木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく 作:暁紅
「なぁ旦那本当に来るんすか?」
「もちろん来るよ」
祐斗とフリードは今廃れた教会ではなく、高層マンションの最上階の部屋にいた。
この部屋は祐斗が自腹で購入した部屋だ。
理由としては曹操達との密会やリアス達若手悪魔の監視がある。
ココ最近はこのマンションには近寄らず、教会で寝泊まりをしている。ではなぜここに来たのかそれはとある人物との合流にあった。
2人の前の空間が突然裂けその裂け目からフルプレートの鎧が現れる。
「え?これ誰?」
「えーと......オーフィスちゃんでいいかな?」
『あってる我オーフィス』
鎧によってくぐもった声でオーフィスは自己紹介をする。
「何かなその鎧」
『我嫌だと言ったのに曹操が無理やり...着せてきた」
鎧を消していつものゴスロリ姿になる。が、そのゴスロリ服の所々が違っていた。
まず鎧に関しては曹操が外は危険が多い、可愛いオーフィスが襲われるかもしれないと強引に着せた。そもそもオーフィスに勝てるヤツなど片手で数えられるほどいないのだが...とは言わない方がいいだろう。
今着ているゴスロリ服も前ほど露出度は低く、スカートの丈は膝下まであり、袖は手首をしっかり覆い白い手袋をはめる。と見せている肌を極限まで少なくしていた。無論これも曹操がオーフィスの美貌にやられるかもと着せた物だ。
2人はさすが過保護に定評のある曹操だと思った。
オーフィスは持ってきていたトランクケースを祐斗に預けると、フリードと一緒にファミレスへと食事に行く。
受け取ったトランクケースを開けると中には2丁の白黒の銃と、1枚の手紙が入っていた。
その手紙には『よう祐斗。お前の要望通り魔力を玉にして発射する銃を2丁作ってやったぜ。それとアイツらの回収頼むな。アザゼルより』と簡潔に文が書かれていた。
2丁の銃を取り上げ数回確かめるように構えると銃のレベルの高さに感嘆しながら懐にあるホルダーに入れ、手紙を燃やしてベットに飛び込み深い睡眠に入ろうとする。
けれど10分たった辺りでフリードから泣きながら電話され、30万分の食事代を払って欲しいと言われ渋々ファミレスへと向かう。
オーフィスを連れ教会に入る。
突然幼女を連れてくれば他の4人の堕天使は頭を傾げる。
「誰それ?」
「クククこの子は私の娘だ。小日向」
「我...蛭子小比奈?うん蛭子小比奈」
「娘ね...まぁ別にいいけど」
多少疑問には思いながらもまぁ影胤ならありえるかもと特に考えない事にした。
「影胤さん私は怒ってますよ!」
「そうか...小日向相手をしてやれ」
「遊び?我遊んでいい?」
「もちろん構わないよ」
「まっ待ってくだ」
アーシアが必死に止めようとするが祐斗はそれを躱してそこら辺の椅子に座り横になる。
オーフィスがアーシアの袖を引っ張るので後で怒ればいいと昔習ったあやとりで一緒に遊んでいた。
寝ている祐斗の近くにフリードが腰を下ろすと周りにバレないように小声で声をかける。
「旦那悪魔達が近づいてますぜ」
「そうか...ならそろそろ動こうか」
祐斗は立ち上がり身体を解すために軽く準備運動をした後、フリードに一振りの魔剣を与え2丁の銃を取り出すと、堕天使4人に向け発砲した。
「な!何をする!」
「裏切るのか!貴様ァ!!」
「裏切る?面白い事を言うな。私達は最初から協力関係ですら無かったはずだがね。フリード」
「ほいさ」
フリードは自身の身体能力を魔力で底上げすると、瞬く間に4人の堕天使の羽を切断する。
4人は突然羽が消えバランスを悪くしその場に倒れ込む。
そうするとフリードが1人1人丁寧にロープで拘束していく。
4人とも拘束が終わるとフリード1人で4人を抱え、オーフィスの開けた次元の裂け目からアジトへと帰っていく。
「アーシアちゃん行くぞ」
「え?何が」
「ここは戦場になるからね」
「はい...」
