ありそうでなかったFGOとZEXALのクロスです。
私はまだFGOを始めたばかりなので至らない部分がありますが、よろしくお願いします。
ナンバーズ1 少年と少女、運命の出会い!
暗い闇の中、光が少しずつ差し込んで行く。
すると、顔にちろちろと何か不思議な感触が伝わる。
「ん……?何だよ……?」
ちろちろと、まるで犬か猫に舐められているみたいだった。
そんな感触に、目を開け、ぼやける視界の中で、少女の姿を視界が捉えた。
どうやら何処かで寝ているらしく、冷たい床の感触が返ってくる。
「……あの。朝でも夜でもありませんから、起きてください」
眼鏡をかけたその少女と視線が合い、可愛らしく首を傾げている。
「うわぁ!?」
少年は思わず反射的に飛び上がってからバク転をして下がり、少女も驚いた。
「あ、あんた、誰だよ?」
少年は名前を尋ねると少女は顎に手をやり、それからぼそりと呟いた。
「名乗る程の者ではありません」
「はぁ?」
「いえ、名前はあるのですが、あまり名乗る機会がなかった為にこう、印象的な自己紹介ができないと言うか……」
少女は再び首を傾げると少年の頭に頭痛が走った。
「痛っ……ここは、一体……?って、おわっ!?」
すると突然小さな犬とも、リスとも言えない可愛らしいがとても不思議な白い生き物が少年の頭に飛び乗った。
「何だこれ!?こんな生き物、見たことないぞ!?」
「こちらのリスっぽい方はフォウ。カルデアを自由に散歩する特権動物です。私はフォウさんにここまで誘導され、お休み中のあなたを発見したんです」
少女の言葉に応じる様に、「フォウ」という鳴き声が上がり、少年の頭から降りてそのまま何処かへ行ってしまう。
「またどこに行ってしまいました。あの様に、特に法則性もなく散歩しています」
「自由だな……」
「私以外にはあまり近寄らないんですが、あなたは気に入られたようです。おめでとうございます。カルデアで二人目のフォウさんのお世話係の誕生です」
「へぇー……って、気に入られた?お世話係って何!?」
よく分からない得体の知れない生き物に気に入られ、更にはお世話係に任命され訳が分からなくなる少年だった
しかしそれよりも少年は気になることがあった。
「ここは、何処なんだ?」
窓の外には大雪が吹雪いており、しかも見たことない建物の中にいる少年は周囲をキョロキョロしながら尋ねた。
「ここは人理継続保障機関『カルデア』です」
「カルデア?ハートランドじゃないのか?」
「ハート、ランド?聞いたことないですね、どこかの国の名前ですか?それにあなたはマスター適性者ではないのですか?」
「マスター……?ごめん、何の事だかさっぱり分からないんだけど」
「あなたは一体……?」
少女の問いに、少年は元気よく名乗る。
「俺は九十九遊馬だ!あんたの名前は?早く教えてくれよ!」
その少年の名は九十九遊馬。
そして、遊馬に急かされて少女も名乗る。
「私はマシュ……マシュ・キリエライトです」
少女の名はマシュ・キリエライト。
遊馬とマシュ、これが二人の運命の出会いだった。
そこに一人の男性が近づく。
「マシュ、マシュ・キリエライト。そこにいたのか」
それは緑のスーツを着た男性で穏やかな表情を浮かべていた。
「レフ教授」
「そろそろ、マスター適性者のブリーフィングが始まる。急いで中央管制室に……おや、君は?」
「俺は九十九遊馬。なあ、おっちゃん。ここは一体どこなんだよ?」
「お、おっちゃん?そんな風に言われたのは初めてだよ。マシュ、この子は?」
おっちゃんと呼ばれてレフは苦笑を浮かべるが、遊馬を不思議に思い、マシュに尋ねた。
「私も分かりません。カルデアの事を知らないみたいで……マスター候補生じゃないみたいです」
「マスター候補生じゃない?ふむ……」
「なぁ、俺一つ思いついたことがあるんだけど……」
「何かね?」
「俺、もしかしたらこことは違う異世界から来たのかもしれない」
「えっ?」
「何……?」
突然の遊馬の言葉にマシュとレフは動揺の表情を浮かべる。
「俺の故郷、ハートランドは世界的に有名な都市なんだ。それをさっきマシュに聞いたら知らないって言ったんだ。それに俺もカルデアとか知らないし、だから異世界に来ちまったんだと思うんだ」
