Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回は古き神の登場です。

そしてまた遊馬のフラグ被害者が増えます(笑)


ナンバーズ23 古き神の試練

カエサルを倒してガリアを解放した遊馬たちは凱旋するために首都に戻ろうとしたが、気になることを耳にした。

 

「古き神が現れた、か。本当であろうか?」

 

「古き神ねぇ、俺が出会った神は最悪な奴だったけどな……」

 

「一応、エリファスもアストラル世界の守護神だが……彼は頑固なだけで、私達に未来を託してくれたからな」

 

遊馬はドン・サウザンド、アストラルはアストラル世界の代表にして守護神のエリファスを思い出しながら呟く。

 

古き神……どうやらそれはただの嘘ではなさそうでここ数日で何人も言っており、地中海のある島で現れたらしい。

 

「なあ、ネロ。気になるし、ちょっと行ってみるか?」

 

「しかし、ローマの帰還途中だというのに……」

 

「大丈夫だって、俺の船を使えばすぐに着くからさ。ちょっと行ったらすぐに戻れば良いからさ」

 

「ユウマの船?何処にあるのだ?」

 

「ここにあるぜ。かっとび遊馬号、起動!」

 

遊馬は皇の鍵を掲げると、上空の空間が歪み、皇の鍵の飛行船こと、かっとび遊馬号が姿を現わす。

 

「ぬぉおおおおっ!?な、何なのだあれは!?」

 

「簡単に言えば空飛ぶ船だ!あれがあれば島なんてすぐに到着するぜ!」

 

「なるほど、空飛ぶ船か!これは見事!!分かった、兵はブーディカ達に任せて行こうではないか!!」

 

「おう!」

 

妙にブーディカとは違った意味で相性が良いのか、遊馬とネロはテンションを上げながら古き神がいる島に向かう準備をし、アストラルとマシュ達は幼き姉弟を見守る気持ちで苦笑を浮かべていた。

 

その後、兵をブーディカに任せてかっとび遊馬号に遊馬、アストラル、マシュ、ジャンヌ、レティシア、そしてネロを乗せて地中海に向かった。

 

ネロとついでにレティシアは人生初の飛行船に興奮しながら僅かな時間の船旅を楽しんだ。

 

あっという間に島に到着した遊馬達は砂浜に降り立つと、海から吹く気持ちの良い潮風に心地よい気持ちになったのもつかの間……目的の古き神が近づいて来た。

 

念のため戦闘準備をすぐに整えると、そこにいたのはどこかで見た面影のある顔立ちに紫色の髪のツインテールをした遊馬と同い年か少し年下の風貌の可愛らしい少女だった。

 

「ご機嫌よう、勇者のみなさま。当代に於ける私のささやかな仮住まい、形ある島へ」

 

「あんたがみんなが言ってた古き神か?」

 

「ふふ、あら、あら。どんなに立派な勇者の到来かと思ったのだけれど、まだ子供じゃない。しかもサーヴァントが混ざっているなんて」

 

「うるせえ!子供でも場数は潜ってるんだよ!」

 

「遊馬、挑発するな。感じる、相手は紛れもない神……女神だ!」

 

アストラルはキリッと目を鋭くして遊馬を諌め、場の緊張感を高める。

 

遊馬のD・ゲイザー越しにカルデアの管制室でその女神を調べたが、何と驚くことにサーヴァントでしかも本物の神であったのだ。

 

「精霊……?見たことない姿に、とても強い力を感じますね。その少年に取り憑いていると言うことは……なるほど、場数を潜っているのは本当らしいですね。ところで……」

 

穏やかな表情を浮かべていた女神は遊馬のデッキケースの方を見つめると目を細めて睨みつける。

 

「一つ聞きたいことがありますが……どうしてあなたから……メドゥーサの気配を感じるの?」

 

「メドゥーサ?あんたメドゥーサを知ってるのか?」

 

メドゥーサを親しそうに話す女神にその容姿からアストラルは考えられる関係者を思いつく。

 

「……もしかしてあなたは、ゴルゴン三姉妹……メドゥーサの姉君のステンノ、もしくはエウリュアレでは?」

 

