木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく   作:暁紅

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最終章前への日常回です。次回は温泉回でもしようかなと思ってます。やらないかもしれないのであまり期待はしないでね


最終決戦
コカビエルの憂鬱


 

昼間ながらも一通りが異常に多く、ビルに付けられている大量のアニメポスター。これだけ言えば分かるだろう。

 

そう、オタクにとって聖地。外国人に取っては行くべき場所、秋葉原へしかめっ面のコカビエルは来ていた。

 

本来は嬉しく、楽しみたいのだがその身は投獄されている身...だからではない。気分が進まないのは背後にいる

 

「これが秋葉原か」

「おお!凄いっすよ、あっ、アレ!」

「落ち着きなさい。カメラで記録し後でもう一度楽しめばいいのよ」

「そうだな、我の分も頼むぞ」

「御意」

 

冥府の主たるハーデスとその配下死神達であった。

 

なぜこうなっているのかは少し前まで遡る。

 

現在冥府でとある会議が行われていた。

 

会議に出席しているのは、冥府の主神ハーデス、その腹心プルート、どこからか湧いて出たベンニーア、冥府においてハーデスと同等の権力を待ち崇められているコカビエルだ。

 

『さっそくだが、アレはどうなった?』

「はい。今制作をしていますが、サンプルとなる駆け魂が一体程度欲しい所です」

「私も頑張ってるっすけど、捕獲アイテムがないと逃げられるだけっすね」

『そうか。どうにか神のみ(聖書)より引き出す他ない』

 

冥府ではコカビエルにより伝わったアニメや漫画が大ブームとなり、冥府の方針すら変えようとしている。

 

死神などが登場する作品が特に人気が高く、中でも神のみは大ヒットで人間の心の隙間に入る駆け魂を捕まえようと開発が日夜すすんでいる。

 

そして、それらを広げたコカビエルは拘束が全て外され、自由に闊歩している。

 

「コカビエル様、どうにかなりませんか?」

「いや、さすがにそれは守備範囲外だからな...いっそ秋葉原に行けばいいだろ」

『......では秋葉原へいくぞ』

 

この発言を後悔するのは言わなくても分かってしまう。

 

 

それで、秋葉原に来ているのだが

 

「「「アキハバラー」」」

 

人間に擬態し、ハーデスは全髪が真っ白で杖をつくぐらいのお年寄りになり、プルートはボロボロのジーンズに白のサイズのあってない半袖を着て、長い黒髪を後頭部で纏め二十代の女性へ。

 

ベンニーアはフードを深く被り目元をかくしているが、手につけているフワフワの猫の手もどき手袋は可愛さをより表している幼女になっている。

 

「それでどこに行くんだ?」

「アニメイト」

「メイド喫茶」

「ゲームセンター」

「...で?」

「主神の我が先だ」

「言え、ここは毒味のような感覚で」

「パーっと遊ぶっす」

 

三人とも主張を周りと揃えようとせず、自分が自分が!となっているので、仕方なくコカビエルが意見を纏める。

 

「先にアニメイト、その次にゲームセンター、最後にメイド喫茶だな。それが無難だ」

「いいだろう」

「御意」

「りょ」

 

主神より権力のある投獄者とはいかに。

 

そんな事を思っているせいか、最近胃が痛くなってきたのはここだけの話だ。

 

駅近くの六階まであるアニメイトへ入っていく。

 

さすがは、アニメ専門店。多種多様な品物が売っていて、三人とも籠いっぱいに商品を詰めている。

 

一体どこにそんな大金があったのかなどは聞かない方がいいのだろう。

 

「これがいいだろうか」

 

手に取ったのはメイドのドラゴン事カンナのキーホルダーである。この商品を欲しているのは相部屋のサマエルだ。

 

最強の龍殺しがドラゴンキャラが好きな事に疑問は浮かぶが、熱く語って来るのでよく軽く引き気味で聞いている。

 

特にカンナが好きなようなので適当に買っていく。フィギュアも近くにあったのでそれも持ってレジへ行く。

 

全員会計して驚いたのだが、三人とも手持ち袋パンパンのが四つ程あり、かなりの大金を払ったようだ。

 

「これ持って行くっすか?」

「寄越せ。先に冥府(あちら)へ送っておこう」

 

ハーデスの権能を無駄な事に使うなと言いたいが、自分も送ってもらうので言いたくとも言えなくなる。

 

次の目的地ゲームセンターへたどり着く。

 

『SEGA』の文字が大きく表示されている建物へ入っていく。

 

途端に尋常ではない音が耳に届く。コインが落ちる音、UFOキャッチャーが動いている音。多種多様な音がなっている。

 

ベンニーアは迷いつつも看板の指示に従い地下へ降っていく。

 

地下へ下ると雰囲気が一変し、それぞれが

目の前の巨大なモニターとにらめっこし、イヤホンと機械を繋いでいる。

 

かの有名な音ゲーゾーンである。

 

「ここに来ることになるとは」

「ここが」

「ベンニーア?なぜこ」

 

プルートが声をかけようとした時にはベンニーアの目は獲物を狙う目になり、猫の手手袋のままイヤホンを機械と繋ぎ百円を投入する。

 

そこで目を疑う事になる。

 

画面から高速で流れてくるノーツを巧みに計十本の指でパーフェクト判定をもぎ取っていく。

 

背後から見ている三人はあまりの腕の速さに驚き、ベンニーアが1ゲーム終わるまで眺め続けていた。

 

 

「いやー疲れたっす」

「凄いのね、見直したわ」

「我も久々に本気を出した」

「腰が...腰が」

 

のち、ハーデスとコカビエルも挑戦し戦場で鍛えた反射神経をフル活用して楽しんでいた。

 

プルートは一人UFOキャッチャーへ赴き大量にフィギュアをかっさらった。

 

 

 

最後に訪れたのはメイド喫茶である。

 

「どうぞー♡ご主人様♡」

「うっひょい!」

「やはりメイドは尊い」

「美味しいっすねお姉さん」

「もーう可愛いな♡」

「なんだこれ」

「ご主人様あーん♡」

 

店の全商品を買い占めキャバクラ状態になってしまった。金に物を言わせた結果こうなってしまった。

 

このメイドさんたちがこいつらの正体を知ったらどうなるのか気になってしまう。まぁ信じないとは思うが。

 

 

結局三時間程戯れた所で冥府へ帰還することになった。多少名残惜しいところではあったが、サマエルへの土産を渡さなくてはいけない。

 

すると、駆け魂センサーと専用の捕獲道具が完成したと知らされ、驚きと共に当初の目的を忘れていた事を思い出した。

 


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