色々ありまして更新が遅れて申し訳ありません。
静謐のハサンの救出作戦が無事に成功し、西の村に帰還した遊馬達。
これからの事について話し合ったり準備する中、美遊はクラスカード『アサシン』を見つめながら呟いた。
「やっぱり、私のアサシンの夢幻召喚のハサンは……」
クラスカード『アサシン』の夢幻召喚はハサン・サッバーハの力が宿っており、使用者によって異なるハサン・サッバーハの力を使う。
ちなみにイリヤは『百貌のハサン』をその身に召喚出来る。
分身はあまり作れず、そこまで強力ではないが、緊急回避に役立てている。
そして、美遊が夢幻召喚出来るハサン・サッバーハは……。
「毒の娘……静謐のハサン。一度話をしなくちゃ」
美遊は夢幻召喚で静謐のハサンをその身に召喚出来る。
クラスカードや夢幻召喚のことを一度ちゃんと話さなければと思い、美遊は意を決して話しかけようとしたが……。
「は、話せない……タイミングが……」
「美遊様、これはとても話せる様子ではありませんね」
「静謐のハサンさん……遊馬さんにべったり……」
「見てるこっちが恥ずかしくなりますね〜」
「ベタ惚れね。静謐のハサンからラブラブオーラが出まくってるわね」
静謐のハサンはラブラブオーラを出しながら遊馬に張り付くようにべったりとそばに居て、毒を放出してしまう体質も相まってとてもじゃないが近寄れなかった。
静謐のハサンは毒の娘である自分に触れても大丈夫で、事故で命を奪いかけても何の責めもしなかった遊馬にベタ惚れなのだ。
一方遊馬は静謐のハサンが生前から毒の体質で誰とも触れ合えないことを苦しんでいたことを知り、少し恥ずかしいが静謐のハサンの心を癒せればと側にいることを許している。
ちなみに……マシュも静謐のハサンの苦しみを知り、我慢しているのだが嫉妬心がどんどん高まってフォウとダ・ヴィンチちゃんは苦笑いを浮かべた。
仕方ないので美遊は静謐のハサンと話せるタイミングを待つのだった。
☆
今後の戦闘や村人の安全などの話し合いが難航し、日が沈む頃……事態が突如として急変する。
アストラルはこちらに近づくサーヴァントの気配に気付く。
「遊馬、サーヴァントの気配だ!これは……サーヴァントが二人もいるぞ!」
「円卓の騎士か!?」
「恐らくは……ハサン達よ!村人を避難させることはできるか!?」
アストラルはハサン達に村人を戦闘に巻き込ませないように避難できる場所がないか確認する。
「それなら、もしもの時の避難用の洞窟があります」
避難用の洞窟があると知り、遊馬はすぐにサーヴァント達に指示を出す。
「ハサン達は村人の避難と護衛を頼む!俺たちは敵を迎え撃つ!アーチャークラスは高台から見張りと弓矢の遠距離攻撃を頼む!」
遊馬の指示に特に問題点は無く、サーヴァント達は頷いて行動に移る。
ハサン達は一斉に動いて村人達に説明して避難を開始し、アーチャークラスであるエミヤとクロエ、アーラシュと藤太の四人は高台に移動していつでも矢を打てるように準備する。
そして……最前線には二人の偉大なる騎士王が並び立つ。
アルトリアと連絡を受けてかっとび遊馬号から降りて来たオルタ……二人は来るであろう円卓の騎士が来るのを堂々と待ち構えていた。
獅子王のギフトを断ち切る事ができるベディヴィエールはまだ宝具のダメージを抑える魔術礼装が完成してないので、もしもの時まで力を温存している。
それからしばらく時間が経ち、大勢の騎士達を引き連れて遂に現れた。
「貴様達か……」
「まさか、ガヴェインとアグラヴェインだけでなく貴様達も獅子王に仕えていたとはな……」
アルトリアとオルタは聖剣を強く握り締めながらギロリと睨みつけた。
「我が王よ……こんな形で再会することになるとは……」
「嗚呼……悲しい。敬愛する騎士王と敵対しなければならないとは……」
