Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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大変長らくお待たせしました。
スランプで中々書けなくて本当に申し訳ありません。


ナンバーズ186 山の翁 ハサン・サッバーハ

円卓の騎士達の侵略と獅子王の滅びの光から西の村の村人達を守り切った遊馬達。

 

しかし、西の村は住居はほぼ全て壊れて村としては壊滅状態で住める状態ではないので一時避難として東の村に移り住むことになった。

 

かっとび遊馬号とS・H・Ark Knightで村人達を東の村に運び、住居はなんとかなるが問題はやはり食料である。

 

ただでさえ東の村の食料はギリギリなので西の村の村人を養う余裕がない。

 

最悪カルデアから食料を運ぶと悩んでいると、藤太が自信満々に前に出た。

 

「マスターよ、ここは拙者に任せてくれ」

 

「藤太?」

 

藤太がいつも担いでいる米俵が光り輝き、更には大きな鍋も出現した。

 

「悪虫退治に工夫を凝らし、三上山を往来すれば汲めども汲めども尽きぬ幸──お山を七巻き、まだ足りぬ。お山を鉢巻、なんのその。どうせ食うならお山を渦巻き、龍神さまの太っ腹、釜を開ければ大漁満席!さあ、行くぞぅ!対宴宝具──美味いお米、海の幸、山の幸がどーん、どーん!」

 

次の瞬間、米俵から溢れんばかりの米が滝のように大量に出現する。

 

更には大きな鍋から魚や貝、きのこや山菜など山海の珍味も同様に大量に出現する。

 

その異様すぎる光景にマシュ達は唖然とし、遊馬とアストラルは頭を抱えて絶叫した。

 

「うわぁーっ!?なんだこの大量の米は!?しかもツヤツヤで大粒の米だ!?それにこの山と海の幸はどれも新鮮で美味そうだぜ!?」

 

「なんと言うことだ……これはまさか、俵藤太がかつて大百足を討ち果たした功績で三上山に住まう龍神たちから授かった巨大な米俵と山海の珍味がいくらでも湧いてくる鍋か!?」

 

これこそが俵藤太の対宴宝具『無尽俵』。

 

美味しいお米がどんどん出てくる半永久的食糧自給能力。

 

ちなみにこの宝具には「山海の珍味がいくらでも湧いてくる鍋」も纏められているので、海の幸も山の幸も自由自在に出せる。

 

「一度使うと回復までに少し時間がかかるが、とりあえずはこれだけあれば皆の飢えを凌げるだろう」

 

「すげぇぜ、藤太!こんな宝具初めてだぜ!」

 

「喜んでもらえて何よりだ。だが、あいにく料理の方は不得手でな。料理できる者がいれば……」

 

「大丈夫だ、それなら問題ないぜ」

 

文字通りの山盛りの食料に目を輝かせる者がいた。

 

「す、素晴らしい……このような宝具が存在していたとは……シロウ!これはどれも見事な食材ですよ!是非とも調理をお願いします!」

 

アルトリアは涎が出そうになるのを我慢しながらエミヤに調理を頼んだ。

 

「ああ、もちろんだ……私もこれほどの食料を目の前にして興奮を抑えきれないな」

 

「エミヤさん、私もお手伝いします」

 

「ありがとう、美遊君。では、料理人の戦場を用意しよう……トレース・オン!!」

 

エミヤは投影魔術を使い、剣や弓……ではなく、外で調理できる屋外キッチンを投影した。

 

コンロやシンク、さまざまな種類の包丁やフライパンや鍋……これだけ調理器具が揃っていれば屋外でも充分な調理が出来る。

 

エミヤは更に投影魔術で小さなエプロンを投影して美遊に差し出しながら不敵の笑みを浮かべる。

 

「さあ、美遊君。今からここは料理人の戦場となる──ついて来れるか?」

 

エミヤから挑発や挑戦のように聞こえる言葉に美遊はエプロンを受け取り、軽やかに着けて堂々と宣言する。

 

