木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく   作:暁紅

31 / 37
なんと、運営からボーイズラブのタグを付けろと言われ、そこで初めて付けていない事に気づきました。

まさかの事態に慌てながらもどうにか書き終えました。
そろそろ受験が待ち構えているので、どうにかその前に終わらせたい。


平和が崩れる音が聞こえる

 

三勢力会議から約一年経過した。

 

駒王町にて二度目の夏を裕斗達は感じる事になる。

 

この町は大きく変貌を遂げた、!

 

この町を管理していたリアスは部屋に篭ってしまったので、代理でソーナが担当する事になった。

 

そのため、方針が色々変わり。町に張られる結界がより強固の物となり、魔王以上のレベルでしか破壊できず、転移魔法陣で外から入る事が許可無しには出来なくなった。

 

はぐれ悪魔も一掃し、悪魔に人間が狩られる事が無くなり安全性はかなり上がった。

 

住んでいる住民は嬉しいほか内が、当のソーナは沈んだ表情で扉の前に立っている。

 

「リアス外に出ない?」

 

扉に声をかける。

 

だが、向こうからの返事がない。これはいつもの事だ。出てくるのは本当に気まぐれ。それだけリアスは追い詰められていたという事だ。

 

「ダメですか」

「ごめんなさい。力になれなくて」

「いえ、いいのですわ。リアスには色々あったのですから、たまには休憩も必要ですので」

「また来ます。朱乃さん」

「えぇよろしくお願い致します」

 

可憐で美しく、風に綺麗に靡いていた黒髪は毛先から壊れ、頬もやせ細り過去の姫島朱乃の面影はほとんど無くなっている。

 

申し訳なさを感じながら軽くお辞儀し、彼女らが住んでいるマンションを後にする。

 

そして、すぐに魔法陣により駒王学園へ跳び旧オカルト研究部の中に入る。

 

屋根はボロボロに崩壊しており、中も荒れるだけ荒れ、部屋と呼べる物が何も無い。

 

そんな場所へ何故来たのか、それは彼女にも分からない。ただの気まぐれとしか言えず、彼女に扉越しに会ったら毎度来ている。

 

「私にもっと力があれば...リアスも......」

「君が弱気になってどうするのかね?」

「曹操さんですか」

 

誰もいないはずの部屋に突然現れたのは、会議後突然教師として転勤してきた曹操だ。

 

なんでも、彼の家族の一人が大食漢らしく食費がかなりまずいらしく、慌てて仕事を探しここに就職した。

 

一応教員免許は持っていたのでなんら問題はなく、今ではイケメン先生として女子人気はかなり高い。

 

コツコツ。革靴の底を鳴らしながらリアスが使用していた机に近づき、その上に置かれているノートを手に取り中を見る。

 

それには、数々の彼女の苦痛の声が刻まれていた。管理者として表に出さず、こうやって誤魔化していたようだ。

 

「私には本当に資格があるのでしょうか...この町を守る資格が」

「有る無しに関わらず、誰かがやらねばならん。それがたまたま、次に権力の強かった君に移っただけの事。失敗しても誰も何も言わんさ、いや言わせないと言い換えよう」

「ふふ」

 

ドヤ顔を決める曹操に、思わずに吹き出してしまう。

 

いつの間にか教師が板に付いた曹操は、このように小っ恥ずかしい事を平気で言うようになった。

 

どこぞの物語であれば恋愛が始まるのだろうが、彼が誰が好きなのかなど知っている身からすれば笑い事である。

 

「それでは君に鍵を渡しておくよ。出る時には鍵をかけ返してくれ」

「はい、分かりました曹操先生」

 

ホント何のために来たのか分からない曹操は、嵐のように去っていく。

 

けど、多分励ましに来たのだろうと、思ってしまう。

 

あぁ、アレで男好きでなければ良かったのにそう思ってしまう。

 

リアスの椅子がふと目に入り、飛び込むように座る。

 

埃が溜まっていたのか埃が舞い上がり

 

