Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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FGOで心にダメージを受けながら何とか書きました。
来週からソロモン編の映画が上映されるので楽しみです!

さて、私の好きなサーヴァントである法師様を出します!
ただ……当ててないので悲しいです( ; ; )


ナンバーズ177 西遊の法師

聖都から脱出した遊馬達はかっとび遊馬号とS・H・Ark Knightで空を飛び、聖都から充分に距離を取ったところに人のいない廃村を見つけた。

 

廃村と言ってもある程度形が残っている民家が何軒もあるので、そこに降りることにした。

 

難民達は既に心身共に疲弊して限界が近いので、炊き出しなどを行うことにした。

 

カルデアからバニヤンが日頃からせっせとカルデアで育てていた大量の食材を送ってもらい、エミヤは投影魔術でキャンプの調理器具を大量に投影する。

 

そして、料理長のエミヤを筆頭にスタミナのつく料理を大量に作っていき、難民達に配っていく。

 

また、砂漠地帯で水不足に陥っているので……。

 

「現れよ!『No.19 フリーザードン』!!」

 

「現れよ!『No.73 激瀧神アビス・スプラッシュ』!!」

 

遊馬とアストラルは2体のナンバーズを呼び出した。

 

氷の恐竜・フリザードンが巨大な氷塊を何十個も作り出し、アビス・スプラッシュで大量の水を生成して擬似オアシスを作り出した。

 

大量の食料と水に難民達は一安心したところで、民家の一軒を使って診療所を開いたナイチンゲールが難民達の健康診断を行う。

 

そして、廃村を囲むようにレオニダスが宝具『炎門の守護者』を展開していた。

 

いつ敵が来ても難民達を守れるようにとレオニダスは休まず常時展開している。

 

また、レオニダスだけでなく、アーチャーのアタランテとロビンフッド、アサシンの小太郎と段蔵が周囲を監視している。

 

そして、いつ獅子王配下の円卓の騎士が来てもすぐに撃退出来るようにカルナとアルジュナが威風堂々とした様子で待ち構えていた。

 

ちなみにカルナとアルジュナは聖都での難民達の護衛や騎士の撃退に行こうとしていたのだが……この二人の力がサーヴァントの中でも上位に入る最強クラスの能力を持つ。

 

あまりにも強すぎる攻撃の余波で難民達に被害が出る恐れがあった為、カルデアでエレナやエジソンが全力で二人を止めていた。

 

しかし、今は砂漠のど真ん中の村にいるという事もあり、二人は遠慮なく攻撃出来るのでレオニダスと同じく休まず警戒している。

 

難民達のケアをしていく中、遊馬達は一番大きな民家で集まっていた。

 

その中心には未だにルビーの超強力眠り薬で眠っているモードレッドとガレスが横たわっていた。

 

「うーん……これは神代の魔術でも無いわね」

 

「ルーン魔術の類でもないな。これはもっと神聖な力を感じる」

 

戦闘マシンのように戦っていたモードレッドとガレスが何かしらの魔術が掛けられているのではないかと思い、メディアとスカサハに見てもらった。

 

しかし、神代の魔女のメディアもルーン魔術の使い手のスカサハでも原因が分からずお手上げ状態だった。

 

無理矢理魔術でこじ開けるように解くことも可能だが、それではモードレッドとガレスの霊基に多大なダメージが及ぶ可能性が高いので下手に手出しはできない。

 

「私にお任せください。私なら……二人にかけられた『ギフト』を『断ち切る』ことが出来ます」

 

そこに名乗りを挙げたのが聖都で出会った謎の青年だった。

 

まだ名を名乗ってなかったので青年は銀色に輝く右腕を胸に添えて軽く頭を下げながら名乗った。

 

「私はアーサー王にお仕えする、円卓の騎士の一人……ベディヴィエールです」

 

ベディヴィエール。

 

円卓の騎士の最古参の一人でアーサー王の忠実な騎士である。

 

「……あれ?ベディヴィエール。確かあんたは隻腕の騎士だったよな?その右腕はどうしたんだ?」

 

遊馬はアーサー王伝説を一読していて、ベディヴィエールのことをある程度知っていたのでその疑問に辿り着いた。

 

ベディヴィエールは右腕が無いが片腕でも騎士としての腕は確かで『隻腕の騎士』の異名を持つ。

 