「ついて来れるか、ではありません……エーデルフェルトのメイドの名にかけて、追い抜いて見せます。エミヤさんこそ、ついて来てください!」

 

美遊はキッチンの前に立ってすぐに調理を開始する。

 

「フッ……それでそこ、あの男の妹だな……」

 

エミヤはキッチンに立つ美遊の後ろ姿を見てそう呟き、前掛けを投影して着ける。

 

そして……エミヤと美遊のカルデア最高クラスの料理人による野外調理が始まる。

 

片や料理に携わるプロのシェフ100人とメル友になるほどの料理人。

 

片や魔法の如き謎の技術で短時間で絶品料理を繰り出す現役小学生メイド。

 

二人はあっという間に次々と料理を完成させていき、それをまず村人達に提供していく。

 

村人達は見たことない料理に最初は戸惑ったが美味しそうな香りに我慢できずに恐る恐る食べていく。

 

そして、料理を口にした瞬間にそのあまりの美味しさに笑みが溢れるのだった。

 

それを皮切りにどんどん料理を食べて腹を満たしていき、腹が膨れていく。

 

村人達の次は遊馬やマシュ、そしてサーヴァント達であり、同じように絶品料理に笑みが溢れていくとやがて村は宴会へと早変わりした。

 

対宴宝具『無尽俵』には米から作られた日本酒も出てくるので、大人達は日本酒を飲んで大騒ぎだった。

 

そして……カルデア一番の大食らいと言っても過言ではないアルトリアはその細身の体では考えられないほどのスピードで料理を平らげていく。

 

「騎士王よ、なかなかの健啖ぶりだな!そら、どんどん食うがいい! 無限にあるからな、白米は!」

 

「はい!こんなにも美味しいお米は初めてです!トウタ、あなたの宝具は最高です!ありがとうございます!」

 

藤太は幸せそうに食べるアルトリアを気に入り、アルトリアも夢のような素晴らしい宝具を使う藤太に感謝した。

 

一方、そんなアルトリアを見て困惑する者達がいた。

 

「ア、アーサー王……?」

 

「あんな風に笑っているアーサー王を見るのは初めてです……」

 

アルトリアの部下である円卓の騎士のベディヴィエールとガレスは王ではなく、少女のように笑うアルトリアの姿に困惑して唖然とした。

 

「父上は聖杯戦争で色々な出会いと経験があったらしいからな。まあ、あんな性格になった父上に慣れるのは苦労するけどな」

 

モードレッドはそれなりにカルデアでアルトリアと一緒にいたからもう慣れているが、アーサー王時代のアルトリアしか知らない円卓の騎士達は困惑することは必至だろう。

 

「そう言うモードレッドも変わりましたよね。アーサー王と仲が良くなって息子と認められていますし……」

 

「そ、そうなんですか!?確かに以前より雰囲気も良くなってますね。モードレッドも何かあったんですか?」

 

「……ああ。まあ、そのうち話してやるよ……」

 

モードレッドは元マスターの獅子劫の事を思い出しながら夜空を見上げた。

 

 

その後、宴会が終わり、一休みしたところで遊馬達は集まって会議をする。

 

まずは獅子王から解放されたモードレッドとガレスから獅子王の目的を聞こうと思ったが……二人は何も覚えていなかった。

 

獅子王のかけたギフトによる後遺症か、何かあった際に記憶が無くなるように術をかけたのか不明だが、現状ではモードレッドとガレスから新しい情報を得られることは難しい。

 

東の村に西の村の住人が一時的に移り住むことになり、食料は藤太のお陰でなんとかなっているのでしばらくは問題ない。

 

村人達が平和に暮らす為には一刻も早く獅子王と大邪神ゾークをなんとかしなければならない。

 

「うーん、この特異点での味方になってくれそうなサーヴァントはもう全員会ったかな?」

 

現状、この特異点は四つの勢力に分かれている。

 

カルデア陣営、獅子王と円卓の騎士陣営、エジプト陣営、山の民陣営。

 

獅子王と円卓の騎士によって既に何人もサーヴァントは倒れており、今のところ遊馬達が契約出来そうなサーヴァントはこれで揃ったと思ったが……。

 