「……あまりにも突飛過ぎる話だが、それにしては随分君は落ち着いているな」
「俺、ちょっと前に異世界をあちこち移動していたからな」
三つの世界を巻き込んだ世界滅亡の危機に立ち向かったとは流石に言えず、苦笑いを浮かべる遊馬。
遊馬は異世界から来た証拠に遊馬の世界で広く普及している携帯端末であるD・パッドとD・ゲイザーをレフに見せた。
技師であるレフは初めて見るD・パッドとD・ゲイザーに興味を持ち、更には見た事ない技術で作られているとすぐに分かり、遊馬が異世界から来たと信じざるを得なかった。
レフは何も知らない遊馬にこのカルデアの必要最低限の事を教えた。
人理継続保障機関・カルデア。
それは魔術だけでは見えない世界、科学だけでは計れない『世界』を観測し、人類の決定的な絶滅を防ぐために設立された特務機関。
ある日、何の前触れもなく、カルデアで観測を継続していた未来領域が消失し、人類は2017年で絶滅することが証明されてしまった。
カルデアは時空の特異点を探し出し、解明あるいは破壊し、人類滅亡を阻止するために動き出していた。
カルデアは守護英霊召喚システム「フェイト」を使い、英霊と呼ばれる強力な力を持った過去の英雄たちをサーヴァントとして召喚して契約を結び、共に戦う。
その英霊を召喚し、契約を結ぶために48人のマスター候補生が集められ、マシュもその一人である。
人類滅亡とそれに立ち向かう戦いが始まるというとんでもない話に遊馬は首にかけた遊馬の胸に掛けている『皇』の形をした不思議な金色のペンダント、『皇の鍵』を握りながら顔を少し青くする。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ!大丈夫だ!」
「しかし、本当に何も知らないようだ……それに、なぜ君がここで倒れていたのかも不明だ。さて、どうするか……」
突然カルデアに現れた遊馬をどうするかレフは悩んでいると遊馬はある提案をする。
「なあ、おっちゃ……じゃなくて、レフさん!俺も、そのレイシフトに参加してもいいか?」
「何だって……?」
「何で俺がここにいるのか分からないけど、ここでマシュと出会ったことに何か意味があると思うんだ。それに、異世界とは言え人類滅亡なんて話を黙って見ていられないんだ。だから、頼むよ!」
「まだ十三歳なのに随分と逞しい心を持っているね。一応、適性のあるマスターは四八人と決められているがあくまでもそれは適性があると認められた人々で、上限はない。もしも君にマスターとしての適性があるならば、レイシフトに参加できるかもしれない」
「本当か!?」
「ああ、私からも話を通してみるよ。ただ……もうすぐブリーフィングが始まる。遅れたら大変だ。ウチの所長は、結構根に持つタイプだからね」
「え!?遅れただけで根に持つの!?」
ハートランド学園の中学校で遅刻常習犯である遊馬にとってはある意味相性最悪と思われるその所長に顔を真っ青にする遊馬だった。
そんな遊馬にマシュは手を握って急かすように走り出す。
「遊馬君、こっちです。急ぎましょう」
「え?あ、ああ!」
「ほぅ、マシュが自分から人が関わるとはね。マシュ、彼の何処に興味を惹かれたんだい?」
「遊馬君は今まで出会った人達とは違うんです」
「違う?」
「とても純粋で心優しく、でもとても強い……そんな感じがするです」
「え?いやー、その、照れるなぁ〜」
遊馬はマシュに褒められて歳相応に照れるとカルデアの中央管制室に到着した。
「よっしゃあ!行くぜ!」
遊馬は異世界の人類救済の第一歩を踏み出すべく、中央管制室のドアを開いた。
ところが……。
「どわあっ!?」
遊馬は思い切り突き飛ばされ、廊下に転がり出された。
「ここは子供の来るところじゃありません!」
「ええっ!?ちょっとぉ!?」
厳しい女性の声が響くと既に中央管制室の扉は閉じられ、完全に自分が閉め出された事を悟り、愕然とする遊馬だった。
「何でだよ……」
「遊馬君は、ファーストミッションから外されてしまったみたいです」
「え!?」
「個室に案内します」
あまり感情を表に出さないマシュも、少しばかり遊馬に同情している様子だった。
