仕事とプライベートが忙しかったのもありますが、ベクターの書くのが地味に辛さと大変さがありました。
次は遺跡編なので少しはマシですが(笑)
遊馬と凌牙が無事に退院し、怪我も完治してハートランド学園に登校するようになった。
遊馬はいつものように走りながら登校し、真月と合流しながら学園に向かう。
すると、遊馬と真月の前にデュエルディスクを構えた数十人もの学園の生徒達が立ち塞がった。
そのデュエリストの額にはバリアンの紋章が浮かんでおり、バリアンは遊馬とアストラルを倒す為に人海戦術で攻めてきたのだ。
「デュエルは基本一対一なのに、こんなにたくさんのデュエリスト……どうやって倒せばいいのよ……!?」
遊馬とアストラルと真月の周りにいるデュエリストがあまりにも多く、どうやって倒せるか分からずレティシアは顔を真っ青にした。
しかし、遊馬とアストラルには頼れる仲間がいる。
「遊馬!」
「シャ、シャーク!?」
「ハッ、朝の運動にはちょうど良さそうだな」
遊馬の危機に駆けつけたのは凌牙だった。
「容赦は致しませんわよ!」
「コテンパンにしてやるんだから!」
更には璃緒と小鳥まで駆けつけた。
学園にいた璃緒が遊馬とアストラルがバリアンの襲撃を受けると危機を察知したのだ。
遊馬と凌牙と璃緒はD・ゲイザーとデュエルディスクをセットしてバリアンのデュエリスト達とデュエルをする。
ちなみに小鳥はデュエルの腕がまだ未熟なのでデュエルディスクではなくフライパンを持ってリアルファイトで戦う。
「小鳥嬢……フライパンは武器ではないのだが……」
カルデアの料理長のエミヤは小鳥がフライパンでリアルファイトをしていることに苦笑いを浮かべていた。
遊馬達はデュエリストを次々と倒していったが、デュエリストの数があまりにも多く、多勢に無勢と言わんばかりの状況だった。
すると避難していた真月がバリアンに洗脳されて遊馬を背後から羽交い締めにして動けなくし、遊馬がデュエルを出来なくした。
そんな遊馬達の前に一人の男が現れた。
それはスポーツデュエル大会を開催した大男だった。
「お前はあの時の!スポーツデュエル大会で……何でお前がここに!?」
「何でって、まだ分からねえかな?」
大男が見せたのはバリアンズ・フォースのカードだった。
「遊馬、この男……バリアン!」
「そう、俺の名はギラグ。バリアンの戦士だ!」
大男……ギラグ、この男こそが風魔から始まり、これまで多くのデュエリストを洗脳して遊馬達を襲わせたバリアンの刺客だったのだ。
ギラグは洗脳したデュエリスト達に命令を下し、モンスターを一気に召喚して一斉攻撃をさせる。
遊馬とアストラルの絶体絶命の危機……その時、一人のデュエリストが現れた。
「俺は速攻魔法『ライトニング・グリンチ』を発動!このカードは攻撃された時、ライフポイント3000を払って発動し、そのバトルを無効とする!」
「アリト!?」
「バカな、何故てめえが……」
現れたのはアリトで自らのライフポイントを犠牲にして攻撃を無効にした。
アリトは次の自分のターンで魔法カード『ブレイン・リブート』を発動し、相手フィールドの全てのモンスターを手札に戻してそのレベルかける500のダメージを与える効果を発動した。
今フィールドには洗脳されたデュエリスト達が召喚したモンスターが大量に存在しており、それらが全て手札に戻ると同時にライフポイントに大ダメージを与えて全滅させた。
アリトの登場とカウンターによるデュエリストの全滅にギラグは激昂した。
「て、てめえ!アリト!貴様、忘れたのか、我々の使命を!我らの世界を救う為、ナンバーズが必要だということを!」
「忘れてなどいない……俺はバリアンだ!」