「……あの、マスター。契約は難しい……いえ、多分無理かもしれませんが、この世界には獅子王に匹敵するサーヴァントがもう一人います」

 

静謐のハサンが恐る恐る遊馬に進言した。

 

獅子王に匹敵するサーヴァントと聞いて全員の視線が静謐のハサンに集まる。

 

「我ら『山の翁』の初代……教団を守護するお方です」

 

「それって、ハサン達みんなの大先輩って事か?」

 

「初代ハサン・サッバーハ……暗殺者、アサシンの語源である暗殺教団の創設者か……」

 

呪腕のハサン、百貌のハサン、静謐のハサンの歴代当主にとって偉大な存在である初代ハサン・サッバーハ。

 

ハサン達は初代ハサン・サッバーハは獅子王や円卓の騎士すらも凌駕する力を持つと説明し、遊馬達はこの特異点に召喚されているサーヴァントなら会いに行くと決めた。

 

初代ハサン・サッバーハに会いに行くメンバーは遊馬とアストラルとマシュ、遊戯とアルトリアとエミヤとダ・ヴィンチちゃん、呪腕のハサンと百貌のハサンと静謐のハサン。

 

それ以外のメンバーは東の村で待機するする事になった。

 

早速遊馬達はかっとび遊馬号で東の村の奥にあるアズライールの廟に向かう。

 

遊馬達は山奥にあるアズライールの廟に到着し、山奥とは思えない見事な寺院に驚いたが、それと同時に言葉を失うほどの重圧が襲いかかった。

 

魔力反応もサーヴァント反応も物音も生命の気配も皆無だが、魂がここにいてはいけないと拒絶するほどの恐怖だった。

 

「な、何だよこれ……!?体の震えが、止まらねえ……!?」

 

「ドン・サウザンドの時とは違うこの感じは……!?」

 

遊馬とアストラルは今まで感じたことのない恐怖に震えていると……何かを切り裂く音が鳴る。

 

「遊馬君!」

 

マシュは咄嗟に遊馬の前に立って盾を構え、それと同時に遊馬はデッキケースから希望皇ホープのカードを取り出して召喚する。

 

「「現れろ、希望皇ホープ!!!」」

 

希望皇ホープがマシュの前に現れたその直後に希望皇ホープは一瞬で切り裂かれて破壊され、マシュは何かの攻撃を受け止めながら後ろに吹き飛ばされる。

 

「マシュ!大丈夫か!?」

 

「は、はい……しかし、一体どこから……!?」

 

何処からともなく繰り出された謎の攻撃に警戒する遊馬達。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『──魔術の徒よ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その時、廟に声が響き、その声を聞いた呪腕のハサンと百貌のハサンと静謐のハサンはその場で平伏した。

 

何事かと驚く中、アルトリアとエミヤは遊馬達を守るために前に出た。

 

二人の顔には汗が流れ、いつもとは全く違う緊張感と恐怖感が混ざり合った表情に遊馬達もこれまでに無い異常事態だと察する。

 

『──魔術の徒よ。そして、人ならざるモノたちよ。汝らの声は届いている。時代を救わんとする意義を、我が剣は認めている。だが──我が廟に踏み入る者は、悉くさなねばならない。死者として戦い、生をもぎ取るべし。その儀を以て、我が姿を晒す魔を赦す。静謐の翁よ、これに。汝に祭祀を委ねる。──見事、果たして見せよ』

 

「ぁ──ああ、ああああ!?ひぃ、やあ……!?」

 

「静謐!?」

 

静謐のハサンの周りに黒いオーラが現れて包み込むと意識を奪われ、操り人形のように立ち上がると遊馬達から離れてナイフを構える。

 

「初代様!お使いになられるのでしたら私を……!」

 

「静謐には荷が重すぎまする!どうか……!」

 

呪腕のハサンと百貌のハサンは初代ハサン・サッバーハが静謐のハサンを操って戦わせようとしていることに抗議しようとしたが、初代ハサン・サッバーハは切り捨てる。

 

