Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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ナンバーズ190 新たなる切り札!ドラゴニック・ホープレイ!!

アトラス院から西の村に戻った遊馬達は次の目的を決めた。

 

徐々に獅子王との対決が近づいていき、遊戯はエジプト領に行くことを提案した。

 

エジプト領にいるオジマンディアスとニトクリスと話をつけて協力関係を結び、獅子王との最終決戦に挑むのだ。

 

遊馬達もそれに同意し、明日の朝にエジプト領に向かうこととなった。

 

本日も色々な事があったので、サーヴァント達は村人達と一緒に宴会を初めた。

 

食材と酒は藤太の宝具でどんどん湧いて出てくるのでエミヤが料理を作っていき、サーヴァント達の腹を満たしていく。

 

すると、マシュはいつの間にか遊馬とアストラルの姿が無いことに気付き、念の為にデュエル飯を用意して探しに出かけた。

 

「マシュ殿、私も一緒に探します」

 

「ありがとうございます、ベディヴィエールさん」

 

ベディヴィエールも同行し、遊馬とアストラルを探す。

 

村を隅々まで探したが遊馬とアストラルの姿が見えず、マシュはフェイトナンバーズの繋がりを頼りに見つけ出した。

 

遊馬とアストラルは村の外の人気のない場所で対峙していた。

 

その近くの岩陰には静謐のハサンが気配遮断の隠密行動スキルで隠れながら遊馬とアストラルを見ていた。

 

「静謐さん?」

 

「ここで何を……」

 

「っ!?マシュさん、ベディヴィエールさん。えっと、ユウマ様を見守っていました……」

 

遊馬にベタ惚れしている静謐のハサンは遊馬がいないのをいち早く気付いて探し出していた。

 

そして、遊馬とアストラルが何をしているのかと言うと……二人は珍しくデュエルをしていた。

 

「『ガガガガマジシャン』の効果で攻撃力4000となった『未来皇ホープ』でアストラルにダイレクトアタック!」

 

「甘いぞ、罠カードオープン!『エクシーズ・リボーン』!墓地から『希望皇ホープ』を復活し、エクシーズ・リボーンをホープのオーバーレイ・ユニットにする!」

 

「くっ!それなら未来皇ホープで希望皇ホープに攻撃!ホープ剣・ガガガガ・フューチャー・スラッシュ!」

 

「希望皇ホープの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、攻撃を無効にする!ムーン・バリア!」

 

未来皇ホープの攻撃と希望皇ホープの防御がぶつかり合い、激しい火花を散らす。

 

そして、二体のホープが互いを弾き飛ばして遊馬とアストラルの前にそれぞれ立つ。

 

「くっそー、もうちょいでいけると思ったんだけどな!」

 

「遊馬、この程度で私がやられるわけないだろう?」

 

「だったら何度だってぶつかってやるぜ!」

 

「その意気だ。来い、遊馬!」

 

「ああ!アストラル!!」

 

遊馬とアストラルは互いの力を高め合うようなデュエルをしており、真剣な様子にマシュ達も声をかけることは出来なかった。

 

しかし。

 

ぐぅ〜っ!

 

「うぐっ!?……は、腹減った……」

 

遊馬の腹の虫が盛大になり、静謐のハサンとマシュとベディヴィエールは思わずその場でずっこけてしまい、アストラルは苦笑を浮かべながらデュエルディスクを消した。

 

「遊馬、今日はここまでにしよう。夕食を食べずにずっとデュエルをやっていたからな」

 

「そうだな。そろそろみんなのところに戻るかぁ……」

 

「ユウマ様!」

 

「ゆ、遊馬君!」

 

「ユウマ殿!」

 

「へ?静謐?マシュ?それにベディヴィエール?」

 

静謐のハサンとマシュとベディヴィエールはすぐに復活して遊馬とアストラルの元に駆け寄った。

 

遊馬はマシュが作った特大のデュエル飯を満面の笑みで食べる。

 

「うんめぇ〜!サンキュー、マシュ!ご馳走様!」

 

「はい。お粗末様です」

 

「ところで、ユウマ殿、アストラル殿。こんなところで何をしているのですか……?」

 

ベディヴィエールはみんなに黙ってデュエルをしていたことに疑問を抱き、遊馬は水を飲んで夜空を見上げながら静かに答えた。

 

