こいつの絶望感半端ないですよね。
ラスボス的にはドン・サウザンド以来の衝撃でした。
ランサー・アルトリア・オルタと激闘を繰り広げ、満身創痍となったモードレッドは駆けつけた遊馬と玉藻が回復系カードと水天日光天照八野鎮石で魔力を回復させていく。
アストラルは消滅したランサー・アルトリア・オルタのフェイトナンバーズを回収し、遊馬のデッキケースにしまう。
「遊馬君、あれどうしましょう……」
「フォウ……」
マシュとフォウはランサー・アルトリア・オルタとの戦闘で大破したエクストリームバイクを見て呟く。
「あちゃあ……こいつはもうダメだな……」
完全に大破してパーツがバラバラで破壊されており、もはや動かすことや修理すら出来ない状態だった。
「まぁ貸したのは俺だからな……ダ・ヴィンチちゃんには後でちゃんと謝るか……」
貸したのは遊馬自身だったので責任を持って遊馬がダ・ヴィンチちゃんに謝罪することにした。
魔力を回復させて動けるようになったモードレッドは晴れ晴れとした笑顔で立ち上がった。
「よーし!それじゃあ聖杯を取りに行こうぜ!!」
「機嫌良いな、モードレッド」
「当然だぜ!俺は聖槍を持つ父上に勝ったんだからな!つまり、俺は父上を超え──」
「ほぅ、モードレッド……騎士が調子に乗るとは良い度胸ですね……?ここは一つ教育的指導が必要ですか……?」
アルトリアは調子に乗るモードレッドに制裁を下す為に恐ろしい笑みを浮かべながら右手の指をパキポキと鳴らしてアイアンクローの準備をする。
「ギャー!?ち、父上ごめんなさい!もう言わないから許してぇ!!」
頭がヒビ割れそうになるほどの強力なアイアンクローの恐怖が蘇り、モードレッドは遊馬の後ろに隠れた。
「まぁまぁ、アルトリア。モードレッドは頑張ったんだからさ」
「いいえ、マスター。この子はすぐに調子に乗りますから徹底的に教育的指導をしないといけません!この子はまだまだですから厳しく行きます!」
手をグッと握りしめて決意を固め、これからもどんどんモードレッドに『親』として厳しく接していくつもりのアルトリアの姿に遊馬とモードレッドは戦慄する。
「うわぁ……アルトリア、うちの姉ちゃんみたいに怖ぇ……」
「ううっ、獅子劫の優しさが恋しくなるぜ……」
何だかんだでアルトリアに弱いモードレッドは涙を呑んだ。
魔霧が薄れているのでかっとび遊馬号で元の地下通路への入り口まで向かい、そこから再びアングルボダの聖杯を回収しに向かった。
地下通路を歩きながら一緒について来た金時と玉藻に人理焼却やカルデアの事情を説明する。
二人は未来を救うという大きな重みをその小さな背で背負う遊馬の心意気を認め、契約する事にした。
契約した金時と玉藻の現れ、また新たな仲間との絆の証であるフェイトナンバーズが生まれ、遊馬は満足気にデッキケースにしまった。
契約したのは良いが、玉藻はアンデルセンを見ると嫌な表情を浮かべ、またアンデルセンも玉藻に対して毒舌を吐きまくる。
どうやら二人はどこかの聖杯戦争で面識があるようだった。
雑談しながらようやく地下洞窟に到着し、目の前に広がる巨大蒸気機関アングルボダを見て遊馬は当たり前な疑問を投げかける。
「これ……どうやって中から聖杯を取り出す?ってかどこに組み込まれてるんだ?」
「そうですね……ここは行き当たりばったりで見つけるよりも、カルデア管制室に任せてサーチしてもらった方が良さそうですね」
「そうだな、サンキュー、マシュ。あーあー、カルデア管制室、どこに聖杯があるかサーチを頼むぜ」
D・ゲイザーでカルデアと連絡をし、管制室にいるオルガマリーから返信が来る。
『了解したわ。すぐに解析を始めるわ。もう大きな敵はいないからあなた達は休んでいて……待ちなさい、何よこの反応は……!?』
「所長?」
『みんな、気をつけて!地下空間の一部が歪んでいるわ!何かがそこへ出現します!サーヴァントの現界とも違う不明の現象よ!警戒して!!』
