木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく   作:暁紅

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原作とは何だったのか

その日の自由時間にとある作戦を決行しようとしていた。

 

その作戦は1人が外に飛び出て、周りの様子を事細かに調べることだ。

 

この作戦を聞いた時すぐにイザイヤは自分が行くといい、他にも行くと言ったものを断固拒否した。

 

理由はもし戦闘になった時に戦えるのが自分ぐらいのと、ある程度痛みにもなれ罰なら余裕で耐えられるからだ。

 

ここ最近聖剣の実験が痛くない...何故だろ?

 

 

そして遂にその時間は来る。

 

大人が全員広間に入れ帰っていったあと、協会本部に繋がる小さな窓から中に入る。

 

 

ぐぎ!

 

着地の時に嫌な音がしたけど大丈夫...大丈夫だ。何か感覚が何も無いけどどうにかな!

 

足音が聞こえ曲がり角に飛び込み隠れ過ごす。

 

コツコツコツコツ......

 

足音はだんだん遠のいていき、やり過ごせた事に安堵のため息を吐く。

 

「はぁ......良かった...いきなりゲームオーバーかと思った...よし!切り替えていこう」

 

 

頬を両手で叩き気持ちをリセットすると、外に出て何があるのかを紙に書いて進む。

 

 

外門教会の順番にあり、その門の鍵穴は特殊で特殊な鍵が必要なのが分かった。その鍵穴の形を記録すると次の場所へと移動を始めた。

 

すると地べたを這うように隠れながら進んでいると、とある部屋の窓が少し空いていてそこから声が聞こえてくる。

 

 

「すま.........イ......ほ......シェ.........」

「?なんだ?」

 

本来なら逃げるべきはずなのだが、これに関してはどうしても聞きたい。そう思ってしまい音が立たないようにゆっくりと動いて行くと、少しずつよく聞こえ始める。

 

「私のせいだな...イザイヤ」

「!」

 

イザイヤその名で呼ぶ者は子供達しかいない、ならば誰が呼んだのか気になり近づく。だが、その時は好奇心が強くなり足元の小枝に気づかず踏んでしまう。

 

その音に気づいた言葉を発していた男は、勢いよく窓を開け顔を乗り出す。

 

「何者だ!」

「しまっ」

 

すでに顔も見られた。今から逃げても間に合わない。なので大人しく投降して皆は関係ないと訴える事にした。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

自由時間が終わる寸前になってもイザイヤが一向に帰ってこない。何かあったのでは?と心配していると、広間の扉が開き大人が入ってくる。

 

やばい時間を稼がなくては!

 

隣にいたシェルとアイコンタクトを取ると、シェルも頷き意図が伝わり時間を稼ぐ、

 

 

「すみません。先程遊んでいたらブランコが壊れました」

「子供達が危険ですの」

「何も壊れていないようだが?」

「な、治したのです」

「あぁ、仮に治しただけだからな、しっかりと治してくれないだろうか?」

「そうだな...後で治しておこう」

 

だめだ2人は同時に思った、だからさらに伸ばそうとしたが、逆にそこを怪しまれる。

 

「何やら貴様ら隠していないか?」

 

殆ど核心の言葉に驚き声が出ずに固まる。

 

その隙に子供達の数を数えると一人いなく、No.09がいないことが分かった。

 

「おい、どういうことだ!何故No.09がいない!」

「それはその」

「えっとそれが」

 

言い訳を言い訳を言わなくちゃイザイヤが本当に殺される。

 

どうにか言い訳を捻り出そうとするが、突然の事に考えていなく何も言えない。

 

「フェース落ち着け」

「バルパー様!どうしてこのような場所に」

 

目の前にいる大人とは違い、司祭のような黒い服を着ているバルパーと呼ばれるおじさんが出てくる。

 

バルパーはフェースと呼んだ男の肩を叩き、誤解があった事を伝える。

 

「すまないな。No.09は少し私の仕事を手伝ってもらっていてな。ついついそれを言い忘れていた」

「はぁ...そうだったんですか。なら大丈夫ですね。私はこいつらを連れていくので、後で連れて行っておいて下さい」

「了解した。それと今度はあらかじめ言うとするさ」

 

 

フェースはホントですよと言いながら子供達を連れていく。

 

子供達の心の中には、イザイヤがどうなってしまったのかが気になっていたが、目の前の男の口調の変化からかなり格上の存在なのは分かったので、下手に機嫌を損ねるとイザイヤがどうにかなるかもしれないので、聞くことが出来ない。

 

バルパーは全員が行ったのを見送るとイザイヤのいる書斎へと行く。

 

書斎に入ると中にはイザイヤの姿はない。

それが、さも当たり前のように進んでいき、本棚の前に行き赤い本と青い本をとって入れ替える、すると本棚が横に動き地下へ続く階段が現れる。

 

そのには階段には明かりがないなか慣れた足並みで降ること数分、目の前に古臭い木の扉がありそれを開くと、中にはイザイヤと10匹の魔犬が戦っていた。

 

 

 

イザイヤを囲むように5匹の魔犬が囲み齧りつきに飛びかかると、上空に作っていた剣が綺麗に落下し、魔犬の口を上から貫通し地面に突き刺さる。

 

 