「正解よ、私は女神。名は、ステンノ。ゴルゴンの三姉妹が一柱よ」

 

目の前にいる女神のサーヴァントがメドゥーサの姉である事に驚きながら遊馬は興味深そうに見つめる。

 

「あんた、メドゥーサの姉ちゃんだったのか。よく見れば確かに似ているな。あっ、そうそう、あんたが感じた力の正体はこれだよ」

 

遊馬はデッキケースからメドゥーサのフェイトナンバーズをステンノに見せる。

 

「何それ……?」

 

「メドゥーサとの契約の証だ。メドゥーサはここにはいねえよ」

 

「メドゥーサと契約ね……でも、あなたはそこにいる三人のサーヴァントと契約しているのでは?」

 

「そうだけど、まあ色々あるんだよ。メドゥーサをここに呼び出そうか?」

 

「え?メドゥーサを呼び出せるの……?」

 

メドゥーサをここに呼び出せるとステンノは聞いて目を丸くした。

 

「ああ。ちょっと待ってて。あーあー、もしもし?カルデア管制室、今すぐメドゥーサを呼んできてくれ。姉ちゃんのステンノがいるって」

 

D・ゲイザーでカルデアの管制室に連絡すると小鳥が出た。

 

『もしもし遊馬。分かったわ。少し待ってて、今すぐメドゥーサさんを呼んでくるわ』

 

「おう小鳥!サンキュー!」

 

『あ、メドゥーサさん!ちょうどよかった。実はあなたのお姉さんが……って、何で全力疾走で逃げるんですか!?』

 

小鳥はメドゥーサを見つけたのもつかの間、姉がいることを知るなり全力疾走で廊下を走り出す。

 

『す、すみません、ちょっと用事を思い出しまして……』

 

『あ、クー・フーリンさん!メドゥーサさんを捕まえてください!お姉さんがいるのに会おうとしないんです!』

 

『あー?メドゥーサの姉ちゃんだと?そういえばあいつ……はっ、良いだろう。最速のランサーの名にかけて捕まえてやるぜ!おい、カルデアのサーヴァント共!手の空いている奴は今すぐメドゥーサを捕まえろ!いつもクールぶっているメドゥーサの化けの皮を剥がそうぜ!!』

 

『ちょっ!?クー・フーリン!?くっ、後で覚えておきなさーーイヤァアアアアアッ!?どうして皆さん一斉に追いかけてくるんですか!?』

 

『まあ君が姉君と会ってどんな反応するか見てみたいからな』

 

『過去と向き合いなさい、メドゥーサ。私も頑張って向き合っているのですから!』

 

『助けてください!!サクラァアアアアアッ!!!』

 

何やら色々と騒がしい音声が聞こえ、数分後には無事にメドゥーサを捕獲して準備ができ、遊馬はデッキケースにメドゥーサのフェイトナンバーズを仕舞う。

 

そして、数秒後にデッキケーキから紫色の光が飛び出て、若干衣類や髪がボロボロになったメドゥーサが現れた。

 

「う、上姉様……お久しぶりでございます……」

 

「うふふ……駄メドゥーサ……会いたかったわ……」

 

ステンノはまるで自分のおもちゃを見つけた子供のような笑みを浮かべてメドゥーサに近づこうとした。

 

メドゥーサは眼帯で顔の半分近くを隠しているが、体が震えており明らかに怯えていた。

 

バッ!

 

遊馬はとっさにメドゥーサの前に立ってステンノを近づこうとするステンノを遮る。

 

「あら?何をするのかしら?せっかくの姉妹の感動の再会に水を差すのですか?」

 

「……普通の姉妹なら良いけど、あんたから恐ろしい気配を感じてな。俺も姉ちゃんいるし……」

 

過去に姉の明里から受けた恐ろしい経験を何度も受けた嫌な経験感が働き、遊馬はステンノのドSな性格に気づいたのだ。

 

こいつ本当に女神かよ?と思いながら遊馬はステンノと睨み合いを続ける。

 

「はぁ……まあいいわ。駄メドゥーサとは後でじっくり話しますわ」

 

遊馬の根気に負けたステンノは一旦メドゥーサと話をするのを止め、話題を変える。

 