「……どうやったら大きな壁を越えられるか分からなくなったんだ」

 

「大きな壁……?もしかして、遊戯さんの事ですか……?」

 

マシュは遊馬にとっての大きな壁と聞いて伝説にして最強のデュエリストである遊戯の事だと察した。

 

「遊戯さんのデュエルを見る度に力の差を感じるんだ……こんなにも越えられないと思うほどの大きな壁は初めてだ……」

 

「遊戯さんの神がかったデュエルタクティクス、見たことない未知なる力を秘めたカード……まさしく遊戯さんは私達よりランクが上の最強デュエリストだ。あの遥かなる高みに登るにはどうすれば良いのか……」

 

遊馬とアストラルはどうすれば遊戯のように強くなれるのか分からず、悩み、苦しみ、足掻いていた。

 

ジッとしてはいられない二人はとにかくデュエルをして答えを見つけようとしていた。

 

そんな二人に対し、マシュは第三者からの視点から冷静に分析する。

 

「そうですね。技術……戦術や戦略などのデュエルタクティクスの方は一朝一夕で何とかなるものではありません。ですが、カードならなんとかなります。遊馬君、アナザーのカードはまだありますよね?」

 

「「アナザーのカード……?」」

 

静謐のハサンとベディヴィエールは何のことか分からず首を傾げると、遊馬はデッキケースを開いて中から白紙のカードの束を取り出す。

 

「俺の前世で、アストラルの半身……アナザーが全ての力を込めて託してくれたカード……」

 

「確かにこれがあれば、私と遊馬が望む最高のカードを創り出してくれるはずだ……」

 

「でも、気軽にアナザーのカードを使って良いのか、正直迷っているんだ……」

 

「デュエリストにとって、新しいカードとの出会いはとても喜ばしいことだ。だが、安易に強すぎる力を求めることが果たして良いことなのか……」

 

アナザーのカードはこれまで遊馬とアストラル、そしてマシュ達の想いに応えて新たなカードとしてその力を覚醒してきた。

 

しかし、遊馬とアストラルは今までの経験から、強力なカードを得られるかもしれないアナザーのカードを自分の意思で覚醒させることを控えていたのだ。

 

「ユウマ殿とアストラル殿なら大丈夫ですよ」

 

ベディヴィエールは悩む二人にそう断言した。

 

「「ベディヴィエール……?」」

 

「ユウマ殿。貴方はどこか、我が王に似ています……そう感じるのです」

 

「我が王って……アルトリアの事か?でも、俺はアルトリアみたいに真面目じゃないし、騎士王って呼ばれるほど強くないぜ?」

 

「性格や強さではありません。誰かの幸せを見て笑顔になる、そんなところが似ています」

 

「誰かの幸せを見て笑顔に……ふふっ、そうですね。まさに遊馬君の生き様そのものですね!」

 

「アストラル殿。あなたは安易に力を求めず、力を使うことに対して悩み、深く考えることは戦う者として、とても良いことです」

 

ベディヴィエールは悩む遊馬とアストラルの良い点を挙げ、最後に結論を言う。

 

「お二人なら大丈夫です。誰かの幸せを願い、力の使い方を常に考えるお二人なら……必ずみんなを守り、幸せに出来ます!」

 

ベディヴィエールの言葉に心を突き動かされ、遊馬とアストラルの不安と迷いは一気に消え去った。

 

デュエルキングである遊戯と同じ高みへ登り、自分達の愛する者達と世界を守り抜き、未来を守る為に。

 

「……ありがとう、みんな」

 

「お陰で私達の心は決まった。みんなを、未来を守る為に、私達は新たな力を手にする時だ」

 

遊馬とアストラルは覚悟を決め、遊馬はアナザーのカードを地面に置く。

 

「かっとビングだ、アストラル」

 

遊馬は魂に宿るヌメロン・コードの力を解放し、双翼を羽ばたかせて右手に純白の輝きを宿す。

 

更に、バリアン七皇から託されたカオスの力を左手に込めて真紅の輝きを宿す。

 

「ああ。かっとビングだ、遊馬」

 

アストラルはアストラル世界の伝説の力であるシャイニング・ドローの金色の輝きを右手に宿す。

 

アストラル世界、バリアン世界、ヌメロン・コード、三つの力を宿した光をアナザーのカードに向ける。

 