しかし、今のベディヴィエールには美しい模様が刻まれた銀色の右腕があり、それは何なのかと疑問に思う中……。

 

「……フォウ?」

 

「あっ、フォウさん!」

 

フォウがマシュの肩から降りてベディヴィエールの体をよじ登って銀色の右腕の匂いを嗅ぐと興奮したように吠えた。

 

「フォウフォウ!マーリン、マーリン!!」

 

フォウが大嫌いな元主人であるマーリンの名を呼び、遊馬達に衝撃が走る中……アルトリアは冷静に考えて答えを出す。

 

「なるほど……ベディヴィエール。その右腕はマーリンがあなたに与えたものですね?」

 

「その通りです、我が王。片腕では円卓の相手は厳しいだろう、とマーリンが一計を案じたのです。これは彼が作った人工宝具。ケルトの戦神、ヌァザが持つ銀の腕を模したもの」

 

マーリンがベディヴィエールに宝具を与えていとことに誰もが驚く中、ベディヴィエールは状況を打破出来ると告げる。

 

「この右腕の力を使えば、二人に掛けられたギフトを何とか出来ます」

 

「ギフト?」

 

「そう言えばガウェインが獅子王から与えてくれた、常に太陽を照らしてくれると言っていたな。スキルとは違うのか?」

 

アストラルはガウェインが聖都に現れた時のことを思い出しながら尋ねるとダ・ヴィンチちゃんが代わりに答える。

 

「あれは聖杯の祝福だ。それも私達が集めている聖杯(アートグラフ)じゃない」

 

「特異点の聖杯じゃないってことは俺が持ってるポセイドンの聖杯みたいなものか?」

 

「その通り。アーサー王伝説に現れる救世主の聖杯(ホーリーグレイル)。神の祝福を円卓の騎士たちは受けている。ああ、ベディヴィエールは例外だ。正しくは、獅子王の配下の円卓の騎士たちは、だね」

 

獅子王には恐らく遊馬が持つポセイドンの聖杯と同等かそれ以上の力を秘めた『アーサー王伝説の聖杯』を使って配下の円卓の騎士を『祝福』として強化している。

 

「この右腕のは『聖杯を断つ』能力を持っています。この力でガレスちゃんとモードレッド卿にかけられたギフトを断ち切れば時期に目を覚ますはずです。しかし、その前に我が王に一つお尋ねしたい」

 

「何でしょう?」

 

ベディヴィエールはモードレッドをチラッと横目で見ながらアルトリアに静かに問う。

 

「ガレスちゃんはともかく、モードレッド卿は叛旗を翻し、カムランの丘であなたを死に追いやりました。そんなモードレッド卿をお救いしてもよろしいのですか?」

 

モードレッドはアーサー王伝説の終焉……アルトリアの王としての人生に終わりを与えた存在でもある。

 

アルトリアにモードレッドを怨んでいる様子は見られないが念の為に確認した。

 

「……モードレッドとは確かに色々ありました。ですが、私とモードレッドは共に異なる世界の聖杯戦争でそれぞれ良きマスターに巡り会いました。マスターと言葉を交わし、多くの人と出会ったことで、私達は人として変わり、大きく成長する事ができました。まだまだ未熟で駄目なところは多々ありますが、モードレッドは……私の息子です」

 

恐らくは他の円卓の騎士達が聞いたら驚愕するほどのアルトリアのモードレッドへの想いにベディヴィエールは唖然とする。

 

「……それを聞いて、安心しました。このベディヴィエール。全身全霊を持って、二人をお救いします!」

 

ベディヴィエールはアルトリアの想いに応える為に覚悟を決めた。

 

「『剣を摂れ、銀色の腕(スイッチオン・アガートラム)』!」

 

銀の右腕の力が解放され、聖杯の断ち切る銀色の閃光が光り輝く。

 

「はぁっ……はぁ!!」

 

モードレッドの胸元に右手を当てて銀色の閃光を押し込むようにすると、ギフトが断ち切られてモードレッドの顔中に刻まれていた刻印が消滅する。

 

「次はガレスちゃん……ぐぅっ!??」

 

ベディヴィエールは体内に激しい激痛が襲いながらガレスに向けて右手を伸ばす。

 

「ベディヴィエール!?」

 

「大、丈夫、です……!はぁっ!!」

 