現れたのは白銀の甲冑を纏った紫髪に紫眼の騎士と悲哀に満ち、憂いを帯びた吟遊詩人のような赤い長髪の美青年。
円卓最強と謳われ、湖の騎士の異名を持つ『ランスロット』。
円卓随一の弓手であり、悲しみの子の異名を持つ『トリスタン』。
「ランスロット、トリスタン。貴様達は私達を葬りに来たのか?」
「……獅子王様のご命令です」
「そして、獅子王様に歯向かう村人全てを始末する為です」
ランスロットとトリスタンの言葉にアルトリアとオルタは怒りに震えながら聖剣を構える。
「聖都で虐殺したガヴェインだけでなく、貴様達も外道に堕ちたか……」
「特にトリスタン、貴様は救いようのないほどにな……容赦はしないぞ」
「申し訳ございません。これは……獅子王様の望む世界のため……!」
「嗚呼、悲しい……騎士王に刃を向けなければならない日が来るとは……!」
もはや言葉は不要と言わんばかりに四人の騎士達は同時に動いて激しい戦闘を開始した。
それに伴い、ランスロットとトリスタンが引き連れてきた騎士達は村人を始末する為に一斉に走り出したが、それと同時に数多の矢と魔力砲撃が襲いかかる。
エミヤとクロエ、アーラシュと藤太が次々と放つ矢で騎士達は貫かれ、更には高威力の魔力砲撃をイリヤと美遊が放っていく。
そして、それを免れて突撃した騎士はマシュとダ・ヴィンチちゃんと三蔵が蹴散らしていく。
作戦通りに戦いが進む中、突如空に黒雲が広がり、邪悪な力の波動が鼓動する。
「この邪悪な気配は……まさか!?」
遊戯の心を騒めく邪悪な気配に心当たりがあった。
上空の空間が歪み、黒雲の中から現れたのは巨大な翡翠の土偶の形をしたモンスターだった。
「馬鹿な……『オレイカルコス・シュノロス』だと!?」
オレイカルコス・シュノロス。
かつて世界を滅ぼそうとした秘密結社『ドーマ』の長『ダーツ』が操るモンスターである。
遊戯は『伝説の決闘王』をすぐに発動するが、内心とてつもなく焦っていた。
ダーツは海馬とのタッグで挑み、極限状態でようやく勝利を得る事が出来た。
今の遊戯ならオレイカルコス・シュノロスを倒すことは可能だが、問題なのはオレイカルコス・シュノロスを倒した後に現れるモンスターである。
そのモンスターは『三幻神』に匹敵する強大な力を持つ『神』である。
その『神』を倒す手段も勿論あるが、この西の村の前で『神』が召喚されれば力を持たない村人達に多大な悪影響を及ぼす可能性がある為、遊戯は下手に戦うことはできなかった。
遊戯はみんなの安全を第一に考えて今回は守りに徹した戦いをすることに決めた。
「遊馬!アストラル!今ここでこのモンスターを倒すわけにはいかない!オレが全力でこのモンスターを抑え込む。みんなのことを頼む!」
「遊戯さん!任せてください!」
「私達でみんなを守り抜く!」
遊馬とアストラルは事情は後で聞くことにして、信頼する遊戯の想いに全力で応えるためにその場を離れてオレイカルコス・シュノロスを引きつけた。
オレイカルコス・シュノロスは遊戯を追いかけていき、村から少し離れた場所で遊戯は立ち止まってデュエルディスクを構える。
遊戯はあの時の辛い戦いを思い出しながらデッキからカードをドローする。
☆
一方、アルトリアとオルタ、ランスロットとトリスタンは壮絶な戦いを繰り広げていた。
ランスロットとトリスタンの騎士としての実力が高いのに加えて獅子王から授かったギフトでとてつもない力を発揮していた。
アルトリアとオルタが押されそうになったその時、闇夜を照らす赤雷がランスロットとトリスタンに襲いかかった。
「この赤雷は!?」
「まさか……!?」
ランスロットとトリスタンはギリギリ赤雷を回避し、生意気な声が闇夜を穿つように轟く。