数分前に遊馬は意気揚々と中央管制室に入ったのはいいが、幼さが抜けない……悪く言えばガキっぽい十三歳の子供が来たことに所長のオルガマリーは気に入らず、問答無用に叩き出されてしまったのだ。
「……俺、あの所長に嫌われたかな?」
「はい。所長から目の敵にされると思います」
マシュは遊馬に残酷な事実が突きつけ、遊馬は思わず大きな溜め息をついてしまう。
これでは遊馬の今後のミッション参加は絶望的かもしれない。
「魔術の世界は実力は勿論の事、家柄がものを言います。所長は魔術の名門の出で、血筋に強いこだわりを持っているんです。試験段階のレイシフトを成功させる為には多くのマスター適性者が必要です。しかし、その候補者も一握りしかおらず……」
「じゃあ、俺は最初から出来ないかもしれなかったのか?」
「はい、そういう事になります」
「そっか……見ず知らずの俺じゃダメなのか……でも、これぐらいのことじゃ諦めないぜ!落ち着いたら所長の所に行って認めてもらうしかないぜ!かっとビングだ!」
諦めることをしない遊馬の元気な姿にマシュは微笑みながら遊馬の部屋を案内する。
「ここが遊馬君の部屋です。レフ教授が急いで空き部屋を探してくれました」
「おお!ここが俺の部屋!マシュ、レフさんにありがとうって伝えてくれないか?」
「構いませんよ」
「サンキュー!マシュはこれからミッションか?」
「ええ。この後すぐにです」
「そっか。頑張れよな……うわっ!?」
マシュに激励をしようとした遊馬だがまだ体が本調子ではなく、眩暈がしてそのまま尻餅をついてしまった。
尻餅をした際に腰に取り付けられている赤いデッキケースが開いてしまい、中に入っている大量のカードが床に散らばってしまった。
「だ、大丈夫ですか!?」
「いって……まだ体が本調子じゃねえな。あっ、やべっ!カードが!?」
「大変です、一緒に拾います」
「サンキュー、マシュ!」
遊馬とマシュは二人で床に散らばったカードを集める。
「見たことないカードですね……遊馬君、これは?」
「これはデュエルモンスターズ!カードに描かれたモンスターと一緒に戦うカードゲームなんだ!」
「カードゲーム、これが……!」
マシュは初めて見るカードに目を瞬かせながら見ていると、不思議なカードを見つけた。
「FNo.0……未来皇、ホープ……?」
それは黒い枠のカードに二つの剣と翼を持った戦士のような姿をしたモンスターが描かれていた。
そして、そのカードはとても不思議で尚且つ魅力的で描かれていたモンスターはどことなく遊馬に似ていた。
「マシュ、それで最後だな……どうかしたのか?」
「いえ、このカードが遊馬君に似ているなって思って……」
未来皇ホープが遊馬に似ていると言われ、遊馬は得意げに笑みを浮かべる。
「へへっ、かっこいいだろ!こいつは俺にとって特別なカードだからな!」
「ええ。とてもかっこいいです」
マシュは残りのカードと未来皇ホープのカードを遊馬に渡し、これでばら撒いてしまったカードを全て回収できた。
「よし!これで全部だ、サンキューな、マシュ!」
カードをデッキケースにしまい、遊馬はマシュにお礼を言う。
「いいえ、大したことはしてません。では行ってきます」
「ああ!頑張れよ!」
「はい」
マシュは中央管制室へ向かおうとしたその時、遊馬はそうだ!とある事を思いついてデッキケースから一枚のカードを取り出す。
「マシュ!」
「えっ?」
遊馬に呼ばれてマシュは振り向くと遊馬から何かが投げ渡され、慌てて受け取ったマシュの手には一枚のカードがあった。
「このカードは……!?」
それは先ほどマシュが手にした遊馬にとって特別なカード、『FNo.0 未来皇ホープ』だった。
「ラッキーカード、お守りとして持ってくれ!」
「でもこれは遊馬君の大切な……」
「レイシフトが終わって帰ってきたら返してくれ!マシュ、約束だからな!」
遊馬はレイシフトに向かうマシュとまた会うために未来皇ホープのカードを渡して再び会う約束をした。
マシュは遊馬の優しさに触れて心が温かくなり、未来皇ホープのカードを優しく握りながら笑みを浮かべた。
「はい!必ず、終わったら返します!」