そして、ガレスの胸元に右手を当てて同じように銀色の閃光を押し込むとまるで人形のように冷たく、生気がなかった顔色が一気に良くなり、規則的な呼吸をするようになった。

 

「これで、大丈夫です……」

 

ベディヴィエールはその場に崩れ落ちるとその体から焼けた肉のような匂いが広がる。

 

ベディヴィエールの異変にオルタは確信を得た。

 

「ベディヴィエール……やはりその右腕を使う度に命を削っているのだな?」

 

「……はい」

 

聖都でガウェインを薙ぎ払った時にもベディヴィエールは肉体に多大なダメージを受けていた。

 

ベディヴィエールは右腕の力を使う度に文字通り命を削っているのだ。

 

「このままでは貴様の身が持たないな。肉体の回復はナイチンゲールやアイリスフィールに頼むとして……メディア」

 

「何かしら?セイバー?」

 

「ベディヴィエールの右腕の反動を抑えることはできるか?」

 

オルタは世界最高峰の魔術を使い、様々な魔術道具を作り出せるメディアにベディヴィエールの右腕の反動を抑えてもらう事を考えた。

 

「そうね、彼の専用の魔術道具が出来るのは二、三日ぐらいかしらね?」

 

「頼む、ベディヴィエールはこの戦いの鍵になる男だ」

 

円卓の騎士たちに掛けられた聖杯の祝福を断ち切る力を持つのはベディヴィエールしかいない。

 

ベディヴィエールを失わない為にもオルタはメディアに頼み込んだ。

 

「分かったわ。でも、タダではやらないわよ。彼はあなたの部下なんでしょ?それ相応の対価を貰わなきゃね♪」

 

「良いだろう……私と青いの、二人で貴様の服を着たファッションショーをやるのはどうだ?」

 

「オ、オルタ!?」

 

「ベディヴィエールを守る為だ、我慢しろ」

 

「うっ……分かりました……」

 

アルトリアとオルタはベディヴィエールの為に一肌脱ぐことになった。

 

その後、ベディヴィエールの重体に察知してナイチンゲールが現れ、有無を言わさずに強制的に治療を受けることになった。

 

流石にベディヴィエールのダメージは通常の治療では治せないのでカルデアからアイリスフィールと玉藻とメディア・リリィに来てもらい、モードレッドとガレスの治療も並行して行うことになった。

 

カルデアを代表する4人の回復系宝具のサーヴァントがいればベディヴィエール達もすぐに回復することは間違いない。

 

後のことはナイチンゲール達に任せて一旦遊馬達はその場で解散となった。

 

各自休息を取ったり難民達の様子を見たりと各々が自由行動をする中、アルトリアは人気のない瓦礫のところにいた。

 

大きな瓦礫の上に座り、約束された勝利の剣を見つめながらその美しい刃に触れる。

 

「獅子王……聖槍を持った私……」

 

アルトリアは聖槍を持った別の可能性の自分がこの特異点を引き起こし、聖罰などと言う恐ろしいことをしたのだと思い、酷く心を痛めていた。

 

「何故、こんな事を……」

 

例え別の可能性のアルトリアでも同じ騎士王として理想の為に戦ったはず。

 

他のアルトリアの別の可能性でもあるアルトリア・オルタとランサー・アルトリア・オルタは暴君としての要素があるが、根底にある『騎士王』としての目的、理想そのものは変化していない。

 

それが獅子王と名乗り、聖抜で数人の人間を選び、聖罰でそれ以外の人間を粛清するようになったのか。

 

その心境を理解が出来ず、悩んでいた。

 

するとそこに遊馬がアルトリアの元にやって来た。

 

遊馬の手にはお皿には小鳥特製の山盛りのデュエル飯が盛られていた。

 

「マスター……」

 

「アルトリア、食うか?」

 

「……食べます」

 

遊馬とアルトリアは共にデュエル飯を食べる。

 

ちなみにアストラルは今日の出来事や今ある情報を整理する為に皇の鍵の中にいる。

 

まるで大食い大会のように次々とデュエル飯が無くなっていき、あっという間に皿の上からデュエル飯が全て無くなってしまった。

 

「ごちそうさまでした」

 

「ごちそうさまでした……マスター、ありがとうございます」

 

「ん、何が?」

 

「落ち込んでいる私の為にご飯を持って来てくれたのですね?」

 

