木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく   作:暁紅

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はい。唐突に投稿致します。

何と今回からは少しだけアザセルの過去の話となります。祐斗君の事も深く関わっているのでよろしくどうぞ。

プラスホモ要素が少なくなるかも。絶対とは言っていない


過去編
アザセルの思い出。または黒歴史?


 

「おい、急げ!!さっさとポットに入れろ!」

「ははい!」

「絶対に死なすなよ!もし死んだらお前らの首も飛ぶと思え!!」

 

アザセルの鬼気迫る発言にいっそう緊張感が高まり、ポットの調整をしている堕天使達は丁寧に尚且つ素早く作業を進めていく。

 

ポットの調整には殆ど関わっていないアザセルは祐斗に付いてきた者達全員を自分の部屋へと案内する。

 

転移した場所から数分歩くと厳重な鉄の扉が見えてくる。

 

「はぁ...我は堕天使なり」

 

鉄の扉にアザセルが手を当てると電子機械の小さな音がなり、それを確認してから開閉パスワードをめんどくさそうに言う。

 

声を認証し終わり最後にアザセル本人だと認証するための光が全身を包み込みやっとこさ扉が開く。

 

生死の判断。指紋認証。生体認証。身体認証。四つの工程を終えて開くかなり厳重な警備体制だった。

 

中に入ると黒い戸棚に大量の本が入っていて、いかにもな研究者の部屋だった。

 

目の前にあるこれまた黒いソファーに腰を下ろし、アザセルは自分の椅子に座る。

 

「祐斗は大丈夫なのか?」

「安心しろ。死にはしない。ただ、二度とあの魔力を使わせるな、次は確実に死ぬ」

「それならば彼の魔力について何か知っているようだけれど、聞いてもいいかな?何故僕達の...いや姉さんの魔力を彼が持っている?」

 

祐斗のあの力を見ていた時から思っていた疑問をぶつける。あの時アザセルだけが反応が違っていた、まるで一度見た事があるように。

 

「そうだな、これはお前には特に話しておくべき事だったな」

 

近くにあるポットからお湯を出し茶を作って三人の前に置く。これからする話が長くなる事を暗示しているようだ。

 

自分の分の茶も入れ座り直し引き出しから一枚の写真を取り出す。その写真は厳重に保護が施されていて見たサーゼクスは驚愕し立ち上がる。

 

「姉さん!」

「そうこれはお前の姉アルブラ・グレモリー。そして、これから話すのは本来はしてはいけない馬鹿な事をした男の話だ」

 

過去の忘れたくないけれど、忌々しい記憶を呼び覚ましながら静かに語り始める。

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

遥か過去の事だ。その当時はまだ堕天使はおらず、アザセルが天使の頃だった。

 

当時から腐れ縁のコカビエルは胃に穴が開いた事がしばしばあった。何故かと問われればアザセルの自由さにほかならない。

 

自分の知りたい事があれば最後まで研究し続け、危ないと分かっていても知識欲には勝てず突っ走る。いつも後処理をしていたのがコカビエルだったのだ。

 

その日も同じように人間の文化が気になったアザセルが突っ走った。

 

「たく天界はつまらねぇな。人間を見てる方が楽しいわ」

 

一人天界の研究所から抜け出してきたアザセルは一応変装して人間界をぶらついていた。

 

天界では数々の物を発明し発明王とまで言われているアザセルだが、もう一月もすれば飽きてくる。

 

それに、娯楽も少ないせいでつまらない一日を過ごしていく。そのための息抜きだ。けして、発明がめんどくさい訳では無い。

 

日々成長していく人間達の有様を眺めながら歩いていると、魔力のぶつかる気配を感じる。

 

「こっちか...アレは悪魔か?」

 

自分の感覚を頼りに進んだ先には人払いの結界が張られた森があり、気の隙間から中を除くと紅髪の女が目に入る。

 

髪を必死に振り乱しながら足場の悪い森を転がりながら進んでいる。その少女を狙うように背後からはアザセルの使う光の槍が飛んでくる。

 

光の槍を使えるのは天使だけなので天使が狙っているという事は、唯一の敵悪魔だとすぐに思いつく。

 

「おいおい外すなよ。全く」

「ち、やっぱり動く的は難しいな。次はお前の番だろ俺的には外して欲しいな」

「ふん。外すかよ」

 

まるでゲームを楽しむ子供のような会話をしている二人の天使は、先程からずっと交互に光の槍を投擲していた。

 

先に致命傷を当てた方の勝ち。天使の癖に中々酷な事をしていると思うが、悪魔に至っては天使は基本どんな事をしても堕天する事は無い。そのため、娯楽代わりにする者も多い。

 

彼らも同じような事だろう。これも欲を抑えられている天界の汚点の一つだ。

 

アザセルもこれに関しては知人が戦闘狂の理由がそれなので、否定する気にもならない。いつもならば見捨てたであろう。

 

「誰か...たす...けて」

 

大きく切られた肩を抑えながら泣き叫ぶ彼女の声を聞かなければ。

 

「ふん!」

「なっ」

「馬鹿な!光の槍だと!」

 

気配を消した状態からの光の槍全力投擲は次に投擲しようとしていた天使の胸を深々貫き絶命させた。

 

生き残った方は必死に辺りに意識を向けるが背中の一対一の羽からわかるように、アザセルとは絶対的な力の差がある。

 