「目に埃が...くっ...ぁ...くぅっ」

 

何ヶ月ぶりの涙だろうか。もう思い出せない。

 

今までせき止めていた物が溢れるように流れ、涙は二十分間止まる事は無かった。

 

 

 

「あと一時間程暇ですね。休憩の時間を長く取りすぎましたね」

 

 

 

どうにか感情の爆発を抑え、管理人としての義務を全うすべく心に鍵をかけ、部屋の鍵を職員室へと戻す。

 

今は年齢的には大学に行くはずだったが、思った以上に管理人としての仕事が忙しくなり、殆ど行っていない。

 

この炎天直下の元変わっている町を眺めながら歩いている。

 

小さかったビルはより大きくなり、空き地だった場所にはビルが建つ。正しく都会と呼べる物に至ろうとしている。

 

「懐かしい場所も殆ど消えましたね」

 

辺りを見回しても子供の頃見た光景はほとんどなく、初めましての物ばかりだ。

 

正直悲しいと思う心もあり、嬉しいと思う心もある。

 

今は無き光景に思い耽ながら歩いてる時、何か嫌な予感がし空を見上げる。他にも周りにいる一般人や人外も同じく空を見上げる。

 

「なんだあれ?鳥か?」

「いや、鳥にしては人形で羽が」

「天使?」

 

見上げた先に合ったのは、太陽と重なる黒い羽を持った人型の影だ。

 

かなり遠いせいで黒い点のようにしか見えていない。何が?そうな疑問を思っている中、一人だけ頭の回転が早いソーナは異変に気づく。

 

本来ここは不可侵条約のような物があり、人外が生活できる代わりにその本来の姿を晒さない事が決められている。

 

ハロウィンなどのイベントや非常時には除くとされている。

 

今は特別なイベントなどは無く、普通の平日に近い夏休みである。

 

太陽から注がれる日差しを眩しそうにするいつもの日常。一体どれだけの苦労がこの平和を気づきあげたのか、極一部の人物しか知らないだろう。

 

だが、いくら丁寧に組み上げ大事にしても、破壊は一瞬である。その日ソーナはそれを痛感することになる。

 

「眩っ!」

 

雲一つない晴天の中。空が何故か光。そして、極雷がこの町に降り注ぐ。

 

俊足の如く降り注ぐ雷を止めたのは強固にした結界だ。

 

衝突した瞬間大量の火花が飛び散り、鼓膜が破れると思ってしまうぐらい甲高い音が鳴り響く。

 

その音を聞いた全員がその場でしゃがみこみ、耳を抑える。中には気絶している者もいる。

 

ソーナもその場でしゃがみ必死に耐える。結界なら大丈夫だ。そう心に言い聞かせながら。

 

だが、抑えていた耳に最悪の音が聞こえる。

 

バリッ。

 

ガラスを床に落としたような、何かが割れる音。今の状況をにおいて割れる音が発生する要因は、結界が割れる音に他ならない。

 

何も知らない一般人は頭を傾げているが、何が起きたのか理解した人外は顔を真っ青にする。

 

「攻めてきた...攻めてきたんだ!」

「逃げろ!殺されるぞ!にげろぉぉ!!」

「死にたくない!死ぬのはいやだ!」

 

悲痛な叫び。悲しみは伝染し何ら状況を理解してない一般人までもが叫びながら散り散りに走る。

 

「まって、おちつ」

本能的な嫌悪感が身体をなぞる。

 

空を見上げると見つけてしまった。この世の全ての負を集めたような危険な存在を。

 

黒いフードを深くかぶっているので分かりづらいが、纏っている雰囲気は今まで見てきた中で一番邪悪で気持ち悪い。

 

その物体は天使もどきの近くに突如として現れ、すぐに消える。結界が消えた事で転移が出来るようになったからだろう。

 

『あぁ、テステス、聞こえてるかにゃ?』

 

巨大な黒い魔法陣が空中に展開され、そこから陽気で可愛い女の声が聞こえてくる。

 