何とアリトも実はバリアン世界の戦士だったのだ。
「だったら、何故俺の邪魔をする!?」
「言ったはずだ、俺は真っ向勝負で奴らを倒すと!」
「違う!どんな手を使っても勝たなきゃいけねえんだよ、九十九遊馬を舐めんじゃねえ!」
「そうだ、俺はバリアンである前に俺は……デュエリストなんだよ!!」
本来ならバリアン世界と敵対している遊馬とアストラルを必ず倒し、ナンバーズを手に入れなければならない。
しかし、アリトは敵だと知らずのうちに遊馬とデュエルをして心の底から気に入り、ライバルと認めた。
「だから俺は、デュエルでケリをつける。全て、デュエルで!ギラグ、お前のやってることはデュエルじゃねえ。消え失せろ!!」
アリトの熱い気迫に圧倒され、ギラグは撤退した。
ギラグが撤退し、洗脳されたデュエリスト達も解放され、遊馬とアリトは対峙する。
それは遊馬とアリトにとっては避けられない残酷な運命の戦いとなる。
「待てよ!俺たちが、バリアンのお前とデュエルするってことは……」
「そうだ、ナンバーズを……いや、互いの存在をかけた戦いとなる」
「アリト……」
「俺はお前らとデュエルがしたいだけだ。遊馬、そして、アストラル!」
アリトの熱き魂が込められた言葉に遊馬とアストラルは覚悟を決めた。
「遊馬、彼の決心は変わらない。いずれにせよ、戦わねばならない相手」
「わかったよ、やってやる」
「待ってたぜ、その言葉。バリアンズ・スフィア・フィールド、展開!」
ミザエルも使用した異世界空間を再現し、バリアンの力を最大限に解放するためのバリアンズ・スフィア・フィールドを展開し、遊馬とアリトのデュエルが始まった。
アリトは前回のデュエルでも召喚した『BK 拘束番兵リードブロー』をエクシーズ召喚した。
遊馬はバリアンとのデュエルなので初手からエースモンスターの希望皇ホープをエクシーズ召喚する。
アリトは前回のデュエルの攻撃を再現しようとしていた。
遊馬はアリトの想いに応え、希望皇ホープと共に挑んだ。
遊馬とアリトはそれぞれ希望皇ホープとリードブローに己の魂を込めてバトルをし、罠カードとカウンター罠を駆使してぶつかり合った。
序盤からボクシングの熱い殴り合いのような白熱のデュエルが行われ、デュエルの知識があまり無い人でも自然と心が熱くなるものだった。
「アリト!俺たちのデュエルはまだまだこれからだ!」
「あぁ……フフッ、行くぜ、遊馬!」
遊馬とアリトは戦わなければならない互いの存在をかけたデュエルだが、心の底から楽しんでいた。
しかし、その一方でバリアンズ・スフィア・フィールドの悪影響がアストラルに襲い、ダメージを少しずつ与えていた。
更にはアリトも先程のデュエルで遊馬を庇った時のダメージが残っていた。
しかし、それでもアリトは遊馬とのデュエルを楽しむ為、そして勝つ為に全力を尽くす。
「見せつけてやるぜ、本気の俺を!刻み込め、遊馬!」
アリトはフィールドにレベル4のモンスターを3体分を揃え、バリアンとしてのエースモンスターを呼び出す。
「現れろ、No.105!『BK 流星のセスタス』!!」
現れたのは青色と黄色の鎧に身を包んだ拳士、流星のセスタス。
ミザエルの銀河眼の時空竜と同じ、アリトの持つオーバーハンドレッド・ナンバーズだ。
セスタスの効果によって遊馬は大ダメージを受けてしまうが、ミザエルの時とは違って今度は意識を失わずに心を奮い立たせて立ち上がる。
アストラルは残りライフが500となり、このままでは負けてしまうと危惧するが遊馬はこの状況下でも胸が熱くなるほどにワクワクしていた。
遊馬とアリトの性格が似ている事と、モンスター同士でぶつかり合うデュエルを好む気質が互いの心を熱く燃やしていた。