『たわけ。貴様らの首を落とすのは我が剣。儀式に使えるものではない。静謐の翁の首、この者達の供物とせん。天秤は一方のみを召し上げよう』

 

それは静謐のハサンを倒せば、初代ハサン・サッバーハは姿を見せて話に応じるという試練だった。

 

『道程は問わぬ。結果のみを見定める。死の舞踏を始めよ、静謐の翁。どちらの首が晩鐘に選ばれるか──それは、汝らが決めることだ』

 

初代ハサン・サッバーハは静謐のハサンを操り、猛毒の霧を溢れ出す。

 

「いけない!『風王結界(インビシブル・エア)』!!」

 

アルトリアは約束された勝利の剣に不可視の風の剣の魔術を纏わせる宝具『風王結界』を発動させる。

 

本来ならば聖剣の刀身を風の魔術で透明化させて相手に間合いを把握出来なくさせる為の宝具であるが、応用技で風を放つことが出来、それで毒を防ぐ防護壁を作り出した。

 

これで毒を放出する静謐のハサンの攻撃を防げるが、ここにいる者達のほとんどは毒に耐性が無いため下手に戦うことが出来ない。

 

しかし、たった二人……静謐のハサンに対抗出来る存在が静かに前に出る。

 

「アルトリア、その風で毒からみんなを守ってくれ」

 

「私達が静謐さんを助けます」

 

静謐の毒に耐性を持つ遊馬とスキルで毒を受け付けないマシュの二人が静謐のハサンと対峙する。

 

「マシュ、静謐を必ず助ける。フォロー頼むぜ」

 

「はい。シールダーマシュ、行きます!」

 

遊馬とマシュは最低限の言葉だが、既に相棒として心が通じ合っており、互いにどう動くか熟知しているのすぐに二人は行動を開始する。

 

一方、遊戯はアストラルが遊馬と共に戦わずに下がっていることに疑問に思って尋ねた。

 

「アストラル、行かないのか?」

 

「私の希望皇ホープや他のナンバーズでは囚われた静謐のハサンを救う事は出来ない。だが……遊馬ならそれが可能だ。遊戯さん、これから遊馬の真の力が見られる」

 

「遊馬の真の力……?」

 

アストラルの持つ希望皇ホープやナンバーズを使わず、遊馬自身が持つ力で戦うということに僅かな好奇心を抱きながら見守る。

 

マシュは遊馬が安全にフィールドを展開できるように十字の盾を振るい、静謐のハサンを押さえ込む。

 

その間に遊馬はデッキからカードをドローしてカードを発動していく。

 

「行くぜ!俺のターン、ドロー!魔法カード『オノマト連携』!手札を1枚墓地に送り、デッキからオノマトモンスターを2枚まで手札に加える!俺はデッキから『希望皇オノマトピア』と『ゴゴゴゴーレム』を手札に加える!俺は『希望皇オノマトピア』を召喚!」

 

遊馬は希望皇ホープをデフォルメ化したモンスターである希望皇オノマトピアを召喚する。

 

「希望皇オノマトピアの効果!手札から『希望皇オノマトピア』以外のオノマトモンスターをそれぞれ1体まで守備表示で特殊召喚する!来い!『ガガガマジシャン』!『ゴゴゴゴーレム』!」

 

希望皇オノマトピアの効果によって手札のオノマトモンスターが同時に特殊召喚され、そこから更にモンスターを展開する。

 

「更に!墓地の『ドドドドワーフ - GG』の効果発動!このカードが墓地に存在し、自分フィールドに『ドドドドワーフ-GG』以外の『ゴゴゴ』モンスターまたは『ドドド』モンスターが存在する時、このカードを特殊召喚する!」

 

最初のオノマト連携の時に墓地に送ったドドドドワーフが墓地から復活し、遊馬のフィールドに4体のモンスターが揃った。

 

「一気にレベル4のモンスターを4体も並べたか……ここからどんなモンスターエクシーズを呼ぶのか……」

 

