それを我らが遊馬君達が立ち向かいます!
遊戯王SEVENSで次回、ユウカちゃんが遂にあの野球ホープを使うかもしれないとのことで色々と楽しみです(笑)
遊馬君のエースがまさかのユウカちゃんに継承されるってなんか不思議な気分です。
第六特異点の十三世紀のエルサレムにレイシフトをした遊馬達。
目を開くとそこには照りつける太陽と広大な砂漠が広がっていた。
「見渡す限りの見事な砂漠風景だな……」
「人の気配もありませんね……」
遊馬とマシュは周りを見渡すがあるのは砂漠だけで人や人工物など見当たらなかった。
するとエミヤは投影魔術で人数分のマントを投影して全員に渡した。
「みんな、これを羽織っておくんだ。砂漠ならマントを使った方が何かと便利だ。それに、私たちの格好は目立つからな」
剣でないため投影魔術の質は悪いが、それでも砂漠で活動するには最適のウールのマントを遊馬達は着用する。
「おお、これこそ砂漠ならではの格好だよな!サンキュー、エミヤ!」
「ありがとうございます、エミヤ先輩!」
遊馬とマシュはエミヤに感謝をし、次にこの砂漠をどう移動するか議論する。
「とりあえず、かっとび遊馬号で行くか?」
「それでも良いがまずは現地の人間に話を聞いた方がいい」
「まずは地上で人を探すとなると、大変ですね」
砂漠という悪条件の中、そこで打開策を名乗り出たのがダ・ヴィンチちゃんだった。
「ふっふふふ……早速この天才の力を見せる時だね!」
ダ・ヴィンチちゃんはD・ゲイザーを取り出して装着するとカルデアに連絡する。
「もしもし、早速だけど私がこの前完成させたニューマシンの転送をお願いするよ!」
「ニューマシン?」
数分後、カルデアから転送されてきたのは大型バギーに希望皇ホープの双翼を模した機械の翼が左翼に取り付けられた車両だった。
「これぞ、万能の天才ダ・ヴィンチちゃんの頭脳と遊馬君の父君の九十九一馬が作り上げた皇の鍵の飛行船の技術を元に作り上げた万能車両!その名も、オーニソプター・ホープ号!!」
ダ・ヴィンチちゃんお手製の大型バギーの登場に遊馬のテンションが上がる。
「うぉおおお!?すげぇ!ダ・ヴィンチちゃん、車も作れるのかよ!?」
「オーニソプター……鳥型飛行機の設計図を生前に君は描いていたな。まさか、この車も?」
オーニソプターとは鳥などの動物を模した翼を羽ばたかせることで飛ぶ飛行機の事で現在でもまだ実用化には至ってないが、ダ・ヴィンチちゃんが生前に描いた設計図が実際に残っている。
アストラルの質問にダ・ヴィンチちゃんはグッドサインを見せながら嬉々として答える。
「その通り!ある程度の助走は必要だけど、飛行は可能だよ!砂漠でもガンガン走れるし、敵の攻撃を受けても大丈夫なように頑丈に作ったよ!さあ、これでこの砂漠を突っ切ろうじゃないか!」
ダ・ヴィンチちゃんはオーニソプター・ホープ号のキーを遊馬に投げ渡した。
「え?もしかして、俺が運転してもいいの!?」
「もちろんさ!バイクが運転できるんだから、次は車だよ!」
「よっしゃあ!ガンガン行くぜ!」
遊馬は意気揚々と運転席に乗り、キーを差し込んで回し、エンジンをかける。
マシュ達もすぐに乗って席に座り、全員が乗ったところでアストラルが向かうべき方角を指示する。
「遊馬、僅かだがあっちの方角に複数のサーヴァントの気配を感じる」
「分かった。じゃあ、まずはそっちから行くか。オーニソプター・ホープ号、発進!」
オーニソプター・ホープ号を発進し、まだ見ぬサーヴァントと特異点の情報を得るために砂漠を走り抜ける。
☆
遊馬達がオーニソプター・ホープ号で砂漠を進むが、砂漠を抜けた先にあったのは人が住むことができない焼け野原だった。
