木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく 作:暁紅
てかここまで来ると最終回も近くなる。
「紹介しようコレは私が神となるための証明。私の手で人間を作り替え天使にした、その名を
隣にいる色白の肌に白いワンピースの白づくめの少女を指さしながら、まるで玩具を紹介するようにニヤつきながら言い放つ。
少女は魔力を迸らせるだけで岩のようにピクリとも動かない。
「驚いてるようだね」
「まさか天使を作るなんてな!だがそいつだけでどうにかなると?」
「誰が一体だけだと言った?これを除き全四十九体作り上げたよ。だが、制御できたのはこれだけだ、なぁ01」
「YES。マスターの命令に忠実な物は私だけです」
閉ざしていた口を開くと感情のない声で説明をする。
これを聞いた全員が理解した。ミカエルは洗脳し隷属させているのだと。
「それにコレの強さは私を超える。そんな物を作れた私こそ次の神だ...そのはずなのに貴様が邪魔をした!!サリエルぅぅ!!」
「やはり正解だったようですね」
ミカエルを軽蔑の目で睨みながら自慢の羽をはためかせ一歩前に出る。
そして、懐から一枚の紙を取り出す。
「貴方を熾天使の称号を剥奪。代理に私が熾天使の称号を受け取ります。これは他の三方の熾天使から承諾を得ています」
サリエルと祐斗の想定ではこの事を会議の時に突きつけ拘束するはずだったのだが、自ら墓穴を掘るように禁止を破り自供した。
例え否定しようともこの場に居るもの全てが証人だ。戦況的に見ても二人ではどう頑張ってもこの戦力差を覆せるとは思えない。
圧倒的絶望な状況に陥ったにも関わらずミカエルは高笑いをし始める。
「なら見せてやれ01!この場にいるものを殲滅しろ!!!」
「YES
「実力は超越者クラスのコレに勝てるものなどいない!!ふははは!!勝った!これで私は神にぃ......え、」
勝利を高らかに宣言した直後だった。
ミカエルの胸から突然手が生えその手の先に赤い鼓動する物が握られている。
これが心臓だと理解するのにそう時間はかからない。外界に出てしまった心臓は徐々に圧迫され数秒もせずに握りつぶされ、血が飛び散る。
「な...ぜ」
「何故?そんなの簡単だよ。私の家族を殺したお前が悪い。お母さんをお父さんを...お姉ちゃんを...だから死ねよ」
後ろから心臓をもぎ取るように刺したのは01と呼ばれていた彼女だった。だが、先程のように感情が見えないとはならず、明らかに殺意の篭った声で言っている。
刺した手を抜くと、軽く鮮血が舞い白かった全身が真っ赤に染まる。肌の色白さなども相まり冷徹さが増している。
心臓が無くなったミカエルはまだ辛うじて生きていて、地に這いながらもサリエルの方に必死に身体を引きずりながら進んでいる。
生きるため必死に手を伸ばし助けを乞うが、彼女の恨みが篭った踏みつけで頭が潰される。
トマトが爆ぜた。それぐらい一瞬だった。血は顔含めた身体全体を汚し赤い花が咲く。それでもなお何回も何回も踏みつける。そのたびミカエルの身体は踏まれた衝撃に動く。
「死んだ!ミカエルが死んだ!あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!......うぁぁぁああ!!もうやだよ...殺したくないいやぁァァ......殺す殺す!!!」
壊れたのか情緒が不安定でどれが彼女本心の事なのか分からない。それを探る前に彼女はハンマーを振るう。
地面に叩きつけられたハンマーから大量の雷の魔力がアザセル達を襲う。サーゼクス達は自分の身と子供を守るため結界を張り防ぐ。
その中一人だけが雷を紙一重で避けながら接近する者がいた。
「僕が止める。それが少しでもの償いだ」
本来彼女のような不幸な人は現れるはずが無い。簡単に言ってしまえばバッドエンドのないハッピーな世界のはずだった。
が、異分子たる自分が入ったせいで大きくこの世界は変貌している。
彼女はその被害者だった。だからこそ加害者たる自分が責任を取るため夫婦剣を掴む。
「最初から本気で行く!
