木場きゅんに憑依した俺は皆に勘違いされながらも生きていく   作:暁紅

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木場祐斗の宿命からは逃れられない

 

なんと嬉しいことにこの作品の色が黄色になりました。

1度みて見間違えだろ?と見直してもやっぱり黄色。

あまりの嬉しさに授業中に叫びかけてしまいました。

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曹操は虞淵の強さに驚いていた。

 

三分の二程の力で振る聖槍をいとも容易くいなし、相手の攻撃はいなしても手が痺れてしまう。

 

だが、それは人間にしてはだ。

人間でありながら圧倒的に規格外の男。木場祐斗と戦ったのだ。

 

昔であれば強敵となっていたであろう男だが、木場祐斗に比べれば天と地程の差がある。その事を考えていると自然と笑みが零れる。

 

「何がおかしい!!」

 

虞淵は連続で拳を打ちながら声を上げる。

それに応えるために聖槍と腕を絡ませ、攻撃を1度やめ応える。

 

「君以上の男と戦っていてね。彼と比べるとあまりに違いすぎて自然とね」

「俺よりだと...まさか来てるのか!ここに!」

「あぁそうだとも」

「しくったな。奏汰が当たっていればいいが...」

「彼の名前は木場祐斗......君たちに分かるように言えばイザイヤだな」

 

イザイヤの名前を聞いた瞬間顔色が一瞬で変化する。

 

「まさか来てるのか!イザイヤがここに!」

「もちろん」

 

虞淵は右人差し指で空を切ると、切った場所に魔法陣が現れどこかに連絡を取り始める。

 

それを見ていた曹操はやはりイザイヤの家族なんだなと思った。木場祐斗と同じようにすぐに他人を信じる。そこが弱点と言う者もいるだろうが、逆にそこが強みだとも思っている。

 

今度も曹操は笑みを浮かべるが今度の笑みは先程のとは違い、孫を見るおじいちゃんのような暖かさがあった。

 

 

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「なるほど......やはり生きているのですね」

「無論だ。この俺が治療をしていたのだからな!」

「ごめんなさいね。こいつ馬鹿なの」

「馬鹿とは何だ馬鹿とは」

 

駄目だこいつ...早くなんとかしないと...と言いそうな顔でジャンヌは横に首を振る。

 

2人の仲の良さに久方ぶりに笑っていると、突如魔法陣が現れ虞淵の声が聞こえてくる。

 

『シェル実は』

「イザイヤが生きていたですね。既に聞いています」

『そうか、ならば誰が戦っている?連絡が無いことから考えるともしかして奏汰なのか?』

 

シェルは少し待ってと言って、指パッチンを鳴らすと目の前に大きな見取り図のような物が現れ、1人とチェックをしていく。

 

違う、違う、違う、いた!イザイヤの相手をしているのは...最悪。

 

「マズイわね。貴方の予想通り奏汰が戦っているわ」

『な!急いで俺を飛ばせ!』

「待ちなさい。逃げられないように結界が張ってあるの......自分でやっといて何ですが、時間が少しかかりますわね」

「ふはははは!それならば!この俺に任せろ!」

『その声はゲオルグか...ならばどうにかなるな』

「確かに貴方ならば...お願いします」

「ふ、任せろこの世界最強にして、究極の魔術を操りし」

「早くしなさい!」

 

ゲオルグがカッコつけるために立って、目の前で手を交差させたタイミングで、ジャンヌが後ろからドロップキックを叩き込んだ。

 

壁を数枚破壊して飛んどいったゲオルグは、すぐに立ち上がり凄い剣幕でジャンヌに近寄る。

 

「貴様!殺す気か!」

「ち、生きてたか」

「ほほうジャンヌ・ダルクとあろう者が舌打ちか...いい度胸だな」

「貴方の方こそ。今は急いでるの早くしなさい」

「貴様に俺が命令できるのか?」

「当たり前よ。私は恥ずかしいことなんて何もしてないもの」

 

