5月26日
川内を仲間にしたのは良いけどSebicのせいで安易に行動させることはできない。ちなみにSebicっていうのは『Self-controlled behavior identification control system』の略だ。
五十鈴は物知りね、なんて言ってたが憲兵としての必要知識である。勉強に使えといって手渡された枕にするにも余りあるほどの厚みを誇る専門書に載ってたし、テストにも出たんだから基礎知識なんだろう。
っていうかあの本は分厚すぎて逆に使いにくかった。なんでもひとつにまとめればいいってもんじゃないんだぞ。
とりあえずSebicによる行動の制限をどうにかしないことにはいかんともしがたいな。まあ五十鈴との会話から得られたヒントもあるし突破口も見えないわけじゃない。
自称情報通だっていう青葉さんにも聞いてみるか。まさか無理やり交換させられた連絡先がこんなところで役に立つとは。
5月27日
今日は週に一度の休日だったこともあり、鎮守府内の艦娘達から完全に敵認定を受けてる俺はここぞとばかりに外出した。鎮守府から逃げ出す意味もあるが、最たる目的は周防さんとこの青葉さんに話を聞くことだ。
その成果は上々。睨んでいた通り十九渕鎮守府が艦娘に対して行っている行動制限には穴がある可能性が高まった。しかもかなりの大穴である。提督や先輩方は相当なバカなのかもしれない。
いや、どっちかって言うと慢心の方が正しいか?これまでは上手くいってたから油断もあるんだろう。
そのおかげで身内の裏切りに対しては滅法弱い仕様になってしまっている。
この大穴に気付いてる憲兵他にいたりしないのか?それとも気付いてるけど見て見ぬふりをしてるのか?
まさかこの大穴自体が罠だったりするんじゃ……。
5月28日
今日は川内とかくれんぼをした。
あいつマジで忍者かもしんないわ。
5月29日
一昨日の日記で意味もなくフラグを立ててみたが不発に終わった。要するに問題なく目的を達成できた。
色々調べてみたけどSebicが廃れたのって艦娘の人権問題だけじゃなくて、単に性能不足も原因だったらしい。まあ付け入る隙がだいぶ多そうだもんな。
いやまあ行動にある程度の指向性を持たせるには有用なんだろうが、自分が不利になることを全て管理しようとするならそれらを網羅しきって禁止行為を設定しなきゃいけない。思考する頭を持ち、自分の意思で行動できる艦娘をSebicだけで拘束できるかといえば難しいだろう。
考えてみれば当然だよな。
あとはSebicの現物を押さえるか入手ルートを割り出せれば下準備は終わり。告発は青葉さん経由で周防さんに届ければいいのか?
この辺も後で聞いておこう。
6月3日
青葉さんにクソほど怒られた。いつも笑ってたけど怒るんだなあの人。
最初は冗談かなんかかと思って笑ってたけどマジな話だと察すると沈黙。そして大噴火に到る。
まあ危ないことをした俺の身を案じるのと、仲間の艦娘を虐げられていることに対する怒りが原因なんだけど。
それもひとまず落ち着き、その後の非常に冷静な話し合いの末、集めた証拠は青葉さんが後日受け取りに来るということになった。万が一第三者の手に渡ると危険だから郵送はダメらしい。
だから受け渡しの日まで俺が保管してなきゃいけない。高額の宝くじが当たった人が換金するまでくじを保管してるのってこんな気分なのかも。
6月4日
めっちゃ川内に懐かれてる。気のせいか?
……いや、朝起きたら俺のベッドに潜り込んでるとか、これを気のせいで済ませるほど鈍感にはなれねーわ。またまた誓うが俺は川内にも手は出してないからな。
そして今も机に向かって日記を書いているわけだが、さっきから背後に気配を感じる。部屋の扉が開いた音はしなかったんだけどどうやって入ってきてんだ。さすが忍者の末裔。
とりあえず心臓に悪いから普通に入ってこいよ。
『Self-controlled behavior identification control system』は単にそれっぽい単語を並べただけなのでたぶん意味はめちゃくちゃです。
訳するなら『自律行動制御システム』とか?
とりあえずそんな感じのものを取り付けられてると思ってくださればオッケーです。
ちなみにどういう原理で、とかそういう設定は考えてないのでそこも各自で補完して頂ければ幸いです。