Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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遂にツンギレ少女である式さんの登場です。
空の境界、原作を見たことありますけど、まあ難しくて読むのが大変でした。


ナンバーズ55 死を視る魔眼の少女

小鳥の口からブーディカが突然消えたと聞き、遊馬達は急いでオルガマリーの元に行き、管制室に集まる。

 

数十分前、小鳥は食堂でブーディカから料理を教わっていた。

 

まるで親子のように楽しく料理をしていた突如、ブーディカの姿が消えてしまったのだ。

 

サーヴァントが突然消える現象、それは過去にも一度起きていた。

 

それは第二特異点でエリザベートがカルデアからステンノがいる神の島へと召喚されてしまったことだ。

 

恐らく、ブーディカも特異点に召喚されてしまった可能性がある。

 

第三特異点の聖杯を回収して解決したばかりだと言うのにもう新たな特異点が現れたのかと疑問に思うが、実は新たな特異点が発見されていた。

 

それは遊馬とマシュにとって戦いの始まりを告げる最初の特異点『F』。

 

特異点Fの聖杯は回収したが、その隣に妙な揺らぎが現れており、小さいが新たな特異点が発生していた。

 

しかも生命反応があり、どれだけ調べても分からずレイシフトしないと何が起きているのか判明すらできない状況だった。

 

すぐに行方不明になったサーヴァントをリストアップするためにちびノブ達を使って人海戦術で一気に調べ上げた。

 

そして、行方不明になったサーヴァントはブーディカ、クー・フーリン、エリザベート、呂布、レオニダス、黒髭、アン&メアリー、ノッブ、沖田。

 

何故みんなが一斉にその小さな特異点に召喚されたのか不明だが、このままではカルデアに帰還することは出来ないのですぐに遊馬とマシュが立ち上がる。

 

「こうしちゃいられない!行方不明のサーヴァントを迎えに行くぞ!そんでもって、特異点をついでに解決だ!」

 

「はい!皆さんに何があったか分かりませんが、必ず連れ戻します!」

 

遊馬とマシュはすぐに特異点に向かう準備をし、カルデア職員は急いでコフィンの最終点検を行う。

 

「オルガマリー所長」

 

「何かしら、アストラル」

 

特異点に向かう前にアストラルはオルガマリーに話をする。

 

「今回は極力サーヴァントを呼ばないようにしようと思う」

 

「どうしてかしら?」

 

「今回の特異点は何かがおかしい気がする。サーヴァント達がカルデアに戻ってこれないのも、サーヴァント達に何らかの悪影響を与えている可能性が考えられる」

 

「そうね……下手にカルデアからサーヴァントを出したら何かが起きるかもしれないわね。でも、大丈夫かしら?」

 

「心配するな。ヘラクレスとの戦いを経て私と遊馬は強くなった。そしてマシュも頼もしくなった」

 

「そうね……あなた達はカルデアの最後の希望として頼もしくなって来たわね。わかったわ、あなた達を信じます。でも、必ず帰って来なさいね」

 

「もちろんだ」

 

アストラルとオルガマリーは頷き、レイシフトの準備が完了する。

 

遊馬はデュエルディスクとD・ゲイザーと原初の火をセットし、マシュをフェイトナンバーズに入れてデッキケースにしまい、アストラルは皇の鍵の中に入る。

 

そして、遊馬はコフィンの中に入り、謎の特異点に向けてレイシフトをする……行方不明となったサーヴァントを探しに、そして謎の特異点を解決するために。

 

 

レイシフトが完了し、遊馬が目を開け、マシュがフェイトナンバーズから出て来て、アストラルが皇の鍵から出るとそこは今までの特異点とは全く違う風景が広がっていた。

 

灯りが灯された立ち並ぶビル、夜空に浮かぶ三日月……それは日本の都会を思わせる風景で遊馬とアストラルにとってハートランドシティでも見慣れたものだった。

 

「アスファルトで舗装された車道……壁のようにそびえる高層建築……これは……これは……!間違いありません!ここは二十一世紀の日本の都市部です、遊馬君!」

 

「そうだな。ってか、マシュ。テンション上がりすぎじゃないか?」

 

マシュは今までにないほどテンションが上がっており、まるで田舎から都心に来た人みたいにはしゃぎまくっていた。

 

「そう言えばマシュはカルデアから出たことがないって言ってたな……」

 

「カルデアから……ふむ、それは少し気になるが、あそこまで喜んでいるとハートランドに連れて行きたくなるな」

 

「ああ。ハートランドは少なくともこの世界よりかなり発展してるからな。マシュもきっと喜ぶだろ」

 