ジャンヌの一言にゲオルグは笑いが止まらない。

 

恥ずかしい事をしていない?それは全くの嘘だ。

 

「ならば言ってやろう」

「別にいいわよ。どうせ嘘でしょから」

「ジャンヌお前は、ジークソックリの人形を使って夜な夜な」

「きゃぁぁ!何であんたが知ってるのよ!」

「俺に不可能等なし!」

「くっ......後で殺す絶対殺す」

「良いのかそんな事を言って。ジークに知られたらどうなるか分かるよな?」

 

ゲオルグはジリジリと近寄っていく。

 

「くっ私が悪かったわ。だから言わないで」

「気持ちが足りん!」

「私が悪かったです。本当にごめんなさい」

 

ジャンヌはすぐさまその場で土下座をして、許しをこう。彼女はさっきの反応通りジークの事が好きなのだ。

 

出会いとしては物心ついた時から同じ教会の施設にいて、そこから脱獄してからもずっと一緒だった。

 

だがずっと一緒にいると逆にくっつきにくく、夜な夜な1人で慰めることしか出来ていなかった。

 

それがもしバレれば嫌われるどころか、関係が絶たれる可能性がある。だからこそここでは謝った。

 

ゲオルグは馬鹿なので鼻を鳴らした後、すぐに結界の解除の作業に取り掛かる。

 

殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す。百回殺してまた殺してやる...

 

ジャンヌは呪うように誰にも聞こえない声で呟き続けた。

 

 

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木場は物陰に隠れて上がっていた息を整える。

 

身体中に氷が転々とついていて、辛うじて出血死はしないようになっているものの、片手がなくあまりの寒さに手がかじかみ上手く剣を握れない。

 

奏汰の神器は氷系統の物らしく、辺りにもその氷の影響を与えかなり温度が下がっている。さらに今いるのは隔離空間。

 

1度下がった気温はまともに上がらず、逆にどんどんどんどん気温が下がっていく。

 

「どこにいるのぉ?偽物くん!アヒャハハハ!そこかな?それともこっちかな?」

 

奏汰はそこらじゅうの物陰に攻撃をしていく。

鉄骨すら氷で貫き、氷でその物陰ごと凍らせる。

 

今は覗けないが、足音は反対の方に向かっているので、その間に息を整えて

 

「みぃつけたぁ!」

 

逆にいると思っていたのに、突然屋根から下半身を氷で吊らせて不気味な笑みを浮かべて現れる。

 

奏汰の周りに氷の粒が100個現れ、それらが高速回転して木場を狙う。

 

それを切るために『魔帝剣グラムVer.FLAME』にして、残っている左手で握り氷の粒を全て切断する。

 

「はぁ...はぁ...危なかった」

「いがいにやるね!けどもう無駄だよ。私は本気で行くからね!禁手(バランス・ブレイクゥゥ)!!!」

 

奏汰の背中に六つの氷塊が集まり始め、氷塊が砕けると六つの蜘蛛のような足ができる。

 

氷の蜘蛛の足で地面に立ち、奏汰の身体が上に浮かび上がる。その足と地面の接触部分は凍っていく。

 

さしずめ『氷結の女王蜘蛛(ゲフリーレン・ケーニギン・シュピネン)』だろう。

 

「くっグラ」

「おそいよ!あはは!」

 

地面から突き出てきた氷の刃が木場の最後の片腕を切り飛ばす。

 

完全に意識外からの攻撃に避けきれなかった。

 

「おしまぁい!」

 

最後に四つの足が一つにまとまり、巨大な氷の剣となって木場の胸を貫く。

 

ちょうど全てが終わったタイミングで虞淵と曹操達が入ってくる。

 

 

「そんな...」

「あ、虞淵どうしたの?珍しいねここに来るなんて」

「なんで...なんで殺した!」

「え?だってイザイヤの真似をしている偽物な上に、敵だよ?殺さなくちゃ」

「違う...違うんだ...そのイザイヤは本物なんだ...」

「...え?...嘘だよね......」

 

奏汰は禁手を解いて虞淵に聞き返すが、虞淵は首を横に振る。

 

それが信じられないと改めてイザイヤを見る。

 

あれ、イザイヤ?...嘘だよね...イザイヤじゃ......