「おうおうおう!このオレ以外に敬愛すべき父上に刃を向けるとは、テメェらはそこまで堕ちたようだな!!」
その生意気な声にアルトリアは無意識にニヤリと笑みを浮かべた。
「全く……遅いですよ、寝坊助ですね!」
振り向いた先にいたのは獅子王の呪縛から解き放たれ、完全復活を果たしたモードレッドとガレスの二人だった。
「おう!待たせたな、父上達!赤雷の騎士、モードレッド!ここに復活だ!!」
「円卓第七席、
ガレスは軽やかに飛んでアルトリアの前に降りてからすぐに跪き、騎士の誓いを立てる。
「アーサー陛下。モードレッド卿から話はあらかた聞いております。今よりあなた様に再び仕え、この槍を捧げます」
「ガレス卿……あなたが共に戦ってくれるとは心強い、まずはここを乗り切ってからゆっくり話しましょう」
「はいっ!」
ガレスはアルトリアからそう言葉をかけられ、花が咲くように嬉しそうな笑みを浮かべた。
「ガレス、トリスタンはオレが相手する。ランスロットの野郎はお前がやれ」
「分かりました。でも、お姉ちゃんにあまり生意気な口調はやめて下さいね」
「ヘイヘイ、わーったよ。それじゃあ……行くぜ、トリスタン!!」
「ランスロット様、参ります!!」
治療と回復を受けて全快となったモードレッドとガレスは最初から全力でランスロットとトリスタンに攻撃する。
一気に形成逆転となり、これ以上の戦力差は不味いと判断したランスロットとトリスタンは宝具を解放しようとしたその時、漆黒の暴風が吹き荒れて二人を吹き飛ばした。
「くうっ!?今度は何事だ!?」
「なっ……あ、あれは、そんな馬鹿な……!?」
ランスロットとトリスタンは新たに現れた存在に目を疑った。
何故ならそれは獅子王と相反する存在だからだ。
「我は嵐の王……ランサー・アルトリア・オルタ。ランスロット、トリスタン、貴様らに裁きを下す!」
漆黒の聖槍を持つ騎士王、ランサー・アルトリア・オルタが降臨した。
「おお、来たな。もう一人の聖槍の父上……!」
「え、ええーっ!?アーサー陛下が更にもう一人!?しかも獅子王様と同じ聖槍を所持しているのですか!?」
ガレスは獅子王と同じ『聖槍』を持つランサー・アルトリア・オルタの登場に驚愕と同時に困惑している。
これにはガレスのみならずランスロットとトリスタン、そしてベディヴィエールも驚愕している。
性質や姿が異なっても同じ『アーサー王』が複数存在すれば誰だって驚愕するのは当たり前のことだ。
外道に堕ちた円卓の騎士達と同じ聖槍を持つ獅子王の振る舞いに遂に我慢の限界となり、ランサー・アルトリア・オルタも参戦を決めたのだ。
「諦めなさい、ランスロット、トリスタン。いくら獅子王のギフトで力を得ても、貴方達に勝ち目はありません!」
アルトリアはそう宣告し、ランスロットとトリスタンはかなり焦った。
引き連れた騎士達はいつのまにかほぼ全滅し、三人のアルトリアに復活したモードレッドとガレス、そしてベディヴィエールも後ろに控えている。
圧倒的な戦力差にランスロットとトリスタンの敗北は免れない状況だった。
これで獅子王側の円卓の騎士を二人を倒す事ができる……そう確信した遊馬達。
すると、暗い夜空が急に明るくなり、遊馬達が見上げるとそこには驚くべきものが現れた。
それは……空から降り落ちるように現れたのは巨大な光の塊だった。
とてつもないエネルギーであれを受ければここにいる敵味方関係なしに消滅するだろう。
「あの光は……まさか……『最果てに輝ける槍』!?」
アルトリアはあの光が宝具『最果てに輝ける槍』によって放たれたものだとすぐに分かった。
これまでこの広大な荒地のあちこちに複数のクレーターがあったが、それら全てが『最果てに輝ける槍』の光だったのだ。
獅子王はここにランスロットとトリスタンがいるにも関わらず、遊馬達を葬る為に聖都から『最果てに輝ける槍』を放ったのだ。