カルデアで感知した謎の反応にオルガマリーは必死の警告をする。
D・ゲイザーを装着した遊馬とマシュはその言葉に驚愕し、すぐに仲間達に伝える。
「みんな!気をつけろ!何かヤバいのが来るかもしれねえ!」
「皆さん、迅速な戦闘準備を!!」
遊馬とマシュが大声でサーヴァント達に警告すると一斉に反応して宝具を構え、戦闘態勢を取る。
『何よこれ……レイシフトに似ている?そんなはずはない、カルデア以外にこの技術は無いはず……』
「……遊馬」
「ああ……感じるぜ。場を支配するような大きな気配が……!」
遊馬とアストラルは似たような感覚を思い出し、遊馬はすぐにデュエルディスクを構えてデッキから5枚ドローする。
そして、空間が開くと中から人影が出て来た。
暗くてその姿が見えない中、その人影から声が響く。
「魔元帥ジル・ド・レェ。帝国神祖ロムルス。英雄間者イアソン。そして神域碩学ニコラ・テスラ 多少は使えるかと思ったが──小間使いすらできぬとは興醒めだ。下らない。実に下らない。やはり人間は、時代を重ねるごとに劣化する」
人間を否定するかのような言葉を発し、マシュは全身に寒気が走り、体が震えていた。
「マシュ、俺たちの後ろに下がってろ」
「この桁違いの魔力量……そして場を支配するかのような気配……まさに神に等しき存在か、もしくは神そのものだな」
遊馬とアストラルは精神を強く奮い立たせ、謎の存在から発せられる気に飲み込まれないようにした。
『遊馬!マシュ!何があったの!?状況を説明して!』
謎の存在により通信が音声だけとなってしまい、オルガマリーは必死に呼びかける。
「ほう。私と同じく声だけ届くのか。カルデアは時間軸から外されたが故、誰にも見つけることの出来ない拠点となった。あらゆる未来──全てを見通す我が眼ですら、カルデアを観る事は難しい。だからこそ生き延びている。無様にも。無惨にも。無益にも。決定した滅びの歴史を受け入れず、いまだ無の大海にただよう哀れな船だ」
そして、人影に光が差し込み、その姿がはっきりと見えて来た。
それは王のような気品のある衣装に身を包み、左右の10本の手の指に不思議な金色の指輪をはめた男だった。
「それがお前たちカルデアであり、九十九遊馬とアストラルという個体。燃え尽きた人類史に残った染み。私の事業に異なる世界から訪れた、私に逆らう愚者の名前か」
あまりの強いオーラにマシュ達は息を飲むが、遊馬は一歩の大きな踏み込みをして指差をする。
「──てめえが、人理を焼却した黒幕だな!!」
「レフの言っていた王は貴様の事だな。何者だ!」
「ん?何だ、既に知り得ている筈だが?そんなことも教わらねば分からぬ猿か?だがよかろう、その無様さが気に入った。聞きたいのならば応えてやろう。我は貴様らが目指す到達点。七十二柱の魔神を従え、王座より人類を滅ぼすもの」
そして……遂に人理焼却の黒幕の真名が判明した。
「名をソロモン。数多無象の英霊ども、その頂点に立つ七つの冠位の一角と知れ」
「ソロモン……!??」
「伝説の魔術師にして古代イスラエルの王……!」
カルデアで魔神柱の名前からして黒幕がソロモンの名前が挙げられたが、あり得ないとその可能性を捨てたがまさか本当にソロモンだとは思いもよらなかった。
「ハッ、そいつはまたビッグネームじゃねえか。するってーと何だ。テメエもサーヴァントな訳か?英霊として召喚され、二度目の生とやらで人類滅亡を始めたってオチか?」
モードレッドはソロモンがどこかのマスターに召喚されて人理焼却を行なったのかと推測をした。
「それは違うな。ロンディニウムの騎士よ。確かに私は英霊だが、人間に召喚されることは無い。貴様ら無能どもと同じくらいと考えるな。私は死後、自らの力で蘇り、英霊に昇華した」
自ら蘇り、英霊となった……それは本来ならあり得ない事態である。
英霊とは多大な功績を挙げ、人でありながら精霊の域にまで達した存在。
死後は『英霊の座』と呼ばれる場所へと招かれるのだ。