 

目から大粒の涙が溢れる。あの時イザイヤを置いていってしまった時以上にだ。

奏汰につられ虞淵も泣き始める。

 

それを見ていて随分と悪趣味だなと思い曹操

は声を上げる。

 

「いい加減出てきたらどうだ?祐斗」

「あはは、何か出るタイミングが掴めなくて」

 

その声は2人が聞きたくて聞けないと思っていた声だった。

 

すぐに声の聞こえた方に顔を向けると、子供の時と同じ顔で笑いかけてきて

 

「ただいま2人とも」

「「イぃザぁイヤぁぁ!!」」

 

2人とも泣きじゃくりながら久々の再開に感動する。

 

それからすぐに別々の空間にいた皆もやって来る。

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね迷惑かけて」

「べつにいいさ。生きてたんだからな」

 

木場からして見れば本の数日ぶりなのだろうが、彼らにして見れば7年ぶり。

死んだと思っていた人物との再開嬉しい事この上ないだろう。

 

みんなに挨拶を終え何があったのかを話した。禍の団に拾われ治療を受けて戻ってきた事を。

 

「ありがとうございます。僕のイザイヤを助けてくれて」

「君のだと?ははは随分と面白い事を言うな」

 

曹操と奏汰は互いに睨みつけ合う。

 

「当たり前。なんたって私は結婚しようと言われたから」

「ふはははは、御笑い種だな。結婚しよう?所存は口約束だろ。生憎と私は血が出る程深くさした。そしたらあっという間に背後を取られ押し倒されたよ」

 

奏汰はそれを聞いて嘘だよねと木場に聞くも、木場はそれを肯定する。

 

言い方が悪いだけで何も間違っていない。

 

血が出る程深く聖槍をさして、刺していたのは身代わりですぐに背後を取って組み倒した。

 

うん何も間違ってない。けど説明不足。だからつけたそうとするも全くこちらの話を聞いてくれない。

 

「そう...なんだ......いいよだったら......コロセバイインダヨ。アナタジャマ」

「かかってこいクソ豚」

「「ふっ!」」

 

2人はすぐさま禁手をおこない聖槍と氷の足をぶつけ合う。

 

この時に木場はたまたま周りを見てしまった。

 

「すまない2人とも離れてくれないか?」

「嫌よ。私の方が付き合い長いのよ、だったら私が隣にいる権利があるの」

【時間なんて関係無い。一緒にいた時間の密度】

「へぇ...面白い事言うのね。漫才師になった方が良いんじゃない?」

「【あはははは!】」

「すまないリーダー助けてくれ」

 

ジークは焔とジャンヌに挟まれイチャつき、

 

「よし行くぞ飛べ飛べ天まで飛べ!!」

「「わーーい!楽しい!」」

「我も楽しい」

 

足元にヘラクレスの能力で爆発できるようになった物を設置して、それを上に飛んだタイミングで爆発させて空高く飛び上がる。

 

それが楽しくて楽しくて仕方がなく、リンとレンとオーフィスは遊んでいる。

 

「なるほど...そうなるのですね」

「あぁ確かに神器と魔術を組合われるのはいいが、貴様はまだ知識が少ない。だからこそ簡単に破られる」

 

ゲオルグとシェルは結界の事について仲良く話していた。

 

そう木場以外は基本男女のカップルが出来ていて、木場だけは男が集まっていた。

 

そんな......確かに原作だとホモっぽいけど、それを回避してきたのに......なんで...何でなんだよ!!!

 

木場の悲痛の叫びは誰にも聞こえる事は無かった。

 

 

 

 


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