そして、遊馬とアストラルは目を閉じて新しいカードへの想いを込める。

 

遊馬とアストラル、二人の希望と未来を象徴するモンスターの希望皇ホープと未来皇ホープ。

 

数々のデュエルで共に戦ってきた大切な仲間であるモンスター達。

 

多種多様の姿形と能力を秘めたナンバーズ。

 

大いなる戦いに臆することなく、遊馬とアストラルの側にいてくれた小鳥と仲間達。

 

ぶつかり合いながらも絆を深めた二人の勇士、凌牙とカイト。

 

世界の未来を救う遥かなる旅路を共に戦う新たな仲間達、マシュとサーヴァント達。

 

今まで遊馬とアストラルが築き上げ、紡いで来た記憶と絆がカードに込められ、覚醒の輝きが最高潮にまで高まる。

 

「「かっとビングだ!俺/私!!」」

 

そして、遊馬とアストラルの全てを込めたカードが遂に完成し、弾け飛ぶように空に舞い上がる。

 

舞い上がったカードはゆっくりと落ちながら遊馬とアストラルの手の中に収まっていく。

 

まだ覚醒してない白紙のカードは10枚ほど残っており、それは遊馬のデッキケースにしまった。

 

完成したカードを見て遊馬とアストラルは胸が弾むほど興奮した。

 

「す、すっげぇ!俺とアストラルのホープやナンバーズの力を高めてくれるカードがこんなにも!」

 

「これがあれば、私達のデッキがかなりランクアップ出来るぞ!」

 

「それに、シャークとカイトのデッキやナンバーズを大幅に強化できるカードもたくさんあるぜ!」

 

「胸の高まりが抑えきれない……!遊馬、すぐに新しいデッキ構築を始めよう!」

 

「もちろんだぜ!アストラル、今夜は寝かせないぜ!」

 

「望むところだ!」

 

遊馬とアストラルは新しいカードを持ち帰り、マシュとベディヴィエールと静謐のハサンと共に村に戻った。

 

二人はデッキと新しいカードを広げてデッキ構築を始め、自分達の思い描く最強のデッキを作り上げていく。

 

 

翌朝、村人達に別れを告げて西の村を後にした。

 

かっとび遊馬号に乗り、目指す目的地はエジプト領。

 

あっという間に数日振りのエジプト領に到着してすぐに降り立ち、遊馬達は堂々とオジマンディアスのいるピラミッドに向けて進んだ。

 

途中、警護のエジプト兵士が止めようとしたが、ファラオである遊戯と神官であるマハードとマナの無言の圧力で道を開けてもらった。

 

そして、ピラミッドの前には予想通りと言うべきか、一人の女性が立ち塞がる。

 

「帰って来ましたね、アテム、マハード、マナ。そして、カルデアの者達よ」

 

「ニトクリス、今戻ったぜ」

 

エジプト領のファラオサーヴァントの一人、女王ニトクリス。

 

ニトクリスは真剣な眼差しでアテム達を見つめ、ファラオとして堂々と立つ。

 

「それで、この地に戻って来て何をするつもりですか?」

 

「ニトクリス、まずはそこを通してくれ!オジマンディアスに話がある!」

 

「そうはいきません。ファラオ・オジマンディアスと話がしたければ、私を倒してからにしなさい!あなたはファラオとは言え、この地から追放された身なのですから!」

 

「……仕方ない」

 

遊戯はニトクリスが頑固なところがあるのを知っているので、力づくで押し通るしかないとデュエルディスクを構えようとするが……。

 

「遊戯さん!ここは俺達に任せてください!」

 

「私達の手に入れた新しい力を見せる時が来た!」

 

遊馬とアストラルが前に出てニトクリスとの戦いに名乗りをあげた。

 

遊戯は遊馬とアストラルの体から放たれるデュエリストの闘志がメラメラと燃え上がるのを感じ取り、更にはデッキから強い力の波動を感じ取れた。

 

「遊馬、アストラル……面白い、そこまで言うのなら見せてくれ。二人の新たな力を!」

 

「「はいっ!!」」

 

遊馬とアストラルは気合いを入れてゆっくりと歩き、ニトクリスと対峙する。

 

「ユウマとアストラル……と言いましたね?まさかアテムではなく貴方達が来るとは思いませんでした。しかし、私は手加減するつもりはありませんよ?」

 

