アイ・ライク・トブ【完結】   作:takaMe234

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※オリジナル要素やねつ造要素ありまくりです。
 原作などで見なかったり聞いた覚えがないものは恐らく該当します。
 原作ネタバレ、及びあちこち改変しておりますので閲覧にはご注意ください。
 
 アイ・ライク・トブを既に閲覧済みであることを前提として書いております。
 また、アイダホさんの設定も変動しておりますのでご留意ください。



蛇足ならぬ芋の尻尾 前編

 

 

 

 

 

 

全身が死ぬほど痛い。

 

周りは爆発の硝煙と悲鳴、叫び声と銃声に包まれている。

つい数分前まで自分を載せていた高級乗用車から放り出されていた男は五感が痺れていく感覚の中にいた。

 

(畜生……爆破で、サクッと死ねていればよかったのに)

 

テロリスト達の攻撃の規模が、想定よりも少なかったのか。

全く、連中の暗殺リストの方では一応上位にある筈だろうにと男は心中で舌打ちをする。

護衛が使っている銃器の音があっさりと途絶えた。

途中で逃げ出したのか、護衛車がちょうど爆発できれいさっぱり吹っ飛んでしまったのかわからない。

どちらにしろ、この有様では確認のしようがないな、と笑おうとして出たのは吐血だった。

 

「護衛を排除しろ!」

「目標を探せ! 絶対に逃がすな!!」

 

ふと、目線を上げると高速道路のメンテナンス用のドアが開いている。

其処から出てきた男が手にしたアサルトライフルの銃口をこちらへ向けていた。

周囲に生き残りの護衛も護衛ドローンも居ない。

男の周りにいて盛んに銃を撃っているテロリストたちが排除した様だ。

 

「いたぞ、あそこだ!!」

(何とか予定通りで安心した。これであの糞兄貴に意趣返し出来る)

 

周りのテロリスト達がこちらに銃口を向ける。

男が彼らを制止し、前に出てきて改めて自分に銃口を向けた。

男の顔はガスマスクに覆われていたが、黒を基調とした服装と背丈で『彼』だなと察した。

ああ、オフ会で出会った頃とあんまり服装が変わってないなと場違いな感想が脳裏をよぎる。

 

(俺の体を調べれば、あんたの望んだものが手に入る)

 

望んだもの。

かつてのネットの上での友達が手に入れた社会の秘密。実家の会社の機密。

それを知ってしまったがゆえに彼は死んだ。

粛清するように言われ、唯々諾々と従った自分に殺された。

一族の長である兄の言うなりに動く自分が嫌になって、色々あってこうなった。

 

(だから、後の事は。人任せで悪いけどあんたに頼むよ)

 

ぼやけた視線の先で、一瞬銃口が躊躇う様に揺れたのが見えた気がする。

今更躊躇わないでくれと思った。保身の為に友人を殺した様な男だから。

 

(あんたの望む、このクソそのものな、世界に対する悪になってくれ)

 

鳴り響く銃声と大きく揺らぐ視界。

モニターの電源がブツリと切れる様に、意識は真っ黒に染まった。

 

(ウルベルトさん)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バハルス帝国

 

首都アーウィンタール 皇城の離宮

 

 

 

 

 

「スメイロト様」

 

意識が徐々に明確になる。

 

「スメイロト様。起きてくださいませ」

 

サワサワとした流れる様な衣擦れの音。

ぼんやりと、女性の顔を見上げる。

流れる様な金髪と、どこかぼんやりとした銀色の瞳の女。

悪夢から気が付けば自分の寝室にいる事を男は自覚する。

この部屋にいる時に同室を許されているのはこの女だけであることも。

 

「あれ、転寝し過ぎたか……?」

「はい、もう夕餉の前でございます。それに、魘されておられたので」

「あ、ああ……またか。悪いな」

 

自分を起こした少女……寵姫をねぎらいながら身を起こす。

 

(半年ぶりか……『前の』自分が死んだときの夢とか。気分わるぃ)

 

心中の不愉快さに思わず舌打ちを打ってしまう。

 

「スメイロト様?」

 

不安げにこちらを見る寵姫。

彼女には全く非が無いので、とっさに言い訳をしておく。

 

