最近スランプ気味であまり良いものは書けませんが楽しんでもらえれば幸いです。
※第4章のロンドン編で登場するサーヴァントですが、Fate/Apocryphaのサーヴァント達をほぼ全員出したいと思うのですが、皆さんの意見で、賛成か反対かアンケートを実施しています。
活動報告にコメントをお願いします。
期限は2018年7月14日までです。
よろしくお願いします。
エミヤは毎日、みんなが目を覚ますよりも早く朝から目覚め、食堂で食事の準備を始めている。
早朝で薄暗く、静まり返るカルデアの廊下を歩き、食堂に足を踏み入れたその時。
「「「確保!!!」」」
「はっ!?な、何だ!??」
突如、複数の黒い影がエミヤを囲み、エミヤが抵抗する間も無く拘束されて頭を麻布で隠されてしまった。
そして、魔術で強制的に眠らされてしまい、それから数時間後……。
麻布を外され、目を覚ますとそこには……。
「カルデアのオカンこと、エミヤシロウのお嫁さんになれるのか!?」
「本日、エミヤさんに燃える炎のように思い焦がれる乙女達が、己の全てを賭けてこの戦いに挑みますわ!!」
「「『第二次正妻戦争』……開幕です!」」
「何でさぁああああああああーーっ!??」
エリザベートとマリーがマイクを持って高らかに『第二次正妻戦争』の開幕を宣言し、エミヤは思わず魂の叫びを轟かせた。
食堂を見渡すと数多くのサーヴァント達やカルデアの職員達がジュースやお茶などの飲み物を片手にお菓子を摘んで座っていた。
そして、正面には審査員席と書かれた場所に三人の男女が座っていた。
「今回の正妻戦争は特別に三人の審査員を呼んであります!」
「一人目は我らがマスター、九十九遊馬さんですわ!」
「どうもー。エミヤ、頑張れよー」
遊馬は軽く手を振ってエミヤにエールを送るが、エミヤは縛られた体を必死に動かしながら声を荒げる。
「マスター!?何故そこにいる!?」
「いやー、昨日アイリさんに頼まれてさ。エミヤの嫁候補をキリツグさんに認めてもらいたいからって……」
「何!??」
エミヤが視線を変えると『審査員長』と書かれた席札に座る女性……アイリに抗議する。
「ミセスアイリ!これはどう言うことだ!?」
「慈母の怒りチョップ!」
「うぐっ!?」
アイリは席を飛び出してエミヤの頭にチョップを叩き込んだ。
何故チョップを喰らったのか分からないエミヤに対し、アイリは全身から怒気を纏って見下ろした。
「シロウ君……ミセスアイリなんて他人行儀はやめてね。私はあなたのお母さんなんだからね?」
アイリがエミヤの母と聞き、食堂がざわめき出す。
謎の多いサーヴァントであるエミヤの母親が聖杯の器であるホムンクルスと言う事実に驚きを隠せなかった。
「ま、待て……私とあなたは血が繋がっていないし、そもそも生前では面識すら無いだろう……」
「そんなことは関係ないわ!あなたは私の夫のキリツグが息子にしたんだから、戸籍上は私の息子でしょう?あなたはイリヤの兄、いえ、弟……?まあそれはどっちでも良いわ。とにかく、あなたは私の息子よ」
「いや、だが……」
「それとも……私みたいな人間じゃない化け物が母親なのは嫌なの?」
「それは違う!!ただ……」
「ただ?」
「私は……生前、災害の時に実の両親の記憶が失われてしまった……親しい家族はキリツグと私を見守ってくれた姉代わりの人しかいなかった……だから、母親がどんなものなのか分からなかったから……」