「さて……話が変わりますけど、あなたに一つ質問があります」

 

「質問……?」

 

女神が何の質問をするのか緊張する遊馬だったが、ステンノの質問な驚くべき内容だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたはメドゥーサを化け物だと知ってて契約してるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あまりの予想外の質問に遊馬達は一瞬言葉を失った。

 

「っ!?てめぇ……妹に向かってなんてことを言ってるんだ!!」

 

メドゥーサを化け物呼ばわりするステンノに遊馬は一瞬で頭に血が上って激昂し、思わず殴りかかろうとした。

 

「いいんです、ユウマ!」

 

メドゥーサは遊馬の肩を掴んで止め、悲しそうな表情を浮かべて首を左右に振る。

 

「メドゥーサ……」

 

「今はこの姿でも、私は昔、醜い化け物となって……その結果、姉様たちを喰い殺してしまいましたから……私は所詮、反英雄……倒されるべき怪物ですから」

 

ギリシャ神話ではステンノともう一人の姉、エウリュアレは逃げたと記されているが真実は違う。

 

英雄殺しの魔獣『ゴルゴーン』となってしまい、理性を失って喰い殺してしまったのだ。

 

メドゥーサは死後に英霊の座に着いた時からずっとその事がトラウマとなっているのだ。

 

遊馬はメドゥーサの悲しそうな表情を見ると覚悟の紅い瞳でステンノを見つめ、自分の思いを話す。

 

「ステンノ。この際だからはっきり言わせてもらう……メドゥーサが化け物だろうが何だろうがそんなのは関係ない!!」

 

「ユウマ……?」

 

「関係ない……ですって?」

 

メドゥーサは呆然とし、ステンノは目を見開いて驚いた。

 

「メドゥーサがどんな存在だったのか、どんな生き方をしていたのか、それはカルデアで見たギリシャ神話の本でしか見たことないし、メドゥーサの口から聞いたことないからそれが真実かどうか分からねえよ。だけど、これだけは言える……メドゥーサは俺の大切な仲間だ!!」

 

メドゥーサとの絆の証である『FNo.44 天馬の女神 メドゥーサ』を見せながら強く宣言する。

 

「本性が化け物だろうが何だろうが構わない!メドゥーサが俺をマスターとして、仲間として認めてくれて、俺と一緒に戦ってくれるなら俺は最後までメドゥーサを信じる!そして、必ず守る!!それが俺の覚悟だ!!」

 

マスターとして、仲間としてメドゥーサを信じ、そして必ず守る覚悟。

 

本来なら倒すべき存在であるメドゥーサを仲間にするだけでなく守ると宣言した勇者……そんな人間を見るのは女神であるステンノ自身も初めてだった。

 

しかも勇者と呼ぶにはまだ幼い子供……そんな遊馬を見て興味が出てきた。

 

「面白いじゃない……そこまで言うなら一つ、あなたを試してあげるわ」

 

「試す?」

 

「この島の洞窟に勇者を出迎えるための催しを作ったのよ。そこには私が用意した魔獣がいるわ。それをあなたとメドゥーサで攻略しなさい」

 

「魔獣?」

 

「魔獣を倒した後に宝箱があるわ。それをどうするかあなた達次第だけど……」

 

「ふーん……女神が用意した試練ってことか」

 

「しかし、女神ステンノよ。それを遊馬とメドゥーサが攻略したとして、我々に何のメリットがある?」

 

アストラルの言うことももっともであり、わざわざ女神が用意した恐らくかなり危険な場所に踏み込む理由などはない。

 

「そうね……それなら、私をあげるわ」

 

「上姉様!!?」

 

「私はサーヴァントとしてはメドゥーサに比べたら弱いけど、この身全てをあなたに捧げるわ」

 

「つまり、仲間になるってことか?分かった!約束は守れよ?」

 

洞窟の試練をクリアすればステンノが仲間になると聞いて遊馬はやる気を出した。

 

「ユ、ユウマ!洞窟に何があるのかわからないのに……」

 

「でも、クリアすればステンノのフェイトナンバーズを手に入れればカルデアで召喚しやすくなる!そうしたら、カルデアの中限定だけど、また姉妹で一緒に暮らせるだろ?」

 