「あ、いや、何でもないよ。たまに見る悪い夢だ。夢見が悪いとどうも虫の居所がね」

「さようでございますか。では、御着替えを……本日は皇帝陛下とのご夕食の席がございます」

「そうか。兄の国内の視察が終わったのは昨日だったなぁ」

「はい」

 

兄の傍付侍女に匹敵する手際の良さで、昼寝用のガウンから普段着ている宮廷用の長衣に着替えさせられた。

普通、そういった仕事は侍女たちがする事である。

であるが、スメイロト自身の考えで自室の事は掃除以外は彼女に任せている。

 

「終わりました」

「ん、ご苦労」

 

いつもながら、彼女は全く手際がいい。

これで本職は戦闘もこなせる術師なのだから才媛としか言いようがない。

本国からそういう思惑で仕込まれたのだから当然かもしれないが。

生地の質は最上でも、身分と権威を示す勲章やアクセサリーが何もついてない宮廷衣を翻しながらドアに向かう。

 

「じゃ、行ってくるよ」

「はい、行ってらっしゃいませ」

 

するりと先回りした彼女が音を立てずに恭しくドアを開ける。

感謝の代わりに、手触りのいい髪を撫でて部屋を後にした。

 

頭を下げて見送る彼女の表情を、スメイロトが知ることはなかった。

 

 

 

 

 

かつて、終末を迎えつつある地球の世界で生きていた『彼』は確かに死んだ。

自分で企んだ自作自演の襲撃事件を、反企業テロリストのかつてのゲームプレイメイトを巻き込んで。

今まで社会の頂点近くで好き放題生きたのだ。

最後に善いことはしたかもしれないけど結局地獄行きだなと思っていた『彼』であるが。

 

気が付いたら、物心付いた幼少期の皇子に転生していた。

 

しかも異世界である。

ありがちなトラック事故の過程は踏まないのか。

女神やら全知全能の神やらの面談もなかった。

過程も何も覚えておらず、こうもあっさりと転生してしまっていいのか。

様々な疑問を『彼』は抱いたが、現実は転生してしまったのだからどうしようもない。

今の生まれと立場を受け入れて生きていくしかなかった。

 

バハルス帝国、それを支配する皇族の一族。

皇帝の皇妃が特に寵愛する皇子として。

 

『お前がこの帝国を支配する皇帝となるのです』

 

事あるごとに皇妃はそう自分……スメイロトに告げた。

無垢な何も知らない幼子なら、母親からそう言われ続ければそう思い込んでも仕方がない。

だが、彼は彼女が望む無知で純粋な幼少期の皇子ではなかった。

 

(うわぁ、前世での母親とかいう奴と同じ目で俺を見るなよ、うわぁ……)

 

まだ一桁のわが子に対して事あるごとに父親であり会長である男への絶対服従を強いてきた女。

好色家だった父親は多数の女性と情を通じ、何人かを孕ませその女たちを妾にしていた。

グループの傘下企業の社長の娘だった遺伝子上の母親も、そのうちの一人。

 

『あなたがあの御方のお気に入りになれば、私もお父様も安泰なの。だから、よく言うことを聞く良い子で居なさい』

 

彼女にとって、息子は保身と立身の為の道具でしかなかった。

この世で三番目に嫌いだった女と同じことを言われ続ければ。

それはもう皇妃の事と皇妃と同じことを口にする者達が嫌いで仕方なくなるのも無理はなく。

スメイロトは早々に母親と皇后派という外戚達とその取り巻き貴族を見限っていた。

 

(そも、俺や他の兄弟よりも格段に優秀な長兄が居るんだからあいつに任せりゃいいんだよホント)

 

それが帝国という国家にとっては最善なのだろう。

でも、その最善では己の野心や欲望を満たせない。

だから、支配者としては格段に能力が下がるけど言うなりには出来る神輿を担ぎ、自分達の思いのままにできる国が欲しい。

スメイロトは憤慨した。自分の意志なんぞ一切顧みず既定事項の様にことを進める連中に憤怒した。

 

(知るかボケ! お前らの野望なんざ知らないし、それに付き合わされて堪るか!!)

 

そして皇帝が毒殺され崩御した直後に起きた皇后派決起の日。

彼女らにとってご都合の宜しい神輿たるスメイロトはどうしたか?