「つまり……母親という存在とどう接したら良いのか分からなかった、って事?何だ、そんな事だったのね!だったら少しずつ分かれば良いのよ、母親と息子の関係を……だから、まず初めに私を母親として認めて。ね?」
アイリの慈母としての優しさに触れ、エミヤは褐色の肌でもわかるほど顔が赤く染まり、自分の気持ちに正直になりながら口を開く。
「分かった……か、母さん……」
「うん!改めてよろしくね、シロウ君!」
エミヤに『母さん』と呼ばれ、満足したアイリは満面の笑みを浮かべて縄を解いた。
「……これはエミヤのレアな表情を見られましたね」
「母親はいつの時代でも強いのですわ。それでは引き続き審査員をご紹介します!二人目はエミヤさんと同じく食堂を支える母性の塊!カルデアのママこと、ブーディカさんです!」
「どうも〜。いつも一緒に料理をするエミヤのいい表情が見れて良かったよ」
二人目の審査員はアルトリアたちとは別にエミヤと仲のいいブーディカが選ばれた。
「そして、審査員長のアイリスフィールさん!この三人が今回の第二次正妻戦争の審査員になります!」
「今回は女性が羨むほどの女子力の塊であるエミヤさんのお嫁さんに相応しい人を決めます!」
「ちなみにエミヤのお父さんのキリツグさんは色々暴走しそうなので審査員から外させてもらいましたわ」
「アイリの許可をもらって予め捕縛させてもらいました」
「認めないぞ……僕は絶対に認めないからな!!」
エミヤ以上に椅子に紐でぐるぐる巻きで縛られているキリツグはガタガタと椅子を揺らしていた。
キリツグはひとまず置いておき、早速第二次正妻戦争の参加者を紹介する。
「エントリーナンバー1!世界にその名を馳せる伝説の騎士王!アルトリア・ペンドラゴンさん!!」
「エントリーナンバー2!メソポタミア神話の女神、イシュタルの擬似サーヴァントとして顕現した少女、遠坂凛さん!!」
「エントリーナンバー3!インド神話の最高神シヴァの伴侶、パールヴァティーの擬似サーヴァントとして同じく顕現した少女、間桐桜さん!!」
アルトリア、イシュタルこと凛、パールヴァティーこと桜の三人がエントリーしている。
「ちなみにこの二人はそこにいる二人の少女、凛ちゃんと桜ちゃんの別世界の十年後に成長した存在らしいです」
「流石に十年も経つと大人っぽいですわね」
「あれ?おーい、エリザベート。オルタは?」
オルタも正妻戦争に参加していると思ったが、姿が見られないのでエリザベートに聞いた。
「アルトリア・オルタさんは自分はあまりエミヤさんとの思い出が無いのでアルトリアさんに全てを託して今は控えているわ」
「特別ルールでアルトリアさんとオルタさんは同じ存在として扱うことにしています」
元々アルトリアとオルタは一つのような存在だったのでアイリの許可で同じ存在として扱い、アルトリア一人でアピールする事となっている。
「では、今回の第二次正妻戦争はエミヤさんとのエピソードを軽く語ってその愛や絆の深さを評価してもらいます」
エミヤと繋がりの深い三人だからこそ、そのエピソードを語り、正妻に相応しいか審査するのだ。
「話す順番は事前にクジで決め、桜さん、凛さん、アルトリアさんの順番となっております」
「それでは、桜さん!お願いします!」
「は、はい!」
トップバッターである桜は緊張しながらもエミヤへの想いを語るため、意を決して話を始めた。
「先輩とは先輩が高校生の時、同じ部活の兄の紹介で知り合いました。心が壊れた私にとって先輩は私に人としての心と幸せを取り戻してくれた大切な人です」
「ちなみに、桜さんはエミヤの家に頻繁に訪れて一緒に過ごしていたようですわね……」