「そうだな。ハートランドだけでなく他の国にも連れて行こう。かつて私たちが皇の鍵の飛行船で世界を飛び回ったように」

 

「もちろんだぜ。カルデアのみんなで世界旅行……なんて言うのもありかな?」

 

「それは……色々みんなをまとめないと大変そうだな」

 

「引率の先生の気分になるな。さてと……」

 

話を終わらせ、遊馬とアストラルはこの特異点で不気味な気配を感じた方角に視線を向けた。

 

視線の先には円形の形をした塔のような奇妙なビルが建っており、そこからサーヴァントの気配が感じられる。

 

「あそこか……」

 

「そうだ。あそこからサーヴァントの気配が感じられるが、同時に邪悪な気配も感じる。気を引き締めろ……」

 

「当たり前だ。中で何が起きているか分からないもんな」

 

「遊馬君!入り口付近に人影があります!」

 

ビルの入り口付近でゴーストが多数いて、その中心にサーヴァントと思われる者が戦闘を行っていた。

 

遊馬達は急いで加勢するために向かうが、ゴーストが一斉に消失し、その中心にいたサーヴァントの姿が目視出来た。

 

「あの人……えっ?」

 

「女性……?」

 

「着物に赤い革ジャン、そして……ナイフ?」

 

それは黒髪に黒い瞳のまさにクール美人というに相応しいマシュより少し年上の少女だったが、着物に赤い革ジャンという謎のファッションに身を包み、その手には鋭いナイフが握られていた。

 

「……はあ、やっすい夢。いつもの悪夢にしては質が悪いな、これ。シャレコウベの地縛霊とか時代を考えろ。今時は売りの一つもないとやっていけないぞ」

 

「……似てるけど、違うな」

 

遊馬はその着物の少女が夢で見た女性かと思ったが、雰囲気がまるで違うので別人だと判断した。

 

まずは会話からしようと近づくと……。

 

「何だ?敵か?悪人にしろ善人にしろ、頭にナイフを打ち込めばこんな現実とはおさらばだ。厄介ごとに首を突っ込んだのはその頭だろ?綺麗さっぱり、元いた場所に返してやるよ」

 

そう言うと女サーヴァントはナイフを振りかざして突然襲いかかってきた。

 

「ちょっ!?まさかの通り魔かよ!??」

 

「誰が通り魔だ!!」

 

「遊馬君、下がっててください!」

 

マシュは盾を構えて謎の女サーヴァントと交戦をする。

 

女サーヴァントはナイフを振るい、マシュはそれを盾で受け止めるがナイフは小回りが利くので大きな盾を持つマシュには不利な相手だった。

 

「マシュ!待ってろ!俺のターン、ドロー!よし!」

 

遊馬は急いでデッキからカードを5枚を手札にしてドローし、すぐさま手札にあったカードを発動する。

 

「相手の攻撃時、手札から『虹クリボー』の効果発動!虹クリボーを相手に装備し、攻撃をさせなくする!」

 

『クリクリ〜!』

 

額が七色の虹に輝く虹クリボーが現れ、ナイフを振り回す女サーヴァントの装備カードとなり、虹クリボーから作られた体を覆うリングとなって動かなくなった。

 

「な、何だこれは……動けない……!?」

 

女サーヴァントは突然体が動けなくなり、ナイフすら動かせない状態に困惑する。

 

『クリリ!』

 

虹クリボーが女サーヴァントの目の前に現れると、女サーヴァントは目を丸くして驚いた。

 

「…………何だこれ?」

 

虹クリボーを見た瞬間、女サーヴァントから発せられた殺気が静まった。

 

『クリ?』

 

「お前…………何?」

 

女サーヴァントは虹クリボーをマジマジと見つめる。

 

愛らしくつぶらな瞳、滑らかな表皮、ゴムボールのように柔らかそうな体……女サーヴァントの体がピクッと震えている。

 

『……信じられないわ』

 

突然、オルガマリーが信じられないと言った様子で通信して来た。

 

「所長?」

 

『そのサーヴァントの眼、ただの眼じゃないわ。魔眼よ!魔眼!まだこれほどの魔眼の使い手がいたなんて……』

 

「魔眼?メドゥーサの石化のと同じあれか?」

 

よく視ると女サーヴァントの目が黒から青赤く輝いており、不思議な色となっていた。

 

『ええ。魔術世界において魔を帯びた眼は転じて神秘を視る眼は魔眼と称される。魔術式や詠唱を必要なしにただ視るだけで神秘を映す。あなたのは魔眼の最上位、死の概念をカタチとして捉え、干渉する虹の瞳……直死の魔眼ね』