「……まぁな。この特異点の戦いはアルトリアと深い因縁がありそうだからな。真面目で責任感の強いアルトリアなら絶対に落ち込んだり、悩んだりしていると思ってな」

 

遊馬はマスターとしてアルトリアのケアをしに来た。

 

本来ならばアルトリアの嫁であるエミヤがやるべきなのだが、エミヤは現在難民達の為に忙しく働いているので遊馬が代役として来た。

 

「アルトリア、気持ちは理解出来るけど無茶だけはするんじゃねえぞ。特異点の戦いはアルトリアだけの問題じゃねえからな」

 

「……分かってます。ベディヴィエールの事もありますし、独りよがりの行動はしないようにします」

 

「ベディヴィエール?あいつになんかあるのか?まさか、偽物とかそういう……」

 

「いいえ、ベディヴィエールが偽物なんてとんでもありません。彼とは長く共に戦い、私の最後の頼みを聞き入れてくれたのですから。しかし……」

 

「しかし?」

 

「ベディヴィエール本人なのは間違いないのですが、何処か違和感を感じるのです……あの右腕の事も」

 

ベディヴィエールはアルトリア達にもまだ話していない『何か』大きな秘密を隠している。

 

そして、マーリンが与えた銀の右腕……アガートラム。

 

これらを含めたアルトリアが感じた違和感。

 

獅子王を含めたそれらが一つに繋がり、大きな因縁になっているとアルトリアはそう考えている。

 

「私はマスターのサーヴァントとして独りよがりな戦いや高度はしないと誓います。しかし、アルトリア……かつてのアーサー・ペンドラゴンとして、騎士王として、この特異点の全ての因縁に決着をつけるべきだと考えています。それだけはご理解ください」

 

アルトリアは覚悟を決めた様子で遊馬に頭を下げて頼み込んだ。

 

それは騎士王アーサー・ペンドラゴンとして生きたアルトリアとしてのケジメでもあると遊馬にはしっかりと伝わっていた。

 

「……分かった、俺も出来る限りの協力はする。だけど、これだけは心に刻んでくれ。俺たちはマスターとサーヴァントの関係であると同時に、かけがえのない大切な仲間だ。絶対に忘れるなよ?」

 

「……はいっ!」

 

遊馬とアルトリアは固い約束を交わし、共にこの特異点の因縁に決着をつけると誓った。

 

一時の平和な時が流れる村に突如として異変が起きる。

 

D・ゲイザーのアラームが鳴り、通信に出るとマシュからの緊急連絡だった。

 

『遊馬君!警備を担当しているサーヴァントの皆さんから村に近づいて来た不審なサーヴァントを発見し、捕獲したそうです!』

 

「不審なサーヴァント!?円卓の騎士か!?」

 

『いえ、私はまだ確認していませんが、騎士の格好はしておらず、女性サーヴァントのようです。一瞬で警備をしていたサーヴァントの皆さんに囲まれて抵抗してないようです』

 

「分かった、すぐにそっちに向かう!」

 

「マスター、私も一緒に行きます!」

 

「頼んだぜ!」

 

遊馬はアルトリアと共に謎のサーヴァントを確認する為に村の外へと急いだ。

 

その途中で難民達の為に忙しく働いている小鳥と会った。

 

「遊馬、アルトリアさん、どうしたの?」

 

「ちょっとな!それとデュエル飯美味かったぜ!ごちそうさま!」

 

「コトリ、とても美味しかったです。ごちそうさまでした!」

 

「はい、お粗末様です」

 

小鳥は遊馬達を見送り、難民達にも挨拶を交わしながら村の外へ出る。

 

村の外に出ると異変に気づいたアストラルが皇の鍵から現れ、事情を説明しながらマシュと合流する。

 

そして、捕獲された不審サーヴァントの元に行くと……。

 

「待ってよー!?私は獅子王の仲間でも円卓の騎士でもないから!!」

 

必死な高い声が響き渡り、その声音に遊馬達は聞き覚えがあった。

 

「「……小鳥?」」

 

「小鳥さん……?」

 

「コトリの声……?」

 

それは小鳥の声にとてもよく似ており、耳を疑うレベルだった。

 

しかし、小鳥は先程村の中で会ったばかりでいるはずがない。

 

その正体を確認する為に急ぐとそこにはカルナやアルジュナなどの多くのサーヴァントが不審サーヴァントを囲んで武器を構えていた。

 