「それって……所謂、通い妻じゃないの?」
「通い妻なんて、そんな……私はただ、先輩と少しでも一緒にいたかっただけです。先輩と一緒にお料理をしてご飯を食べて、洗濯や掃除をして、そして居間でのんびりと過ごす……それだけで幸せなんです」
頬を染めながらエミヤとの幸せな日々を想像する桜だった。
「わぁお……この子、とんでもなく乙女で嫁力高いわね……しかもどうやら家事の腕はエミヤ仕込みらしいですね……」
「これは最初からエミヤさんのお嫁さん大本命ですわね!審査員の皆さん、いかがでしょうか?」
「エミヤへの強い想いを感じたな……何ていうか、隣に居てくれるだけで幸せって何となくわかる気がするな」
「そうだね……私も旦那様と一緒になれて幸せだったからね」
「うんうん、シロウ君を思うその気持ち、そして依存したくなるほどのその強い愛!良いわね、グッドよ!」
アイリから見て桜の評価はとても高い様子で桜は小さくガッツポーズをした。
桜のエピソードの次は凛の番である。
「次は私ね……私は元々士郎と高校の同級生であまり関わりがなかったんだけど……運が悪いことにサーヴァント同士の戦いを目撃しちゃって、口封じに殺されかけたのよね。それで、私の宝石魔術で助けたのが始まりよ」
「口封じで殺されかけただと……!?」
「えっと、リンさん……?シロウ君を殺そうとしたサーヴァントは誰?」
「え?そこにいる全身青タイツのランサー、クー・フーリンだけど?」
凛のあっさりとした告白にクー・フーリンは飲んで居た酒を思わず吐きかけた。
「ブッ!?じょ、嬢ちゃん!?何バラしてやがるんだ!?」
すると、士郎が殺されかけたと聞き、キリツグは拘束していた縄を引きちぎって立ち上がり、アイリもゆらりと立ち上がる。
「貴様……よくも士郎を……」
「待て待て待て!あれは言峰に命令されて──」
「「言峰?」」
言峰の名を聞き、二人の殺気が一気に爆発してギロリとクー・フーリンを睨みつける。
「うおっ!?殺気が膨れ上がった!?まさか火に油を注いぢまった!?」
キリツグとアイリにとって言峰は一番の最悪の天敵である為、そのサーヴァントだったクー・フーリンがエミヤの命を狙ったことを許せなかった。
「言峰綺礼のサーヴァントだったか……」
「うふふふふ……大事な息子の落とし前をつけさせてもらおうかしら!??」
「ちぃっ!やるしかねえか!」
怒りに震える二人にクー・フーリンは意を決してゲイ・ボルグを取り出す。
「待て!爺さん、母さん!そいつとの問題はもう昔の話だ、今更落とし前をつける必要は無い!」
エミヤは余計な戦闘を控えるために両親を止める。
本人が恨んでいないのなら落とし前をつけることは無いので二人は大人しく引き下がった。
「礼は言わねえぞ、弓兵」
「ふっ……もし何かしたら死ぬまでホットドッグと麻婆を喰わせてやる」
「それだけは止めて下さい!!」
クー・フーリンにとって外道麻婆とあとは何故かホットドッグはトラウマのようで顔を真っ青にして震えていた。
気を取り直して凛の話の続きをする。
「……その後、士郎はセイバーを召喚して聖杯戦争を生き抜くために私と同盟関係になったの。士郎は魔術のことを全然知らなかったから、私が師匠となって色々教えることになったの。そして……その後、聖杯戦争が終わってから士郎は色々あって英霊になり、私が聖杯戦争の時に触媒として使った宝石が士郎を助けた時に使った物だったから、アーチャーとして召喚されたのよ」
