Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

87 / 195
今回はマシュの話です。

今、来月開催の遊戯王チャンピオンシップシリーズの大会の為にデッキ構築に悩んでます。
サイドデッキのないデッキ内容を変更出来ないので悩みまくりますね。
一応コード・トーカーとサイバース・クロック・ドラゴン中心のサイバースデッキで挑みます。


ナンバーズ85 ランクアップの可能性

ホープレイ・ヴィクトリーの力を受け継いだブーディカでパラケルススを倒し、消滅した後にフェイトナンバーズが残る。

 

アストラルがフェイトナンバーズを回収し、敵の増援が来ないうちに大英博物館を後にする。

 

ジキルのアパルトメントに戻り、アンデルセンが早速考察を始めた。

 

その内容は『英霊』と『サーヴァント』の関係だった。

 

英霊とは人類史における記録であり成果、それが実在のものであろうとなかろうと人類が存在する限り常に存在し続ける。

 

一方、サーヴァントは英霊を現実に『在る』ものとして扱う。

 

元々在るのか無いのか分からないものにクラスという器を与えて『現実のもの』にした使い魔。

 

しかしそのようなことが人間の、魔術師の力で可能なのか?

 

英霊を使い魔にするのは強力で最強の召喚術である。

 

「そう考えると遊馬君達のデュエルモンスターズもある意味最強の召喚術ですね……」

 

「そうかな?」

 

「我々はそれほど凄いとは感じてないが、異世界では異常なのだろう」

 

遊馬やアストラルの異世界のモンスターを繰り出すデュエルモンスターズは神や幻想種をも簡単に呼び出し、使役することができる強力な召喚術の一つ……改めて考えれば異常過ぎる最強の召喚術である。

 

英霊を召喚する召喚術は人間だけの力で扱える術式ではなく、それを可能にするのは人間以上の存在、世界、あるいは神と呼ばれる超自然的な存在が行う権能である。

 

英霊をサーヴァントとして呼び出す後押しをしたのが……聖杯。

 

事実これまでに聖杯によって多くのサーヴァントが召喚された。

 

英霊召喚を可能とする聖杯戦争は元々冬木市で始まったのがきっかけである。

 

七騎の英霊を戦わせる聖杯戦争……魔術協会の資料の中にはそれを元になった儀式が記されていた。

 

降霊儀式・英霊召喚とは元々七つの力を一つにぶつける儀式らしく、『儀式・英霊召喚』と『儀式・聖杯戦争』は同じシステムであるが別物なのだ。

 

聖杯戦争は元々あった魔術を人間が利己的に使用できるようにアレンジしたものである。

 

そして、英霊召喚は『一つの巨大な敵』に対して、『人類最強の七騎』を投入する用途の儀式だった。

 

英霊召喚の内容を知り、遊馬は腕を組んで首を傾げながらどこかで聞いたことのあるような気がした。

 

「……なんか、ドン・サウザンドがバリアン七皇を選んだみたいな話だな」

 

「確かによく似ているな……」

 

バリアン世界の神、ドン・サウザンドは太古の昔にアストラルとの戦いに敗れた後に国や時代の異なる大いなる魂を持つ七人の人間を選び、バリアン世界に導いた。

 

自身の復活とヌメロン・コードを手にし、世界を滅ぼすために七人の人間を『バリアン七皇』として転生させた。

 

「ドン・サウザンド?バリアン七皇?おい、何の話だ?」

 

「あー、それは色々面倒で長くなるから後で話すよ」

 

「アンデルセン、君が求めた資料はあの書庫に全てあり、しかも一箇所にまとめて置いてあった。まるで我々の訪れを予期していた何者かが置いていったのでは無いか?」

 

「その可能性はある。だがそれが魔術師かサーヴァントか分からないがな」

 

今回の事でヘルタースケルターについてはまだ分からないが、英霊とサーヴァントについて調べられただけでも大きな収穫だった。

 

話は切り替わり、現状の問題であるヘルタースケルターについて話し合う。

 

カルデアから連絡が来てその解析によると、構造は機械だが、魔力で形成されていた。

 

つまり、サーヴァントが展開した宝具によるものだったのだ。

 