『我々は天翼種(フリューゲル)。恨み憎しみが残された感情。その思いのままに我らは復讐する。天使、堕天使、悪魔、人間、無事に帰れると思うな』

 

黒い魔法陣のそばに黒い塊が三つ現れ、こことは違う映像が流れる。その光景はまさに絶望そのままだった。

 

すぐに目がいったのは見慣れた場所である冥界であった。

 

街の建物は軒並み破壊され、あまりの強さから超越者とまで呼ばれている二人の魔王が、二人の少女の前で片膝をつき息をあげている。

 

『アジュカはどう思う?』

『アレは魔術でも魔法でもない、ただの魔力の塊だろうな』

『作戦会議は終わったかしら?』

『魔王弱すぎ。勇者の気分の気の字も味わえない』

 

紫の髪の少女とピンクの髪の少女が、魔力を掌には集中させ電撃を放つ。

 

次は悪魔と対極的な存在である天使だ。

 

潔白なる城は崩落し、天使の白い羽が赤く染まっている。見るも無残な光景だ。

 

『くっ、もどき風情が!』

『あらら?そのもどき程度に勝てない貴方は、ゴミかしら?』

『チッ、神炎よ!』

『それ、私も使えるの忘れたのかしら?』

 

ウリエルと黒髪の女性から放たれた炎は互いが互いに燃やし尽くす。二人は全く同じの炎を使っているのだ。

 

最後は、悪魔とまだ関わりの強い堕天使だ一番衝撃的だったのはここだった。

 

黄金の鎧を身に纏ったアザゼルの胸を右手が貫通し、掌には未だに鼓動している心臓がある。

 

『アザゼル!いま助けに!』

『バカやろぉ!選択を吐きがハッ...違えるな!』

『しかし』

『もういい?』

 

空気に触れていた心臓は握りつぶされ、大量の血が空を舞う。

 

三勢力とも壊滅的な被害の光景は、人外達にとっては絶望の他ない。至る所でその場に倒れ込み、目からは生気が消える者が続出している。

 

『うにゃ?いい感じに絶望してるね...ならもっと絶望しようか!天撃砲撃まであと3秒』

「逃げ」

 

まだ2も1もカウントしていないのだが、多数の極雷が町を蹂躙するため降り注ぐ。

 

 

 

結界が破壊される少し前、駒王町の中で一番高いビルの中ではこの後の悲劇を夢に思わない彼らは談話していた。

 

「ふぁっ...眠ぅ」

「おはようフリード」

「寝坊だぞ、フリード」

「あいあい」

 

微妙にはだけ見えている腹を抑えながら、髪がボサボサのフリードが出てくる。

 

あまりにひどい格好に手招きで虞淵がおびき寄せ、クシを使って髪を整えていく。これはいつもの事だ。

 

第二の母と呼ばれる由縁はそこにある。

 

「あっ?奏汰はどこいった?」

「朝風呂だそうだ。身だしなみを整えたい年頃なんだろうよ」

「ふーん。突撃してやろうかな」

「やめとけ、殺されるのがオチだ」

 

一瞬風呂場に行きそうになった足を回転させ冷蔵庫へ向かい、飲みかけの牛乳パックとヨーグルトを取り出す。

 

持ったままソファーへ向かい座り、二つを一緒にし合わせて食す。フリードの奇妙な食い方だ。

 

その時だ結界が破壊されたのは。

 

とてつもない魔力の衝突に裕斗は窓へ近づき、感覚を頼りに空を見上げる。そこで見たのは天使だ。

 

「天使?」

「いや、天翼種だな」

「まさか攻めてきたのか」

「その通り」

「なっ!」

 

普通に会話をしているが、質問に返答した声は聞いたことのない声だった。いや過去に聞いたことはある声だ。

 

丁度それが現れたのはフリードと虞淵が座っているソファーの向かい側で、フードを深く被った男がいた。

 

瞬時の動きはフリード達が早く、すぐに消滅させるためフリードは亜空間から魔剣を取り出し、虞淵は赤い鎧を身に纏う。

 