その熱にアストラルも自然と感化されてきた。
「遊馬……私に君の燃える思いを消すことなど出来ないだろう。だったら私も行くしかないようだな」
「行くぜ、アストラル!アリト!今度は俺たちの全力モードを見せてやるぜ!」
「行くぞ、遊馬!」
「かっとビングだ、俺!俺と!」
「私で!」
「「オーバーレイ!」」
バリアンズ・スフィア・フィールドはスフィア・フィールドと同じく異世界と同質の空間を持つ。
「遠き二つの魂が交わる時、語り継がれし力が現れる。エクシーズ・チェンジ!」
「「ZEXAL!」」
即ち、遊馬とアストラルの真の力……二人が合体した奇跡の姿、ZEXALになることが出来る。
ZEXALは希望皇ホープを希望皇ホープレイに進化させ、セスタスとバトルをするが互いに同じ魔法カード『エクシーズ・スタンドアップ』を発動した。
これにより、決着はまだつかずにホープレイとセスタスが互いにフィールドに残る。
アリトはZEXALとホープレイのバトルに更に心を熱くし、全ての力を解き放つ。
「バリアルフォーゼ!見ろ、俺の真の姿。俺の真の想いを!」
アリトが光に包まれ、現れたのはその燃えるような心をそのまま肉体に表したかのような真紅の戦士。
アリトのバリアンとしての真の姿だった。
アリトはバリアンズ・フォースを発動し、セスタスをカオス化させる。
「俺はランク4の流星のセスタスでオーバーレイ・ネットワークを再構築。闇を飲み込む混沌を、光をもって貫くがよい!カオス・エクシーズ・チェンジ!現れろ、CNo.105!『BK 彗星のカエストス』!!」
現れたのは紫色の鎧に身を包み、背中に四つの腕を携えた最強の拳士、カエストス。
アリトの最強の切り札、ミザエルの超銀河眼の時空竜と並ぶオーバーハンドレッド・カオスナンバーズの一体である。
カエストスはモンスター破壊効果でホープレイを破壊しようとしたが、ZEXALはセットしておいた罠カードで破壊を阻止したが、カエストスの攻撃で残り少ないライフポイントが削られ、ピンチに追い込まれる。
アリトはカエストスの攻撃を防がれ、悔しがるどころか面白いと興奮していた。
しかし、ZEXAL……遊馬はとても楽しいデュエルだが、戦わなければならない敵同士と言う真実に迷い、悩み、苦しんだ。
「お前はバリアンで、俺たちは……」
「デュエルを楽しもうぜ、遊馬!俺たちのデュエル、最後の最後まで熱く楽しもうぜ!」
そんな遊馬の迷いを振り切るようにアリトは熱い言葉を投げかけた。
アリトの熱い想い……ZEXALは最後まで全力で応える最後の決意を固めた。
「彼の思いに応えよう、最後まで」
「アリト!俺もこのデュエル、とことん楽しんでやらぁ!」
「よっしゃ来い!」
もはや敵味方を越えたデュエリストの魂で繋がった熱い絆。
ZEXALは奇跡の力を起こしてホープレイと共にアリトとカエストスに立ち向かう。
「最強デュエリストのデュエルは全て必然。ドローカードさえも、デュエリストが創造する」
「「シャイニング・ドロー!!」」
ドローカードを創造する奇跡の力、シャイニング・ドローでZEXALは創造したカードを発動する。
「来たぜ!俺はこいつを召喚だ!」
「天翔ける空の王、汝の爪牙で万物を掌握せよ!」
「来い!『ZW -
現れたのは二つの頭を持つ真紅の荒鷲。
荒鷲激神爪はホープレイの装備カードとなり、ホープレイの背中に合体し、巨大で鋭利な爪牙を携えた双腕となる。
荒鷲激神爪で攻撃力が2000ポイントアップしたホープレイでカエストスとバトルを行う。
このままではカエストスは戦闘破壊されるが、アリトは墓地の『BK カウンターブロー』の効果でZEXALの墓地の罠カードを自分のカードとして発動させた。