ヘルタースケルターを展開しているサーヴァントを倒せば、ロンドン中にいる全てのヘルタースケルターが消滅するはず。

 

「でもさ、そのサーヴァントは何処にいるんだろう?」

 

「情報が無いから流石に分からないな……」

 

「……ゥゥ……」

 

「ん?どうした、フラン」

 

「……ゥ……ゥ、ゥゥ……ァ……」

 

フランが呻き声のような声を必死に発すると、それを聞いたモードレッドとマシュは驚愕した。

 

「な……それ、本当か!?」

 

「驚きました。フランさんに、まさか、そんなことができるなんて……」

 

「ちょっと二人共!?前から気になってたけど、フランの言葉が分かるの!?」

 

女性陣は何故かフランの言葉を理解することができ、男性陣は何を聞いてもちんぷんかんぷんだった。

 

「何となく、です。ジェスチャーもしてくれていますから、ある種の手話を読むような感じで……」

 

「わかるらしいぞ、こいつ。ヘルタースケルターのリモコンの場所」

 

「マジで!??」

 

「それは本当なのか!??」

 

「……ゥ。ゥ」

 

フランは頷くとモードレッドは嬉しそうにはしゃぐ。

 

「ほらな。頷いたら。よし、そうと分かれば話は早い。行動開始だ!」

 

遊馬達はフランの案内でヘルタースケルターのリモコンがある場所へと向かう。

 

霧に包まれたロンドンの街を歩いている間、モードレッドは『マーリン』の話題を出した。

 

「マーリンって、あの魔術師マーリンか?」

 

「人間と夢魔の混血で、アルトリアに選定の剣を抜かせ、王として導いた伝説の魔術師だったな?」

 

「ええ……まあ、そうですね……」

 

アルトリアにとってはマーリンは師であり、魔術師として仕えていた配下だったが……何故か遠い目をして乾いた笑みを浮かべていた。

 

何か触れてはいけない内容だったのか、遊馬達はマーリンの話題をすぐにやめた。

 

ブーディカは同じ英国出身としてマーリンのことを聞いてみたかったがそれよりも大切なことに気づいて遊馬に耳打ちする。

 

「ねえ、ユウマ。マシュの様子がおかしいんだけど……」

 

「マシュの?」

 

霧で表情があまりよく見えていなかったが、よく見るとマシュは暗い表情を浮かべていた。

 

「マシュ、どうしたんだよ?体の具合でも悪いのか?」

 

「……はい。身体面に異常はないのです、けど……精神面に、問題が……」

 

「マシュ、何か悩みでもあるの?お姉さん達に話してみて?」

 

ブーディカはそっとマシュを抱き寄せて頭を優しく撫でる。

 

マシュはブーディカにギュッとしがみつき、今の自分の大きな悩みを打ち明けた。

 

「……戦いはますます激しくなる一方なのに、私……全然成長出来なくて……」

 

「フォウ……?」

 

「何言ってるんだよ、マシュは強くなってるじゃねえか!この前だって、冬木で円卓の騎士最強と謳われたランスロットに良い一撃を喰らわせたじゃねえか!」

 

「その通りだ。バーサーカークラスで狂化されていたとはいえ、歴戦の騎士であるランスロットに大きな一撃を与える存在はそうはいないはずだ」

 

「そうだよ、マシュは私と初めて出会った時よりも強くなっているよ?」

 

マシュは自分が弱く成長出来てないと言うが、マシュの事を見てきた遊馬とアストラルとブーディカは違うと否定する。

 

一方、ランスロットに一撃を与えた話を聞いたモードレッドは隣にいるアルトリアにそれが真実かどうか尋ねる。

 

「……父上、今の話は本当か?」

 

「ええ……私と一緒でしたが、ランスロットの頭にガツンと盾の一撃を叩きつけました」

 

「マジかよ……やるじゃねえか、マシュ」

 

モードレッドはマシュの評価を高くし、うんうんと頷いた。

 

しかし、マシュは首を振って自分が成長出来ていない理由を話した。

 

「違います……宝具の話です。サーヴァントにとって宝具こそ本当の戦力」

 

