張って2アウト1、3塁にした。

そして、打者1巡して4番、尚之…

カキーン!

…まさかの二打席連続アーチ、1イニング2本塁打というバカなことをやってのけたのだ。

これで11対8。まさかのビッグイニングに大盛り上がり。

沼津海星はたまらず健人さんを降板。リリーフ失敗率が少ない赤田将吾さんを出した。

5番の須藤先輩はやはりお得意のすくい上げでセンターフライにし、この回で攻撃が終わった。

 

康介「よし!これで3点差!このまま引き締めていくぞ!」

江戸川橋ナイン「はい!」

 

ただ、俺はここで先発の一彦に対して悲痛な通告を出した。

 

流星「カズ」

一彦「ん?なんだ?」

流星「…お前は、今日はこれで終わりだ」

一彦「っ!…」

流星「…いくら俺でも、今日の打たれすぎは見過ごせない。この後託すことも出来ない」

一彦「…いいんだ。逆にスッキリした。このまま引っ張られても、正直投げ込める自信がない」

流星「そうか…」

一彦「すまねぇな、流星…今日は不甲斐ねぇや」

流星「しゃあねえってことだ。この回からは雄介に投げさせる。お前は今日の反省点を振り返っておけ」

一彦「あぁ」

 

そう言って、俺はキャッチャーのポジションへと向かった。

一彦はやはり悔しい顔で一杯だった。

先に言っておくと、雄介はこの後の8回までを1人のランナーも許さずに乗り切った。

特に圧巻だったのは、7回と8回に起こした6者連続三振。

7番の日向くんを三球三振に切って落としてから3番の純さんをフォークで締めたのだ。

これには俺も思わずうぉ…と呟いてしまった。

話を戻して6回表…

6番の亮一は将吾さんのフォークをすくい上げて左中間へのヒットで出塁。

7番の東先輩がバントを決めて1アウト2塁。

8番、島川先輩は…

 

島川(俺のエラーで大量失点につながった…ここでもう一回挽回する!)

 

そんな意気込みが功を奏し、引っ張った打球が1塁線ギリギリに入るヒットで1点を返した。

9番の雄介は再びバントを仕掛けるも…スリーバント失敗で2アウト2塁。

俺に打順が回ったのだが、俺はシンカーにタイミングが合わず、三振に倒れた。

将吾さんはシンカーを軸に置いていて、そのシンカーが結構厄介なのだ。

先程の島川先輩もなんとかシンカーを打ってヒットにしたのだ。

7回表…

2番、河内先輩はシンカーをしっかりと見極めてフォアボールで出塁。

3番、蓮二は俺と同様にシンカーに振り回され、最後はストレートで締められて三振。

4番の尚之はやはり絶好調。この打席でボールを右中間に流し、その間に河内先輩が戻って1点を追加。

5番の須藤先輩は再びお得意のすくい上げを見せたが、これがまさかの二遊間とセンターのお見合いでポトリと落ち、その間に尚之が戻って1点を追加。

6番の亮一はフォークを引っ張ったが、夜空さんのファインプレーでダブルプレーにされて攻撃が終わった。

この時に夜空さんの活躍で千歌さん達がかなり興奮して手を振り、観客席から落ちかけたのは別の話…

8回表…

7番、東先輩が初球のストレートをまさかのセンターへのホームランにし、1点追加。

これが同点打となった。

その後は島川先輩、雄介と変わった代打の良一、俺と打順が回ったが、3人ともこの回はいいところがなく、その後の無得点のまま9回へと進むのだった…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

9回表…

この回マウンドに上がってきたのは…抑えとして出場が多い小松原聡くん。

この回の先頭は2番、河内先輩…

 

流星「河内先輩!ファイトー!」

尚之「あと一点、頼みます!」

雄介「ファイトー!」

 

俺らはベンチから声を出すことしか出来なかった。尚之はこの後打席が回ってくるから違うけど…

1球目…ど真中のシュート。まずは見逃してストライク。

2球目…インコースに再びシュート。これも入ってストライク。

3球目…低めのスプリット。ボール球だが、ギリギリなため河内先輩はカットしてファウル。

4球目…アウトコースのシュート。これはすっぽ抜けてボール。

5球目…またも低めのスプリット。河内先輩はこれを見逃したが、ストライクを取られ三振にされた。

 