「こっちだってそのつもりだ。寧ろ、新しい力が強すぎてちょっと手加減が出来ないかもしれないけどな!」

 

「では、試練として貴方達の力を示しなさい!この先に進みたければ、我が屍を乗り越えるのみ!」

 

「全力全開で行くぞ、遊馬!」

 

「ああ!デュエルディスク、セット!D・ゲイザー、セット!デュエルターゲット、ロックオン!」

 

遊馬はデュエルディスクとD・ゲイザーを起動させ、デッキからカードを5枚を手札にする。

 

「デュエル!行くぜ、俺のターン!ドロー!よっしゃあ、最強の手札が来たぜ!」

 

「この手札なら最初からフルパワーで飛ばせるぞ、遊馬!」

 

遊馬は初期手札とドローカードでテンションが上がり、遊馬の引きの強さにアストラルは満足そうに頷きながら言う。

 

「おう!自分フィールドにカードが存在しない場合、このカードは手札から特殊召喚できる。俺は手札から『ZS(ゼアル・サーバス) - 昇華賢者(アセンド・セージ)』を特殊召喚!」

 

遊馬の前に藍色の鎧を纏った賢者の姿をしたモンスターが現れる。

 

「ゼアル・サーバス……!?初めて見るモンスターです!」

 

マシュは今まで遊馬とアストラルが使ったことのないゼアルの名が付いた初めて見るカテゴリモンスターに驚く。

 

「ゼアル・サーバスは希望皇ホープを助ける効果を持つ、従者の役割を持つモンスターだ!」

 

「アナザーのカードで希望皇ホープの展開力を大幅に強化するゼアル・サーバスが誕生した!」

 

元々遊馬のデッキは希望皇ホープをエクシーズ召喚しやすくする為の手札・墓地のモンスターの特殊召喚に特化していた。

 

そこにアナザーのカードで更にその展開力が大幅に強化された。

 

「更に自分フィールドのモンスターがこのカード以外のレベル4モンスター1体のみの場合、このカードは手札から特殊召喚できる。『ZS(ゼアル・サーバス) - 武装賢者(アームズ・セージ)』を特殊召喚!」

 

昇華賢者の隣に同じような形をした真紅の鎧を纏った賢者が現れる。

 

二人の賢者は対となる効果を持つペアのようなモンスターなのだ。

 

「更に永続魔法『エクシーズ・チェンジ・タクティクス』を発動!」

 

希望皇ホープをエクシーズ召喚する事にデッキから1枚ドロー出来るドローソースを配置し、遊馬とアストラルは意気揚々とエクシーズ召喚する。

 

「「俺/私はレベル4の昇華賢者と武装賢者でオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れろ!『No.39 希望皇ホープ』!!」」

 

希望皇ホープがエクシーズ召喚されると、オーバーレイ・ユニットとなった昇華賢者と武装賢者の幻影が現れる。

 

「この瞬間、ホープのエクシーズ素材となった昇華賢者と武装賢者の効果発動!」

 

「昇華賢者と武装賢者はそれぞれ、希望皇ホープモンスターの素材となってエクシーズ召喚した場合、デッキから『RUM』と『ZW』1枚ずつ手札に加えることが出来る!」

 

「更にホープがエクシーズ召喚したことで、エクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果が発動し、俺のライフポイントを500払って1枚ドロー出来る!」

 

昇華賢者と武装賢者は希望皇ホープをエクシーズ召喚しやすくしただけではなく、更なる展開力を高める為にデッキから『RUM』と『ZW』をサーチする効果を有する。

 

「俺はデッキから『RUM』1枚と『ZW』1枚を手札に加え、エクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果でデッキから1枚ドローだ!」

 

更にエクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果でデッキから1枚ドローし、希望皇ホープを出しつつ一気に手札が3枚も増えた。

 

これだけでも充分な展開だが、ここから更に新たな力を繰り出す。

 

遊馬とアストラルは1枚のカードを二人で一緒に持ち、発動させる。

 

「「俺/私は『RUM(ランクアップマジック) - ゼアル・フォース』を発動!」」

 

発動したのは遊馬の令呪の刻印にも描かれている『X』の紋章が描かれたゼアルの名を持つ新たなランクアップマジックだった。

 