発動したのは自分のモンスターの戦闘破壊を無効にしてバトルダメージを相手に受けさせる『バトル・ラッシュ』でこのままではZEXALが負ける。
しかし、荒鷲激神爪は1ターンに一度、バトル中に相手の罠カードの発動を無効にすることができ、バトル・ラッシュの効果を無効にした。
「それも読んでいたぜ、これがとどめだ!カウンター罠!『コークスクリュー・クロス』!」
アリトの最後のカウンターにして最後の罠カード。
その効果で相手がカード効果が発動された時、その効果を無効にし500ポイントのダメージを相手に与える。
つまり、荒鷲激神爪の効果が無効となり、ZEXALにダメージが与えることになり、アリトの勝利となる。
アリトが最後のカウンターに勝利を確信した……その時。
「まだだ!まだ終わっちゃいない!」
ZEXALの最後のカウンターが炸裂する。
「カウンター罠、『ラスト・チャンス』!発動!相手の墓地からカウンター罠1枚を発動する!」
ZEXALが選択したのはバトルで発動したカウンター罠を無効にして破壊する『カウンターズ・ハイ』。
これにより、アリトのコークスクリュー・クロスが無効化された。
「そして、このバトルで受けるダメージは2倍となる!」
「そ、そんな馬鹿な!?」
「行くぜ、かっとビングだ、俺!イーグルカウンターマグナム!!」
アリトのカウンターを全て打ち砕き、荒鷲激神爪は爪を突き立てるのではなく、ZEXALの想いに応えてか拳の形にしたカウンターの一撃がカエストスを粉砕する。
そして、ホープレイの最後の攻撃がアリトにトドメを刺す。
「ホープ剣・カオス・イーグル・スラッシュ!!!」
三刀流のホープ剣がアリトを切り裂き、アリトは吹き飛ばされてバリアルフォーゼの変身が解除される。
ZEXALとアリト……壮絶なるカウンター合戦を制したのはZEXALだ。
「良いわ……久々に胸が熱くなったわ!」
マルタは拳を強く握りしめてZEXALとアリトのデュエルに胸が熱くなり、この場にいる誰よりも興奮していた。
バリアンズ・スフィア・フィールドが解除され、遊馬はアリトに駆け寄った。
遊馬とアリトは楽しいデュエルだったと褒め合うが、アリトは敗者としての覚悟を示した。
「アストラル……持っていけ、俺の魂を」
アリトは自分の魂そのものであるオーバーハンドレッド・ナンバーズとオーバーハンドレッド・カオスナンバーズのセスタスとカエストスを差し出そうとし、アストラルは2枚のナンバーズを回収しようとしたが……それは出来なかった。
これにはアストラルとアリトも困惑していると、アリトの背後にバリアンの異空間の通路が作り出された。
「どうやらお迎えだ、遊馬……」
アリトは他のバリアンによって連れてかれてしまい、粒子となってその場から消えてしまった。
「アリト……あっ……あぁ!?」
突然アストラルが苦しみ出してその場で倒れてしまう。
「アストラル!?アストラル!どうしたんだよ、アストラル!」
アストラルはバリアンズ・スフィア・フィールドの状況下でのデュエルはダメージが大きいらしく、皇の鍵の中で休めざるをえない状況となってしまった。
それから数日後、アストラルは皇の鍵の中で休んでいた。
そんな中、ギラグが現れて遊馬に果たし状を出した。
するとギラグは何故か真月も連れてくるように指示した。
何故真月も連れて来なければならないのかと疑問に思うとギラグは怒りを露わにして答えた。
「奴はアリトを闇討ちしやがった!」
ギラグは真月が遊馬とのデュエルでダメージを受けていたアリトを襲ったと言うのだ。
真月の性格から考えてもとても信じられない話だが、遊馬は友として真月を信じ、ギラグとのデュエルを挑む。
