木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく   作:暁紅

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教会脱出決行(そう簡単にいくわけもない)

今日は自由時間がなく、ずっと娯楽部屋との事だ。それを聞いた瞬間今日があの日なのだと分かった。

 

1度娯楽部屋に集められ大人が消えると、虞淵達数名を呼び今日について説明を始める。

 

最初説明した時は冗談だろ?と馬鹿にしていたが、自分が本気なのだと態度で示すと全員信じてくれた。

 

信じてくれた事に安心しため息を吐くと、懐から何個かアイテムを出す。

 

「これを渡すね」

「これは?なんだ...剣?」

 

虞淵が今触っているのは、地面に突き刺す事により一時的に結界を張れる魔剣。その他にも切れば解毒できる剣。切れば治療できる剣。

 

そして、今回最も重要なアイテム。

脱出の道の書かれた地図。

 

これは、バルパーさんが制作した物で、この日のために着々と進めていたらしい。

 

そこには道以外にも隠れ家の場所も記載されている。

 

虞淵は今まで探してきた物をたったの1人で揃えたイザイヤに、少しだけ恐怖していた。

 

一体何をしたらこんな事を......いや疑うのはなしだ。仲間だからな...

 

 

虞淵は自分に言い聞かせながら、紙を受け取り頭に詰め込む。

 

「タイミングはどうする?」

「それは大丈夫だよ。地面が揺れるぐらい大きな揺れが起こるから、それに便乗して実行してください」

「分かった......絶対に帰ってこいよ」

「もちろん」

 

2人は片手を前に出して、拳をぶつけ合わせる。

 

 

この日はイザイヤと琴音が一緒の日だ。

無論イザイヤがこの日なのはバルパーさんのご協力のおかげだ。琴音は適当に選ばれた。

 

「緊張してるの?」

「う、うん......は初めてだから...」

「?まあ頑張ろうよ」

 

琴音には今回の脱出の作戦は何も話していない。

理由としてはこの性格なので、もしかしたら隠せない可能性があるので言っていない。

 

それに脱出してしまえば変わらないし。

 

そんなこんなで大人2人に連れられ部屋に入る。

 

大人達は拘束のため手錠を持って近づいてくる。脱出では拘束されると面倒なので先に潰す。

 

「これをつけッ!」

「よいしょ!」

 

イザイヤは上に飛び上がり、顎に向け思いっきり蹴りを入れる。

 

今のイザイヤの蹴りは岩も粉砕する程度はある、その一撃喰らった大人は完全に意識を失う。

 

意識を失った大人が倒れた事で琴音を拘束しようとしていた大人がこちらを向く。

 

こちらを向いたタイミングで顔面にドロップキックをかます。その大人は拘束のため軽くしゃがんでいたので、丁度いい位置に頭があった。

 

蹴られた大人は吹き飛ばされ、壁に背中をぶつけると口から空気を吐き出し、トドメの一撃として腹部に爪先を刺される。

 

「がハッ」

「ふぅ...終わった終わった。さて行こうか琴音ちゃん」

「ふえ?」

「さぁさぁ、おっとその前に」

 

手元に集中し『魔帝剣グラム』破壊特化を作り出し、地面に全力で叩きつける。

 

すると、地面がひび割れまるで地震のように揺れる。

 

これは虞淵達への合図でもあり、注意を引きつけるための物でもある。すぐにでも大人達が駆けつけるだろう。だから急がなくちゃいけない。

 

「早く逃げよ」

「あっ」

 

イザイヤは琴音の手を握ると急いで駆け出す。

 

琴音が転ばない程度に速度は出しどんどん進んでいく。ここから出るための道はすでに覚えているので、間違うはずが無い。

 

しかし、何故か出口のある場所が壁になっていた。

 

「これは...」

「どうしたの?」

 

道が分からないって素直に言うか?いやダメだ。それは不安を煽るだけ......けど何で?本来なら

 

「出口があるはずか?イザイヤ」

「バルパーさん」

 

声のした方向にはバルパーさんと、今まで見たことのなかった大人が5人ほどいる。

 

さらにバルパーさんの手にはここに保管されていると聞いていた『破壊の聖剣(エクスカリバー・ディストラクション)』が握られている。

 

 

バルパーさんの手には武器、間違った情報に知らない大人達...これは誰がどう聞いても理解できる事だ。

 

「裏切りですか」

「違うなイザイヤ...裏切りなどではない。初めから味方などなっていないさ」

「くっ、」

 

イザイヤは自分の歯を噛み締める。

 

原作の知識でもあったように、あの男は危険な存在だった。そんな奴を簡単に信じてしまった自分が嫌いになる。

 