背中から黒き羽が生え身体にはヒビが発生し黒い靄が漏れでる。
この黒い靄が触れた地面は当たった場所がくっきり消え失せる。それこそ、バアル家の使う滅びの魔力のように。
「姉さん...」
サーゼクスはありえはずのない人物と見間違えてしまう。自分の居なくなってしまった、姉であるアルブラ・グレモリーに。
そんな事を考えていたサーゼクスの元に二人のぶつかり合う衝撃が響き渡る。
黄金のハンマーの先端部分に白黒の夫婦剣がぶつかり合い、火花が飛び散る。
「
拮抗していた方の夫婦剣が消え、瞬時に新たな夫婦剣を作り切りかかる。彼女の不意を付いた完璧な攻撃だったが、身体に当たる前に剣が魔法陣によって止められる。
攻撃を防がれた瞬間に頭部に衝撃が走り校舎の方まで飛ばされる。咄嗟の事だが羽で衝撃を吸収した事により脳へのダメージはほぼないが、羽には甚大で右半分があらぬ方向に曲がり羽として意味をなせなくなっている。
追撃として膝立ちの祐斗に電撃が落とされる。すぐに雷切を作り電撃を切り裂く。
「こないの?」
「もう行ってるさ」
「うん?」
背中に何かが刺さる。抜くために背中に手を回した隙を祐斗は一気に距離を詰める。
「伸びろ!」
背中に刺さった夫婦剣が両方とも伸び羽のような形に変化する。そして、伸びた刃が背中を貫通し正面に突き出てくる。
祐斗は手に持っていた紅い剣を縦長に伸ばしロングソードへと変化させ、魔力で強化した身体能力で突き刺す。
二段構えの不意打ちぎみの一撃だった。胸を深々く貫き生命の源の心臓を穿く。
「いたぁい!」
「な、ぐっっ!!」
血も大量に流れているはずなのに痛いの一言で普通に耐え祐斗を殴り飛ばした。
飛ばされた祐斗を尻目に刃物を抜く。すると、傷口はすぐに再生し何も無かったかのごとく立ち尽くす。
「やるしか無いのか...」
今の生物離れした再生能力を見たので生きたままでの保護は不可能だと判断し、早く安心させてやるために殺す他にないと覚悟を決める。
多分脳みそを切ったとしても今のを見た限り生き残る可能性が高い。でも一つだけ殺す方法がある。
しかし、それは自分への負担が大きく最悪死ぬかもしれない。けれど自分の後始末は自分でつける、そう心に決め両手を前に突き出す。
「安定しろ僕の魔力!」
「?ワケわからないでも、殺す!」
大げさな構えのせいで大きな隙が出来ている。さすがにそれを見逃す程甘くはない。
瞬間移動のように一瞬で正面に立ちハンマーを振り下ろす。
「そんな」
ハンマーの先端は祐斗に当たる前に何かに当たり消え失せた。いや消滅した。
祐斗の周りには黒かった靄が紅く変色し、とある一族の物と同じ消滅の力を得た。
「そんなアレは!」
「やはり姉さんの」
この現象に驚愕の声を上げたのはバアル家現グレモリー家の二人と、その危険性を知っているアザセルだった。
「今すぐやめろ!それ以上やれば死ぬぞ!」
あれの末路は自分が嫌という程知っている。だからこそ同じ末路を辿って欲しくない。その願いの込めた心配の声は今の彼には届かない。
祐斗のヒビはさらに広がり顔の半分がヒビになり果て、指先も少しずつ塵になり始めている。自分の強大な力に身体が耐えられていないのだ。でも、
「これで終わりだ!」
この状態であれば殺すことは可能だ。再生する肉片を塵一つ残さず消滅させればいいのだから。
くしくもミカエルと同じように心臓を穿く事になってしまう。
「ごめん僕にはこれしか」
「ありがとうございます。これでお姉ちゃんの所に安心して逝けます。けど、死にたくないな」
病原菌にように彼女の体全体に滅びの魔力は広がり、この世から彼女は消滅した。唯一あるのは死に間際に肩に落とした涙だけだった。
彼女を倒した事により禁手を解くが身体への負担はとてつもなく、顔から血の気が引いていき吐血する。