最初は真月には告げずにギラグの果たし状に書かれた廃工場跡地でギラグと対峙した。
ギラグは真月が来なかったことにブチギレていたが、遊馬が心配だった真月は結局来てしまった。
ギラグは怒りの炎を燃やしながらバリアンズ・スフィア・フィールドを展開し、初っ端からバリアルフォーゼを発動し、ギラグのバリアンとしての灰色の体を持つ屈強な大男の姿を現した。
このデュエルは変則デュエルでバトルロイヤルルールで行われ、ギラグのターンから始まる。
「来い!『ファイヤー・ハンド』!貴様達はこの俺の全てをかけて倒す!骨を残さぬよう、焼き尽くしてやる!」
ギラグは大きな手の形をした『ハンド』モンスターを繰り出すが、ファイヤー・ハンドはギラグの決死の覚悟かハンドモンスターの特性か不明だが、ギラグの体に装着してまるで力を使う代償のようにダメージを与えていた。
真月は『シャイニング』モンスターという光属性のモンスターを出すが、デュエルは素人同然でミスを犯してしまう。
遊馬は真月を守るためにエースである希望皇ホープをエクシーズ召喚をする。
そして、一周してギラグのターンで『アイス・ハンド』を召喚するが、ギラグに合体してダメージを与える。
ギラグはそれを耐えながらファイヤー・ハンドとアイス・ハンドをオーバーレイしてエースモンスターを繰り出す。
「この世の全てを握りつぶせ!『No.106 巨岩掌ジャイアント・ハンド』!!」
現れたのは指先と掌に不気味な目が埋め込まれた巨大な岩の手のモンスター、ジャイアント・ハンド。
ギラグのオーバーハンドレッド・ナンバーズが召喚され、まずは真月から攻撃しようとするが遊馬は希望皇ホープのムーン・バリアで攻撃を無効にしようとした。
「ジャイアント・ハンドの効果発動!相手モンスターの効果が発動した時、オーバーレイ・ユニットを一つ使う事でその効果を無効にする!喰らえ!モンスター秘孔死爆無惚!!」
ジャイアント・ハンドがオーバーレイ・ユニットを掌の目の中に取り込むと人差し指からドリル状のエネルギーが作られ、希望皇ホープの胸の球体を突いて効果を無効にした。
真月のモンスターが破壊されてダメージを受け、真月のモンスター効果によって遊馬もダメージを受ける中……アストラルは真月を守りながら戦うのは危険だと言うが、真月を見捨てられない遊馬……。
その時、アストラルはアリト戦のダメージとバリアンズ・スフィア・フィールドの悪影響下のダメージが遂に限界を迎えて倒れてしまった。
これ以上戦うことが出来ないアストラルは希望皇ホープ達を遊馬に託し、皇の鍵の中に入った。
遊馬は小鳥に皇の鍵を託し、アストラルと真月を必ず守り、戦い抜くと誓う。
希望皇ホープは効果が無効になったままだがジャイアント・ハンドよりも希望皇ホープの方が攻撃力が上、次の遊馬のターンで攻撃すれば倒せると意気込んだがギラグは不敵な笑みを浮かべたままだった。
不穏な予感を抱きつつも攻撃するしかない遊馬は希望皇ホープでジャイアント・ハンドを攻撃しようとしたその時……突如、希望皇ホープの体全身に亀裂が入り、爆発して破壊されてしまった。
ジャイアント・ハンドの秘孔死爆無惚を受けたモンスターは効果を無効にされだけでなく攻撃した瞬間に破壊され、更にはその攻撃力分のダメージを受けてしまうのだ。
希望皇ホープを破壊され、遊馬は窮地に追いやられるが真月を守るためにも守りを固めていく。
ギラグはそんな遊馬と真月の互いを守ろうとする行為に苛立ち、遂に最後の切り札を繰り出す。