これこそが魔術王の仕業で、魔術王は人理定礎を乱すことで特異点を生み出した。
その結果、人類史は不安定になり、魔術王は過去に渡るまでの一切を燃やすという偉業を成した。
逆に言えば特異点にだけは人理焼却の波は来ないはずだった。
しかし、ここまで人理定礎が乱れると特異点であれ例外はない。
このままではこの大地はじき燃え尽きる……ダ・ヴィンチちゃんはそう説明する。
すると、遊馬達はこの燃え尽きた大地を歩く難民達に出会った。
遊馬達は難民達から話を聞くと有力な情報を得た。
難民達はここから東の方角にある『聖都』に向かっていた。
侵略者……十字軍がやってきて、土地が燃え、聖都が奪われてしまった。
しかしそこに十字軍を蹴散らした偉大な王……『獅子王』が聖都を開放したのだ。
「獅子王……アストラル、誰か分かるか?」
「歴史上で獅子王の異名で呼ばれた英霊は何人か存在する。その中で一番有名なイングランドの王、リチャード一世がいるが……彼は十字軍に参戦した王だ。これでは矛盾が起きてしまう……」
「リチャード一世じゃない可能性が大きいか……」
この特異点で重要な存在であるだろう獅子王が誰なのかまだ情報が足りないのでひとまず置いておくことにした。
獅子王は聖都には誰も拒まないと言い、月に一度、『聖抜の儀』という難民を受け入れる日があり、その日までに聖都に辿り着けば後は何の心配もいらないらしい。
一方で難民の中には聖都に滞在する騎士達を悪く思う者もおり、聖都を拒む者は山岳地帯に向かった。
そこには山の民の村があり、そこに滞在しているらしい。
山の民と聞いてエミヤはあることを思い出す。
「山の民……マスター、もしかしたら百貌のハサン達はそこにいるかもしれない。ハサンは元々山岳地帯を拠点にしていたらしいからな」
「そっか。じゃあ、百貌達を探すためにも後で山岳地帯に行ってみるか!」
百貌のハサンがいるかもしれない情報を得て、遊馬達は難民達の護衛をしながら聖都に向かう事にした。
そして……大地をひたすら進んだ先にあったのは巨大な白亜の城塞だった。
「で、でげぇな……これが聖都か?」
「外を拒絶するような巨大な白亜の壁……」
「これが聖都……これほど見事で美しい城塞は初めてだ……」
聖都の美しさと巨大さに驚きつつ遊馬達は城塞の中心、聖都の正門に向かった。
正門の前には千人近くの難民達がキャンプをして待機しており、聖抜の儀を待っていた。
遊馬達は難民達に紛れながら正門の前の近くまで進んだ。
すると、皇の鍵が一瞬黒い輝きを出すとアストラルは中にいるミストラルからの呼び出しだと気付き、アストラルは皇の鍵の中に入った。
「どうした、ミストラル」
ミストラルは悪い笑みを浮かべながらアストラルに忠告した。
「おいおい、アストラルよ。ここはやべぇ場所だぜ?ベクターの嘆きの迷宮とは比べ物にならねぇほどの負の感情が染み付いてるぜ?」
「何だと!?」
「お前も薄々気付いていたんじゃないか?聖都と呼ばれながらもここから悍ましい気を感じるのをよ……」
闇の存在であるミストラルが皇の鍵越しでも分かる聖都の異常な環境。
アストラルも薄々気付いていたが、聖都から放たれている神聖な強い力で上書きされるような感覚で気付くのが遅くなった。
「ミストラル……感謝する」
「ハッ、てめぇらに今死なれたら困るからな。まあ、せいぜい頑張れや」
ミストラルはその場から姿を消していなくなる。
アストラルは聖都の敵に見られないために皇の鍵の中から遊馬に向かって話す。
『遊馬、聞こえるか?』
「アストラル?」
『ミストラルからの警告だ。この聖都は嘆きの迷宮以上の負の感情が眠っていて非常に危険だ。この聖抜の儀はもしかしたら罠かもしれない』
「マジかよ!?」