1ターン目から一気にフィールドにレベル4のモンスターが4体も並び、その展開力に遊戯も感心する。

 

静謐のハサンは猛毒を撒き散らせながら激しい体術を繰り出し、時折ナイフを投げ飛ばす。

 

マシュは盾で静謐のハサンの猛攻を防ぐが、だんだん押され始めたその時……一つの影が舞い降りた。

 

「遊馬さん!マシュさん!」

 

「なっ!?み、美遊ちゃん!?」

 

「美遊さん!?」

 

それは東の村で待機していたはずの美遊だった。

 

「来ちゃダメだ!毒にやられちまう!」

 

「問題ありません!」

 

美遊は左太腿のカードホルダーからアサシンのクラスカードを取り出した。

 

「夢幻召喚!『アサシン』!」

 

クラスカードが美遊の体に入り、光に包まれながら静謐のハサンに突撃する。

 

そして、光が晴れると同時に美遊は蹴りを静謐のハサンに与え、軽やかに遊馬の前に舞い降りた。

 

「今の私は……あなたの毒は効かない。だって、この力は、あなた自身のものだから……!」

 

そこにいたのは魔法少女の姿ではなく、髑髏の仮面を頭に飾り、肌は褐色に染まり、その身には黒衣を纏い、苦無に近いナイフを携えていた美遊だった。

 

「美遊ちゃん、その姿は……!?」

 

「アサシンのクラスカードにはハサン・サッバーハの力が宿っています。そして、歴代当主十九人の中の誰かと使用者と繋がります。私が繋がったのは奇しくも静謐のハサンさんでした……」

 

美遊は今目の前で操られている静謐のハサンと同じ力を宿している。

 

「遊馬さん達が村を離れてから少しして、胸騒ぎがしたので急いで来ました。静謐さんが操られているのなら、止めるのを手伝います!」

 

美遊はクラスカード『アサシン』を通じて静謐のハサンが苦しんでいるのを無意識に感じ取り、静謐のハサンを助けるために戦うことを決めた。

 

「分かった。美遊ちゃん、マシュと一緒に静謐を抑えててくれ!」

 

「はいっ!行きます!」

 

美遊はマシュと共に静謐のハサンに再び攻撃を仕掛けて抑え込む。

 

シールダーのマシュと静謐のハサンとしての同じ力を持つ美遊を同時に相手をし、今度は静謐のハサンが押されてしまう。

 

その間に遊馬は展開したフィールドからモンスターエクシーズを呼び出す。

 

「行くぜ、かっとビングだ、俺!レベル4のガガガマジシャンと希望皇オノマトピアでオーバーレイ!ゴゴゴゴーレムとドドドドワーフでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れよ、ランク4!『ガガガガマジシャン』!『H - C エクスカリバー』!」

 

遊馬のフィールドに希望皇ホープやナンバーズ以外で信頼を寄せる2体のフェイバリットモンスターであるガガガガマジシャンとエクスカリバーが立ち並ぶ。

 

「更に魔法カード『エクシーズ・ギフト』!自分フィールドにモンスターエクシーズが2体以上存在する場合に発動!自分フィールドのX素材を2つ取り除き、自分はデッキから2枚ドローする!ガガガガマジシャンとエクスカリバーのオーバーレイ・ユニットを1つずつ取り除き、2枚ドロー!」

 

遊馬は2枚ドローで手札を補充し、デッキケースから光り輝く1枚のカードを取り出す。

 

「超かっとビングだぜ!俺はランク4のガガガガマジシャンとエクスカリバーでオーバーレイ!!2体のモンスターエクシーズでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

ランク4の2体のモンスターエクシーズが光となり、地面に吸い込まれて光の爆発が起きる。

 

「今こそ現れよ、FNo.0!天馬、今ここに解き放たれ、縦横無尽に未来へ走る!これが俺の、天地開闢!俺の未来!かっとビングだ、俺!『未来皇ホープ』!!」

 

『ホォオオオープ!!!』

 

遊馬がエクシーズ召喚したのは遊馬自身が生み出したナンバーズ、未来皇ホープ。

 