とてもシンプルな結論だった。

 

「どうか、兄上」

 

皇后の離宮は、無数の植物の蔓に覆われていた。

離宮の各地に配置された庭園や花壇、それらから発生した植物の渦。

集結していた一派、皇后と取り巻きと貴族たちは全員蔓に巻き付かれ拘束されていた。

彼ら彼女らは口々に何か喚こうとしてはいるけど、猿轡をツタで噛まされ呻くのが精いっぱい。

 

「皇籍を捨てます。母も、後ろ盾も、財産も、家臣も、兵も捨てます」

 

もはや何もできない哀れな決起軍を尻目に、少年は深々と土下座をしていた。

 

「誠心誠意お仕えいたします故、どうか私の命をお救いください」

 

近衛騎士団、そして帝国最高位の主席宮廷魔法使いを率いて鎮圧に出向いた兄に頭を必死に下げていた。

 

 

 

 

その後、色々あったが最終的にスメイロトは皇妃を始めとする反乱者達の様に刑死への道を歩まず。

鮮血帝ジルクニフが唯一粛清しなかった皇族として生き延びることになる。

彼が生き延びることを許されたのは、宣言通り命以外を捨てて兄に従っている事。

何よりも本人の申告によれば『異能』に目覚め、あらゆる植物を己の意のままに自在に操り、成長させることが出来るのに価値を見出されたから。

その力がフールーダでも打倒できるのか判断に困るレベルだった為、無理に殺しにかかって死に物狂いの反撃を受けるのを恐れた部分もあったが。

 

本人曰く、

 

(まーさか、最後に弄ったキャラメイクの結果がこれとかねぇ……)

 

ギルメンへのサプライズとして、植物系の異形種にキャラリメイクしたのがまさかこんな形で出て来るとは思わなかったとの事。

 

(みんなに、なんで名前は芋なのに全然関係ない闇精霊キャラなんだよとながーく弄られ続けたからなぁ。ジョークのつもりだったんだけど)

 

潤沢な課金アイテムと腐れゴーレムクラフターとぷにっと萌えの協力を得て、作り上げたキャラクターは文字通り二足歩行の『じゃがいも』だった。

可愛い帽子を被り、アインズウールゴウンのギルドサインの入った豪華な大綬を体に巻いた……大昔の製菓会社が作ったポテトのマスコットキャラまんまである。

餡ころもっちもちには好評だったが、ぶくぶく茶釜には「ちょっとキモいかな」と言われて落ち込んだのも懐かしい。

 

(でも、モモンガさんには結構受けてたのは良かった)

 

鮮血帝による粛清に加担したのち、自分の中に存在する異能について時間さえあれば調べた結果。

どうにもあの芋マスコットのアヴァターが所持していた、種族レベルだけを引き継いでいる様だとスメイロトは検討を付けた。

戦闘技術や魔法などは一切使えないが、種族レベルで使える植物由来の能力のみは使えるらしい。

 

どうして種族レベルだけが使えるのか。

人間なのに植物系モンスターの種族レベル技能だけ使えるのか。

そも、前世でプレイしてたに過ぎないゲームのキャラクターの力をなぜ自分が使えるのか。

理由についてはさっぱりわからなかった。

が、使えるものがあればなんでも使おうというのがスメイロトの決断だった。

ジルクニフは無能と怠け者には容赦ない性格である。

勤勉に働く為に己の能力を存分に運用すべきだ。

複雑な経緯があるにせよ、本来ならさっさと殺しておいた方が無難で後腐れの無い自分を生かしておいてもらってる感謝もある。

 

(あの超ド級鬼畜変態糞兄貴殿よりは兆倍マシな統治者だしな……助命してくれた恩義の分も含めて個人的に応援もしたいって気持ちもある)

 

だから、スメイロトは頑張った。

とてもとても頑張った。

 

種族レベル総Lv60……粛清時は精々Lv40行くかどうかだったのが、設定した種族レベルのカンスト値に達するまで頑張った。

正直、Lv60程度ではユグドラシルにおいて「雑魚ではないけど大した事はない」程度でしかない。

だが、スメイロトが生まれ落ちたこの世界では圧倒的なアドバンテージである。

 