「えっ!?まさか、それが理由で……!?」

 

「うん、そうだけど?」

 

あっけらかんに答える遊馬にメドゥーサはぽかーんと口を開けて唖然とする。

 

対してアストラルは相変わらずだなと嬉しそうに笑みを浮かべた。

 

マシュ達は驚きの後に先日アストラルが語った遊馬の過去を思い出して遊馬らしい考えだとアストラルと同様に笑みを浮かべた。

 

ネロは遊馬の他人のために全力を尽くして戦えることに感動して称賛した。

 

「変な子ね……いいえ、だからこそメドゥーサや複数のサーヴァントと契約出来ている……何か他人を惹きつける力を持っているのかしらね」

 

そして、ステンノはそんな遊馬を見て呟いた。

 

「よっしゃあ!早速行こうぜ、メドゥーサ!」

 

「わかりました。ユウマ、行きましょう!」

 

遊馬とメドゥーサはステンノが用意した試練である洞窟へと向かう。

 

アストラルは遊馬とは離れられないのでステンノが特例で認めてそのまま洞窟へ向かう。

 

 

入った洞窟はジメジメとしてとても暗く、心地の良い場所ではなかった。

 

入った矢先に先兵と思われる骸骨兵がいたが、そこはカルデアの英霊達に鍛えられている遊馬とかつて多くの英雄と戦ったメドゥーサの敵ではなくあっさりと片がついた。

 

問題はそれではなく洞窟の奥にいる敵……簡単に言えばダンジョンのボスである。

 

『グオオオオオオオ!!!』

 

現れたのは古代ギリシャに伝わる怪物、キメラ。

 

複数の動物のパーツが組み合わさっている存在で魔術による合成生物ではなく、正真正銘の伝説の幻獣である。

 

「ははっ、宝箱を守る番犬と言ったところか!」

 

「ワイバーン、ファヴニールに続いてキメラか……英霊だけでなくこれほど有名な伝説のモンスターと戦うことになるとはな」

 

遊馬はホープ剣を消すとデッキからカードを引き、手札を見てどう動かすか一瞬で考える。

 

「時間はないから一気に決めるぞ。この手札なら……メドゥーサ、出番だぜ!」

 

「わかりました。行きますよ、ユウマ……マスター!」

 

「おう!かっとビングだ、俺!俺のターン、ドロー!魔法カード『おろかな埋葬』を発動!デッキからモンスターカードを墓地に送る!俺はデッキから『ズババナイト』を墓地に送る!更に『クレーンクレーン』を召喚!効果で墓地のレベル3モンスターを一体特殊召喚出来る!来い、ズババナイト!!」

 

鳩の形をしたクレーンのモンスターが墓地に送られたズババナイトを引っ張りあげて特殊召喚する。

 

クレーンクレーンとズババナイトのレベルは共に3、これで条件は成立した。

 

「派手にぶちかまそうぜ、メドゥーサ!」

 

「ええ!」

 

「俺はレベル3のズババナイトとクレーンクレーンでオーバーレイ!エクシーズ召喚!」

 

ズババナイトとクレーンクレーンが光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。

 

「儚く美しき女神よ!魔眼と天馬の力で仇なす敵を討て!」

 

それは遊馬にとって初めて対峙した英霊の敵……そして、サーヴァントとの絆の象徴フェイトナンバーズの始まりのカードである。

 

「現れよ、『FNo.44 天馬の女神 メドゥーサ』!!」

 

光の中から天馬……ペガサスが現れ、その背には白い軽装の鎧を纏うメドゥーサが乗っている。

 

そして、驚くことにそのペガサスはメドゥーサが召喚する純白のペガサスではなく、『No.44 白天馬スカイ・ペガサス』だった。

 

スカイ・ペガサスがメドゥーサと共に現れたことに驚きながら遊馬は早速効果を発動する。

 

「メドゥーサの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、相手モンスターを裏守備表示にする!更に、相手はこの表示形式を変更出来ない!!」

 

「キュベレイ!!」

 

メドゥーサはオーバーレイ・ユニットを一つ手で握りしめ、両眼の魔眼を封印している眼帯を外し、真紅の両眼が怪しく輝くとキメラの体が一瞬で動かなくなる。

 