「英霊でありながら生者である。それが私だ。故に、私の上に立つマスターなどいない。私は私のまま、私の意思でこの事業を開始した。愚かな歴史を続ける塵芥──この宇宙で唯一にして最大の無駄である、お前たち人類を一掃する為に」
「ふざけるな!てめえがどれだけ大きな力を持つ存在でも、そんなことをする権利なんてない!!」
「それを言うなら元々貴様も人類の一人に過ぎない筈だ。まるで、その言い方は貴様自身が『人類以外の存在』だったようだな」
アストラルの鋭い指摘にソロモンは興味深そうに見つめてニヤリと笑みを浮かべる。
「ほう……異世界の精霊、アストラル。貴様はなかなか優秀だそうだな。貴様に問おう。何故そんな人間の子供の側にいる?人間は死を克服すらできない知性体だ。にも関わらず、死への恐怖心を持ち続けた。死を克服出来ないのであれば、死への恐怖は捨てるべきだったと言うのに。死を恐ろしいと、無惨なものだと認識するのなら、その知性は捨てるべきだったのに!無様だ。あまりにも無様だ!!アストラルよ、こちら側に来い。貴様のような人類を超えた素晴らしい存在なら喜んで迎え入れよう」
ソロモンはアストラルを気に入り、仲間へ引き入れようとしていた。
アストラルは軽く目を閉じてから静かに開き、鋭い眼差しでソロモンを睨みつけて口を開く。
「どうやら、貴様自身が何も知らない愚者のようだな」
「何……?」
「貴様は人類が、人間が死を克服すら出来ない存在だと言ったが、生きとし生けるものが死を克服出来ないのは当たり前の事だ。命は……小さくても一つの命が次の命へと受け継がれ、それが未来へと繋がっていく。無限に繋がる命と命を結ぶ鎖……それがあったからこそ貴様自身もこの星で一つの命として生を受けた!それすら分からないほど愚かなのか!!」
一つの命から無限に広がる命と命の鎖、それが続いたからこそ地球という星に住む人間を含むたくさんの生き物たちが増えていった。
かつてソロモンも同じように大昔に一人の人間として生まれ、生きていたはずである。
それなのに何故世界を滅ぼそうとするのかアストラルは理解出来ず、一つの仮説を立てた。
(恐らくは人間では無い何か別の存在が今のソロモンに人理焼却をさせているに違いない!必ず突き止めてみせる!)
アストラルの熱い言葉に触発され、遊馬もソロモンに向かって堂々と思いを乗せた言葉を投げかける。
「未来は無限の可能性を秘めているんだ。例えてめえが人類のほとんどを滅ぼしたとしても、まだ俺たちがいる!!俺とアストラル!マシュとフォウ!オルガマリー所長とロマン先生!カルデア職員のみんな!そして……俺たちに力を貸して共に戦ってくれる英霊たち!俺たちが必ず希望と言う名の未来を取り戻す!!」
遊馬とアストラルの体から輝く希望の光……その光にソロモンは僅かな苛立ちを見せるとそこにまた一つの影が現れた。
「……我が王よ」
「マキリ!?」
それは遊馬達に敗れ、そして救われたマキリだった。
「マキリ……負けておめおめと私の前に顔を出すとは何事だ。もしもまだ戦う気力があるのならまた魔神柱を貸してやろう。それでこいつらと遊んでやれ」
「……お断りする」
「何?」
「私は……この少年に光を見た。例え私の未来が無駄なものだとしても、この少年になら私の願いを託せる。人類の、この世の悪の廃絶を……!」
「──下らぬ」
次の瞬間、マキリはソロモンの手から放たれた槍のようなもので心臓を貫かれた。
マキリの胸から大量の血が流れ、ソロモンは蔑むような目で見つめた。
「やはり貴様も同じように無駄な存在だったな」
あまりの一瞬だったので遊馬達は反応することが出来ず、マキリがその場に倒れてようやく反応出来た。
「──あっ……マキリ!!!」
遊馬は急いでマキリに駆け寄って体を抱き起した。
「マキリ!おい、マキリ!しっかりしろ!!」
遊馬は必死にマキリを呼びかけ、玉藻は水天日光天照八野鎮石で回復させようとしたが、既に手遅れで無言で首を振る。