何せ帝国最高の魔法使いの強さがユグドラシル換算でLv40前後。

側近の四騎士の強さがLv20からLv25の間。

シンプルなレベルとしての境域は間違いなく圧倒的に自分が上位。

人類総体で確認された四人の逸脱者をはるかに超える超越者。

技術も技能もないにしても、宮殿の柱サイズにまで膨張させた蔦や触手を振り回せば大概の敵はそれで事足りる。

シンプルな例えで言えばどれほどの剣技を極めた剣士が巨人に挑んでも、足の振り下ろし一つで勝負が決まる。まさにそれだ。

ユグドラシルのLv10分の差異は単体での優劣を決定づける。

これより更に数倍ともなれば蟻と象の戦いだ。

 

だから、スメイロトは頑張った。

取り合えず自分は負けないだろうし安全だろうから頑張った。

 

皇后派残党の粛清を己の潔白と兄への忠誠を示す為もあるが手伝った。

トブの大森林の開墾とモンスターの掃討を年単位で頑張り広大な農園を開拓した。

更に言えば、将来的に大森林を打通する秘密間道の開拓も視野に入れている。

開墾の途中で「俺の領地を荒らすな!」と襲撃してきたトロールの群れを返り討ちにした。

グと名乗るトロールを討ち取ってトロールが所持してた大剣はジルクニフに献上した。

倒し方はシンプルで体の穴という穴に触手から種子を送り込み内部から急激に成長させて爆散させた。

特に大口開けて叫ぶから一番太い触手を押し込んで山ほど種子を流し込んであげた。

 

「ぷくぷくぽんってこんな感じか……って、コノヤロウ無駄にしぶといな?」

 

あっさり爆散した手勢達よりもグというトロールはしぶとくなかなか死ななかった。

何とか再生しようとする部位にすら入り込んで更に種子を送り込んで爆散させてちょっとグロかった。

流石にやり過ぎたと、トロールの死体を焼却処分する駐在兵達を見ながらスメイロトは反省した。

 

「ま、これで葡萄畑と芋畑を増やせるってもんだ。成仏しろよ?」

 

そんな風に、とてもスメイロトは頑張った。

頑張り過ぎて、目を付けられてしまった。

 

スメイロトがグの群れと戦う様子を、遠方の空中に浮かぶ天使が監視していた。

偶々トブの大森林のゴブリンの集落を掃討し帰還中の陽光聖典……法国の秘密部隊が目撃していたのだ。

 

 

 

 

 

本日の報告を上司の部下である副神官長に符丁を幾つも織り交ぜた『メッセージ』で伝え、寵姫は精神統一を解いた。

気配を探るが、ドアを二つ隔てた先にある部屋に今の自分の主である男はまだ帰ってこない。

恐らくは皇帝とサロンで食後の深酒と談笑を楽しんでいるのだろう。

普段なら翌日への備えもあって嗜む程度しか酒を飲まない皇帝が、この時間まで杯を重ねるとは弟への機嫌取りもあるのだろう。

変な所で慎重過ぎるところがある帝国の支配者の事を脳裏から放り出し、ドアを開いて隣の部屋……スメイロトの部屋の隣にあるワインセラーに入る。

 

男は酒のコレクターでありワイナリーの経営者でもあったので、この部屋の造りは非常に凝っていた。

赤の間と白の間に分かれており、それぞれに魔法省に特注したらしい室温を調整する魔法装置を設置している。

スメイロト曰く、ワインの種類ごとに保管時の適温というものがあるそうだ。

寵姫は酒に対しては特に興味がないので、知識として記憶に留め本国に一応報告はする程度のものでしかないが。

 

(寝酒は飲まれるのかしら?)

 

赤の間に入り、彼がよく寝る前に愛飲してる赤ワインのボトルを棚から引き出し手に取る。

何気なくじっと眺めていると、ボトルの表面に自分の顔が映っているのが見えた。

 

(あの方の、寵姫……か)

 

念入りに手入れをされた己の髪の毛。

化粧品で整えられた肌と、うっすらと塗られた口紅。

気品を保ちつつも、男に媚びることを意識したデザインの薄手のドレス。

装飾品や貴金属としての価値は高くとも、術師の補助としては何ら価値を持たないアクセサリー。

 

(少し前までなら、予想もしなかった事よね)

 

占星千里なら、予見できたかなと今も尚漆黒聖典として戦い続けているだろう同僚を思う。

人類守護の為に戦うことを己に課してきた少女は溜息をつくと、ボトルをそっと棚に戻した。

 

