木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく   作:暁紅

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原作突入編
原作組と初のご対面


いざ伏線を書くと妙に長くなってしまう。

それと作者からもうあの事件の事は忘れるように...あれは酷い事件だった

───────────────────

今木場は『神の子を見張る者(グレゴリ)』と呼ばれる、堕天使の総本山に来ていた。

 

その訳はヴァーリ経由でアザゼルにとある物の開発を依頼しているからだ。

 

総督専用室でアザゼルは手元にある数本の短剣を弄りながら呟く。

 

「試作品は出来たな。だがデータがねえから何とも言えねぇな」

「ありがとうございますアザゼルさん。それだけでも依頼した甲斐がありました」

 

木場はアザゼルの弄っていた短剣を受け取ると、満足そうな笑みを浮かべて部屋から出ていく。

 

部屋を出た事を確認次第アザゼルは、社長などがよく座っている高級そうな椅子に座ると、背もたれに身体の自由を任せてため息を吐く。

 

「まさかこんな事になるなんてな......たくやってらんねぇな...なぁ」

 

アザゼルにしか開けることが出来ない椅子の引き出しを引き、中に入っている写真に触れる。

 

その写真には今ほどイケイケ系オジサマではないが、少しちょいワル系の若い不貞腐れているアザゼルと、その横で満面の笑みを浮かべている紅髪の綺麗な女性が写っていた。

 

「......アルブラ...」

 

昔を懐かしむように誰にも聞こえないように呟き写真の女性を撫でる。その女性はアザゼルにとって過去、未来にて唯一心から愛した女だと言える存在だった。

 

 

 

▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 

「旦那!一緒に来るんすか?」

「うんもちろん。一応変装はしておくけどね」

 

木場はおもむろにタキシードを着て笑い顔の仮面をつけ、正体を完全に隠した状態で駒王町へと足を運ぶ。

 

駒王町に着くとすでに捨てられた協会へと向かう。原作を知っている者なら分かると思うが、あのイッセーが覚醒する場所だ。

 

内心アニメの世界を目の前で見れると思うとワクワクがたまらないので、フリードだけでなく自分も出張ってきていた。

 

「にしても...ぷぷ...それ面白すぎるぜ旦那」

「これの素晴らしさが理解できないとは残念で仕方がない。まぁ今はさほど関係ないがね」

 

教会の門を開くと中には堕天使達4名が寛いでいて、その後ろでトランプ両手で持って、何をしようか迷っている金髪のシスター『アーシア・アルジェント』がオドオドしていた。

 

アーシアがこちらに気づくと笑顔で駆け寄ってくる。

 

「フリードさんに影胤さん来てくれたんですね」

「影胤さんはやめろと何度も...」

「影胤さん?」

「まぁいいか。残念だが今はそれを置いて仕事に行くとしよう」

「そうだぜアーシアちゃん。この人怒ると何するか分かったもんじゃないからな」

 

フリードの腹部目掛けて回し蹴りをするも、紙一重で躱されてしまう。

 

「フハハハハハ!!!死ね」

「いやザンス!」

 

どこからともなく取り出した短剣をフリードに投げつけるも、紙一重で躱し一向に当たる気配がない。

 

それを見て楽しそうにアーシアは笑っていた。

 

 

仕事という事で来たのはとある一軒家だった。

 

その住民は悪魔と契約をしていて、何かを叶えてもらっているとの事だ。悪魔の契約にもクーリングオフなどはあるので、違法な契約内容になっていないかの確認に来ていた。

 

だがそこである異変に気づく。

 

「これは...血の匂い」

「あっちゃぁ...こりゃまずいな...」

 

アーシアは頭を横に傾げて何がなにやらと言った感じだが、戦場を駆け巡ってきた2人にはすぐに理解出来た。ここに殺し合いがあった事を。

 

3人が中に入ろうとすると、覆面を被ってその手元に血塗れのナイフを持っている男が出てきた。

 

「な、見たな!てめえらも殺して」

 

男が何かを言い終わる前に木場が中指を使ってフィンガースナップを行う。

 

フィンガースナップによってなった音を皮切りに、木場の身体から何かが円状に広がり、男に当たると吹き飛ばされまた家の扉を潜り、テレビなどが置かれている大きな洋室の壁に激突する。

 

「がハッ!」

「痛いかね?だがこれをやったのは君だろ?」

 

木場は靴を脱がずにそのまま入ると、壁にねじり込んでいる男の近くには、裸で至る所が刺し傷だらけの高校生ぐらいの女性。目の前で行われていた事がよほど悔しかったのか、血が出るほど爪がくい込んでいて、夥しい量の血を出している少し小太り目の男。料理を作っている途中だったのかエプロンを付けたまま、白い服が真っ赤に染まっている女性。

 

これだけで何が起きたのか一目瞭然だった。

 

一家団欒としてる時に突如目の前にいる覆面の男が侵入して、母を殺して、父の腹を裂くと、娘を捕まえ欲望の限りを尽くしたようだ。

 