「「このカードは自分フィールドのモンスターエクシーズ1体を対象として発動!その自分のモンスターよりランクが1つ高い『希望皇ホープ』モンスターまたは『ZW』モンスター1体を対象のモンスターの上に重ねてエクシーズ召喚扱いとしてEXデッキから特殊召喚し、更にデッキから『ZW』モンスターまたは『ZS』モンスター1体を選んでデッキの一番上に置く!」」

 

遊馬とアストラルが発動した新たなランクアップマジックはランクアップした希望皇ホープだけでなく、召喚条件が少々難しいモンスターエクシーズのゼアル・ウェポンも呼び出すことが可能となった。

 

希望皇ホープの真上に『X』の紋章が光り輝き、光となって地面に吸い込まれる。

 

「「ランク4の希望皇ホープでオーバーレイ・ネットワークを再構築!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!現れろ!ランク5!『ZW(ゼアル・ウェポン) - 弩級兵装竜王戟(ドラゴニック・ハルバード)』!!」」

 

現れたのは希望皇ホープモンスターではなく、獣王獅子武装と同じランク5のゼアル・ウェポンのモンスターエクシーズ。

 

竜王の名を持ち、戟の尻尾を持つ勇ましい姿をしたドラゴンだった。

 

「弩級兵装竜王戟の効果!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、デッキから『ゼアル』魔法・罠を手札に加える!」

 

獣王獅子武装がゼアル・ウェポンをデッキからサーチする効果に対し、弩級兵装竜王戟はゼアルの魔法・罠をデッキからサーチする効果を持つ。

 

「俺はデッキから魔法カード『ゼアル・エントラスト』を手札に加えて発動!」

 

「ゼアル・エントラストは自分の墓地の『希望皇ホープ』、『ZW』、『ZS』モンスターの内、いずれか1体を手札に加えるかフィールドに特殊召喚する!」

 

「俺は墓地の希望皇ホープを復活させる!蘇れ、希望皇ホープ!」

 

弩級兵装竜王戟のエクシーズ素材となり、オーバーレイ・ユニットとして使用された希望皇ホープが墓地から復活する。

 

「行くぜ!希望皇ホープ、カオス・エクシーズ・チェンジ!現れろ!『CNo.39 希望皇ホープレイ』!」

 

「希望皇ホープレイがエクシーズ召喚に成功したことにより、エクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果でライフを500支払い、1枚ドロー!」

 

復活した希望皇ホープを希望皇ホープレイに進化させ、そこからエクシーズ・チェンジ・タクティクスで更に1枚ドローする。

 

「さあ、行くぜ!アストラル!」

 

「私達の新たなる希望の力を!」

 

「俺は『RUM - リミテッド・バリアンズ・フォース』を発動!」

 

「自分フィールド上のランク4のモンスターエクシーズをランクが1つ高い『CNo.』に進化させる!」

 

「「俺/私はランク4の希望皇ホープレイでオーバーレイ・ネットワークを再構築!カオス・エクシーズ・チェンジ!!」」

 

連続でランクアップマジックを発動し、今回の戦いにおける遊馬とアストラルの最強の切り札を召喚する。

 

希望皇ホープレイが光となって地面に吸い込まれて光の爆発が起きると同時に凄まじい旋風が吹き荒れ、空に暗雲が広がる。

 

「「覇気が宿しその鎧!輝く波動、天空を震わせ!吹き荒ぶ疾風、悪鬼をも撃ち貫く!現れろ!『竜装合体(りゅうそうがったい) ドラゴニック・ホープレイ』!!」」

 

現れたのは希望皇ホープレイが新たな真紅の鎧と巨大な戟──『竜王戟』を第三と第四の腕で持った姿だった。

 

それはただ希望皇ホープレイが進化しただけの姿ではなく、真紅の鎧と竜王戟は明らかに隣にいる弩級兵装竜王戟のものだった。

 

「ドラゴニック・ホープレイはホープレイが弩級兵装竜王戟と合体した姿だ!」

 

「攻撃力は元のホープレイと同じだが、奇跡の力を束ねれば強力な力を得る。遊馬!」

 

「ああ!ドラゴニック・ホープレイは希望皇ホープレイとして扱い、エクシーズ・チェンジ・タクティクスの効果で500ライフを支払って1枚ドローし、弩級兵装竜王戟をドラゴニック・ホープレイに装備だ!」

 