マキリは最後の力を振り絞り、遊馬の手を強く握って口を開く。
「ツクモ……ユウマ……頼む、未来を……救ってくれ……!」
「マキリ……ああ、任せてくれ!」
「それから、サクラに……すま、な、い、と……」
遊馬に世界の未来を託し、まだ見ぬ孫である桜に謝罪をすると同時に力尽き……命を落とした。
敵とはいえ心変わりをしたマキリに遊馬は目を強く閉じて体が震えた。
震える手でマキリの目を閉じ、静かに地面に寝かせると遊馬は目に浮かんだ涙を拭いながら立ち上がる。
そして……。
「ソロモン……お前だけは、お前だけは絶対に許さねえ!うぉおおおおおおおーっ!!!」
怒号を轟かせ、遊馬は悲しみからの怒りを爆発させながらデッキからカードをドローする。
「俺のターン、ドロー!自分フィールドにモンスターがいない時、手札から『フォトン・スラッシャー』を特殊召喚!更に『ガガガマジシャン』を召喚!!」
遊馬のマキリを思うが故の行動にアストラルも覚悟を決めて共に行動する。
「遊馬……行くぞ、遊馬!」
「おう!レベル4のフォトン・スラッシャーとガガガマジシャンでオーバーレイ!エクシーズ召喚!!」
フォトン・スラッシャーとガガガマジシャンが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きると光の剣士が駆けつける。
「「現れよ、No.39!我が戦いはここより始まる!白き翼に望みを託せ!『希望皇ホープ』!!」」
希望皇ホープが現れると同時に遊馬はデッキケースから手に入れたばかりの新たな力を使う。
「「そしてこれが、ホープの新たな力!希望皇ホープ!ランクアップ・シャイニング・エクシーズ・チェンジ!!」」
希望皇ホープは金色の光となって天に昇り、光の爆発を起こし、遊馬とアストラルの前に大きな光の塊が降り立つ。
「「一粒の希望よ!今、電光石火の雷となって闇から飛び立て!!」」
光の中から現れたのは闇を切り裂く希望の雷。
「「現れろ!!『SNo.39 希望皇ホープ・ザ・ライトニング』!!!」」
闇を切り裂く雷電を放出しながら現れたのは時代を変える雷神の力をその身に宿した新たな希望皇。
「ほぅ……」
希望皇ホープ・ザ・ライトニングの降臨にソロモンは思わず声を漏らした。
雷神へと進化した希望皇ホープにソロモンは腕を組んで静かに見つめていた。
「「希望皇ホープ・ザ・ライトニングでソロモンに攻撃!!!」」
希望皇ホープ・ザ・ライトニングは地を蹴り、ソロモンに向けて飛翔する。
「「この瞬間、希望皇ホープ・ザ・ライトニングの効果!このモンスターが戦闘を行う場合、相手はダメージステップ終了時まで効果を発動できない!!」」
希望皇ホープ・ザ・ライトニングの体から雷電を放出して地下空間を埋め尽くした。
ソロモンは体に違和感を覚え、手をかざすが魔術を使えなくなってしまった。
「これは……」
強力な魔術師であるソロモンであろうとも希望皇ホープ・ザ・ライトニングが攻撃する間に魔術を使えなくし、これで一方的な攻撃出来る。
「「更に!希望皇ホープモンスターがこのカードのオーバーレイ・ユニットとなっている場合、バトル時にオーバーレイ・ユニットを2つ使い、ホープ・ザ・ライトニングの攻撃力を5000にする!ライトニング・オーバー・チャージ!!」」
希望皇ホープ・ザ・ライトニングは両肩の大剣を引き抜いて両手で構え、2つのオーバーレイ・ユニットをそれぞれの刃に取り込ませてその攻撃力を5000にまで上昇させる。
魔術を封じられ、攻撃力5000の強力な攻撃がソロモンに襲いかかる。
「「喰らえ、ソロモン!!ホープ剣・ライトニング・スラッシュ!!!」」
一瞬でソロモンの間合いに入り、希望皇ホープ・ザ・ライトニングはホープ剣を振り下ろした。
これでソロモンを倒せる……マシュ達は期待を抱いた。
遊馬とアストラルもこれで決まった……そう確信した。
そして、ソロモンは澄ました表情で俯いた。
「見事な力だ……だが──」
バリィン!!!