少々ややこしいが、エミヤは生前に凛に命を救われた経緯から英霊になった後にサーヴァントのアーチャーとして凛に召喚されたという事になる。
何故エミヤが英霊になったのか……それを凛自身が語るつもりはなかった。
何故ならそれをエミヤが望んで無い、仮に語るとしたら自分自身の口から語るべきだと理解しているからだ。
「つまり、士郎は私の弟子であると同時に最高の相棒なのよ!この絆は桜やセイバーにだって負けはしないわ!!」
「おお……これは桜さんとは違う形の絆ですね。何か、凛さんだとエミヤが尻に敷かれるような気がするわね……」
「弟子兼従者ですからね。でも、背中を支え合える中も素敵な愛だと思いますわ。審査員の皆さん、いかがでしょうか?」
「弟子で相棒か……なんか親近感湧くな。うん、こっちも良いと思うぜ」
「エミヤは少々遠慮なところがあるから、女が引っ張ってバランスが取れているかもしれないね」
「うーむ、リンさんも良いわね。妹のサクラさんとは正反対だけど、この感じもまた素敵ね。姉さん女房……って言うのかしら?同い年だけどそんな感じがするわね。こっちも良いわよ!」
桜に引き続き、凛もアイリの好感度が良く、凛は大きく深呼吸をしながらも内心喜んでいた。
ここまで妹キャラの通い妻である桜と師匠&主の姉さん女房である凛の話が終わり、次はいよいよ大本命とも言うべき存在……アルトリアの番だった。
「さあさあ、お待たせしました!お次はカルデアで特に気になっている方が多い、伝説の騎士王、アルトリアさんです!」
「いったいどんな物語が語られるのか楽しみです、ではお願いします!」
大トリを務めるのはアルトリアで大きく深呼吸をし、緊張しながらゆっくりと語りだす。
「……私とシロウが出会ったのは月明かりが照らす夜のことでした。ランサー……クー・フーリンが再びシロウを狙い、その命が危機にあった時……私を召喚しました」
アルトリアはチラッとキリツグを見ると、何故エミヤがアルトリアを召喚したのかその理由が分からずに混乱していた。
「驚くのも無理はありませんね……しかし、キリツグ。シロウが私を召喚出来たのはあなたのお陰でもありますよ」
「何、だと……!?」
「キリツグは瀕死だった幼いシロウを救う為に失われた約束された勝利の剣の鞘をその身に埋め込ませました。約束された勝利の剣の鞘がシロウの中にあったからこそ、私を召喚出来たのです。つまり、シロウは私の唯一無二の鞘と呼ぶべき存在なのですよ」
「ば、馬鹿な……!?」
キリツグはアルトリアの宣告に打ちひしがれてその場に崩れ落ちた。
それはキリツグが幼いエミヤを活かすために行った処置であったが、逆に自分が嫌悪するアルトリアを引き合わせる事態へと起こしてしまった事に衝撃を受けるのだった。
約束された勝利の剣の鞘は聖剣を納める鞘だけあって非常に優れた力を持っている。
その力があったからこそエミヤは生きる力を、そして……己の道を突き進むための力を手に入れたのだ。
「私はサーヴァントとしてマスターであるシロウを守ろうとしました。しかし……事もあろうに、シロウは私をサーヴァントではなく、一人の女として見ていたのです。毎日ご飯を用意して、騎士である私を女だと言ったり、私を身を呈して守ろうとしたりと……男として、騎士として育った私の心がシロウの言葉と行動でズタボロにされてしまいました……」
その当時のことを思い出し、顔を真っ赤にして話すアルトリア。
それを聞いたみんなはこう思った……。
(((これ、エミヤがアルトリアに一目惚れしたんじゃ無いのか……?)))