そんな思いで噛み締めていると、隣にいる大人が1歩前に出て背中から白い羽を4枚出す。

 

そうその羽は正しくアニメで見た、ミカエルと同じ形だった...数は違うが。となるとその物の正体は丸わかりだ。

 

「天使...何でこんな所に...」

「ふふふ、ここは偉大な実験の場でしてね。あのミカエル様の指示でしていた事なのです。そんな場所に天使がいない訳ないですのよ」

 

まずい、もし戦闘になりでもしたら琴音を守りながら戦えるわけがない。

 

バルパーさんには1度も勝てた事がなく、相手には天使がいる。絶望的だった。

 

さらに追い討ちをかけるように周りにいた4人の大人も、白い羽を2枚生やす。

 

ははっ笑える本当に笑える。

他人を信じた結果がこれだ。

 

けど、せめてでも琴音ちゃんだけは逃がす。

 

手に持つ『魔帝剣グラム』破壊特化を壁に投げつけると、その威力から壁に大きな穴があき建物を囲んでいる塀までも破壊した。

 

天使達はその光景に驚く。

 

教会の壁に関しては何も施していないので壊されるのは理解していた。だが塀に関してはもしものために、壊れないように力を使っていたのに目の前の少年はいとも簡単にこれを壊した。

 

もしこの少年が成長すると確実に我々の邪魔になる。

 

一瞬でそう判断した4枚の羽を持つ中級天使は、他の天使とバルパーに指示を出す。

 

 

「その2人を逃がしてはいけない!仕留めなさい!」

 

 

1枚羽の下級天使達は、手元に光の槍を作りそれを投擲する。

 

イザイヤはその槍が投擲されぶつかり瞬間に、原作でも木場が使っていた『光を喰らう剣(ホーリーイレイザー)』を使い、槍を無に帰す。

 

槍が消された事に驚き天使達の動きが止まったので、琴音の手を改めて掴み穴から外に出る。

 

 

 

「それで行けたと思ったのかね」

「やっぱり来ますか!」

 

琴音を後ろに隠すと、背後から突然現れたバルパーが聖剣を振り下ろすので、それを防ぐように『魔帝剣グラム』破壊特化を作りぶつける。

 

数秒拮抗すると2人とも剣をぶつけ合い少し距離を取る。

 

「勝てると思っているのか?」

「やって見なくちゃ分からないですよ」

 

その言葉を聞いてバルパーは高笑いをする。

 

何がおかしいと聞き返す前にバルパーは勝手に語り出す。

 

「勝つか...ふははは!間違えているぞイザイヤ!我々の目的は決して勝負に勝つことではない!貴様らを生きて帰さないことが目的だ」

 

イザイヤは後ろに隠した琴音を見ると急いで駆け出し、突き飛ばす。

 

琴音は何故?と思うとイザイヤの身体を大量の光の槍が貫通する。

 

「いや...イヤぁぁぁ!!!」

 

琴音の叫び声が辺りに響き渡る。目からは大量の涙がこぼれ落ちる。

 

その涙をイザイヤは明らかに力のない指で拭うと、琴音の頬を撫でる。

 

「琴...ね...ちゃん...は......無事?...」

「うんうん無事だよ。イザイヤ君のおかげで...けど」

「なら...良...かっ......た」

 

懐から1枚の紙を出す。

その紙はイザイヤの血に濡れ、赤く染まり始めているが記載されている事はどうにか読み取れる。

 

それを貰い何を?と思うとまた突き飛ばされる。

 

突き飛ばされた事で尻餅をつく、イザイヤに駆け寄ろうと立ち上がると、目の前に炎の壁が現れる。

 

「なん...で」

「逃げて!...僕が...時間を......稼ぐ」

 

身体に無数に刺さっている光の槍を、『光を喰らう剣(ホーリーイレイザー)』で消しなけなしの体力で干将・莫耶を作り構える。

 

「いやだ!逃げたくない!」

「逃げて!君に生きて欲しいんだ...琴音ちゃん!紙を見れば分かる...最後の...最後のお願いだと思って!!」

 

逃げたくない逃げたくないけど、身体が勝手に動く脳が逃げろと言う。

 

やだやだやだやだやだ

 

いくら心で言おうとも死の恐怖に抗えず、イザイヤから離れていく。

 

琴音が離れていき姿が見えなくなった瞬間、干将・莫耶を地面に落とし両膝をつく。

 

「ありが...とう...ございま...す......待って...くれ......て」

「私達は天使です。別れ際ぐらい待ちます。それに貴方を殺した後であの子も殺しますから...あの世で先に待っていなさい」

 

剣が無慈悲にも振り下ろされ、大量の血液が宙を舞う。

 


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