『遊馬、今のうちにデッキに防御系のカードを入れてフィールドにセットしておくんだ。君のことだ、難民達を守るために戦うだろ?』
「ああ……もちろんだ。今の事をマシュ達にも伝える。アストラル、出るタイミングは任せる」
『任せろ、私達の全力を尽くすぞ!』
遊馬は今のアストラルの話をマシュ達に伝え、聖抜の儀が始まる前に防御系のカードをデッキに入れるだけ入れて、デュエルディスクのシャッフル機能でデッキのカードをシャッフルする。
デッキから引いた5枚の手札で早速最高のカードを引き寄せた遊馬はカードをセットしていつでも動けるように準備を整えた。
しばらく経つと聖都から鎧に身を包んだ騎士達が現れ、無言で難民達を守っているように見えたが、同時に逃がさないように囲んでいるようにも見えた。
静かな緊張が走る中……突如、空が明るくなって聖都を照らした。
空が明るくなった事に誰もが困惑する中、聖都から一人の騎士が現れた。
「落ち着きなさい。これは獅子王がもたらす奇跡──『常に太陽の祝福あれ』と。我が王が、私に与えたもうた
それは白銀の甲冑と深緑の外套を身に付けた金髪の騎士だった。
その騎士の登場にアルトリアは目を見開き、声を震わせて驚いた。
「ガウェイン卿……!?」
ガウェイン。
円卓の騎士の一人で完全なる理想の騎士と言われた男である。
「ガウェインだと!?」
ガウェインの登場に遊馬達は驚愕するが、難民達は遂に聖都に入れると喜び、盛り上がっていた。
ガウェインは難民達に向けて静かに言葉を送った。
「皆さん。自ら聖都に集まっていただいた事、感謝します。人間の時代は滅び、また、この小さな世界も滅びようとしています。主の審判は下りました。もはや地上のいかなる土地にも、人の住まう余地はありません。そう、この聖都キャメロットを除いて、どこにも。我等が聖都は完全、完璧なる純白の千年王国。この正門を抜けた先には理想の世界が待っています」
太陽の騎士の異名を持つガウェインから放たれる神々しいオーラに難民達は救いの神が訪れたような気分になっていた。
「ありがとうございます。ここに至るまで長く、辛い旅路があったのでしょう。我が王はあらゆる民を受け入れます。異民族であっても、異教徒であっても例外なく。── ただ、その前に。我が王から赦しが与えられれば、の話ですが」
ガウェインは正門の上空に目線を向けた。
そこに立っていたのは獅子の面を被った純白の騎士だった。
その騎士を見た瞬間、アルトリアの中で鼓動が高まって何かが蠢き、胸を押さえながら体がふらつく。
「アルトリア!?」
「だ、大丈夫です、シロウ……」
アルトリアはエミヤに支えられながら純白の騎士を見つめ、今まで感じたことのない畏怖を抱いていた。
純白の騎士は難民達に向かって静かに告げた。
「──最果てに導かれる者は限られている。人の根は腐り落ちるもの。故に、私は選びとる。決して汚れない魂、あらゆる悪にも乱れぬ魂。──生まれながらにして不変の、永劫無垢なる人間を」
その瞬間、難民達の中から数人が光り輝いていた。
「聖抜は為された。その三名のみを招き入れる。回収するがいい、ガウェイン卿」
これが聖抜の儀……選ばれた人間だけが聖都に入れると言うものだった。
純白の騎士は聖都の中心の城に向かって消えていく。
ガウェインが騎士達に命じて選ばれた三人を前に連れて行く。
そして、
「……御意。皆さん。まことに残念です。ですがこれも人の世を後に繋げるため。王は貴方がたの粛清を望まれました。では──これより……『聖罰』を始めます」
騎士達が剣を構え、城壁から無数の矢が雨のように放たれて難民達に降り注がれようとした。
難民達は何が起きたのか理解出来なかった。