 

「よくご存知だな。そういうお前は魔術師だな?まあオレに出来るのは死を視る事だけ。死にやすい線……えーと、要はモノの結末か。いつか死ぬことと決まっている要因、死の結果をなぞっているだけって言えば、分かるか?」

 

「直死の魔眼か……」

 

「死を視る魔眼……まさかそんな使い手が存在したとは。ならば、私の死も見えるのか?」

 

「当たり前だ。生きているのなら、神様だって殺してみせるからな……ん?」

 

女サーヴァントは直死の魔眼でアストラルを視るがその体にある『死』に驚いたような表情を浮かべた。

 

「お前……少し信じられないが、一度死んでいるな?」

 

「えっ!?」

 

「お前の『死の線』……胸に大きな跡が見えるまるで、一度開いたものを塞いだみたいに見える……」

 

「……ああ。私は一度死んでいる。だが、遊馬のお陰で生き返ることができた」

 

アストラルが一度死んだが遊馬のお陰で生き返ることが出来たという事実に女サーヴァントは少し興味が出てきた。

 

「へぇ……生き返ったね……」

 

すると、遊馬の上着のフードの中からフォウが飛び出した。

 

「フォウ、フォーウ!」

 

「!?」

 

「フォウさん!?またくっついて来たんですか!?」

 

「…………なにその毛玉。ふざけてるの?」

 

虹クリボーとフォウの登場に明らかに雰囲気が柔らかくなったのを遊馬とアストラルは逃さず気付き、遊馬は女サーヴァントから虹クリボーを解除して動けるようにする。

 

遊馬は虹クリボーとフォウを抱き上げて女サーヴァントに見せるように近付く。

 

「触る?」

 

「別に」

 

「本当に?」

 

「触らない」

 

「こんなに可愛いのに……」

 

『クリー?』

 

「フォウ?」

 

ズキューン!!

 

虹クリボーとフォウのつぶらな瞳が女サーヴァントの心を狙い撃ち、ナイフを静かに仕舞う。

 

「し、仕方ないな……ちょっとだけだぞ?」

 

女サーヴァントは遊馬から虹クリボーとフォウを受け取ってその滑らかな肌触りとふかふかの毛皮をこれでもかと言うぐらい堪能した。

 

意外に女の子らしいなと遊馬達は思ったが、それを口にせずに大人しく黙っていた。

 

数分後、遊馬達への殺意がなくなった女サーヴァントは改めて話し合うことにした。

 

「……両儀式」

 

両儀式。

 

それが女サーヴァントの名前でもちろん日本人だった。

 

「両儀、式?へぇー、珍しい名前だな。俺は九十九遊馬!」

 

「私はアストラル。アストラル世界と呼ばれる異世界から来た精霊だ」

 

「私はマシュ・キリエライト。デミ・サーヴァントです」

 

「九十九遊馬……?お前、日本人か?」

 

「そうだけど?」

 

「それにしては変な髪型だな……セットしてるのか?」

 

式は夢で見た女性と同じように遊馬の髪型を気になって尋ねた。

 

「この髪は遺伝だぜ」

 

「嘘つくな。どうして遺伝でそんな髪型になるんだ」

 

「嘘じゃねえって。ほら、これが俺の父ちゃん」

 

遊馬はデュエルディスクをD・パッドに変形して遊馬の両親が写っている写真の画像を式に見せる。

 

「本当だ……隣に写っているのは母親か?」

 

「おう」

 

「何で母親の髪型はまともで父親がこんなに奇抜なんだ!?いったいどんな遺伝子だ!??」

 

式は遊馬の母親の未来が綺麗なロングヘアーの女性で父親の一馬が奇抜な髪型な事に突っ込みを入れられずにいた。

 

「そんなことを言われてもな……」

 

「まあいい。なんかお前達のことをものすごく気になり始めた。変な髪のガキに見たことない霊、そしてデミ・サーヴァント……お前達は何者だ?」

 

式は遊馬達のことが気になり、遊馬達の目的やカルデアについて話した。

 

「ふーん、つまりお前と契約しているサーヴァントを探しに来たと……ならあのマンションにいる。サーヴァント達がマンションに住み着いている。おかげでここもお祭り騒ぎだ。ちなみにオレは今、擬似サーヴァント状態でここにいる。大方、この建物に因縁があるから引き寄せられたんだろ。ホント、いい迷惑」

 

式の話からして式自身は名のある英霊がサーヴァントとして召喚されたのではなく、この不気味なマンションと因縁がある所為でイレギュラーだが擬似サーヴァントとして召喚されたらしい。