急いで駆け寄ろと全員が駆け出すがそれよりも早く一人の男がかけていた。
「何で殺したァァ!!!彼女は生きたかったんだぞぉぉぉぉおお!!!」
怒りの力からか真紅の鎧を纏った一誠だ。その身体能力は倍加によりこの場に居るものよりも早く動き、握る拳の一撃は祐斗を絶命させるには十分だ。
過去の蛭子影胤の時の件と今の件を含め彼の怒りは爆発し瀕死状態の祐斗に止めの一撃を繰り出す。
苦しいながら辛うじて顔を上げた祐斗は躱そうにも身体が動かない。憎しみに歪んだ一誠の顔を脳に焼き付けながらその場に倒れ込む。
下から上へと顎に向け強打を計る一誠の手は白銀の手により止められる。
「兵藤一誠...やはり貴様は相応しくない」
受け止めた拳をいとも簡単に握りつぶす。ヴァーリとて今の光景に怒りを覚えたりした、自分の過去もあったからだ。だからと言って祐斗の決断を恨む事などしない。逆にあれが正解だったと胸を張って言える。
しかし、目の前の男は偽善を並べるだけで行動に移さないにも関わらず、怒りをぶつけようとしている。
心底失望した。これが男のする事なのかと。
握りつぶされた痛みに鎧は消え蹲っている一誠の頭を掴んで持ち上げ、地面に引きずりながらボウリング見たいに校舎へ激突させる。
痛みにより身体が動かなくなり辛うじて呼吸だけ出来ている一誠の傍に立ったヴァーリは、懐から四本の剣を取り出し一誠を囲むように投げる。
すると、一誠から赤い玉と黒い玉と緑の玉が出てきた。ヴァーリはなんの躊躇いなく黒と緑の玉を引き抜き、緑を虞淵に投げつけ黒を握りつぶす。
「何をしたの!」
慌てて来たリアスが一誠を守るため身を挺してヴァーリを止める。
ゆっくりと右手を上げリアスの顔の前で手を開く。
「死んではいない。これを見れば何か分かるだろう」
開いた手からは砕け散った兵士の
本来人間から悪魔には出来ても悪魔から人間に戻す事は出来ない。一度身体を作り替えたのにまた身体を作り替えるなど副作用が起こる可能性があるからだ。
だが、ヴァーリ達はとある研究の産物で安全に悪魔の駒を抜く方法を見つけ出していた。
渡された緑の玉を大事そうに両手で包み込んで虞淵が近づいてくる。
「これは」
「赤龍帝の篭手だ。君なら馴染むだろう」
そう、神器を安全に抜く方法の途中で見つけていた。
ヴァーリの言葉通り緑の玉は自然に虞淵の身体に入っていき、左手に赤い篭手が現れる。
「うぉっ、マジかよ」
「あぁこの男にはそれを持つに値しない。そう判断した」
リアスの後ろでは神器を奪われたのにも関わらず息をしている一誠がいるため、死んではいないという言葉は本当だと分かる。
だが、さすがにこのままではいつ死んでもおかしくない。すぐに抱えサーゼクスの元へと急ぐ。
「お兄様!」
「......」
「お兄様!!」
「おっとそうだった、レヴィお願いするよ。僕は少し彼に用が出来た」
「おっけい」
魔王専用に魔法陣を展開させリアス達を乗せひとまず一誠の家に直行する。そこであれば医療器具などが多少はあるためだ。
冥界に直接行ってもいいのだが人間に戻ったとされる一誠には毒素が強いので危険だろうと判断した結果だ。
自分の妹を見送ったサーゼクスは倒れている祐斗へと駆け寄る。
琴音が泣きじゃくりながら血塗れの祐斗にしがみつく。
「死んじゃやだよぉ!やだぁぁ!!」
「どけ琴音!」
アザセルは着いてすぐに呼吸の有無と胸に耳を当て心音を確認する。まだ生きている事を確認し電話を取り出し電話を始める。
「祐斗が負傷した!早く救護用意をしろ!再生ポットも使用する、こっちは今から行くから急げよテメェら!」
電話をしながら出血を抑えるため応急処置をしてから抱えあげ、急いで転移魔法陣に乗り転移する。
また大切な者を目の前で失わないために涙を流しながら急ぐ。