木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく 作:暁紅
本来こんな事になるはずが無かったのに!!!
それと、作者はホモでもリアス嫌いもありません。何方かと言えば一番アーシアがダメですね。
突然泣き出したギャスパーに何かをせねばならないと慌てて思考する。考えついたのは三つだった。
一つ、押し倒す。
二つ、抱きしめなでる。
三つ、自主規制。
確実に三つめは十八禁サイドに落ちてしまうので残るは上二つだ。その二つも中々危ない気がするが、今のアーサーはかなり慌てていてゆっくりと考える事が出来ない。
ひとまず頭の中でシュミレーションをしてみる。
泣きじゃくるギャスパーを押し倒す馬乗りする。当たり前のように両手を片手で掴み身動きを取れないようにする。
「へ?な、何を」
「泣き叫ぶ悪い口はここかな?」
背の低いギャスパーの腰辺りに馬乗りした状態でも腰を曲げれば容易に顔に近づけ、耳元で囁くように言い放つ。
何が起きているのか未だ理解出来ていないギャスパーは目を白黒させ、抵抗させぬまにアーサーは唇を奪う。
目を瞑り目元から流れ落ちる涙は純血が散った.........ダメだァァァ!!!こんな事をすればルフェイに嫌われる。そうなれば自殺ものだ。
となれば残るは二つ目の物になる。
頭でシュミレーションをせずに胸元へ抱き寄せる。優しく頭を抱擁し、妹であるルフェイを撫でるように優しく頭を撫でる。
「あっ......う......あぁ...」
ギャスパーは自らも顔を胸を押し付け声を抑えようとしているが、あまりの気持ちよさから声が漏れている。
過去においてもここまで優しく頭を撫でてくれた人や悪魔や吸血鬼はいなかった。誰しもがこの力に恐れ、触れる事すらしない。
撫でられれば撫でられるほど胸が苦しくなる。まるで鎖に締め付けられるような苦しさだ。けれど何故だが心地よさも感じている。
「ふぁ.........ぁ......」
「大丈...夫...か?......」
ギャスパーの声質が突然変わり気持ちよさから、何かを解放したような物に変化する。それに気づいたアーサーは声をかけた時足下が妙に生暖かい事に気付き下を見る。
すると、ミニスカートから黄色い液体が流れ落ち太もも膨ら脛を経由して地面に池を作っている。無論立った状態で流れ落ちるそれはアーサーの足にかかり、黒いズボンはピッタリ足にくっついている。
この年になって漏らしてしまった上に人にかけてしまった罪悪感から余計涙が溢れる。他人に聖水をかけられたとしても抱きてしめる力は緩めずに、全てを出しきった後でもそのままだった。
「うぅ、ごめぇごめんなざい。ぼくのぜいでぐすぅ、ごんなによごれで」
「構わないですよ。私にとってご褒...この程度何ら問題ではないですから」
他人から聖水をかけられご褒美とまで言いそうになったアーサーはもうダメなのかもしれない。
今は簡易的な魔術で服を乾かしている。アーサー的にはこのまま聖水塗れでも良かったのだが、ギャスパーが首を縦に振るわけがない。若干名残惜しいが互いの服を乾かしている。
「そう言えばまだでしたね。私の名前はアーサー・ペンドラゴン。名前の通りアーサーの魂を受け継ぐ者です」
「アーサー......やっぱり騎士様だったんですね」
「私が騎士ならばさしずめ貴方は姫となりますね」
「「.........」」
軽く言った二人だったがよくよく考えれば全くもってその通りだった。
まるで囚われの姫のように封印されていたギャスパー。そこに颯爽と現れた騎士ことアーサー。御伽話のような状況に途端に恥ずかしくなり互いに顔を背けて赤面させる。
無言だった。まるで会話が弾まない。冷戦のような冷たい空気が張り詰める。その間でも二人の心は熱々だが。
「「あの」」
「アーサー様が先良いですよ」
「いえ。貴方が先に」
「「......」」
付き合いたてのカップルのようなイチャつきした上でまた無言になる。
正直このままでも良かったのだが何やら地上が少しだけ騒がしくなり始めたようで、こちらも早く動かなければいけない。
「あの、アーサー様どうしても聞いてほしい話があります」
さっきまでの少しふざけた雰囲気ではなくなり、真剣な眼差しで見つめて来たのでアーサーもふざけた雰囲気を外す。
「僕にはどうしても助けたい女の子がいます。彼女も僕と同じでハーフヴァンパイアで、神器を宿しています。その子は僕の大切な友達で、助けたいけど僕にはそんな力はない......だから助けてください」
「了解した、私の
その場で跪いて宣言するが、ギャスパーの身長が低いせいか頭を下げても胸元まで来ているので妙に締まらない。けれども二人にはそれで充分だ。
宣言に頷き承諾すると、立ち上がりギャスパーを突然抱き寄せる。
目と鼻の先にある綺麗な透き通るほど綺麗な金髪に、整った綺麗な美男子な顔。花畑のようないい匂いも相まり
「へやぁ...」
「おっと」
意識を奪われる。抱き抱えていたおかげで地面に落とす事はなく、気絶した彼を運ぶには抱えることが一番楽なので肩にお腹を中心にしてかける。
そして、空いている右手で聖剣を持つと適当に振り上げる。
一般人であれば何も起こるはずのない無茶苦茶で雑な斬撃だが、剣術においては祐斗以上とも言われているアーサーが振ればたちまち空間が裂け、大きな爆発音と共にオカルト研究部の部室を破壊し地上への道が出来上がる。