一歩でも動けば抹殺するレベルの殺気が放たれていて、その中央にいたのは水着と間違われる程に露出度の高い袈裟を纏った美しい女性サーヴァントだった。

 

どう見ても円卓の騎士ではない女性サーヴァントでアルトリアも首を横に振って円卓の騎士では無いと否定する。

 

今にも泣きそうな様子に流石に可哀想なので遊馬はみんなを下がらせる。

 

「みんな、落ち着けって!とりあえず下がっててくれ!」

 

聖罰の事もあり、気が張っているサーヴァント達を落ち着かせながら遊馬は女性サーヴァントの元に行き、苦笑いを浮かべながらみんなを代表して謝罪する。

 

「えっと……ごめんな。みんな悪気があった訳じゃねえんだ。難民達を守ろうと一生懸命だったんだ」

 

「もう良いよ……ぐすん……」

 

よほど怖かったのか明らかにいじけている様子で遊馬は機嫌を直してもらう為にある事を思いつく。

 

「そうだ、飯食うか?水もたくさんあるし、腹一杯食べるか?」

 

「うん、食べる……」

 

女性サーヴァントは頷き、遊馬の提案に応じて食事をいただくことにした。

 

村に案内された女性サーヴァントは早速小鳥特製のデュエル飯を食べ始めた。

 

お腹が空いていたらしくアルトリアに負けないほどのスピードでデュエル飯をパクパクと食べていった。

 

「あー!美味しかった!ごちそうさまでした!」

 

「お粗末様です。お水をどうぞ」

 

「うん!ありがとうー!」

 

小鳥から冷たい水の入ったコップを貰い、女性サーヴァントは一気に飲み干した。

 

「ぷはぁー!生き返る〜!やっぱり砂漠を歩き回った後の水は格別だね〜!」

 

「うふふ、良かったですね」

 

「ところで……あなた、私と声が似ているわね」

 

女性サーヴァントは自分の声と小鳥の声が似ていることに気付いた。

 

遊馬とアストラルとマシュも注意深く二人の声を聞いているが……。

 

「ダ、ダメだ……10年以上幼馴染でいつも一緒にいる俺でも聞き分けられねぇ……!?」

 

「二人の声帯がここまで似ているとは……これは奇跡としか言いようがないな」

 

「これはもう目を瞑ったらどちらが話したかわからないですね……」

 

あまりにも二人の声が似ている為に遊馬達は軽く困惑しかけていた。

 

「あっ、やっぱりそう思いますか?何だか不思議な感じです。自分と同じ声の人とこうして話すなんて……」

 

「うんうん!私も旅をして色々な人に会ったけど、声が同じ子なんて初めてだよ!えっと……」

 

「私、観月小鳥です。小鳥って呼んでください」

 

「小鳥か、可愛い名前だね。おっとそうだった。私も名乗らなくちゃね」

 

女性サーヴァントは右手を立てて自分の顔の近くに持っていき、笑みを浮かべて真名を名乗る。

 

「私は玄奘三蔵!御仏の導きによってこの地に現界したキャスターよ、よろしくね!」

 

玄奘三蔵。

 

中国の小説『西遊記』の主要人物で仏典の原典を求めてシルクロードを旅し、経典を唐へと持ち帰って法相宗の開祖となった。

 

「さ、三蔵って、あの西遊記の!?」

 

「まさかここで中国の伝説の僧侶と会うことになるとは……」

 

「今まで聖人や聖女などのキリスト教系のサーヴァントは多かったですが、初めての仏教系のサーヴァントですね」

 

「嘘っ!?三蔵法師様!?」

 

西遊記は中国で有名な小説だが、日本にも古くから伝わっている為、三蔵の名前は誰でも知っているほどだ。

 

小説では三蔵は男性のはずだがここにいる三蔵は女性なのは遊馬達はもう既に気にしていない。

 

「あれ?私の事を知ってるの?」

 

「もちろんだぜ!西遊記は日本人なら一度は聞いたことのある話で、孫悟空と猪八戒と沙悟浄と白竜の天竺への旅はワクワクしたぜ!」

 

「そうなんだ、ちょっと照れくさいな。それはそうと……あなた、その令呪があるってことはマスターで良いのよね?まさか、この村にいるサーヴァント全員と契約しているの!?」

 

「俺は九十九遊馬。こっちは相棒のアストラル。ここにいるサーヴァント達は俺と契約を結んでいる大切な仲間だ」

 