エミヤがその当時あまり魔術師としての力や知識があまり無く、サーヴァントへの考えをあまり理解していなかったと言うのもあるが、それを抜きにしてもエミヤがアルトリアに特別な感情を抱いているのは明白だった。
「そして、聖杯戦争中にも関わらずシロウは私をデートに誘ったりして、絆の中に愛が芽生えてきたのです……私はシロウのお陰で自分の願いを止める決心がつき、聖杯への願いを断ち切る事が出来たのです。私は、今この場を借りて改めてシロウに伝えたい事があります」
気持ちを引き締めるために身に纏った鎧を消し、髪を縛るリボンを解いた。
綺麗な金髪が優しく揺れ、アルトリアは今までエミヤ以外には見せたことのない慈愛に溢れた優しい笑みを浮かべながら口を開いた。
「シロウ──あなたを、愛している」
それはアルトリアがかつてエミヤに贈った別れと愛の言葉。
たった一言、とても短く、飾らないアルトリアらしい愛の言葉だったが、その一言にはシロウへの強い愛が秘められていた。
「アルトリア……」
エミヤはその場で答えを出す事が出来なかったが、赤黒いその肌でもわかるほどに顔に熱がこもって真っ赤にし、思わず手で顔を隠すほどだった。
「尊い!とてつもなく尊いです!これには私も胸が熱くなりました!こんな純粋な恋は私も体験したいです!」
「素敵ですわ、アルトリアさん!私も昔、アマデウスに愛の告白を受けた時を思い出しますわ!」
「やめてくれないか、マリー!?」
アルトリアの愛の言葉に食堂が沸き起こり、エリザベートはアイドルを目指していることを一時は忘れ、マリーは生前の幼少期にアマデウスから愛の告白を受けたことを思い出す。
「なんか、見てるこっちが恥ずかしくなるほどだったぜ……でも、良い告白だったぜ、アルトリア!」
「良いわよー、アルトリア!流石は私の後輩!」
「最高よ、セイバー!あなたにこんなにもステキな女性の一面があるなんてビックリだわ!これもみんなシロウ君のおかげなのね。よくやったわ、シロウ君!」
審査員達もアルトリアに絶賛するが、愛の告白をするとは予想外だったので凛と桜は抗議した。
「ちょっと、セイバー!何勝手に愛の告白してるのよ!ズルイじゃない!」
「そ、そうですよ!そんなことをしたら先輩の心がぐらっとセイバーさんに傾くじゃないですか!」
「ならば、あなた方も愛の告白をすれば良い!さあ、シロウへの想いをぶちまけるのです!」
アルトリアの挑発に通い妻として嫁力がとても高い桜が挙手した。
「じゃあ、私から!」
「ちょっ、桜!?」
「先輩!あなたの事を、誰よりも愛しています!ずっとそばに居させてください!永遠に私と一緒にいてください!!」
依存性がある桜の想いが込められた愛の告白に凛も覚悟を決めた。
「ああもう!分かったわよ!私も言うわ!私はね、士郎がいないとダメなのよ!私の隣はあんたじゃないとダメなの!あんたは私の弟子で、サーヴァントなんだから、私の側にいる義務があるのよ!!」
素直になれない性格であるが故にアルトリアや桜と違って好きや愛してるなどの言葉は一切含まれていないが、凛らしい告白だった。
三人からの愛の告白を受け、エミヤはどうしたら良いか悩んだ。
もし仮に一人を選んだ場合、以前開催した遊馬の第一次正妻戦争の時のように恋するサーヴァント達が暴走し、カルデア崩壊の危機に直面する。
特に騎士王に女神が二柱ともなればその被害は想像を絶するものになるのは容易に想像できる。
(どうすればこの場を無事に乗り切れるのか……頼む、志貴さん……俺に知恵を……!!)