遊戯は未来皇ホープのモンスターエクシーズではあり得ない特異性に気付いてとても驚く。

 

「な、何だと……!?レベルが存在しないモンスターエクシーズ同士でエクシーズ召喚だと!?」

 

「未来皇ホープ。ランク0、攻撃力守備力0……遊馬自身が作り出した唯一無二のモンスターエクシーズで、遊馬だけのナンバーズ」

 

「遊馬が作り出した……!?未来皇ホープ、あれほど強い力を放つカードを作ったなんて……遊馬、君と言う男は……!」

 

遊戯は未来皇ホープを遊馬が作ったことに驚愕し、それと同時にそれほどの大きな力を秘めた真のデュエリストだと言うことを改めて実感して感極まっていた。

 

「来い!未来皇ホープ!」

 

未来皇ホープの体が光となって遊馬と激突し、遊馬と未来皇ホープの肉体と魂が一つとなり、その証として未来皇ホープの胸元に皇の鍵の装飾が現れる。

 

「遊馬が未来皇ホープと……デュエリストとモンスターと合体した!?」

 

遊戯は過去にデュエリストがモンスターと合体した光景を何度も見てきたが、遊馬と未来皇ホープのような完全に一つとなった合体は初めて見たので眼を疑うほど驚いた。

 

デュエリストとしてあまりにも規格外な遊馬の事実に遊戯は驚きの連続だった。

 

遊戯だけでなく、ベディヴィエールやガレスなど初めて見る未来皇ホープに驚きを隠せなかった。

 

遊馬と合体した未来皇ホープは二振りのホープ剣を構え直し、その鋒を洗脳された静謐のハサンに向ける。

 

「待ってろ、静謐!必ず助ける!!」

 

未来皇ホープは飛翔しながらホープ剣を振り上げて勢い良く静謐のハサンに向けて振り下ろす。

 

「ホープ剣・フューチャー・スラッシュ!!!」

 

静謐のハサンはナイフを投げ飛ばして猛毒を放出するが、戦闘ダメージはゼロの効果を持ち、遊馬自身が毒の耐性を持っているので未来皇ホープにはダメージは無い。

 

未来皇ホープのホープ剣が静謐のハサンの体を斬りつけるが、攻撃力0の攻撃では静謐のハサンにはダメージが無い。

 

「未来皇ホープの効果!このカードが相手と戦闘を行ったダメージステップ終了時に発動!その相手のコントロールをバトルフェイズ終了時まで得る!」

 

未来皇ホープの戦闘後に発動する相手モンスターのコントロール奪取効果を発動させようとするが……。

 

「──っ!?未来皇ホープの効果が効かない!?」

 

静謐のハサンから漂う黒いオーラによって未来皇ホープの効果が無効化されてしまった。

 

それは初代ハサンの力によって未来皇ホープの効果が無効化されてしまい、このままでは静謐のハサンを救うことが出来ない。

 

「くっそぉ……でも、諦めてたまるかよ!!」

 

遊馬は諦めずに何とか打開策を考えようとしたその時。

 

『──汝に尋ねる』

 

突然、初代ハサンは静謐のハサンから声を発して静かに遊馬に問うてきた。

 

「……何だよ?」

 

『何故、そうまでして静謐の翁の命を助けようとする?まさか、この娘に惚れているのか?』

 

静謐のハサンはとても美しい姿をしており、年齢的に近い遊馬は惚れているのかと考えたが遊馬はすぐに否定した。

 

「違ぇよ。静謐は可愛いのは確かだけど、惚れてるかどうかじゃない。何が何でも仲間を守る、それが俺の覚悟だ」

 

『仲間?何も護れぬ毒に侵した肢体の娘を、仲間というのか?』

 

「……どう言う意味だよ」

 

『そのままの意味だ。静謐の翁は不甲斐ないハサン・サッバーハだ。己の毒を自由に操れない、野に咲く花すら護れぬ孤独な娘だ。そんな娘でもお前は仲間と言うのか?』

 