「聖剣の騎士王達、ここは頼む!」
ランサー・アルトリア・オルタはラムレイを操ってその場から離れ、光の真下に着くと宝具を解放する。
「突き立て、喰らえ、十三の牙!!」
渦巻く漆黒の長槍の穂先が高速回転し、その回転に風王結界を纏わせ、聖槍の力で極限まで増幅する。
「『
漆黒の竜巻を天に向かって解き放つ。
ランサー・アルトリア・オルタが放てる全力の最果てに輝ける槍の漆黒の竜巻が天の光と激突する。
天の光と漆黒の竜巻が激突した際に無数の衝撃波が発生し、あまりの威力に西の村の民家を破壊してしまうほどだった。
拮抗するかに見えた二つの大きな力だが、やがて天の光が徐々に漆黒の竜巻を呑み込んでいった。
ありえない事態にランサー・アルトリア・オルタは目を疑った。
「ば、馬鹿な!?くっ!?私の『最果てに輝ける槍』が押されている!?同じ聖槍のはずなのに、何が起きている!??」
ランサー・アルトリア・オルタは獅子王が持つ宝具が性質は異なるが同じ『最果てに輝ける槍』だと判明し、自分の『最果てに輝ける槍』で天の光を相殺させようとした。
ところが相殺させるどころか逆に押されてランサー・アルトリア・オルタは焦りと困惑の表情を浮かべた。
このままでは全滅する……そんな最悪な未来が頭によぎった。
その時、希望と未来の光がランサー・アルトリア・オルタの隣に並び立つ。
「諦めるな、アルトリア!」
「我々があの光の威力を抑え込む!」
「アルトリアさんはそのまま攻撃し続けて下さい!」
「マスター、アストラル、マシュ……!」
遊馬とアストラルとマシュはみんなを守る為に獅子王の天の光に全力で立ち向かう。
「行くぜ!アストラル!マシュ!」
「ああ!かっとビングだ!」
「はい!かっとビングです、私!」
マシュをフェイトナンバーズに入れ、遊馬とアストラルは互いの右腕を『X』に交差させる。
「俺と!」
「私で!」
「「オーバーレイ!!」」
遊馬とアストラルは赤と青の光となって絡み合い、一つに交わって合体する。
「「エクシーズ・チェンジ!!ZEXAL II!!」」
奇跡の希望の英雄・ZEXAL IIが降臨し、その強大な力の波動にオレイカルコス・シュノロスと戦っていた遊戯は全身が大きく震えた。
「なんだ……この力は!?この気配は遊馬とアストラル!?二人に何が起きているんだ!?」
遊戯が戦ってきた歴戦のデュエリスト達を凌駕するほどの力に喜びと驚きを隠せなかった。
「「俺/私のターン!全ての光よ、力よ!我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!!」
ZEXAL IIはシャイニング・ドローでカードを創造してドローし、手札のカードを見て瞬時に頭の中で展開を考えて発動させる。
「「『ガガガマジシャン』を召喚!更に『カゲトカゲ』を手札から特殊召喚!レベル4のモンスター2体でオーバーレイ!エクシーズ召喚!」」
2体のモンスターが地面に吸い込まれ、光の爆発を起こす。
「「現れよ、『FNo.0 人理の守り人 マシュ』!更にマシュを対象に『RUM - リミテッド・フェイト・フォース』を発動!!ランクアップ・エクシーズ・チェンジ!」」
フェイトナンバーズのマシュが召喚されたと同時にランクアップ・マジックを発動し、マシュの最強の姿へと進化させる。
「現れよ!『FNo.0 希望の守護者 マシュ・ホープライト』!!」
「マシュ・ホープライトの効果!このカードが特殊召喚されたターンに1度、エクストラデッキから『希望皇ホープ』モンスター、または『未来皇ホープ』モンスター1体をX召喚扱いで特殊召喚する!」
「フューチャーホープサークル、展開!!」
マシュが両腕を左右に開くと足元に希望皇ホープか未来皇ホープを呼び出す金色の魔法陣が展開される。