聖都に行けば助かる、生きることができる。
それだけを信じてここまで命をかけて来た。
しかし、希望の象徴であるはずの騎士達に裏切られ、難民達に絶望が襲いかかった。
──その時、一人の希望が立ち上がる。
「かっとビングだ、俺!」
遊馬は人をかき分けて前に出ると同時にマントを脱ぎ捨ててセットしたカードを発動する。
「罠カード!『ホーリーライフバリアー』!手札を1枚捨てて、このターン相手から受ける全てのダメージを0にする!」
遊馬はあらゆるダメージを0にしてモンスターの戦闘破壊も防ぐ最強の防御系罠カード、ホーリーライフバリアーで遊馬を中心に全ての難民に聖なる守りの壁を広げた。
雨のように降り注がれた矢は聖なる守りの壁に触れた瞬間、塵となって全て消えた。
「馬鹿な……!?矢を全て消しただと……!?くっ、おのれ!」
ガウェインは矢が消えたことに驚きを隠せず、すぐさま宝具である剣を振るって遊馬に向かって灼熱の炎を放った。
「遊馬君!」
「マシュ、大丈夫だ」
マシュは遊馬を守るために前に出て盾を構えたが、ガウェインの放った炎すら聖なる守りの壁によって一瞬で掻き消されて遊馬達には届かない。
「マスター、魔力を多めに使うぞ!」
「おう、幾らでも持っていけ!」
エミヤは高くジャンプすると魔力を多めに使って自身の周りに無数の大量の刀剣を投影し、それを矢のように一斉に発射して難民達を囲っていた騎士達を全て射抜いて消滅させる。
「ナイス、エミヤ!」
「油断するな、あの騎士が普通の人間でないと言うことはいつかのワイバーンの時みたいに次々と召喚される可能性が高い」
騎士達が普通の人間でないことが判明し、エミヤは黒弓を投影していつでも矢を打てるように準備する。
「何者ですか、貴方たちは……!」
ガウェインは聖罰を邪魔し、騎士達を倒した遊馬達を睨みつけて静かな殺気を放つ。
すると、遊馬の横を一つの影が凄まじい勢いで通り抜けた。
その影はガウェインに向かって走り、それに対してガウェインは聖剣を振るって再び炎を繰り出す。
その影が羽織っていたマントが炎で焼けて消し炭となり、その者の姿が現れる。
「ガウェイン……貴様、何をしている……?」
「──ま、まさか、あなたは……!?」
ガウェインはその者の姿を見た瞬間に目を見開いて聖剣を手放しそうになるほどに驚いた。
常に凛とした空気を纏い、金髪の髪を後ろで結い上げ、その手には勝利を名に冠する光の聖剣を持ち、青と銀の甲冑を着た見目麗しい少女剣士。
「何をしているのだ、貴様ぁあああああーっ!!!」
円卓の騎士王……アルトリア・ペンドラゴンの怒号が轟いた。
アルトリアは同じ円卓の騎士であり、生前でとても信頼していたガウェインの悪虐非道な虐殺行為に今まで見た事ないほどの怒りを露わにしていた。
「アーサー王……!?何故、何故あなたがここに!?」
「質問をしているのは私だ、ガウェイン!!助けを求める難民達を一方的に虐殺するのが騎士の務めか!?それが忠義の騎士と呼ばれ、高潔な魂を持つ貴様がこんな事をするのが正しいと言うのか!?」
「……私は、私は王に忠義を尽くす為にここにいます。今は、それだけしか言えません!」
「……そうか。今の私は頭に血が上ってまともに貴様の話を聞くつもりはない。マスターのサーヴァントとして、難民達を助ける為にも貴様をまずは足止めする!!」
アルトリアは怒りを鎮めて力に変えながら約束された勝利の剣をガウェインに向ける。
「今まで、いろんな奴らと戦ってきたけど……」
遊馬は静かに歩きながら今までの特異点で戦ってきた数多くの敵のことを思い返していた。
しかし、聖罰と言ってこれほどまでに一方的な虐殺行為を今まで何度も行って来た事に遊馬の怒りはアルトリアと同じくらいに爆発していた。