口を地面に封じられた魔犬は、ドタバタして抜けようとするが抜けられず、イザイヤの持つ二本の剣に頭と首を切り離される。

 

5匹の魔犬を片付けると、姿勢を低くし地面を這うように円を作りながら走る。

 

その円は徐々に大きくなり残りの犬達へと近づく。

 

 

イザイヤの走る速度は魔犬の目を持ってしても追えず、動く線としてしか見れない。だから犬達は上に飛び、安全であろう真ん中を目指す。

 

そこは予想通り安全地帯のようで安心したら、突然イザイヤが消え周りの円が消える。

 

犬は一瞬にして辺りを警戒するが、イザイヤは上空に飛んでいるので気づかれず、3匹の犬の頭と胴体に剣を投擲し針山状態にする。

 

残った2匹はイザイヤの着地の瞬間を狙って噛みつきに行くが、手に持っていた剣が羽のような形状になり、リーチが長くなったので呆気なく水平に真っ二つになる。

 

 

「ふぅ...」

 

イザイヤは手に持った剣を消すと、額から流れる汗を服の胸元の部分で拭うと、その場に倒れるように座る。

 

 

「上達したようだな。まさか、本当に100匹倒すとは」

「けど疲れましたよ、ははは」

 

イザイヤの周りには色んな殺され方をした犬の死骸が転がっている。

 

その殺しをしたのは全てイザイヤだ。

 

そして、この魔犬達は何なのかと言うとバルパーの魔力で作っている人工魔獣だ。

 

これは神滅具の一つにある魔獣創造(アナイアレイション・メーカー)を参考に作り出した、バルパーオリジナルの魔術だ。

 

だが、その魔術はかなりの失敗作で、指定した場所でしか使えず準備に2年かかる。なので今までストレス解消程度にしか使ってこなかった。

 

この場所もそのために作ったのだ。なのに何故そこにイザイヤがいるのか、それはバルパーが原作のような極悪人ではなかったからだ。

 

 

「どうでした皆は?」

「イザイヤの事を心配していたよ。まぁ、あんな危険な事をしようとするとは、頭が痛いがね」

「確かに...けど、いい出会いもありましたよバルパーさん」

「そうだな、私達は共犯者だなイザイヤ」

 

 

バルパーは地べたに座っているイザイヤに手を伸ばし、手を掴むと思いっきり持ち上げる。立ち上がると尻の土埃を払い、剣を作ってバルパーを見つめる。

 

 

ふむと頷くと地面に突き刺さっている魔剣を引き抜き、イザイヤに構える。

 

そして、イザイヤは地面を思いっきり蹴り二本の剣をバルパーに振り下ろす。

 

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

 

戦いの少し前、バルパーに見つかった直後の時。

 

 

見つかった時はオワタと思っていたが、今は何故か椅子に座り紅茶を出されている。

 

出された紅茶を警戒することなく口をつける。

 

「毒を警戒しないのか?」

「見つかった時点でアウトですよ?今更警戒しても」

「そうだな......それでどこまで私の独り言を聞いた?」

 

しっかり聞き取れたのは「私のせいだな......イザイヤ」だと言い、何がバルパーさんのせいなのか聞く。

 

そうすると上を見上げ手で頭を抑える。

 

数秒そうしていると、ため息を吐きながらイザイヤの方を向き答える。

 

 

「それはな君達を指名したのは私だからだ」

「指名?」

「あぁそうだ、だがあの時はこんな事になるなんて思っていなかった」

 

そう言って机の引き出しの中にある紙をイザイヤの前にある机の上に投げる。

 

バラバラになりかけた紙をひとまとめにして、何が書かれているのかを見ていくと、知っている通りの事が書かれていた。

 

聖剣計画、子供達、因子、そして処分。

 

この事からやはり処分は免れない事だったのが分かる。

 

「まるであらかじめ知っているかのようだな。そこまで驚かないと」

「それは...あはは」

 

しまった。素直にそう思った。

 

普通であれば何かしら動揺なり何なり見せなければおかしい所、それを知っていたため何も反応しなかったのがミスだった。

 

だけどなんて言う、僕は転生者ですか?実は物語として知ってたから?馬鹿だ。頭がおかしくなったと思われる。

 

それは不味く何か言い訳を考えようとしていたが、バルパーは手を前に出す。

 

「別にいい。君が特別なのは元から知ってるさ」

「元から?」

「あぁだが今はその事は言えない。いづれ分かる時が来る......」

 

 

元から?えっ、何イザイヤさん何か秘密あるの?スゲー知りたいまじ知りたい。てか、何か原作と違っていい人?

 

「それより君たちは脱出計画をしているのかね?」

「はい」

「そうかならば脱出経路は私に任せろ。だが、後の事は出来ん...だからイザイヤ私に戦闘を教わるつもりは無いか?」

「戦闘...」

 

イザイヤはいくら転生したとはいえ、前の人生でも何かしら戦闘をした経験はない。

今の武器は剣を作って適当に振り、投擲するぐらいだ。

 

正直戦闘を教わるのはかなりいいと判断して、了承するとバルパーは本棚をいじり、階段をだす。

 

その階段を降り、出た先の空間で少しだけ剣を教わり、大量の魔犬との戦闘が始まった。

 

その間にバルパーはイザイヤの不在がおかしくないようにしてくると、部屋から出かけて行った。

 

 


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