マシュが悩んでいる理由は宝具である十字の盾の事だった。

 

「今まで多くの宝具を見てきました。どれも英霊の名に恥じない奇跡だったと思います。なのに、私は──まだ、その宝具を使えません。これでは足手まといです。それを分かっているのに、私はまだ真名を思い出せない……」

 

「でもそれはマシュの所為じゃ……」

 

「確かに突発的な事故による融合でした。でも、彼は私に全てを託してくれたのに……肝心の私は、宝具の真価ばかりか、彼の真名すら判らないままなんです……」

 

ヘルタースケルターが宝具と知り、自分に力を託してくれた謎の英霊の真名も分からず、宝具の力を解き放てないことにマシュは深く落ち込んでしまったのだ。

 

そんなマシュにアルトリアは静かに近づいて約束された勝利の剣を抜く。

 

「マシュ、確かにあなたは真名も分からず宝具の力を使えていません。宝具とはその英霊がいた証、誇りのようなものです。しかし、宝具だけがサーヴァントの全てではありません」

 

「アルトリアさん……?」

 

「私の宝具……約束された勝利の剣はとても強力な聖剣です。しかし、私が経験した聖杯戦争では約束された勝利の剣だけでは勝つことは出来ませんでした。純粋な武術、戦術に戦略……そして、信頼するマスターとの連携によって勝利を手にしました」

 

「俺も父上と同じ意見だ。それにな、マシュ……お前はお前だろ?盾ヤロウとも考え方も誇りも違う。確かにお前はその宝具を使いこなしていない。見たところ、三分の一ってところだ。残りの三分の二は眠っている。あるいは、お前がお前である限り百にはならないかもしれない」

 

「……やはり、そうなのですね。デミである部分……人間としての私が、遊馬君の……皆さんの足を引っ張って……」

 

「バーカ。そんな訳あるか。話は最後まで聞けよ。お前は宝具を最大限に発揮できていない。でもな──お前、元の英霊より強いぞ、きっと」

 

「え……?元の英霊って……私に融合してくれた英霊さんの事、ですか?」

 

「ああ、そいつよりメチャクチャ強い。なあ、父上!」

 

「そうですね……私が知る限り、あなたは宝具を抜きにしても強いですよ」

 

モードレッドとアルトリアはブーディカと同じようにマシュに力を託した英霊の正体を知っている。

 

しかし、それはまだマシュに語る時ではないと悟って英霊の正体は話さないでいる。

 

「モードレッドさん……アルトリアさん……!」

 

モードレッドとアルトリアの言葉にマシュが少しずつ自信を取り戻していく。

 

そして、今度は遊馬がマシュの自信を取り戻すためにある提案をする。

 

「なあ、マシュ。宝具の事はまだこれからどうなるか分からないけど……それでもできる事はある。俺たちと一緒に強くなろうぜ!」

 

遊馬の提案にマシュは目をパチクリとさせる。

 

「遊馬君と一緒にですか……?」

 

「ああ。マシュはデミ・サーヴァントだけど、同時に俺と一緒に戦う仲間……デュエルモンスターズの一人だ」

 

遊馬はマシュのフェイトナンバーズのカードを取り出す。

 

「俺たちデュエリストはデッキによるけど、そのほとんどはモンスター達と一緒に戦う。そして、デュエリストは時に……モンスター達を強くし、進化させるんだ」

 

遊馬の仲間やライバル、そして強敵達はそれぞれの持つ力を尽くして自分のモンスター達を進化……ランクアップさせて来た。

 

「我々のエースモンスター、希望皇ホープも数々の戦いの中で進化し続けてきた。この特異点を巡る戦いの中でも希望皇ホープONEへと新たな進化の可能性を切り開き続けている」

 

希望皇ホープにはまだマシュ達には見せてない複数の可能性の力がある。

 

原初の力、希望を超えた遥かなる力、終焉にして頂点の龍の力……そして、真なる皇の力。

 

未来皇ホープの力の一端を宿したマシュにも進化の可能性が充分備わっている。

 

「だから、マシュは自分が強くなれるように、俺もデュエリストとして、もっともっと強くなる!そして、マシュに力を託した英霊に近づく──いいや、違うな。そいつを超えられるぐらいに更なる高みを目指すんだ!」