石化の魔眼によってキメラが動けなくなったのだ。

 

「おっしゃあ!これでキメラの動きを封じたぜ!」

 

「ユウマ、トドメです!」

 

「おうっ!メドゥーサのもう一つの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、このカードが守備表示のモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する!」

 

スカイ・ペガサスはもう一つのオーバーレイ・ユニットを喰らい、メドゥーサのもう一つの効果を発動する。

 

メドゥーサは自身の宝具であり、ライダーのクラスに相応しい騎乗できるものなら幻想種すらも制御し、更にその能力を向上させる黄金の鞭と手綱……『騎英の手綱』を呼び出してスカイ・ペガサスに手綱を掛ける。

 

「優しく蹴散らしてあげましょう!『騎英の手綱(ベルレフォーン)』!!」

 

スカイ・ペガサスの目が力を宿したように鋭く輝き、洞窟の天井の目一杯まで高く飛び、一気に急降下する。

 

そして、スカイ・ペガサスは自身とメドゥーサを包み込むように白銀の光を纏い、暗い洞窟の中ということもあってそれは夜空に輝く流星のように美しい光だった。

 

「いっけー!ペガサス・シューティング・ブレイク!!」

 

「これで終わりです!!」

 

流星と化したメドゥーサとスカイ・ペガサスの一撃は動けないキメラの体を貫いた。

 

強力な一撃を喰らったキメラは声を上げずに倒れ、死体が残ることなく消滅した。

 

遊馬とメドゥーサはハイタッチを交わし、勝利を喜ぶ。

 

「やったな、メドゥーサ!」

 

「ええ。それにしても、この子は良い子ですね。ありがとうございました」

 

メドゥーサはスカイ・ペガサスの頭を優しく撫でた。

 

役目を終えたスカイ・ペガサスはメドゥーサの白い装甲と共に静かに消えた。

 

「さてと、これでステンノの試練は終わったな」

 

「後は宝箱だけか……」

 

洞窟の奥にある宝箱を見つけ、早速開けようと思ったその時だった。

 

「ん?おわっ!?」

 

デッキケースが開き、中から翡翠色の光が飛び出すと突然清姫が現れた。

 

「旦那様、ご機嫌よう」

 

「清姫!?どうしたんだよ!?」

 

「実は……エリザベートさんがいないのです」

 

「エリザベートがいない?部屋にも食堂にもか?」

 

「はい。ちょっと暇なのでちょっかい……ではなく、お話をしようと思ったんですが……どうやら皆さんも見てないらしくて」

 

ちょっかい……と言う言葉は置いておいて、エリザベートが行方不明になったことを遊馬は心配する。

 

「マジかよ……でも急にいなくなるなんてエリザベートらしくないな。どこ行きやがったんだ……?」

 

「……遊馬、気のせいではないと思いたいが、あの宝箱の中からサーヴァントの気配がする」

 

「「「えっ???」」」

 

アストラルの指摘で一斉に宝箱を見つめる。

 

よくよく見て冷静に考えると不自然な点があった。

 

「あの宝箱、結構でかいな。それも人が余裕に入れるぐらいに……」

 

「あれは上姉様が用意した宝箱ですから、もしかして……」

 

「うーん……微かですが、エリザベートさんの気配を感じますね。まさか……」

 

遊馬達は一つの可能性に辿り着き、どうするか迷った。

 

キメラを洞窟に仕掛けるステンノが素直に宝箱に宝物を入れるわけがない。

 

ドッキリで宝物に何か罠を仕掛けている可能性も十分にある。

 

それこそ、例えば宝箱に潜むモンスターの代名詞であるミミックのように生き物が入っているとか……。

 

「旦那様、私の炎で燃やしますか?」

 

「それだともし本当に中にエリザベートがいたら火傷して傷つくし、そうだな……」

 

遊馬はどうするか悩んでいると、アストラルは手札に握られていたカードを見て思いついた。

 

「遊馬、ちょっとしたイタズラでこれを使って見たらどうだ?」

 

「え?このカードを?でもこれ使ったら危ないんじゃないか?」

 