「現れろ!『No.39 希望皇ホープ』!そして、特殊召喚したホープに自分の手札・墓地のモンスター2体までを選択してそのモンスターをオーバーレイ・ユニットにする!手札のモンスター2枚をオーバーレイ・ユニットにする!」
魔法陣の中から希望皇ホープが飛び出すように現れ、手札のモンスター2枚を希望皇ホープのオーバーレイ・ユニットにし、ZEXAL IIは早速希望皇ホープに指示を出す。
「希望皇ホープの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」
希望皇ホープはオーバーレイ・ユニットを胸の宝玉に取り込みながら右翼を半月の形に変形させて光の柱に突撃する。
これまで数々の戦いであらゆるモンスター、サーヴァントの攻撃を防いできた希望皇ホープのムーン・バリア。
だが、そのムーン・バリアでも天の光の攻撃を防ぎ切ることができずにいた。
「遊馬君!アストラルさん!」
「「マシュ・ホープライトの効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、攻撃を無効にする!ムーン・バリア!!」」
マシュは盾にオーバーレイ・ユニットを取り込み、希望皇ホープと同じように左翼を半月の形に変形させ、盾を前に構えながら光の柱に突撃する。
希望皇ホープとマシュの二人がかりで獅子王の『最果てに輝ける槍』を全力で喰い止める。
「「うぉおおおおおーっ!!!」」
「はぁあああああーっ!!!」
ZEXAL IIとマシュは腹の底から声を出して力を込める。
みんなを必ず守る……そんな強い想いが大きな力となり、希望皇ホープの真紅の瞳が輝いて天の光を押し返していく。
「今だ!アルトリア!令呪行くぞ!」
「光を獅子王に送り返してやるんだ!!!」
「承知!!この身を賭して、必ず成し遂げる!!!」
ZEXAL IIの右手の甲に刻まれた令呪の一画を使い、ランサー・アルトリア・オルタの力を最高潮に高める。
「「令呪によって命ずる!!漆黒の聖槍よ、人々に仇なす天の光を撃ち抜け!!!」」
令呪によりランサー・アルトリア・オルタの魔力が爆発的に増幅し、溢れんばかりの力が全身に駆け巡る。
それに伴い、漆黒の聖槍から黒い雷電が迸り、回転が更に増して巻き起こす風が強くなっていく。
「もう一度、行くぞ……!」
ランサー・アルトリア・オルタは全ての力を込めて漆黒の聖槍の力を再び解放する。
「喰らえ……最果てに輝ける槍!!!貫けぇえええええーっ!!」
漆黒の竜巻は威力を倍増し、ドリルのように一直線に放たれた竜巻は更に巨大化し、うねり曲がって飛ぶ龍のように放たれた。
まるで全てを喰らうように漆黒の竜巻は天の光を打ち消していき、光を防いでいたマシュと希望皇ホープはその場から脱出した。
そして……漆黒の竜巻は光を喰らいながら天を貫いた。
それは、獅子王の聖槍に打ち勝ったことを意味する。
それを間近で見たZEXAL IIとマシュは勝利に喜んだ。
「やったな!アルトリア!」
「これでみんな救われた!」
「お見事です、アルトリアさん!……アルトリアさん!?」
マシュはランサー・アルトリア・オルタの異変に気付き、すぐに地面に降り立って駆け寄った。
ZEXAL IIも地面に降りて駆け寄ると、ランサー・アルトリア・オルタは漆黒の聖槍を地面に落とし、左手で右腕を強く押さえながら痛みに耐えていた。
「申し訳ありません……しばらくはこの腕が使い物になりそうにありません……」
ランサー・アルトリア・オルタの右腕は血だらけになっていた。
右腕全体の皮膚がボロボロで、筋肉や骨もまともに動かせないほどに重症だった。
「アルトリア、お前……!」