 

「やっぱりあそこか……サンキュー、式。なあ、擬似サーヴァントなら俺と一緒に来るか?」

 

「断る。別に消えるなら消えるで清々するよ。余計な苦労をしなくて済むしな」

 

「そっか……分かった。じゃあ、早速行こうぜ、アストラル、マシュ」

 

「いいのか、遊馬」

 

「そうですよ、せっかく出会えたのに……」

 

「本人が嫌なら無理に誘う必要は無いだろ?それに……今はサーヴァント達を一刻も早く探して連れ戻すことが先決だ」

 

いつもなら遊馬は少し強引にでも敵ではないサーヴァントを仲間に引き入れようとするが、今回はサーヴァントが謎の行方不明事件に巻き込まれているのでそちらの解決が最優先である。

 

「話してくれてありがとうな。じゃあ、そういうことで」

 

遊馬は式に軽く手を振ってマシュとアストラルを連れてマンションに向かう。

 

「……おい」

 

「ん?何?」

 

式は遊馬を呼び止めて気になったことを質問する。

 

「聞かせろ……マスターとサーヴァントは単純に言えば主従関係だろ?従者のために主人がそこまでするのか?」

 

「俺にとってサーヴァントは従者じゃない。大切な仲間だ」

 

「だけど、家族や恋人でもない。それなのにわざわざ子どもが危険をおかしてまで行くのか?」

 

「……俺にとって仲間は家族同然の大切な存在なんだ。小さい頃に父ちゃんと母ちゃんが行方不明になった事と、今は異世界で向こうにいる家族や仲間と離れ離れになって戦っているから、なおさら仲間は大切なんだ」

 

「家族同然……」

 

「俺はもう、仲間が勝手に消えるのは二度と嫌だ。必ず、大切な仲間を取り戻す」

 

子供とは思えない確固たる決意に式は僅かに目を見開いて驚かされる。

 

遊馬は恐れずにしっかりとした足取りでマンションに向かい、その背中を見て式はある人物を重ねてしまった。

 

「チッ……あの頑固なところ、あの莫迦にそっくりじゃないか」

 

それは式にとってとても大切な存在であり、あまりにも遊馬に似てないがどこか似ている。

 

そして、中学生の子供にしては肝が据わっており、自分の意思を曲げない所は式のもう一人の大切な存在が重なる。

 

「ああもう、なんでこう重なるんだ……!」

 

髪の毛をワシャワシャと掻き乱し、遊馬の後ろ姿に式の大切な人の影が重なり、心が乱されて行き、出会ったばかりの遊馬を放って置けなかった。

 

「待て」

 

「今度は何だよ……」

 

「手伝ってやる」

 

「え?」

 

式が突然手伝うと言い出して遊馬達はキョトンとしてしまう。

 

「このマンションはかつて死を蒐集しようとした、ある魔術師の墓標。太極と地獄を融合させた伽藍の堂だ」

 

「死を……?何でそんなことを……」

 

「詳しく説明すると面倒だが、とにかくそこは子供が入るには危険な場所だ。中には敵がうようよいる。だから、手伝ってやるよ」

 

「嬉しいけど、どういう風の吹き回しだ?」

 

「大したことない話だ。お前が『あの二人』に似ていただけだ」

 

「あの二人?」

 

「とにかく、オレが道案内と護衛をする。だから、お前達はさっさと仲間のサーヴァントを連れ戻しな」

 

「分かった。頼りにしているぜ、式!」

 

「では改めてーー奉納殿六十四層、オガワハイムにようこそ、新米のマスターさん」

 

式は遊馬を試すような不敵な笑みを浮かべ、遊馬達はサーヴァントを連れ戻すために全ての元凶……オガワハイムに突入する。

 

 

 




式さんの乙女な部分と姐さん的な感じを出せたか不安でいっぱいでした。
虹クリボー、可愛いからフォウ君と一緒にいけるかなと思って。
虹クリボーは私もムニムニしたいです(笑)
抱き枕やぬいぐるみのグッズ化希望です!

式さんが遊馬を見て重なった姿はご想像の通り、式の大切な家族です。
18歳の全盛期の姿で召喚されてますが、彼女は間違いなく人妻で子持ちですからね。

次回はオガワハイム突入で、空の境界編のシリアスパートである『彼女』との戦いです。
『復讐』というキーワードでは遊馬が最も適した相手だなと思います。

それから、第四特異点で出演する彼らの下りはカットしようと思います。
理由としては第四特異点で出すのでここで出したくないのと、空の境界編の話を短めにまとめるためです。
ご了承くださいませ。

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