憲兵さんの日記   作:晴貴

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3話 下がる好感度、増す敵意

 

 

5月16日

 

 今日は朝から災難だった。憲兵長が出くわすなり「五十鈴の具合はどうだった?」と尋ねてきたからだ。それも周りに艦娘達がいる衆人環視の状況で。

 天地神明に誓うが俺は五十鈴に手を出してない。が、憲兵長にそう返すわけにもいかないので調子を合わせるしかなかったんだよ。もしこれを読む人がいたら信じてほしい。

 こう書くとなんか遺書みたいだけどあながち間違いじゃない気がしている。朝の一件で艦娘達から無言の殺意が飛んでくるようになった。痛いくらいに刺さる刺さる。

 

 特に茶髪ショートカットの名取という艦娘からの憎悪はすさまじかった。それとなく先輩から聞き出したところ名取は五十鈴の姉妹艦、妹らしい。

 姉が無理やり傷物にされたとなったらそりゃ怒る。いつか殺されるかもしない。

 強姦の報復で殺されるとか家族にも迷惑がかかるので改めてここに宣言しておくが、俺は本当にやってない。なんなら五十鈴本人に確認を取ってほしい。

 

 たとえ俺が逮捕されたり殺されたりしてもその汚名だけは返上していただきたい。

 

 

 

 

 

5月19日

 

 状況は最悪だ。様子見の五十鈴以外、艦娘からの好感度はマイナス方面にカンスト。

 対して提督や憲兵長を始めとする同僚達には結構気に入られている。まあそうなるように振る舞ってるから当然なんだけど。

 

 とりあえずこの鎮守府について調べることにした。怪しまれない程度に探りつつ、毎夜部屋に招いている五十鈴からも話を聞き出して情報を精査中だ。

 ……なんだけど、まだ始めて間もないのに目を覆いたくなるような犯罪行為が横行している事実が浮き彫りに。なんだよこの鎮守府、クソ野郎しかいねーじゃねぇか。

 そして傍目から見たら俺もそんなクソ野郎共のお仲間である。泣きたい。

 

 ちなみに五十鈴を毎晩部屋に連れ込んでいるのはいくつか理由があるからであって、決してやましいことはしてないからな。

 

 

 

 

 

5月20日

 

 今日はこの鎮守府に来てから初めての休日だった。事前に調べておいた周辺の観光スポットには目もくれず、東京まで出張って調査に必要な機器を購入して1日を終えた。

 盗聴器とか小型カメラがあんなに高いなんて知らなかったぜ。

 安いのもあるにはあったけど、しっかりとした証拠にするためには質の高い物の方がいいということなので店員に勧められたやつを買ってきた。

 

 あとはこれを仕掛け、効率的かつスピーディーに言い逃れの余地のない証拠を揃えたい。じゃないとそろそろ限界を迎えそうな艦娘がちらほら見受けられる。

 しかしここに来てまだ1週間足らずの俺が、なんで内部告発の準備なんてしてんだろうな……。

 

 

 

 

 

5月22日

 

 名取怖い。

 

 

 

 

 

5月23日

 

 情報収集を継続しているが、どうしても探りを入れられないところがある。提督の執務室だ。

 なぜかと言えばだいたい提督が常駐してるし、2人1組の憲兵がローテーションしながら24時間見張りを行っているせいだ。見られちゃ困るものがあると言ってるようなもんだよな。

 なにせその仕事は大したことをするわけでもないのに限られた憲兵、古株の人間しか担当できないんだとか。ここに来たばかりの俺にはお鉢が回ってこない。

 

 かといってそんなもんに選抜されるほど時間をかけるつもりはないので、なんとか別の手段を考えるしかない。

 五十鈴にも相談してみよう。

 

 

 

 

 

5月25日

 

 五十鈴との協議の結果、川内(せんだい)を引き入れることにした。なんでも彼女は隠密行動が得意らしい。なんだ隠密行動が得意って。忍者か。まあ名前だけなら俺も(しのび)だけど。

 そんな下らない話はさて置き、川内も協力してくれることになった。ちなみに川内を俺の部屋に招く際にちょうどいい口実がなく、そして他の憲兵にも怪しまれたくなかったので「俺の部屋に来い。夜戦だ」というゲスさ満点の文句で連れ出した。神通と那珂からの殺気がとんでもなかったね。

 

 この話をしたら五十鈴に怒られた。なんでも名取の方も最近俺への敵意が増すばかりらしい。

 まあこうして毎晩部屋に連れ込んでれば勘違いもされるか。

 しかし五十鈴も川内も妹に愛されてるなぁ。

 

 

 


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