未来皇ホープのカードを上着の内ポケットに仕舞い、管制室に向かって走り出した。
「さぁて、とりあえず俺は一眠りするか。色々考えるのは後だ!」
まずは本調子じゃない体を整えるために一眠りしようと部屋のドアを開いた、次の瞬間呆気に取られてしまった。
誰もいないはずの自分の部屋のベッドには、白衣を着た青年が鎮座し、美味しそうにケーキを頬張っているのだ。
「誰だよあんた……?」
「ふぁーい、入ってまーす……って!?誰だね君は!」
「いや、それは俺のセリフだから」
青年がフォークを遊馬に突きつけるが、遊馬は冷静にツッコミを入れる。
「ここは僕専用のサボり場だよ?誰の許可を得て入ってきたんだね!」
「サボり場って……えっと、マシュにこの部屋が俺のだって聞いたんだけど」
「え!?マシュに!?だって、マスターは48人なんじゃあ!?ここに来て、一人追加!?」
「よくわかんねえけど、多分そういう事になってる。それで、あんたは?」
「ん?ああ、紹介が遅れたね。僕は、ロマニ・アーキマン。医療部門のトップで、カルデアの皆からはドクターロマンって呼ばれてるよ」
「ドクター?ってことは、お医者さんなのか?」
「そうだよ。でも、もうすぐレイシフトが始まるのに、どうして君はここに?カルデアに来たという事は、マスターなんだろう?」
遊馬は所長とのいざこざを説明すると、ロマニは苦笑いをしてケーキを頬張る。
「成程、幼いが故に所長の逆鱗に触れ、ファーストミッションから外された、と。僕と一緒だね」
「え?一緒?」
「所長に、『ロマニがいると現場の雰囲気が緩む』と言われて、追い出されてね。だからここで拗ねてたって訳さ」
「そっか。でも、俺は先生みたいな明るい人は大好きだぜ!堅苦しい人ばっか集まったら心が沈んじまうからな!」
「おお!僕のことを理解してくれる人がいるとは、僕は遊馬君の様な人間を待っていたんだ!所在ない者同士、仲良くしようじゃないか!」
ロマニは遊馬を気に入り、遊馬の頭を優しく撫でた。
「よろしくな、ロマン先生!あ、そうだ。色々聞きたいことがあるんだけど、いいかな?俺、ここのこと、全然知らなくて」
「ああ、良いだろう。ではまず最初にカルデアとは……」
ロマニが遊馬へカルデアに関する講義を始めるために口を開こうとしたその時、ロマニの手首に巻き付いている腕輪が音を鳴らした。
聞こえてきたのはレフの声で通話機能が備わっていた。
「うん?レフ、どうしたんだい?」
『もうすぐレイシフトが始まるんだが、Aチームは良好、しかしBチームの何名かに微かな変調が見られる。来てくれるか?』
「分かった、麻酔をかけに行こう。すぐに向かう」
『そこからなら二分で到着するはずだ。頼むぞ』
「OK」
通話を切ったロマニに遊馬はあることに気づく。
「あれ?ここは医務室じゃないよな?」
「……まぁ、言い訳は考えるさ。今の彼は……」
「レフさん、だったよな?確か、技師の一人って言ってたぞ」
「控えめに言ったなぁ。レフはね、『カルデアス』の大事な部分を設計した魔術師なんだよ?」
「へぇ……あの人が……」
「それじゃあ、僕はこれで行くね。楽しかったよ、遊馬君。もし暇だったら医務室に来てくれ。美味しいケーキでも……」
その時、ロマニの言葉を謎の爆発音が遮った。
直後に不気味な音が続いて響き、部屋の天井の照明が切れた。
「えっ?停電?」
「まさか。カルデアで停電なんて……」
『緊急事態発生、緊急事態発生』
緊急のアナウンスが流れ、カルデア内の発電所から火災が起きている事が知らされる。
「火災だって……!?」
突然訪れた緊急事態に遊馬は現状がとても危険な状態にある事を知る。
そして、脳裏に先ほど別れたマシュの姿が浮かんだ。
「はっ!?マシュ!!」
遊馬はマシュの身を案じ、部屋を飛び出した。
「あっ!待ちなさい、遊馬君!」
ロマンの制止を振り切り、マシュの無事を確認する為に中央管制室へ向かった。
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早速遊馬君がマシュちゃんにフラグを立ててます(笑)
流石は遊戯王主人公です。
ここではマシュちゃんは遊馬君を弟のように可愛がります。
次回から遊馬の戦いが始まります。