「この瞬間、ドラゴニック・ホープレイの効果発動!1ターンに1度、効果・攻撃の対象に選択された時に発動できる。手札・デッキから『ZW』を選び、その効果による装備カード扱いとしてこのカードに装備する!」

 

「俺は手札の『ZW - 天馬双翼剣(ペガサス・ツイン・セイバー)』を装備する!」

 

遊馬が手札のZWを発動させると天空から聖なる光をその身に宿した美しい純白の天馬が急降下しながら降り立つ。

 

「天馬双翼剣の効果でドラゴニック・ホープレイの攻撃力は1000ポイントアップする!」

 

ドラゴニック・ホープレイは双剣を投げ飛ばして天馬双翼剣と合体し、美しい羽の形をした剣となって地面に突き刺さる。

 

天馬双翼剣をドラゴニック・ホープレイが引き抜いて装備すると、背中から大きな天馬の翼が生える。

 

「更に弩級兵装竜王戟の効果でドラゴニック・ホープレイの攻撃力は3000ポイントアップする!」

 

弩級兵装竜王戟は光の粒子となってドラゴニック・ホープレイに既に武装された鎧と竜王戟と完全に一体化し、美しい粒子の輝きを放つ。

 

これにより、ドラゴニック・ホープレイの攻撃力は2500+3000+1000で6500となる。

 

「ゼアル・ウェポン……なるほど、希望皇ホープ専用のユニオンモンスターと言うわけか!」

 

遊戯はZWの能力を特定のモンスターの装備カードとなるユニオンモンスターと似たモンスターだと解釈した。

 

「そして、ドラゴニック・ホープレイ……遊馬、アストラル。二人のデュエリストと共に進化し、高みへと昇り続けるモンスターか……!」

 

そして、希望皇ホープと言うあらゆる進化の姿を持つモンスターに遊戯はとてもワクワクしていた。

 

「これでターンエンドだぜ!」

 

遊馬は最初の1ターンで怒涛の展開を繰り出して強力な効果を持つドラゴニック・ホープレイを呼び出した。

 

これまでとは比べ物にならないほどに遊馬のデッキが大幅に強化された。

 

「その魔物が貴方達の力の結晶という訳ですね。では、その魔物を葬り、私が勝ちという事にしましょう」

 

ニトクリスはドラゴニック・ホープレイに遊馬とアストラルが想いを込めていると察し、一気に勝負を決めるために杖を構えて魔力を解放し、宝具を発動させる。

 

「屍の鏡。暗黒の鏡。扉となりて、恐怖を此処へ…… 」

 

ニトクリスの背後に青いゲートが現れ、そこからジャッカルの頭を持つ黒いアヌビス像が出現する。

 

「『冥鏡宝典(アンプゥ・ネブ・タ・ジェセル)』!!!」

 

アヌビスとその配下のモンスター達を一気に死へと導いた無数の霊体が現れる。

 

「さあ、覚悟なさい!これで終わりです!」

 

霊体がドラゴニック・ホープレイを囲み、一斉に襲いかかる。

 

獲物を狙う獣のように牙を向け、ドラゴニック・ホープレイは多勢に無勢の如く、危機が迫った。

 

「「それはどうかな?」」

 

「えっ!?」

 

遊馬とアストラルは不敵な笑みを浮かべ、二人はドラゴニック・ホープレイの持つ天馬双翼剣を指差す。

 

「「この瞬間、天馬双翼剣の効果!」」

 

ドラゴニック・ホープレイの真紅の瞳が輝き、両手に持つ天馬双翼剣が大きな羽根の剣へと変化した。

 

「「1ターンに1度、相手フィールドのモンスターが発動した効果を無効にできる!ペガサス・ツイン・トルネード!!」」

 

羽根の剣となった天馬双翼剣で仰ぐように振り下ろすと聖なる光を宿した突風が吹き荒れ、鏡から現れた暗黒の異形を全て消し去った。

 

「馬鹿な……!?私の宝具が、冥鏡宝典が……封じられた!?」

 

ニトクリスは宝具が封じられたことに驚愕し、危うく杖を落としそうになった。

 

「これで決めるぜ。俺のターン、ドロー!」

 

遊馬とアストラルはこれで勝負を決める為、ドラゴニック・ホープレイのもう一つの効果を発動する。

 