ホープ剣がソロモンに触れようとした瞬間、刃が粉々に砕かれてしまった。
「えっ……?」
「何……?」
呆然とする遊馬とアストラルに対し、ソロモンは再び凶悪な笑みを浮かべた。
「全ては無駄な足掻きだ!!!」
次の瞬間、希望皇ホープ・ザ・ライトニングの体全体にヒビが入り、粉々に爆発して破壊された。
「ホープ!?ぐぁあああああっ!??」
「ば、馬鹿な……ライトニングがあんな簡単に……」
神をも打ち倒す事が出来る雷神の希望皇が破壊され、遊馬とアストラルはライフポイントに大ダメージを与えられながら吹き飛ばされる。
「遊馬君!アストラルさん!!」
「フォウフォーウ!」
マシュとフォウは遊馬とアストラルに駆け寄り、マシュは遊馬を支える。
「何で……希望皇ホープ・ザ・ライトニングが……」
「分からない……一体何が起きたのか……」
遊馬とアストラルは希望皇ホープ・ザ・ライトニングに何が起きたのか全く理解出来なかった。
それをソロモン自らが答えた。
「確かに貴様らの使い魔は見事な力を持つ。だが、攻撃する前に魔術をかけさせてもらった」
「魔術を!?し、しかし、そんなモーションは一度も……」
魔術を行うには何らかのモーションが必要になる。
呪文を詠唱するなり、魔力が込められた媒体を構えるなりと何らかの動きが必要となる。
しかし、見たところソロモンは呪文を詠唱する為の口を開かず、ただその場に立っているだけで希望皇ホープ・ザ・ライトニングに攻撃されるまで何もしていなかった。
「簡単な話だ……私は『視線を合わせる』だけで魔術を使えるのだ」
衝撃の事実に遊馬達は言葉を失う。
視線を合わせただけで魔術を使うなどあまりにも規格外過ぎる。
つまり、ソロモンは希望皇ホープ・ザ・ライトニングに視線を向けているだけで破壊させるだけの強力な魔術を仕込んでいたという事だ。
「くそっ……何て奴だ……!ドン・サウザンドを思い出すぜ……!!」
あまりにも圧倒的な力を持つソロモンに遊馬の脳裏に世界を滅亡させかけた邪神、ドン・サウザンドの姿が頭に浮かんだ。
「だが、我々は諦めるわけにはいかない……!」
「ああ、そうだな……アストラル!」
遊馬とアストラルは諦めずにその場で立ち上がる。
遊馬が新たな一手を打つ為にデッキからドローしようとしたその瞬間……。
「あっ、がっ、ぐぁあああああっ!??」
「遊馬!?うっ、ぐっ、あぁああああああっ!??」
突如、遊馬とアストラルの体全体に不気味な文字がぎっしりと刻みこまれ、体にとてつもない激痛が走る。
あまりの激痛に立ち続ける事ができずに二人はその場に崩れ落ちる。
「私を楽しませた礼だ。貴様ら二人に呪いを掛けさせてもらった」
「の、呪い!?」
「永遠に苦しむがいい。人理が終わるその時まで……無限に続く苦しみがお前達二人を蝕む」
「そんな……」
「フォウ……」
「「あぁああああああああああーっ!!!???」
遊馬とアストラルは共に激痛による絶叫を上げると、突如二人の胸から大きな闇が噴き出した。
「な、何!?」
「フォウ!??」
マシュとフォウは困惑し、アルトリア達も何が起きているのか理解できなかった。
「……何だ?」
そして、ソロモン自身も呆然とした。
ソロモンは遊馬とアストラルの魂に直接打ち込むように心身を苦しませる為の呪いの魔術を使ったが、二人から闇が噴き出す謎の事態に少なからず驚いていた。
闇が噴き出し、遊馬の首にかけてある皇の鍵の紐が切れ、宙を舞って地面に落ちる。