「俺は『RUM - バリアンズ・フォース』を発動!俺はランク4のジャイアント・ハンドでオーバーレイ!カオス・エクシーズ・チェンジ!出でよ、CNo.106!混沌なる世界を掴む力よ、その拳は大地を砕き、その指先は天空を貫く!『溶岩掌ジャイアント・ハンドレッド』!!」
現れたのは岩石の手から不気味な赤い光を放つ溶岩の腕、ギラグのオーバーハンドレッド・カオスナンバーズのジャイアント・ハンドレッド……これで遊馬と真月にトドメを刺そうとしていた。
「……彼からは強い意志と覚悟を感じ取れます。己の命を捨ててでも成し遂げたい強い想いを……」
天草はギラグから命をかけてでも戦うその姿に親近感を抱いた。
ジャイアント・ハンドレッドの猛攻で遊馬と真月を追い詰め、ギラグは更なる魔法と罠で遊馬と真月のライフポイントを削る手筈を整える。
「くっ、俺たちに残されたターンは一度きり……!」
「遊馬君、今度こそ僕に何があっても助けようとしないで。僕はどうなったって良いから」
「お前……」
真月は遊馬に繋ぐ為に決死の覚悟でギラグのライフポイントにダメージを与えるカードを破壊しようとするが、ギラグの罠カードでカウンターを受けてダメージを与える。
「終わりだ!地獄の炎に焼かれ、アリトに詫びるがいい!」
真月のライフポイントが尽きる……その時、遊馬はカウンター罠『デスパレード・ガード』で自分のライフポイントを犠牲にしてダメージを無効にし、真月を守った。
「お前とアストラルも、俺の仲間だ……だから俺は、絶対に誰も……誰も見捨てたりしてえんだよ!!!」
遊馬の仲間を絶対に守り抜く不屈の信念。
ギラグはその信念に圧倒されるが、遊馬を打ち倒すために罠カード『デス・ハンド』でモンスターがいない遊馬に効果ダメージを与えてトドメを刺そうとした。
遊馬には手が残されておらず、今度こそ敗北するかにみえたその時……真月が動いた。
「罠発動!『シャイニング・リボーン』!自分フィールドのモンスター2体をリリース!そして、遊馬の手札を全て墓地に送る!」
「お、俺の手札を!?」
「何!?」
「相手に手札がなければデス・ハンドの効果は意味をなさない」
「貴様……!?」
「真月、お前……」
「更にシャイニング・リボーンの効果で遊馬の墓地からモンスター・エクシーズを遊馬の場に召喚!蘇れ!No.39 希望皇ホープ!!
真月のカードでギラグのデス・ハンドの効果を回避させ、破壊された希望皇ホープを復活させて遊馬の危機を救った。
更にはまるで今までのドジっ子な性格が変わったかのようにしっかりとした様子となり、遊馬のことを呼び捨てにした。
「そして、シャイニング・リボーンの最後の効果。自分の手札1枚を相手のフィールドにセットする。遊馬!これを使え!」
真月が手札のカードを遊馬に投げ渡した。
渡されたカードを見て遊馬は驚愕した。
「えっ?これは……『RUM - リミテッド・バリアンズ・フォース』!?」
それはバリアンだけが持つモンスター・エクシーズをランクアップさせる魔法カード……『RUM』だった。
しかし、バリアンのデュエリストが今まで使って来たバリアンズ・フォースの力がまるで制限されたかのような名前と効果を持っていた。
遊馬は何故このカードを真月が持っているのか困惑し、バリアンのカードにギラグも驚いていると真月は真剣な眼差しで遊馬を見つめる。
「真月、何故お前が……」
「説明は後だ。このデュエルに勝って、アストラルを助けたいんだろう?私を信じてくれ、遊馬」
真月の言葉に遊馬は応え、このカードを使うことを決意した。
「かっとビングだ、俺!俺は『RUM - リミテッド・バリアンズ・フォース』を発動!」
「「このカードは自分フィールドのランク4以下のモンスター・エクシーズを1体選択し、そのモンスターよりランクが1つ上のカオスと名の付くモンスター・エクシーズに進化させる!」」