「ドラゴニック・ホープレイの効果発動!1ターンに1度、オーバーレイ・ユニットを1つ使い、ドラゴニック・ホープレイに装備しているZWの数まで、相手フィールドの表側表示のカードを効果を無効にする!」

 

「ドラゴニック・ホープレイに装備しているZWは2枚!ニトクリスの力を無効にする!」

 

オーバーレイ・ユニットを竜王戟に取り込ませ、刃が光り輝き、光の波動を降らせる。

 


「「ドラゴニック・ストライク!」」

 

光の波動をまともに受けたニトクリスは一時的に力を失い、その場に崩れ落ちてしまう。

 

「あっ……?」

 

「「ドラゴニック・ホープレイでニトクリスに攻撃!」」

 

ドラゴニック・ホープレイは第三と第四の腕で持っている竜王戟を勢い良く振り回す。

 

「「ホープ剣・ドラゴニック・スラッシュ!!!」」

 

天馬双翼剣で十字の斬撃を放ち、最後に竜王戟を天高く振り上げる。

 

「ファラオ・オジマンディアス……申し訳ありません」

 

もはやこれまでと、オジマンディアスに謝罪しながらニトクリスは目を閉じて覚悟を決めた。

 

しかし、ニトクリスは遊馬とアストラルのことを理解してなかった。

 

十字の斬撃はニトクリスの足元を斬り裂き、竜王戟はニトクリスの真横へと振り下ろされた。

 

ドラゴニック・ホープレイの攻撃はニトクリスに傷一つ負わせず、砂埃を僅かに被らせた程度である。

 

「何故……?」

 

ニトクリスは自分にとどめを刺さなかった事に唖然としていた。

 

遊馬は腕を下ろしてカードをデュエルディスクから外すとドラゴニック・ホープレイの姿が消える。

 

「俺達はオジマンディアスと話すためにここに来たんだ」

 

「私達の刃を向ける先は獅子王と円卓の騎士達だ」

 

「と言うわけだ。俺達の勝ちだから通らせてもらうぜ〜」

 

ニトクリスとの勝負に堂々と勝ったので、遊馬達はピラミッドの中へと向かう。

 

「……甘いですよ。その甘さでこの先も勝つことは出来ませんよ」

 

戦いの中の甘さが目立つ遊馬達にニトクリスが苦言をするが、遊馬とアストラルはそんな事を百も承知だと言わんばかりに笑みを浮かべる。

 

「これが俺達のやり方だ」

 

「私達は私達の道を貫くだけだ」

 

「それに……あんたを倒す事なんて、出来ねえよ……」

 

遊馬は苦笑いを浮かべ、その言葉の意味が分からずにニトクリスは疑問符を浮かべる。

 

「だって、少し似ているからさ。俺の姉ちゃんに」

 

「姉ちゃん……?」

 

「ああ。ちょっと厳しくて、無茶苦茶なところがあるけど、なんだかんだで俺のことを大切に想ってくれている、大切な家族の姉ちゃんだよ」

 

遊馬はニトクリスに初めて会った時からずっと懐かしさを感じていた。

 

それはどことなく、ニトクリスが明里に似ていたのだ。

 

そんなニトクリスを見て遊馬は人間界にいる明里に思いを馳せていた。

 

明里に……家族に会いたいと願う遊馬の少し寂しそうな笑顔を見てニトクリスは亡き兄弟の姿を重ね、酷く心を打たれた。

 

世界の未来を背負っているこの子を絶対に闇に囚われさせてはいけない、先達者として導かなければならない。

 

そして、この子を絶対に愛する家族の元へと帰してあげたいと……。

 

ニトクリスはギュッと杖を力強く握りしめ、自分の今の立場に苦しんでいた。

 

エジプト領のファラオとしてそう簡単に遊馬達側に付くことは出来ない。

 

しかし、ニトクリスとしては遊馬に力を貸してあげたいと強く望んでいた。

 

「ニトクリス」

 

「アテム……」

 

アテムはニトクリスの肩にそっと手を置いた。

 

「行こう、オジマンディアスの元に」

 

「……分かりました」

 

ニトクリスはアテムの言葉に従い、共にオジマンディアスの元に向かうことにした。

 

エジプト領の……否、この特異点の命運を左右するオジマンディアスとの対話をする為に。

 

そして、遊戯とオジマンディアス……二人のファラオによる『神神の戦い』が始まろうとしていた。

 

 

 


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