誰かが何かを願ったら。 作:イリヤスフィール親衛隊
いただいた感想より
メドゥーサも記憶持ちなのに主人公に反応しないなんて……。
……ぜ、是非もないネ(意味不明。
全体的に雑な感じが否めない前話だったんですが、やはりというか、描写不足がありましたね。今回の話で前回の不足分を上手く補完して、さっさと次に進みたいと思います。
ああ……春休みが終わる。結局、これ終わらなかったなぁ……。
炎だけが照らす廃墟街を紅い双眸が力なく見下ろしていた。
それはあまりにも唐突に起こった。人間も、人類史も、一瞬の内に燃え去ったのだ。
薄々と、予感めいたものは感じていた。いや、自らの眼を持ってしても、予感程度にしか把握できなかったというべきか。
あやつにも一応、忠告はしていたのだ。妙なものが迫っていると。まあ、目の前の愉悦にばかり気を捕られていたやつはまともにとりあわなかったのだが。
然して、事態を重く捉えていなかったこちらも、それならそれでいいと忠告を一回きりでやめた。それがこの様である。
もっとも、気をつけていたところでなにかしらが変わっていたとは思えないのも事実なのだが。
「……たわけ、このような形では意味などないわ」
まったくもって意味がないのだ。自分が望んでいたものはこんなものではない。これでは裁定でもなんでもない。ただの焼却だ。
ふんっ、とひとつ鼻を鳴らす。実につまらない。ああ、ひどく、つまらない。こうなってしまっては、もうやる気もなにも起きやしない。
どうせ、この聖杯戦争の英霊ではない自分に、あの影どもは手出しはしてこないのだし、完全に蚊帳の外である。ここは酒でも飲みながら高見の見物とでも洒落込んでおこうか。
黄金の波紋の中から、これまた黄金の酒器と酒を取り出す。酒を酒器に注ぎ口をつけて傾けながら、自らの今後に思いを馳せる。
ああなってしまっては最早興味もないが、ひとまずは彼女の、セイバーの最後を。そして、贋作者どもの末路を。なれば、未来の人間たちの結末までを見届けて、それから……。いや、そうだな、もし、興が乗ったならば……或いは…………。
「
破滅に抗う人間たちの様を酒の肴にして、その紅い双眸は静かに、燃える廃墟街を映していた。
∇∇∇
「あなたたち!無事だったのね!」
「所長!?」
「所長……どうしてここに……?」
駆け寄って来るオルガマリーに対して、それぞれの反応を見せる立夏とマシュ。弱々しく横たわるマシュを見て顔色を青くし、早く回復させなさいと立夏に発破をかけ、自らもマシュのために魔術を行使する。
『なんだって!?マリーがそこにいるのかい!?』
「この間の抜けたらような声は……ロマニ!?ロマニなのね!?どうしてあなたがカルデアの指揮を!?」
『それは……現在、カルデアにぼくより階級が上の人間が存在していないからです…………』
「…………どういう、こと?」
ロマニの口から語られるカルデアの現状を聞いたオルガマリーは顔面蒼白となり膝から崩れ落ちる。
「レイシフトルームの爆発……47人のマスター候補も全員瀕死状態……レフも……いない…………」
しばし、茫然自失となるも頭を振ってなんとか持ち直す。なにをするべきだ。今するべきことはなんだ。なにができる。今できることはなんだ。可能な限り最善を、最良を……。
「47人のマスター候補全員を凍結保存……」
『え……?』
「聞こえなかったの!?マスター候補全員を今すぐ凍結保存しなさい!!」
『え、えぇ!?たしかにそれなら死なせないことは可能になるけど、本人の許諾なく凍結保存を行うのは……』
「犯罪だと言いたいんでしょう?言われなくてもわかってるわよそんなこと!」
そんなことよりも人命が優先だ。それに、死んでさえいなければあとでいくらでも言い訳のしようがある。
「所長命令よ、今すぐ実行なさい!」
オルガマリーのあまりの気迫に圧されたロマニは、了承の返事をすると一度カルデアからの通信を切った。
「死なないでよ、頼むから……ッ!47人分の命なんて、わたしに背負えるはずないじゃない……!」
・・・・・・
・・・
「今度は手出ししねぇぞ」
だから、オマエが殺れ。そう言ってこちらの肩をぽんっと叩くとキャスターはオルガマリーたちの方へと向かう。
魔槍の一撃を受けて既に死に体であるランサーを見て、任せても問題ないと踏んだのだろう。
正直言って、気は進まない。だが、今の自分にやらないという選択肢は最早存在しないのだ。