軽く足に力を込め飛び上がりフリードの近くに安全に着地する。
「うぁっ!びっくらした、脅かすなよな全く。うん?そいつが保護対象か?」
「あぁそう」
「ギャスパー!!!貴方ギャスパーに何を!!!」
リアスが顔を真っ赤にして大声を上げてくる。
よくよく考えれば、眷属にして夢を叶えると言うだけ言って封印していたリアスが切れる道理がないと思うのだが、そこを突っ込めば余計めんどくさくなるのでそんな事はしない。
「彼も保護するだけだ」
「なんですって!」
「さて、あともう一人だな...白音は誰かな?」
自分の今の名前の『塔城小猫』ではなく本当の名前の『白音』と呼ばれ事に反応したのは二人だった。
一人はリアス・グレモリー。主である時点で知っていてもおかしくないどころか、今の名前を名づけたのが彼女だったりする。
残るはもう一人小猫当人だった。
一瞬の動揺だったがそこを見逃す影胤ではなく、狙いを定めた肉食獣のような眼光になり予備動作を一切悟らせずに小猫の隣に立つ。
「ッ!!」
速いなどの次元ではなく、まるで初めからそこにいたかのように現れた。転移魔法を使ったなら分かるが、その痕跡は一切無かった。
その事から導き出した答えは単なる技術である事だった。数多くの武術には数歩以上の距離を一歩で詰める方法があるらしいので、おおよそそれのどれかだろうと検討を立てた。
小猫は近くに居れば不味い。そう一瞬で判断して横に飛ぶが、離れるより先に中指が弾かれ薬指に当て音を鳴らし、斥力フィールドを半円状に地上に展開する。
直径十メートル程に大きくなりドームのような形になり、転がっていた兵藤を弾き中には小猫と影胤の二人だけにした。
閉じ込められ逃げ道も絶たれ、残るは抵抗のみだが小猫は相手の実力を知っている。とてもでは無いが倒せる訳がない。
勝てる確率は0%だろう。それでも拳を構えないよりはマシなので、ボクシングのような構えをとる。一応はぐれ悪魔と戦闘はした事があり多少マシな構えだ。
「私は君だけに話があってね、他の者達が邪魔だから弾いたに過ぎない。攻撃の意思はない」
「ふッ!」
両手を上げ攻撃意思はないとアピールしたが戦場でそんな行動を信用するバカはいない。小猫は隙だらけの顔面に全力の拳を叩き込む。
なにせ目の前の男は斥力フィールドをもう発動する事が出来ないからだ。憶測の域を出なかったが過去の戦闘でも、斥力フィールドを多数発生させる事をしていないからだ。
これがただの慢心からの手抜きだったのであれば最悪だったが、確実に拳に手応えがある。この憶測は正しかった事になる。
「いい拳だ...だが無意味だ」
「くっ、」
顔を遮る仮面に突き刺さるように刺さった拳だが、二人の体格差的にも小猫は上に飛ばねばならない。
近接格闘は足に地面が付いていなければ力が上手く身体全体に伝わらない事が多い。そこで話を聞いてもらうため手首を掴み上に上げる事でぶら下がっているようにする。
それでも身体捻り蹴りやドロップキックを繰り出し続けるが、地面から一歩も動いていない。
「なんで」
「まだ力の十分の一も解放していないぞ」
「え」
途端爆発的に魔力が高まりこの場にいる誰よりも高まる。推定だが魔王と同等かそれ以上にまでなる。
よく見れば殴った手や足は赤く腫れ上がり血が吹き出ていて、生の手で鉄柱を殴ったようになっている。高濃度な魔力は障壁としても役に立つとは聞いていたが、まさかここまでとは思ってもみなかった。
圧倒的実力差の前に為す術がない。握っていた拳からも力が抜け全体的に完全にぶら下がる。
「おっと傷付けたら不味い。怪我を治そう」
黄緑色の魔法陣を作り出し小猫を通過させると、たちまち傷が治っていく。アーシアの治療の神器のようにジワジワ治るのではなく一瞬だった。
治ったのを確認し地面に足を付けさせてから手を解放する。
「私に敵対の意思はないと言っただろ」
「何が目的」
「簡潔に言うならば君の姉についてだ」
一応傷を治し攻撃してこなかったのでひとまず話を聞こうとし、影胤の口から放たれた言葉に衝撃を受ける。
小猫の姉『黒歌』は猫又の中でも最上位の猫魈なのだが、悪魔に転生し主を殺した事ではぐれ悪魔となった。
後から聞いた話では仙術の力に溺れ暴走した挙句主を殺したとの事。姉が使えたのであれば妹である小猫に使えない道理はないので絶対に使わないようにしている。
今更聞いた所で何か変わるわけでもない。そう思っていたが
「黒歌は君を守るために手を汚した」
衝撃のカミングアウトだった。
開いた口が塞がらないとはこの事だと思ってしまうぐらい唖然とした。今の影胤の話が本当だとすれば『小猫のせいで黒歌が手を汚した』事になる。
「嘘...」
足から力が抜けへたり込む。身体の至る所から冷や汗が流れ溢れ、過呼吸気味になる。
「安心しろ、黒歌本人は別に苦としていない。白音が助かったならと逆に喜んでいるよ」
「姉様が...」
「詳しい話は本人から聞くといい」
「居るんですか!黒歌姉様が!」
「だが、ここではうるさい。付いてきてくれるか?」
数秒間黙り込み差し出された手を掴む事で結論を出した。ドームの外で必死にリアスが叫んでいるが今の彼女には届くはずがない。
今回の任務。
聖剣エクスカリバーの結合。
ギャスパー・ヴラディの保護。
白音の保護。
琴音の保護。
この三つが達成された事により用は無くなったので、手はず通りにいじけているコカビエルをヴァーリに差し出して、影胤達はその場から逃亡した。