そのせいで一度気配を消したアザセルを男は発見することが出来ず、背後から飛んできた光の槍で胸を貫けさせて気づいた。もっともその直後に死んだため意味はないが。

 

「だ、だれですか」

「そんな警戒するなよ。通りかかった天使だよ」

 

自分を襲っていた天使を殺した天使が手を上に上げ攻撃するつもりはないと語っているが、先程のこともあり安心は出来ない。

 

アザセルも今更になって何故こんな事をしたのかよく理解が出来ていない。

 

悪魔は敵だと教え込まれてきたはずだ。それなのに助けてしまった。

 

二人は互いに考え込み始め冷戦状態になってしまう。この状態を動かしたのは襲われていた彼女の腹の音だった。

 

「あぁ...まぁ何だ飯でもいくか。一応言うが強制だ逃げられると思うなよ」

「......分かりました。行きます...こんなことになるなんて」

 

土に座り込んでいる彼女に手を差し出し起き上がらせる。

 

「一応自己紹介をしとくぜ。アザセルだ」

「アルブラです」

 

この出会いが二人の運命を大きく変えていく事になるとはまだ誰も思っていなかった。

 

 

 

 

ひとまず人間界での隠れ家に連れていき食事の用意と手当を始める。

 

「何か嫌いな物あるか?」

「いえ、よく分かりません。食べたことがあるのがスープぐらいですから」

「なるほどな...なら肉でいくか」

 

位置的には日本で木でできた家の中にいる。極一般的な二階建ての木造。周りと比べれば多少大きいが、あまり目立たない。

 

なのだが、中に入れば風景が一変する。

 

空間が歪んだみたいに外より中は大きく、近未来的な電子機械が何かしらを計算し続けている。下手に触ると壊れそうなので見るだけにしている。

 

キッチンではアザセルが一生懸命肉と睨めっこしていて、暇なアルブラはソファーに腰を下ろす。

 

「すごい...とっても柔らかい」

 

ソファーのあまりの柔らかさに驚きを隠せなかった。自分の窓のない部屋ではもっと硬く長時間座るなどありえない。

 

だが、これは柔らかくこのまま寝れそうなレベルだ。

 

「飯は少し待てよ今焼いてるからな。それに飯の前に治療をしよう」

「治療?」

「あぁまず服を脱げ」

 

瞬時にアルブラの右手が加速し強く握られた拳がアザセルの頬に深々と突き刺さる。

 

予期せぬ行動にワンテンポ回避行動が遅れ、身体を扇風機の羽のように回転させながら壁に激突する。

 

「この変態!悪魔!」

「悪魔はお前だろうに。いてて何しやがんだ」

「何しやがるって服を脱げなんてなんて事を」

「はぁ...いいから服を脱げや!」

 

数多の女と遊んだ技術を惜しむことなく使った早脱がせを行った。

 

ボロボロに破けた囚人服みたいな灰色のワンピース。見た感じそこそこ歳はいっているのでお洒落をするはずなのだが、服からはとてもそんな物は感じられずメイクも何もしていない。

 

脱がしたら脱がしたで胸には雑に巻かれたサラシに、申し訳程度の陰部を覆う布。女子には有るまじき姿だった。

 

「はぁ...色気がねぇな」

「くぅ!殺す、お前を殺して私も死ぬぅ!!」

「たく暴れんなよ」

 

その場でドタバタ暴れるアルブラの背中に跨り強引に押さえつける。

 

やっぱりか。傷が多いなこりゃ、それも新しいのだけじゃなくて古いのもある。

 

背中には血を垂れ流している傷の他に、もう塞がっているが自然治癒だったためか古傷が幾つもある。

 

ある程度予想はしていたがここまで酷いとは思っておらず、さすがにこのままにしとく訳にも行かない。

 

「冷たいが我慢しろよ」

「へ?はぅぅ...あぅ......あっ...ぁうん...」

 

ひとまず見えている傷の箇所すべてに天使特性の塗り薬を塗っていく。

 

この塗り薬を塗ると細胞を活性化させ再生力を高め古傷も消してくれる優れものだ。しかし、欠点が一つだけある。

 

それは、温度が上がる事が一切なく生肌に塗るととてつもなく冷たい事だ。そのせいかあまり頻繁には使われないが実用性は高い。

 

事実、アルブラの傷は見る見るうちに治っていく。

 

「なるほどな。悪魔だとこうも早く治るのか」

「傷が」

「だから言ったろ治療してるってよ...さて残るは正面だが男にやられたくないだろ。目の前の部屋に行きな、監視も何も無いただの空き部屋だ」

 

特性塗り薬を渡し起き上がらせて歩かせる。ついでにちゃんとした下着と服もセットで。

 

「あ......」

「うん?何か言ったか?」

「ありがとう」

 

恥ずかしいのか急いで部屋に入っていく。扉はタッチ式なので触れれば横にスライドする。

 

「さて後は肉肉っと」

 

数十分経ったのだが一向に出てこない。何か問題でもあったのか確認しようと動き出しす前に、扉が開かれ中から大事な部分を手で隠したアルブラが出てくる。

 

「な、何してやがる!お前痴女か!痴女なのか!」

「違うの!これの付け方が分からないの!」

 

これといって差し出したのはブラだった。天界では当たり前のように使われているのだが、アルブラは全く意味が理解出来ずお手上げ状態のようだ。

 

見なければ問題ないよな、よしやるか。

 

見ないように着付けさせるのがここまでキツいと、初めて知る事になった。

 

 

 


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