「てめぇは……いいや、てめぇらは救いを求める人達を……力なき者達の心を踏み躙り、一方的に殺そうとした……てめぇらだけは……てめぇらだけは絶対に許せねえ!何が救いだ、何が聖抜だ!てめぇらのやってることはただの殺戮じゃねえか!」
ガウェイン達が何を目的に動いているのかは知らないが、人を平気で皆殺しにするやり方を真っ向から否定する。
「俺が、いいや……俺達が必ず、みんなを守る!!」
遊馬の激昂と決意に応えるように皇の鍵からアストラルが出てくると難民達を見渡した。
「……遊馬、みんなの心はバラバラでこのままではここから無事に逃すことはできない。ここは私に任せてもらえるか?」
「アストラル……頼む」
アストラルは遊馬の上に浮くと自身の力を高めて遊馬やサーヴァント達だけでなく難民達にも見えるようにした。
突然現れたアストラルの姿を見て難民達は驚愕しながらも美しく神々しい姿をするアストラルの言葉に耳を傾けた。
「我は精霊・アストラル。我はここにいる遊馬と共にこの地に訪れた。この聖都で行われている聖抜の真実を確かめるために……」
アストラルは如何にも人々に崇拝されるような神聖な存在であるような口調で話した。
「しかし、この聖都は楽園と聞いていたがそれは偽りだった。ここは、人を拉致し、騙し、そして……何の罪もない人の命を奪う地獄のような場所だ!」
アストラルは聖都を弾糾するとガウェインに向かって指差す。
「あそこにいるのはかつて『忠義の騎士』と言われた誇り高き騎士だ。しかし、今はもはや騎士ですらない外道に堕ちた者だ!我々はこのような悪行を絶対に許しはしない!だからこそ、今ここで君達に誓おう。我々は君達を守る!我々の全てをかけてでも!」
アストラルは難民達を守ると誓いを立てるが、ガウェイン達に裏切られたばかりで難民達はまだ信じることは出来ていない。
「遊馬、ヌメロン・コードの力で翼を広げてからホープを呼ぶんだ」
「え?ホープはともかくなんで翼?」
「良いから早く!」
「は、はいっ!?」
遊馬はアストラルの指示通りに自身に宿るヌメロン・コードの力の一部を使って背中から美しい純白の翼を広げて軽く羽ばたかせ、そこからデッキからカードをドローする。
「俺のターン、ドロー!魔法カード『ガガガ学園の緊急連絡網』!デッキから『ガガガマジシャン』を特殊召喚!更に『ガンバラナイト』を召喚!レベル4のガガガマジシャンとガンバラナイトでオーバーレイ!エクシーズ召喚!現れよ!『No.39 希望皇ホープ』
!!」
遊馬はガガガマジシャンとガンバラナイトを呼び出して希望皇ホープをエクシーズ召喚する。
アストラルの指示通りに遊馬が翼を顕現させ、希望皇ホープを呼び出した。
希望皇ホープはこの場の空気を読んでホープ剣を抜かずに翼を広げて静かに降り立った。
その結果……。
「聖なる光の翼……あの子は、もしかして天使様……!?」
「なんと、なんと神々しい光を放つ剣士……あれはまさか、神の化身なのか……!?」
「彼らこそ、私たちの本当の救世主様なのだ……!」
「「「ウォオオオオオーッ!!!」」」
難民達は新たな希望を見つけて心を一つにして沸き起こった。
「えっ!?ちょっ!?何事!?」
「遊馬、堂々としていろ。今の君は神が使した天使だからな」
「何ですと!?」
「なるほど。アストラルさんは遊馬君と希望皇ホープを彼らの希望の象徴にして、聖都が悪で私達が彼らを救う正義だと言う大義名分を作り上げたのですね」
「いいねいいね、これぞ勧善懲悪だね。向こうが見るからに悪そのものだから、こちらの善の光がより輝く訳だね」
マシュとダ・ヴィンチちゃんはアストラルの真意に気付き、マントを捨てながら遊馬の隣に立つ。