初代ハサンは後輩である静謐のハサンに厳しい評価を下し、それに対して遊馬は自分の考える仲間の定義を語る。

 

「……おい、初代のハサン。悪いけど、あんたの考える仲間と俺の考える仲間は全然違うぜ」

 

『何?』

 

「俺にとって仲間は互いを想い合い、支え合い、力を合わせ、例え力が無くても共に未来へと向かう存在だ」

 

『力が無くてもだと?』

 

「……俺の幼馴染、小鳥って言うんだけどさ……その子はここにいるサーヴァントのみんなのように宝具やスキルみたいな特別な力を何も持ってない、本当に普通の女の子だ」

 

遊馬は自分にとって最大にして最後の心の支えである大切な存在……小鳥について語り始めた。

 

小鳥には普通の人には見えないアストラルが見えるだけで遊馬達のように特別な力も戦う力を持っていない。

 

「小鳥はいつも俺の側にいてくれた。俺たちの世界で、人類と三つの世界の命運をかけた戦いの最後の時まで側で見守って応援してくれた。小鳥の言葉に俺とアストラルは支えられて、最後まで諦めずに戦い抜くことができたんだ」

 

小鳥は遊馬への想いからどんなに危険な状況でもいつも側で戦いを見守り、勝利を祈り続けていた。

 

「確かに力や能力があれば出来ることはたくさんあるし、頼りになる。でもさ、それだけが全てじゃない。例え、力が無くても、想いが……誰かの想いの力が希望と未来を紡ぐ事が出来る!」

 

「想いの、力……」

 

遊馬の言う想いの力に美遊の脳裏に大切な兄の姿が浮かび上がった。

 

「人はそれを……絆、結束の力って言うんだ。その力がある限り、俺は例えどんな敵が相手でも戦うことができる」

 

『だが、汝は既に多くの仲間がいる今更一人欠けたところで何の問題も無かろう』

 

「俺は……もう二度と、大切な仲間を失いたくない。あんな想いは……二度と御免だ!」

 

『貪欲な童だ。強すぎる欲望は身の破滅を生むことになる』

 

「貪欲で結構!貪欲じゃなきゃ、俺の願いは叶えられないからな!」

 

『願いだと?』

 

「俺は……仲間も世界も両方救う!大切な相棒と仲間達と共に最後まで戦い抜く!!」

 

その答えに初代ハサン・サッバーハは言葉を失った。

 

仲間と世界……その全てを救うという言葉に込められた遊馬の願いと覚悟が伝わってきた。

 

それは幼稚な子供の我儘な願いともとれるその覚悟。

 

しかし、遊馬の心に迷いは一切無い。

 

それこそ、遊馬がどれだけ辛く、悲しい戦いを重ねてきても貫いてきた『かっとビング』だからである。

 

「初代ハサン……必ず返してもらうぜ、静謐を……俺の大切な仲間を!!」

 

遊馬の不屈の覚悟……その想いに応えるかのように一つの奇跡が引き起こされた。

 

突如、アストラルの胸元から一枚のナンバーズが飛び出し、光を放ちながら回転する。

 

「このナンバーズは……!?」

 

アストラルも何が起きているか分からず困惑していると、そのナンバーズのカードに共鳴するかのように未来皇ホープの真紅の瞳が輝くと自らの意志で一体化していた遊馬を分離した。

 

「えっ!?未来皇ホープ!?」

 

遊馬の化身でもある未来皇ホープが勝手に行動をして驚く中、デッキケースが光り輝き、中から1枚のカードが飛び出す。

 

「アナザーのカード!?」

 

それは遊馬やアストラルの想いや願いに反応して新たな奇跡の力を作り出すアナザーのカード。

 

アストラルのナンバーズから第五特異点でラーマとシータを助ける時に現れた『No.99 希望皇龍 ホープ・ドラグーン』の幻影が現れる。

 

未来皇ホープとホープ・ドラグーンの体から光の波動が放たれて共鳴反応を起こすとアナザーのカードがその力を吸収して強い光を放ち、新たなカードが誕生した。

 