「聖槍と令呪で限界を超えた力を使ってしまったのか……」
「す、すぐに治療をしないと!ナイチンゲールさん達に連絡を!!」
マシュはD・ゲイザーでナイチンゲール達に連絡をし、ZEXAL IIは次に来るかもしれない攻撃に希望皇ホープと共に警戒する。
ランサー・アルトリア・オルタの辛勝を見届けたアルトリア達は次は自分達の番だとランスロットとトリスタンに再び対峙したが……。
「っ!?ランスロットとトリスタンが……」
「あっ!?あの野郎ども、逃げやがった!ちくしょうが!!」
ランスロットとトリスタンはこの場にいるほとんどの人間が天の光に引きつけられている間に西の村から完全に撤退していた。
二人が撤退し、決着をつけようと思っていたモードレッドは苛立ちから燦然と輝く王剣を振り回して赤雷を出しまくった。
アルトリアはとりあえずモードレッドを拳骨を叩き込んで黙らせ、ひとまずは脅威が去った西の村を見渡した。
幸いにも村人達には犠牲者はいないが、住居などの建物がほとんど壊れてしまい、これでは生活することはできない。
恐らくは一時的に東の村に避難という形で移住することになるだろうが、色々と問題が起きることは容易に想像ができる。
「早く、獅子王と決着をつけなければ……」
アルトリアは味方である円卓の騎士すらも巻き込んで滅ぼそうとする獅子王に対して怒りと焦りの心を持つのだった。
一方、オレイカルコス・シュノロスに対して防戦に徹していた遊戯。
獅子王の聖槍の脅威が去り、円卓の騎士の気配も消え、遊戯は防戦から攻戦に移ろうとした。
ところが、オレイカルコス・シュノロスは遊戯への攻撃を止め、その身が闇に包まれると次の瞬間には霧のように消えてしまった。
「消えた……何故撤退したんだ……?」
遊戯はオレイカルコス・シュノロスが撤退した理由が分からず困惑した。
その場に座り込んだ遊戯はデュエルディスクからデッキを抜き、その中の1枚のカードを手に取る。
更に千年パズルを輝かせて新たな3枚のカードを手に取り、合計4枚のカードを見つめながら遊戯は呟く。
「オレイカルコスも出てきた……お前達の真の力を借りなければならないな」
それはオレイカルコスの力に対抗できるデュエルモンスターズ界の伝説の三体の竜。
そして、伝説の三体の竜に宿る真の力を呼び覚ますカード。
「戦いは更に厳しくなるな……気を引き締めていかないと……」
遊戯は大邪神ゾークの前に立ち塞がる過去の強大な敵達に僅かな不安と恐れを抱きながら遊馬達の元へ戻る。
☆
その頃……聖都の中央に聳え立つ王城。
その玉座に消耗した体で座り込む者がいた。
それは聖都を支配する獅子王……聖槍を持つアルトリアだった。
「まさか……私の聖槍を打ち消すとは……しかも、私に反撃を加えるか……」
獅子王の右手には軽度ではあるが怪我をしており、それはランサー・アルトリア・オルタの令呪によって強化された最果てに輝ける槍によって受けた傷だった。
「邪魔者と私に従わぬ者……そして、邪神の配下を消そうとしたのだが、まさかここまでとはな……」
獅子王は遊馬達だけでなくオレイカルコス・シュノロスも消す為に最果てに輝ける槍を放ったのだ。
獅子王も大邪神ゾークの存在に気付いて密かに動いていたのだ。
「この聖都を……滅ぼすわけにはいかない。エジプトと山の民と異邦者達ならまだしも、邪神が相手では身に余る……さて、どうするか……」
己が宿願を果たす為、大邪神を相手にするにはどうしたら良いか……獅子王はそれを考えながら静かに目を閉じた。
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本来ならアーラシュがステラで消滅しますが、今回はランサー・アルトリア・オルタが頑張りました。
次回は……多分じぃじの登場になると思います。