「俺は希望皇ホープでオーバーレイ・ネットワークを再構築!」
「「カオス・エクシーズ・チェンジ!!」」
希望皇ホープがリミテッド・バリアンズ・フォースの力を受け、初めてのランクアップを果たす。
「「出でよ!CNo.39!」」
「混沌を統べる、紅き覇王!」
「悠久の戒め、解き放ち!」
「赫焉となりて、闇を打ち払え!」
「「降臨せよ!『希望皇ホープレイV』!」」
現れたのは希望皇ホープレイとは異なる、バリアンのカオスの力で進化した新たな希望皇。
紅き殲滅の力をその身に秘めた覇王……希望皇ホープレイV。
「馬鹿な、ナンバーズをランクアップだと!?そんな力を人間が持っているはずが……」
ランクアップマジックはバリアン世界の切り札……それを人間である真月が持っているわけがないと信じられない表情を浮かべた。
そして、リミテッド・バリアンズ・フォースでランクアップした希望皇ホープレイVは凄まじい効果を有していた。
「行け、遊馬!」
「おう!ホープレイVの効果発動!1ターンに一度、カオス・オーバーレイ・ユニットを使って、フィールド上のモンスター1体を破壊する!行け、ホープレイV!ジャイアント・ハンドレッドを破壊しろ!ホープレイV、Vブレード・シュート!更に破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える!」
それはカエストスと同じモンスター破壊と効果ダメージを与える強力効果だった。
カオス・オーバーレイ・ユニットを取り込んだホープレイVは刃が歪曲となった二振りのホープ剣の柄同士を合体させて双刃刀にして投げ飛ばし、ジャイアント・ハンドレッドを破壊し、更に攻撃力分のダメージをギラグに与えた。
「まだだ、ホープレイV!ギラグにダイレクトアタックだ!ホープ剣・Vの字斬り!!」
モンスターの効果破壊のバーンダメージからの怒涛のダイレクトアタックでギラグのライフポイントが一気にゼロとなり、遊馬と真月の逆転勝ちとなった。
ギラグはデュエルの衝撃で吹き飛ばされて倒れ、真月を睨みつけながら問う。
「貴様は、貴様は、一体……!?」
「いずれわかるさ、いずれな……」
真月の意味深な言葉を受けながらギラグの背後に異世界の扉が開いてそのまま撤退し、真月は自分の正体を遊馬に明かした。
「私はバリアンズガーディアンだ」
「バリアンズ……ガーディアン?」
バリアンズガーディアン、それはバリアン世界の警察組織でその事を遊馬だけに明かして小鳥達には秘密にしてもらった。
その夜、遊馬の家の屋根の上で真月はこの世界に来た理由を明かした。
バリアンズガーディアンである真月の任務は悪のバリアンを探し出し排除することで、この世界では真月零として振舞わなければならず、遊馬に周りの人間には秘密にしてもらいたいと頼んだ。
そして、真月はバリアンズガーディアンとして遊馬を部下に任命するのだった。
遊馬もそれを了承し、共にバリアンと戦うと決意した。
「ふむ……あの真月というお方……最初から思いましたが、とても怪しいですね……」
映像なのでまだ分からないが、嘘を見抜ける清姫は直感だが真月の事を怪しいと蛇の目となってギロリと睨む。
アリトとギラグ、バリアン世界の刺客を退けた後、遊馬は真月と共にハートランド学園にあった二人のアジトに向かったがそこには何も痕跡は無かった。
真月は遊馬にアストラルに自分のことは秘密にするようにと口酸っぱく命令した。
アストラルの為だと言われ、遊馬は素直にその言葉に従った。
一方、皇の鍵の中で休んでいるアストラルはナンバーズが何かを伝えようとしている事を感知していた。