赤龍帝の衝撃(ギガンティック・インパクト)ッッ!」

約束された勝利の剣(エクスカリバー・モルガン)ッ!」

「すでにそれは視た(・・)

 

裕斗に作ってもらった最強硬度のエクスカリバーは男の指に当たっただけで崩れ、指を立てなぞるように肩を触ると、フリードの肩から先が切断される。

 

魔力を拳の先に集中させ放つ、爆発的な拳はいとも簡単に片手で受け止められ、そのまま握りつぶされる。

 

そして、人差し指を弾いて腹部に当てると、鎧が陥没し骨の砕け散る音が鳴り壁に頭から埋まる。

 

「あぁ゛」

「お前に用はない」

 

フリードは頭を鷲掴みにされ床に投げ出され、三十階の床から一階の床まで止まることなく進み続ける。

 

この間わずか三秒。彼らが弱いわけがない。それは、共に肩を並べた事のある裕斗は分かっている。

 

となれば、この男が強すぎる他にないのがすぐに理解出来た。

 

禁手(バランス・ブレイクゥゥ)!!氷結の女王蜘蛛(ゲフリーレン・ケーニギン・シュビネン)!!」

 

ドア一枚挟んだ向こうから声が聞こえ、みるみる温度が下がっていくのが理解出来た。

 

奏汰の最強最悪神器の禁手。

 

それだけでも強いのにさらに手を打つ。

 

摩訶鉢特摩(マカハドマ)

 

空間全てを瞬時に凍結させ、時間すらも凍らせる究極の一撃。

 

これは裕斗ですら破る事は不可能に近く、最強最悪の技だ。

 

「良くも虞淵達をぉぉ!!」

「騒ぐな耳に響く」

「なんで、動いて」

 

本来凍ってなければおかしいはずの男がさも当然のように、動いておりゆっくりとソファーから立ち上がる。

 

もしかして不発?そう思い裕斗を見るもやはり凍っている。

 

おかしいのは目の前の男なのは確定する。

 

「確かにこれは不意打ちには強いだろうな。だが、一度視た(・・)のだから対策も立てるだろう」

 

男は『視た』と言ったが、この技は裕斗との戦闘以来一切使っていない。無論その前も誰にも見せていない。

 

だからこそ、ありえないのだ。この技を『視る』事など。

 

いや、そも百歩譲って『視た』としても対策を立てることすら不可能。それがこの能力のはずだ。

 

一体どんなトリックを使っているのか、相手の節々を確認すると信じ難いことがわかった。

 

男からは常時煙が上がっていて、自分の体温をかなり高温にし凍らないようにしているのだ。その証拠に男の周りは床も何も凍っていない。

 

「そんな!」

「驚いてるようじゃダメだな」

 

男は一瞬で間を詰め、背後に回ると背中に生えている六つの蜘蛛の足を強引にもぎ取る。

 

当たり前だが、この足は神経と直結していて、この痛みは足をもがれるのと同等だ。

 

強引にもがれ激痛のあまりその場に倒れた奏汰の頭を男は蹴り抜いた。

 

抵抗の余地なく吹き飛ばされ窓から地上へと叩きつけられる。

 

「準備運動程度にはなったか」

「奏汰...よくも!」

「はっ、怒ったふりか?木場祐斗ではない別の男」

「なんでそれを」

「なんで?そりゃ視たからだろうな」

 

この男は先程から『視た』と言う言葉を多用している。それは比喩表現だと思っていたが、裕斗の過去前世まで知っているとなるとその言葉の信用性は少しばかり上がってくる。

 

「何者だ」

「やっと、そのキモい演技をやめたか。ならあいさつだ。初めまして木場祐斗、俺はただの復讐者(アヴェンジャー)。名も無いただの復讐者だ」

 

フードを取った先に居たのは死んだはずの兵藤一誠だった。

 

髪は黒く変色し顔の首近くは鱗で覆われており、もう人間としての気配すら薄くなっていた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。