「いいや、あくまでちょっと脅かすだけだ。本当に使うわけじゃないから安心するんだ」

 

「そっか、じゃあいっちょやるか!」

 

遊馬は残る手札でモンスターを召喚し、エクシーズ召喚をする。

 

「エクシーズ召喚!現れよ、『No.39 希望皇ホープ』!」

 

希望皇ホープがエクシーズ召喚され、遊馬達の前に現れる。

 

すると遊馬はD・ゲイザーとデュエルディスクのボタンを押して色々操作するとD・ゲイザーのイヤホンマイクに手を添える。

 

「あーあー!マイクのテスト中、マイクのテスト中!」

 

遊馬はD・ゲイザーのマイクで話すと、デュエルディスクのスピーカーから音量が倍増された音声が出ていることを確認する。

 

ダ・ヴィンチの改造でデュエルディスクに小型スピーカーが内蔵され、拡声器の機能が入っている。

 

D・ゲイザーと連動してスピーカーから遊馬の音声が大きくなった音が洞窟内に響く。

 

「えー、宝箱の中にいるエリザベートに告ぐ!ミミックみたいな悪ふざけなんかやめて今すぐ出て来い!出てこないと『ホープ・バスター』を発動して宝箱を破壊するぞ!」

 

ホープ・バスターは希望皇ホープがいる時に相手フィールド上の攻撃力が一番低いモンスター1体を破壊し、破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える……と言うモンスター破壊とバーンを兼ね備えた魔法カードであり、希望皇ホープがロケットランチャーを発射するイラストが描かれている。

 

つまり、このまま発動してしまうと希望皇ホープがロケットランチャーを装備し、容赦なく宝箱が爆破されてしまう。

 

「……いないようだな。でももしかしたら罠の可能性もあるし、一応破壊しておこう」

 

「そうだな。よーし、カウントダウンだ。3、2、1……」

 

遊馬がホープ・バスターをデュエルディスクにセットして発動しようとしたその時。

 

「ちょっと待ちなさぁあああああいっ!?」

 

「あはははははは!!」

 

宝箱から勢いよく飛び出してきたのは……どうしてここにいるのか疑問で仕方ないエリザベート。

 

「ちょっと!あんた達、私を殺す気!??」

 

「あはははははは!!」

 

さらにもう一人、猫耳と猫の手と猫の尻尾を体に付け、そしてメイド服を着て、何故か手にはオムライスが乗った皿を持つ女性で、もはや何の英霊かさっぱり分からない謎のサーヴァントだった。

 

焦る二人を見た遊馬達はジト目で睨みつけ、無言で踵を返した。

 

「アストラル、メドゥーサ、清姫。帰るか」

 

「帰ろう」

 

「帰りますか」

 

「帰りましょう」

 

スタスタスタとその場から洞窟の出口に向けて歩き出す。

 

自分たちは何の関わりもない赤の他人と言わんばかりの態度であるが、仕方ないことである。

 

「ま、待ちなさいって!コラッ!無視しないでよ!!」

 

「あはははははは!」

 

遊馬達の後を慌ててエリザベートとメイド?のサーヴァントが追いかけるのだった。

 

 

 

.




メドゥーサが遊馬に対する好感度が一気に上昇しました(笑)

遊馬ならメドゥーサでもちゃんと全て受け入れられると思うので。

今回登場したメドゥーサのフェイトナンバーズはこんな感じです。

FNo.44 天馬の女神 メドゥーサ
ランク3/闇属性/戦士族/攻1900/守1700
レベル3モンスター×2
1ターンに1度ずつ、エクシーズ素材を一つ取り除き、以下の①②の効果を発動できる。
①相手フィールドのモンスターを全て裏守備表示にする。相手は表示形式を変更出来ない。
②このカードが守備表示のモンスターを攻撃した場合、ダメージ計算を行わずそのモンスターを破壊する。更に破壊したモンスターの元々の守備力分のダメージを相手に与える。

メドゥーサの魔眼と天馬をイメージした効果で、相手モンスター突破型にしてみました。

初のランク3フェイトナンバーズです。

そろそろ他のランクも出さないとやばいと思ったので(−_−;)

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