夫婦剣を構えて、意識を戦闘のそれへと落とし込む。弱っているとはいえ、相手はおそらくは
「アナタと相対するのは二度目……いいえ、ライダーの時を合わせれば三度目でしたか」
ランサーの確認するような問いかけに、別にわざわざ否定するようなことではないので静かに頷いておく。ライダー。友人だった青い髪の少年が従えていた英霊。
まあ、そうはいってもあくまで敵として相対したことがあるだけで、大した関わりではない。それは向こうの認識とて変わらず。所詮はそんな程度のものだろう。
「今のわたしは、セイバーに遣われる影でしかない身ですので、これを伝えるかどうか少し悩んだのですが。顔見知りのよしみでひとつ、忠告を」
「……あなたが、どうして英霊足る力を手に入れたのかは存じませんが、その力が生むのは決して益だけではないということを覚えておいてください」
感情の抜けたような冷えた表情で、そう告げたランサーは大鎌を構える。しかし、その場から動く気配は微塵もない。
ランサーの言が気にならないわけではないが、とはいえ、ここは戦場だ。他に気を回している余裕はない。
ランサーはやはり動かない。きっと、あの損傷だ。こちらにはキャスターもいるため、連戦における体力の消費を考えてのことだろう。
つまり、先手を譲られている。これはある意味で好機である。元々、長々と時間をかければかけるほど、地力のないこちらは不利になって仕舞うのだ。ならば、先手必勝。速攻でけりをつけるつもりで行くしかない。
地を蹴ってアスファルトの上を駆ける。ランサーが操る蛇の鎖を回避しながら夫婦剣を左右へと放り投げ、手元に新たな夫婦剣を投影して次々と鎖を弾き落として突き進む。
自らの背後に剣弾を投影。射出することでランサーの動きに制限を掛ける。そこへ投射された陰陽の剣が互いに引き合うようにランサーに襲いかかり、それに気づいたランサーが避けようと背後に飛んだところで、爆発した。
何故なら、宝具とは本来、即座に修復が不可能な代物であり、そもそもが、キャスターの話に通じるように、宝具というものは英霊にとっては生前共に在り続けた半身のようなものであって、それを破壊するということはその身を裂くほどの精神的苦痛を英霊に与えるということになるのだ。
つまり、ほとんどの英霊は使うことをまず躊躇う。故に、真の意味での最終手段とされるのだ。
後ろへと飛び退いたところで爆発の余波をもろに受けたランサーは衝撃波によって吹き飛ばされる。そこに更に追い撃ちをかけるような剣弾の雨が降り注ぐ。
なんとか体勢を持ち直したランサーは不死殺しの刃を振るい剣弾をすべて弾いた。
ここだ……ッ!!
鎌を大振りしたことで生まれた決定的な隙をついて懐へと飛び込んだ。ランサーは慌てることなく、その瞳に宿る呪いを解放する。
「
しかし、ランサーの余裕めいた表情は次には驚愕に変わる。もっとも、それはあくまでこちらの予想であって、本当に驚愕しているのかどうかを確認する術はない。今、自分は目を閉じており、自らの視覚には一切頼っていないのだから。
キュベレイとは、石化と銘打つものの正しくは高位の魔眼による重圧である。対象の保有する魔力量によって、魔力ランクC~B相当で石化、A以上でも全能力ランクの低下という効果を無条件で与える。
そして、その魔眼の影響をもっとも受けやすいのは言わずもがな、視覚からである。
魔眼を防ぐ対魔力があるとはいえ、出力の影響で効果は微々たるもの。完全に防ぎきれるとはいえない。だから、一番影響を受けやすい視覚を自ら潰したのだ。
こちらはなにより最初からキュベレイを一番警戒していた。ならば、対処ができないわけがない。それに、ここまで近づくことができれば、別に視覚に頼らずとも剣撃を叩き込むことは可能だ。
目を合わせていないというのに、それでも魔眼は体の自由を奪おうとする。剣を持つ腕が重くなる。それを誤魔化すように声をあげ、剣を振るった。
鎖が剣を防がん放たれる。だが、鎖よりもほんの一瞬だけ早く、退魔の剣がランサーを切り裂いた。
キュベレイに関してはかなり独自解釈しています。
『第七話を四行で理解しよう!(理解できるとは言ってない)』
①正体を隠す気がない(金ぴか
②所長は豆腐メンタルかわいい(かわいい
③ランサーの意味深発言(伏線的な
④一応は決着(早いっ!?←イマココ