新たなカードはゆっくりと遊馬の手元に飛んできた。

 

しかし……。

 

「まだ、完成してないのか……?」

 

アナザーのカードはいつもすぐに完成形として使えるが、今回は名前もテキストも書かれておらず、イラストはシルエットだけだった。

 

唯一判明しているのはこれがモンスターエクシーズのカードという事だけだった。

 

未完成のカードではまともに使うことは出来ないが、遊馬は可能性を感じ取っていた。

 

「このタイミングで生まれたなら、何か大きな意味があるはず……!」

 

遊馬のフィールドには未来皇ホープのみで手札とフィールドと墓地には次のエクシーズ召喚に繋がるカードはない。

 

そう考えた時、遊馬は今までのデュエルの経験から一つの可能性を導き出す。

 

「これに……賭ける!!!」

 

遊馬は願いを込めるようにアナザーのカードを未来皇ホープの上に重ねた。

 

「未来皇ホープ、エクシーズ・チェンジ!」

 

遊馬は希望皇ホープレイや希望皇ホープONEと同じ、モンスターエクシーズを素材として単体でエクシーズ召喚する方法を取った。

 

もしも失敗ならエラーが起きて何も変化が無いが、未来皇ホープに異変が起きた。

 

未来皇ホープの体全体にまるでモザイクが掛かったかのように姿が歪となるが、時折未来皇ホープとは異なる新たな戦士の姿が見えてくる。

 

「新しいホープ、なのか……!?」

 

遊馬が知る全ての希望皇ホープでも、未来皇ホープでもない全く新しいホープ。

 

未完成ながらも強大な力を秘めている新しいホープにハサンは本能的に脅威となる存在だと感じ取った。

 

『これで……終わりにする……!』

 

静謐のハサンを操り、全身から高濃度の毒の霧を放ち、ホープを腐蝕させて滅ぼそうとした。

 

静謐のハサンの宿る猛毒はその気になれば幻想種や英霊も死へと導くこともできる。

 

猛毒の霧にホープの体が腐蝕しそうになったその時、ホープの真紅の瞳が輝き、背中から光り輝く大きな純白の双翼が生えた。

 

ホープは双翼を羽ばたかせて光の粒子を放出させて部屋全体に広げ、猛毒の霧を全て消滅させた。

 

そして、光の粒子が静謐のハサンを包み込んだ。

 

『こ、これは……!?』

 

次の瞬間、静謐のハサンの体から黒い何かが弾き飛ばされた。

 

意識を失った静謐のハサンはその場で倒れてしまい、遊馬は急いで抱き上げた。

 

「静謐!大丈夫か!?」

 

「……マス、ター……?」

 

遊馬の声に反応し、静謐のハサンは静かに目を覚ました。

 

静謐のハサンは元に戻り、遊馬は一安心した。

 

「よかった、もう大丈夫だな」

 

すると、役目を終えたようにホープが静かに消えていき、デュエルディスクに置かれた新しいホープのカードの強い光が消えた。

 

「マスター……ごめん、なさい……」

 

静謐のハサンは心から慕っている遊馬に操られていたとはいえ刃を向けてしまったことに悔やみ、涙を流して謝罪する。

 

「気にすんなって。静謐が無事で本当に良かったぜ」

 

そんな静謐のハサンに遊馬は笑みを浮かべて頭を撫でてあげた。

 

静謐のハサンを傷つけることなく無事に取り戻した遊馬達だったが……。

 

「……生をもぎ取れ、とは言ったが。どちらも取るとは、気の多い童だ。だが結果だけを見ると言ったのはこちらだ。過程の善し悪しは問わぬ──解なりや」

 

廟の奥から黒い霧と共に静かに現れたのは大きな角の付いた髑髏の仮面と胸部に髑髏をあしらった装飾のある甲冑を身に纏った大男だった。

 

「よくぞ我が廟に参った。山の翁、ハサン・サッバーハである」

 

その大男こそ暗殺教団「山の翁」の初代首領……ハサン・サッバーハ。

 

 

 


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