そう思ったその時だった。
「はいみんなー!ちゅーもーく!」
アイリが立ち上がり、全員の視線が集中する中……とんでもない発表をするのだった。
「今回の正妻戦争、私はセイバー達がシロウ君のお嫁さんに相応しいかどうかを確かめるものだったんだけど、私は決めたわ!この勝負──全員シロウ君のお嫁さんに決定します!!!」
一瞬の静寂。
「「えぇえええええええーっ!??」」
「アイリスフィール……あなたならそう言うと思ってましたよ」
凛と桜は驚愕して絶叫したが、アルトリアは予想通りと言った様子で冷静だった。
アイリの発表に異議を唱えるのはもちろん……。
「待つんだ、アイリ!つまり複数の妻を持つ一夫多妻という事か!?士郎にそんなことを……」
「良いじゃない、みんなのこと気に入ったんだから。でもあなたにだって、愛人のマイヤがいたんだからそれぐらい構わないじゃない」
「うぐっ!?そ、それは……」
キリツグには妻のアイリの他に実は愛人がいたのだが、そのことを一切知らなかった士郎は沈んだ真剣な声音でキリツグに尋ねる。
「……爺さん。後で話を聞かせてもらえないか?」
「士郎!?誤解だ!頼む、誤解だから、士郎ぉおおおおおおおおおっ!!」
「衛宮家の決定権は神である私にありまーす!という訳だから、シロウ君と仲良くイチャイチャしてね?」
アイリがウィンクしてアルトリア達にエールを送るが、凛と桜は困惑するのだった。
「一夫多妻って……そんなのってアリ……?」
「でも、みんな一緒なら……あ、でも出来れば第一正妻は私が……」
「じゃあ、私は第一正夫の座をいただきます」
「第一正夫って何よ!?そんな言葉聞いたことないわ!?」
「シロウは私の嫁です。つまり、シロウは私の正妻です。そして、シロウの正妻はあなた達……ほら、これで問題ないでしょう?」
「いやいや!意味わかんないから!?」
「では、私が第一正妻で姉さんが第二正妻で良いですね!?」
「桜ぁっ!?何勝手に自分が一番になってるのよ!?」
「私が一番最初に先輩を好きになったんだから第一正妻の座は私のモノです!!姉さんは二番目で我慢してください!!」
「嫌よそんなの!第一正妻の座は私に譲りなさい!」
「絶対に嫌です!姉さんでもそれだけは譲れません!!」
何だか女同士の第一正妻の座をかけた争いが始まり、みんなは巻き込まれないようにとこっそりその場を離れていく。
「あれ……?」
すると、遊馬はあることに気付き、それをアルトリア達に伝える。
「なあなあ、エミヤはどこ行った?」
「「「えっ?」」」
アルトリア達は周りを見渡すがエミヤの姿がいつの間にか消えていた。
「シロウ君ならあそこよ」
アイリが指差す先は食堂の出口で、そこには……。
「くっ、アイリスフィール……余計なことを!?」
頭にタンコブが出来て気絶しているエミヤを簀巻きにし、豪快に担ぎ上げて運んでいるアルトリア・オルタの姿だった。
アルトリア達は一瞬呆然としてしまったが、オルタが慌ててエミヤを連れて食堂を出て行く。
「「「待てぃ!!!」」」
エミヤを連れ去ったオルタをアルトリア達が全力疾走で追いかける。
「待ちなさい、オルタ!シロウを誘拐して何をするつもりですか!?」
「そ、それはその……私の部屋でその……シロウとニャンニャンを……」
「ふざけんじゃないわよ!!自分一人でイチャイチャするなんて許さないわよ!!」
「そうですよ!こういうのは平等にするべきです!だから先輩を離しなさい!」
「断る!私にはシロウとの思い出がほとんどない!だから、たくさんイチャイチャするのだ!!」
「「「ふざけるなぁあああああっ!!」」」
オルタがエミヤを独占しようとしてブチ切れたアルトリア達は走るスピードを上げて追いかける。
そんなアルトリア達を見送った遊馬は腕を組んで一言。
「ま、大丈夫だろ。夫婦はイチャつくもんだからな」
自分の両親が仲良いので特に気にしない遊馬はまだ戦いの疲れが残っているので、ゆっくり休むために自室に戻った。
翌朝……食堂に現れたエミヤはいつにも増して酷く疲れきった様子で、反対にアルトリア達はツヤツヤと健康的で元気そうなのだった。
.
第一次エミヤハーレム完成(笑)
アルトリア、第一正夫
アルトリア・オルタ、第二正夫
イシュタル、第一正妻?
パールヴァティー、第一正妻?
まだこれからどんどん増えるから大変だなー(爆笑)
これが愉悦というやつですね。
次回は桜ちゃんと凛ちゃんのカルデアの1日を書こうと思います。