 

「私の中にいる英霊を……超える?」

 

マシュは自分の胸元を抑えて驚いた。

 

デミ・サーヴァントである以上、完全に英霊の力を使いこなすことは出来ない可能性が非常に高い。

 

しかし、遊馬はマシュが謎の英霊を超えるほどの力を手にすると信じて疑わない笑顔を見せていた。

 

「そうだ!強くなるならそれぐらいの意気込みじゃないとな!」

 

「遊馬の言う通りだ。マシュ、君にはランクアップする可能性が十分に備わっている。共に強くなろう」

 

「マシュ、英霊のみんなも初めから強いわけじゃない。戦いを重ねたり、師匠から教えを受けたり、誰かとの出会いで強くなっていったんだ。だから、1日1日を大切にして、これから強くなればいいんだ。昨日よりも今日、今日よりも明日……一歩ずつ前に進んで、過去の自分から未来へとかっとべばいいんだ!」

 

「過去から未来へ……」

 

「そうだ、『マシュビング』だ!マシュ!!」

 

「マ、マシュビング???」

 

「フォウ!?」

 

「ああ!マシュビングだ!」

 

堂々と新しい単語を生み出した遊馬に困惑するマシュとフォウ。

 

遊馬のかっとビングは静かに周りの仲間達に浸透していき、いつしか自分流にアレンジする者達が増えていった。

 

かっとビングの亜流のようなものだが、勇気を出して一歩前に踏み出す元々の根源は変わっておらず、かっとビングは遊馬を中心に広がっているのだ。

 

今回は自分の力の弱さに悩んでいるマシュに新たな一歩を踏み出してもらうために遊馬が新しいかっとビング……『マシュビング』を命名してマシュに授けたのだ。

 

「マシュビング……フォウさん、どうですか?」

 

肩にいるフォウにどうかと尋ねると、フォウは少し考えた後、「フォーフォウ!」と問題無しと言ったように鳴いた。

 

マシュは盾とフェイトナンバーズを見つめる。

 

自分は一人じゃない、一緒に強くなろう……そう言われてマシュの心は暖かくなる。

 

「はい!私は必ず強くなります!マシュビングです!!」

 

マシュは盾を持ち上げて掲げ、自分の中にいる英霊を超えられるように強くなると強く誓った。

 

マシュの新たな決意に力を託した英霊は笑みを浮かべたように盾が光り輝いた。

 

するとマシュのフェイトナンバーズも光り輝き、盾とフェイトナンバーズからそれぞれ光の線が出てきた。

 

二つの光の線が一つに結ばれ、二人の前に新たなカードが現れた。

 

「これは……マシュの新しいフェイトナンバーズ!」

 

マシュの決意によって生まれた新たなフェイトナンバーズ。

 

真名と効果はまだ覚醒していないので書かれていなかったが、マシュの背後に双剣を構えた未来皇ホープの姿が描かれていた。

 

遊馬はマシュにフェイトナンバーズを見せる。

 

「私の新しいフェイトナンバーズ……!」

 

「どんな効果を持っているかは分からないけど、感じるぜ……このカードから大きな力を!」

 

「あとはこのカードを覚醒させるのは私達次第だな」

 

「頑張ろうぜ、マシュ」

 

「はい、マシュビングです」

 

「フォウフォウー!」

 

遊馬とマシュは拳を作って軽くぶつけ合った。

 

そんな遊馬達の姿を見てモードレッドは呟いた。

 

「一緒に強くなるか……」

 

モードレッドは数少ないが聖杯大戦でマスターとサーヴァントの関係を色々見たが、遊馬とマシュのように一緒に強くなるという関係を不思議だが面白いと思った。

 

 

 




英霊召喚……最強の召喚術ですけど、遊戯王が絡むとなんか色々と価値観が崩壊しますね(笑)
幻想種から神々までなんでも召喚できるとんでもない儀式ですからね。

マシュに新たなフェイトナンバーズが誕生しました。
マシュビングはカイトとのデュエルで遊馬が言ったカイトビングで思いつきました。

次回は蒸気王との対決になると思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。