これでもアーシアは数多くの戦場を見てきた。
大量の血が流れ辺りは鉄臭くなる。その独特な臭いに何度も何度も吐きかけた。実際に吐いた事すらあっただろう。
それでも戦場に行き続けたのは皆を治療するため、けどフリードの真剣な眼差しにここに残るとは言えずついて行く事にする。
それに影胤が負けるはずがないと信じていたから。
2人が去っていってすぐに教会の扉が開かれる。
フリードの言っていた通り一誠達リアス眷属が来ていた。
「蛭子影胤ェェェ!!!」
「随分なご挨拶だね兵藤君」
「アーシアを返せぇぇ!」
祐斗を見て突然殴りかかってきた一誠を片手で止め扉の方に投げ返す。
一誠はまだまだと殴りかかろうとするが、手元に雷を発生させている女が静止する。
「小日向、分かっているね」
「我理解している...ドライグ久しい」
オーフィスは今まで隠していた龍のオーラを解放する。
これこそが今回の件オーフィスの仕事だ。
祐斗は今回ある可能性を危惧していた。
一誠の神器の覚醒。
赤龍帝の篭手が目覚めない可能性だ。
なにせ一誠を殺したレイナーレはすでに捕獲済み、となればもしかすれば怒りで目覚めるとはならないかもしれない。
だから龍の中でも最強クラスのオーフィスに刺激してもらい目覚めさせようとしていた。
その作戦は成功したのか一誠はその場で蹲り左手を抑える。
(ふぅ...成功したな...うん良かった良かっ)
ほぼ感に近かったが咄嗟に身体をそらす。
すると薙刀が振り下ろされ祐斗のとなりの地面が抉れた。
「お前は私の何だ!!」
「これはこれはまさか君が相手とはね琴音」
「何故その名前を知っている!!!」
琴音は1秒にも満たない時間で薙刀の形を変化させ鎖鎌へと変形させる。
武器の変形。これが琴音の神器鋼金暗器の特性だ。
本来この変形を1秒未満で行える者がおらず、その変形の手間からハズレ神器とされていた。
しかし琴音は変形に関しては才能があったのか1秒未満で行える。琴音が扱う鋼金暗器はまさに変幻自在の驚異的な力を見せていた。
今琴音が変形させた鎖鎌は生きているように動き、祐斗の予想を越える駆動で襲いかかる。
「ふん」
銃を鎖鎌に向けて発砲するがあまり効果が無い。ならばと鎌の先端を祐斗が銃の背中の部分で挟み込み動きを停止させる。
琴音はそれを読んでいたのか、瞬きをした瞬間には武器の形がまた変形していた。
今度は巨大な大鋏のような形状になり2丁の銃を絡みとる。
絡みとった銃は床に投げつけ、また変形させる。その形は直角に真ん中で折れ曲がっている
「やっぱり使い慣れない武器は使うものではないな」
祐斗は相手に只の人間と思わせるために懐に手を突っ込み、そこで夫婦剣を創り振り下ろされる剣もどきを受け止める。
もし相手が並の相手であれば驚愕ののち距離をとっただろう。
しかし琴音は逆に顔を歪ませ、親の仇を見るように祐斗を見つめる。
「なんで...なんでお前がぁぁ!!イザイヤの剣を持ってるぅ!!!!」
琴音の記憶にはその夫婦剣に見覚えがあった。
教会から脱出する時イザイヤが死ぬ間際に持っていた剣。
その光景は今でも恐怖の夢としてよく見る。だからこそ見間違えるはずが無い。
それは正しくイザイヤの剣だったのだから。
「返せぇぇぇ!!」
「君が何を勘違いしているか知らんが、これは私のだ」
剣の柄で隙だらけの琴音の腹部に叩きつけ、意識を奪うために地面へと叩きつける。
地面へと直撃した琴音は口から大量の空気を吐き出すとそのまま意識を失う。
「琴音ちゃん!テメェ良くも琴音ちゃんォォ!!!」
(潮時だな...)
痛みが収まったのかしっかりと覚醒した赤龍帝の篭手で殴りかかってくる。
覚醒したのであれば今はここに残る必要性も無いので、大人しく殴られ教会の壁を突き破って飛んでいく。
「ぶっとべ!!」
殴り飛ばし上がった息を整えると急いでアーシアを探すも、すでに逃げているので見つかるはずもなく、飛ばされた影胤を見に行くと、砕けた仮面のみがその場に落ちていて小日向共々消えていた。