宗教の信仰心の強い難民達は翼を顕現させた遊馬を天使、神々しく輝く希望皇ホープを神の化身と盛大に勘違いしてしまった。
確かに遊馬と希望皇ホープは異次元の高位の存在である為、難民達が勘違いしても無理はないが。
「何はともあれ、これで難民達の心が一つになった。遊馬、カルデアにいるサーヴァント達の力を借りて難民達を聖都の外まで逃し、そこから方舟であるS・H・Ark Knightを乗せてこの地から脱出するぞ」
「分かった。そっちは任せる。俺はここでホープと敵を迎え撃つ。敵がガウェインだけとは限らないからな。マシュ……一緒にここで戦ってくれるか?」
「もちろんです。私は遊馬君のシールダーです。遊馬君と皆さんを必ず守り抜きます!」
遊馬とマシュはここでガウェイン達の足止め、アストラルは難民達の脱出を担当する。
遊馬はD・ゲイザーでカルデアに通信し、サーヴァント達に伝達する。
「マスター、九十九遊馬の名においてカルデアにいるサーヴァント達に命ずる!みんな、力を貸してくれ!ここにいる人達を……助けを求める人達の命を全て助けるぞ!!」
今ここに……遊馬達にとって初めての、勝つ為ではなく、みんなを守る為の戦いが始まる。
☆
聖都から遠く離れた砂漠の中……そこにはまだ遊馬達も知らない一つの王国が存在していた。
その王国の入り口で複数の人物と一体のモンスターが話をしていた。
「マナ、クリボー。彼らの迎えと案内、頼んだぞ」
「はい!お任せください、マスター!」
「クリクリ〜!」
少年は目の前にいる褐色の肌に焦げ茶色の髪を持つとても可愛らしい少女と毛むくじゃらのモンスター・クリボーに『ある者達』の迎えと案内を頼んだ。
「こいつに乗って向かってくれ」
少年は左腕に装着された金の大きな腕輪を構えると、まるで三枚の片翼が展開されるような形となり、その中の一枚にドラゴンのような姿が描かれる。
「現れろ!『カース・オブ・ドラゴン』!」
少年の前に現れたのは大きな骨の飛竜でそれはデュエルモンスターズのモンスターの一体だった。
「わぁ!ありがとうございます、マスター!行ってきまーす!」
「クリー!」
マナはカース・オブ・ドラゴンの背に跨ると早速空を飛んで行き、クリボーは宙に浮いたまま一緒について行く。
少年は飛んでいくマナ達を見送ると、後ろから大きな杖を持った魔術師の青年が近づく。
「マナはちゃんと彼らを見つけて、来てくれるでしょうか……」
「相変わらず、マハードはマナに対して心配性だな」
「当然です。マナはいつまで経ってもおっちょこちょいな所は変わりませんから」
青年・マハードの容赦ない断言に少年は苦笑を浮かべた。
「大丈夫だろう。彼らが選ばれし運命のデュエリストなら必ずマナと再会するはずだ。それまでに俺達は俺達の仕事をするだけだ」
「これから来る彼らと難民達の受け入れですね?」
「ああ。他のファラオ達の説得は引き続き行う。マハードは難民達の受け入れを出来る様に準備をしていてくれ」
「ハッ!承知しました、マスター」
少年とマハードは自分達の仕事をする為にすぐさま行動に移す。
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さあ、皆さんトラウマのシーンが来ましたが見事に遊馬君たちが全てひっくり返しました。
ここで一つ皆さんが疑問に思っているであろうことを答えようと思います。
Q.遊馬が聖抜に選ばれなかったのは何故?
A.遊馬は本来ならば聖抜に選ばれてもおかしくない美しい魂の持ち主ですが、欲望の力のカオスを受け入れてその力を使いこなしているので外されました。
ホープレイVとか七皇の剣とか色々使ってるので獅子王様に選ばれないですよね。