流星「河内先輩、ドンマイです」

柳哉「別にドンマイというほどじゃねえよ。まぁ、今回はやらかしたってことかな?」

 

そう言った河内先輩の顔はどこか悔しさをにじませていた。

続く3番の蓮二は3球目のストレートを三遊間に運んで1塁にもっていったものの、4番の尚之がスプリットをひっかけてダブルプレーにされた。

 

尚之「あはは…わりぃ、今のはちょっとやらかしちまった」

雄介「お前にしては珍しいな…」

尚之「いやぁ、張っていた球が全然来なくてさ…」

流星「フルカウントにされてたってこともあるからな…今のは責められねぇよ」

 

俺はそう言って、キャッチャーの防具をつけていると…

 

香澄「流星君っ!」

 

香澄がおもむろに話しかけてきた。

 

流星「ん?」

香澄「…最後、頑張って」

 

香澄は笑顔でそう言ったのだ。

 

流星「らしくねぇこと言うなよ。お前はそんなキャラだったか?」

香澄「だって…」

流星「別に練習試合なんだから…心配してくれるのはありがたいけど、そういうのはここじゃねぇの。お前は笑顔でキラキラしてくれ。俺がドキドキさせてやるからよ」

香澄「っ!…うん!」

康介「流星行くぞ!」

流星「はい!」

 

俺は辻上先輩に呼ばれてグラウンドに出た。

 

有咲「…ったく、ほんと香澄、お前らしくねぇな」

香澄「え?」

沙綾「ほんとは好きなんでしょ?」

香澄「え…」

りみ「香澄ちゃん、顔でバレバレだよ?」

たえ「トマトみたい」

香澄「ちょ…りみり~ん!おたえ~!意地悪を言わないで!」

沙綾「あははは…でも、私たちも流星君好きだよ?」

りみ「香澄ちゃんや沙綾ちゃんだけじゃなく、私やおたえちゃんや有咲ちゃんも」

有咲「まぁ、こんなこと言ってもどうしようもないけど…変な気は起こすなよ?」

香澄「わかってるって~」

 

ポピパのそんな会話を、降板して休憩していた雄介がそば耳を立てて聞いていたのだった…

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

…9回裏

江戸川橋高校は雄介に変えて、抑えに康介先輩を出した。

康介先輩はストレートとスローカーブで静真高校を3人でピシャリと締め、試合終了。

結果は11対11という引き分けに終わった。

俺らは応援してくれた観客や吹奏楽部の人に礼をした。

一方の夜空さんたちも観客に礼をしていた。

観客の皆さんは、それを見て拍手をしてくれた。

 

流星「夜空さん、今日はありがとうございました」

夜空「こちらこそ」

流星「今度会うときは、甲子園でお願いしますよ」

夜空「当たり前だ。その時は手加減しないぞ」

流星「こちらも、負けませんから」

 

僕と夜空さんで、甲子園での再会を約束した。

こうして、江戸川橋高校と静真高校の練習試合は終わったのだった…

 




いかがでしたでしょうか?
今回の小説を作る際に、実は自分もこの小説の設定を使いたいというところがありまして、その時たまたまマッシブさんから自分の小説を使ったコラボ小説を作って欲しいという連絡を受けて実現したという形で、このコラボが実現しました。
改めて、マッシブさんにはお礼を申し上げます。
ありがとうございます。
今後とも、ぜひ僕の小説、そして、マッシブさんの小説をよろしくお願いします。
マッシブさんのホームとコラボさせていただいた小説は以下のURLよりご覧になれますので、ぜひよろしくお願いいたします。
では次回、お会いしましょう!
マッシブさんのURL↓
https://syosetu.org/?mode=user&uid=235715
コラボさせてもらった『ラブライブ!サンシャイン‼︎〜もう一度輝くために〜』のURL↓
https://syosetu.org/novel/156063/

追記:マッシブさんの意向により、高校名を『沼津海星高校』から『静真高校』に変更しました

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