「私はマシュ・キリエライトです。デミ・サーヴァントでシールダーです。こちらはフォウさんです」

 

「フォーウ!」

 

「へぇー、これだけのサーヴァントと契約が出来ていて、サーヴァントを自分の配下ではなく大切な仲間……うんうん!いいねいいね!やっぱり私の勘は間違って無かったわ!」

 

三蔵は遊馬をじっくり見て何かを見定めるとビシッと指差しして宣言した。

 

「あなた、私の弟子になりなさい!!」

 

「……え?」

 

突然の三蔵の宣言に遊馬は唖然となり、マシュ達は耳を疑った。

 

憧れの三蔵から弟子になれと言われて唖然から少しずつ興奮していく遊馬だが、よくよく考えれば自分には既に何人もの師匠がいるので申し訳ない気持ちで断る。

 

「さ、三蔵さん。悪いんだけど、俺にはもう剣の師匠と戦いの師匠がいるんだ。だから……」

 

「剣と戦い?ううん、違うよ。私はね、あなたを仏門としての弟子にしたいのよ」

 

「仏門の弟子?」

 

「あなた、空飛ぶ船に乗っていたでしょ?その時に感じたのよ、とてつもなく大きな徳の心を!」

 

「徳?」

 

「そう!あなたは人として真っ直ぐで正しい素晴らしい心を持っているわ!それも御仏になれるほどのね!これは仏の道を行く者として見逃せないわ!だからお願い!」

 

「仏の道か……まあ日本人は仏教は特に親しい宗教だし、あの三蔵法師の弟子になれるなら最高だよな。よし!じゃあ三蔵さん、あんたの弟子にならせてもらうぜ!」

 

「やったー!それじゃあ、私のことは『お師匠さん』って呼んでね!マスター!」

 

「えっ?三蔵さん、じゃなかった……お師匠さん!俺と契約してくれるのか!?」

 

「もちろん!あなたになら喜んで力を貸すわよ、遊馬!」

 

「サンキュー、お師匠さん!」

 

遊馬と三蔵は仏門の師弟関係を結ぶと同時に握手を交わしてサーヴァントの契約を交わした。

 

三蔵と契約してフェイトナンバーズが誕生し、早速みんなに紹介しようとした……その時だった。

 

ドカァアアアアアーン!!!

 

「な!何だぁ!?」

 

「敵襲か!?」

 

「小鳥さんは危ないのでここで待っていてください!」

 

「は、はい!」

 

「ええっ!?ここに来るまでに獅子王の配下の騎士とか見なかったけど!?」

 

大きな爆発音に騒然とする中、遊馬達は小鳥を残して再び村の外へと走り出した。

 

村の外では警備しているサーヴァントの攻撃に加えて桃色の閃光と爆撃が飛び交った。

 

そして、遊馬達の耳には二つの声が響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だからー!遊馬さんとマシュさんとアストラルさんとイリヤさんに大切な話があるから会わせてくださいと言ってるじゃないですかー!!」

 

「クリクリー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凛とした声に続いて可愛らしい声が響き、その声に聞き覚えがある遊馬達は耳を疑った。

 

その声を聞いた瞬間に遊馬は令呪を輝かせてサーヴァント達に命令を下した。

 

「令呪によって命ずる!村を守護するサーヴァント達よ、今すぐ攻撃を中断せよ!」

 

攻撃を中断する令呪にサーヴァント達は一斉に攻撃を止める。

 

そして、その戦いの中心にいた者たちに向かって遊馬は大声で呼んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ブラック・マジシャン・ガール!クリボー!」

 

「あっ!遊馬さん!マシュさん!アストラルさん!よかったぁ〜、やっと会えました!」

 

「クリ〜!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこにいたのは魔法少女の世界で出会ったデュエルモンスターズの伝説のモンスターたち、ブラック・マジシャン・ガールとクリボーだった。

 

それはブラック・マジシャン・ガールが予知した再会の未来が訪れた瞬間だった。

 

そして……遊馬とアストラルが『伝説の王』と出会う為の導く光となるのだった。

 

 

 




次回はいよいよ……伝説が登場します。
この時を、この時をずっと待っていました!
恐らくはこの小説を見ている皆さんもこの時を待っていたと思います。
長らくお待たせしましたが、いよいよ登場しますのでお楽しみに!

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