遊馬は体の自由が効かない中、全ての力を左腕に込めて動かし、左腰に装着したデッキケースを外してそのまま投げ飛ばした。
「マシュ……頼む、デッキケースを……!」
「遊馬君……!」
マシュは遊馬の考えをすぐに理解し、デッキケースを回収した。
契約した英霊の力と異世界の力が融合して誕生したフェイトナンバーズが入ったデッキケースを失わない為にマシュに託したのだ。
「遊馬……くっ!」
それを見たアストラルは右手に一枚のカードを取り出して投げ飛ばし、光を帯びながら地面に突き刺さった。
そして、噴き出した闇は遊馬とアストラルを包み込むとそれぞれ黒が混ざった赤と青の光となって天に昇る。
「まさか!?」
それはマシュが何度も見てきた遊馬とアストラルの奇跡の力。
本来なら相容れない種族の異なる二人の肉体と魂を一つに合体させ、奇跡の存在へと進化する。
しかし、今回のそれは今までとはまるで違い、マシュはこれまでにない程の大きな不安に襲われる。
二つの光が一つに重なり、降臨すると光の中から闇の波動が解き放たれる。
「「エクシーズ・チェンジ……」」
そして……現れたのは邪悪なる漆黒の闇を纏い、残虐な表情を浮かべる……ZEXALだった。
「「DARK ZEXAL!!!」」
それはZEXALであってZEXALではない、望まれずに生まれてしまった存在である。
「DARK……ZEXAL……?」
「フォ、フォウ……」
それは……絆と希望の英雄が望まぬ力によって闇に堕ちた姿。
ひたすらに力を求め、破滅の道を進む闇の存在。
DARK ZEXAL。
あり得ない……まさかの事態にマシュ達だけでなくカルデアも驚愕して言葉を失っていた。
今まで多くの奇跡を起こして人とサーヴァントを救ってきたカルデアの最後の希望であるマスターである遊馬とアストラルが闇に堕ち、絶望の未来がすぐそこまで待ち受けていた。
しかし、絶望の中には常に希望の光が存在する。
それはアストラルが先程投げ飛ばした一枚のカード。
それこそが最後の希望のカードだった。
そして、その希望のカードを手にするのは……。
「マシュさん、フォウちゃん、それとみんなは下がっていてください」
異世界にて希望の戦士の戦いを長い間、見守っていた少女。
「え!?あ、あなたは……!」
「フォウー!?」
戦場に現れたのは遊馬やアストラルのようにデュエリストとしても、マシュ達のように魔術や英霊の力も何も持ってない一人の少女。
「こ、小鳥さん!?」
「フォフォウ!?」
闇に呑み込まれた遊馬とアストラルを救う為……自ら構築したデッキをセットしたデュエルディスクとD・ゲイザーを装着した小鳥が現れた。
「遊馬とアストラルは……私が必ず助けます!」
世界の未来を救う最後の希望は一人の少女の愛と勇気に託された
.
遊戯王恒例の主人公闇堕ち……DARK ZEXAL降臨!!
DARK ZEXALはこのタイミングでしか無いと思い出しました。
カルデア最後の希望が闇堕ちとか絶望の未来しか見えませんね。
ちゃっかり爆殺されたホープ・ザ・ライトニング……ごめんよ。
そして……闇に堕ちた遊馬とアストラルを救うため、小鳥ちゃんが登場!
次回は皆さんお待ちかねのデュエルをします!
DARK ZEXAL VS小鳥!
主人公とヒロインのデュエルとなります。
遊馬とアストラルを救う鍵はアストラルが投げ飛ばした一枚のカードとなります。
あまり長いデュエルじゃないですが、頑張って書きます!