木場の出している謎の力がさらに強まり、覆面の男は壁にめり込んだ状態で、口から大量に血を吐き出して絶命する。

 

 

「アーシアちゃんもう無理だぜ。そいつらは死んでる」

「けどけど」

 

アーシアは必死に神器の力を使って治そうとするが、彼女の神器では死者を蘇られせる事は出来ない。

それでもなお何度も何度も力を使う。

 

木場はフリードにアイコンタクトを送ると、ため息を混じりにアーシアの首に衝撃を加え意識を刈り取る。

 

「はぁあ...なんで俺っちにすぐこういう役目を押し付けるかね?」

「後で何か奢ってやろう......微弱な魔力?悪魔か?いやにしては何故転移してこない...」

 

 

木場が気づいたのはかなり微弱な魔力が近づいて来てること、さらにその独特な気配から悪魔だと分かった。普通は悪魔は転移をしてくるものだがと...そこで一つ思い出した。

 

しくった!!ここあれじゃね?フリードとイッセーが対面した場所じゃね!!

 

イッセー覚醒を楽しみにしているあまり、細かいことを忘れていてやっちまったと後悔していると、イッセー到着して走って洋室につく。

 

「なっ...これは......それにアーシア!!てめえ...アーシアに何しやがった!!」

「これはこれはまさかこんな所で会えるとはね...グレモリー眷属の悪魔兵藤くん」

「俺の名前なんで知ってんだよ!!」

「興奮するな。まずは私の自己紹介から、私の名前は蛭子影胤。君たち悪魔と違い人間だよ」

 

イッセーはやはりと言っていいが怒っていた。まぁ意識のない女性を抱えてたら誰しも怒るだろ、それが知り合いだとしたら尚更だ。

 

フリードに手を払うサインを送ると、ベランダへと繋がっている窓を蹴り壊し、ベランダに飛び出ると隣の家の屋根へと飛び上がる。

 

「アーシア......絶対許さねぇ!!」

 

イッセーはまだ覚醒していない神器『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』を展開して、殴りかかってくる。

 

イッセーとしては全力なのだろう。それでも如何せん遅すぎる。数々の死闘をくぐり抜けた今の木場にとっては、少し前まで一般人だったイッセーの拳はあまりにも遅すぎた。

 

左手を後ろに回し、右手だけでイッセーの拳を受け流すと、バカなと言わんばかりの顔になる。

 

「クソッタレ!!!」

「はぁ...詰まらん」

 

バカの一つ覚えのように突き出してくる手の手首を掴むと、攻撃の勢いを使って思いっきり引っ張り足をかけると、宙を一回転して地面に腰を叩きつける。

 

叩きつけられた衝撃で一瞬呼吸が乱れ、上手く空気が入ってこなくてジタバタとしていると、ジタバタしているイッセーをお姫様抱っこの形で抱え白髪の少女が飛び去り、木場目掛けて落雷が落ちてくる。

 

落雷は自然現象のような物ではなく確実に魔力で作らてた人為的な物だ。そのため他の物に飛ぶことなく木場をゴール地点としている。

 

それを身体から放出する謎の力を円状に自分の周りに配置して、その落雷を地面に受け流す。

 

このような芸当が出来るものは木場の記憶には一人しかいない。

 

「まさかリアス・グレモリー自ら出向くとは...驚愕だ」

「名前は知られているのね。まぁ良いわ。それよりも良くも私の可愛い下僕を虐めてくれたわね」

 

綺麗な紅髪を揺らして右手を開いて顔の近くに上げると、その上に紅色の魔力が丸い形で浮かぶ。

 

リアス・グレモリーの強力な能力。

滅びの力、消滅の魔力とも言われているそれは、防御不能な上ダメージも強力。最強最悪と名高い能力だ。

 

それは木場の使っている謎の能力。

アザゼル特製斥力発生装置を使っているので、消滅の魔力など耐えられるはずが無い。

 

ここでは戦うべきではないと判断して、懐から閃光玉を取り出してそのまま投げる。

 

投げてから数秒すると視界を全て隠すような強力なフラッシュが起こり、リアス達の視界を完全に奪う。

 

「逃がさない!」

 

視界が奪われ何も見えないがとりあえず、消滅の魔力を投げつける。

 

結果は誰にも当たらず、木場は逃げ切ったという形になった。

 

「やられたわね...どうかしたの?悠里?」

「いえ別に」

 

リアスの質問に素っ気なく答えそっぽを向いた悠里と呼ばれた少女は、身の丈ほどある薙刀の神器をしまい、その黒い髪を揺らして一人夜の街を歩く。

 

あの仮面の男どこかで......

 

悠里の心には決してあった事の無い筈の先程の男が、どこか懐かしく大切な人の様な気がしていた。

 

だがそれはありえないと頭を振る。

 

悠里にとって大切な人だった『イザイヤ』は自分を助けて死んだのだから......

 

 

 


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