 

 

 

 

 

彼女はこの帝国の人間ではない。

帝国の南方、カッツェ平原の更に南に存在する人類の大国の人間だ。

それも漆黒聖典。数ある法国の秘密部隊でも最強とされる人類の切り札に所属していた。

 

彼女が帝国の離宮に派遣された目的は、スメイロトと法国の緊密なコネクションの形成。

その異能の更なる解析と今後どれほど成長するのか、人類の存続に貢献できるのかの確認。

スメイロトが異能の持ち主であれば血筋で異能を継承できるのかを実証する為に彼の子を身籠る事。

法国が数か月間かけて鮮血帝ジルクニフと交渉し、彼の承諾を得た上で彼女はスメイロトの寵姫になった。

 

なぜ、法国がここまで彼に対して執着し始めたのか?

彼女は知っている。原因となった事件の場に居合わせたからだ。

凄まじい巨体のイビルツリー、破滅の竜王が法国の秘宝によって調伏された時。

スメイロトの異能によりかの魔樹が確かに一時的に行動不能となったからだ。

 

なお、どうして覚醒するのがもっと先の筈だった魔樹がこの時期に目覚めたかというと。

真実は大規模な開墾事業をスメイロトが異能を調子に乗って使い推進し過ぎてしまい。

人間の生活圏が広がった事に影響を受けたイビルツリーが本来よりも早くに目覚めてしまったことだ。

遠方からでも見える禍々しい巨体を見て、監視塔のスメイロトは心中で叫んだ。

 

(なんでこんなトコにユグドラシルのメリー苦しみますツリーが居るんだよっ!?)

 

ひとしきり焦った後、恐るべき存在に混乱する開墾拠点の人々を宥めて回りながらスメイロトは気づいた。

 

(俺がどんどん大森林の東側を開墾していって、結果として奴を刺激して目覚めさせたのか……ばれたらやばい!!)

 

ジルクニフに真相がばれたら、スメイロトの人生が終わる。

だけど、あれは確かLv80台。Lv60台単独では太刀打ちできない。

やばい。詰んだ。どうしようもない。

外面は泰然としつつも、内心慌てふためいてたスメイロトの元に来客が訪れる。

 

「お初にお目にかかります、スメイロト様」

 

物腰がとても上品な、しかしスメイロトとしては胡散臭い笑顔を浮かべた金髪の男はこう名乗った。

 

「スレイン法国最高執行機関、レイモン・ザーグ・ローランサン神官長の名代として参りました」

 

正直、その時点で嫌な予感しかしなかった。

だが、詰んでいる状況を認識しているスメイロトは彼の言葉を遮れなかった。

 

「スレイン法国として、あの恐るべき魔樹を討伐する為のご助力をお願いしたく存じあげます」

 

結果として、彼は自分のやらかしを魔樹討伐の達成という成果で有耶無耶にできた。

できたのだが、同時にスレイン法国に目を付けられてしまった。

 

(マジかよ……)

 

美麗なドレスに身を包み、恭しく宮廷式の挨拶をしてくる寵姫と名乗る少女を見てスメイロトは内心呻いた。

どうやら異世界側でも、彼は平穏無事な生活を送れる星の下には生まれていないようだ。

 

 

 

 

 

 

もっとも、ここから少し先の未来に訪れる者達と比べればまだピンチの内にも入らない事をスメイロトは知らない。

 

 

 





Q:最初のリアル世界の後の展開はどうなったんですか?

A:彼が持っていたベルリバーさんの書類は無事にウルベルトさんの手に渡る
  結果として彼は反企業テロリストの指揮官クラスまで出世。
  ユグドラシルのサービス終了日に行われた大規模な秘密作戦に指揮官として参戦。
  友人をテロリストに殺され、怒りに燃えるかつてのライバルとお互い銃を手に対峙する事になる。
  尊敬してた人と結構好意的だった人を同時に不幸にするなんてアイダホさんマジ許せねぇ。
  罰として罪として転生楽勝なんてさせねぇので許してくださいなんでもしますから!
  後、事の真相とその結果ギルメン同士が殺し合う展開を彼の兄貴が知ったら愉悦のあまり絶頂してしまいます

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