これまでも何度もアストラルに何かを伝えようとしてきたが、未だにそれが何なのかは分からずにいた。
そんなアストラルの前に現れたのはWDCの時から封印されているはずの黒いアストラルこと、No.96だった。
「良いことを教えてやろう。お前はナンバーズの真の記憶を取り戻していない」
No.96の言葉にアストラルにこれまで集めた50枚のナンバーズに問いかけたその時,アストラルの前に運命の扉が現れた。
『我は汝を試す者』
「私を、試す?」
『ナンバーズの記憶を手に入れるのだ。その時、全てが動き出す』
「ナンバーズの記憶……?」
すると、アストラルの前に運命の扉が生み出したと思われる屈強な体格をした謎の巨人が現れた。
「あの扉……とてもマハトマ的な何かを感じるわ……」
エレナは運命の扉や謎の巨人から映像でも分かる大きな力を感じていた。
『我は汝を試すもの。我とデュエルをするのだ』
影の巨人がアストラルに試練としてデュエルを挑んできた。
アストラルの様子がおかしい、何かあったのだと知った遊馬は授業を抜け出して皇の鍵に向けて必死に話しかけた。
すると、皇の鍵が輝き出して影の巨人の意思で遊馬を取り込んでアストラルの前に連れてきた。
遊馬は影の巨人やこの状況が何なのか分からなかったが、デュエルを挑まれているのでデュエリストとしてそれに応える。
遊馬と影の巨人とのデュエルが始まり、影の巨人は不気味な見た目をした『虚構王 アンフォームドボイド』をエクシーズ召喚し、更にはフィールド魔法『オーバーレイ・ワールド』を発動した。
遊馬とアストラルは影の巨人の出したアンフォームドボイドに今までにない不気味さを感じながら一気に倒す為に希望皇ホープではなく、高火力のモンスターを繰り出した。
モンスター破壊とバーンダメージを与える『No.61 ヴォルカザウルス』と相手のライフポイントを半減させる『No.6 先史遺産アトランタル』。
「うわぁ……ホープじゃない他の凶悪ナンバーズ2体とか、えげつないわね……」
レティシアは普段の遊馬のデュエルから想像できない初手の手札の運と展開力、そしてヴォルカザウルスとアトランタルに顔が引きつくほどの恐ろしさを感じた。
その遊馬とアストラルがデュエルでは殆ど出さない強力なナンバーズ2体で影の巨人を1ターンキルで倒そうとしたが、アンフォームドボイドとオーバーレイ・ワールドの効果で防がれてしまう。
それどころか一気に逆転されて遊馬とアストラルがピンチになってしまう。
「ふふふふふ……随分と面白いことになってるじゃねえか、遊馬……アストラル……」
そこにこの瞬間を待っていたかのようにNo.96が再び姿を現した。
No.96は影の巨人はアストラルがナンバーズを持つに相応しいデュエリストなのかどうか試す存在だと教えた。
そして、No.96の力が影の巨人を倒すことはできない。
それはNo.96がアストラルにはない悪意、憎悪、怒り、悪の心がないからと告げた。
遊馬はそんなものはアストラルには必要ないと突っぱねるが、影の巨人の攻撃でライフポイントが一気に減らされてピンチに陥る。
「もし負けちまったら、遊馬はどうなっちまうんだろうなぁ?」
アストラルの脳裏に過ったのは悪魔の囁きか、もしくは悪魔との契約のような言葉だった。
本来ならNo.96の申し出は断るしかないはずだが、アストラルにとって何よりも大切なものは遊馬だ。
遊馬が守れるならば悪魔と契約しても構わないとアストラルは決意を固めた。
「遊馬……分かった、No.96。君を解放する!」
「何!?おい、アストラル、お前!」
「No.96、力を貸してもらうぞ!」
アストラルは自分の中に封印していた『No.96 ブラック・ミスト』の封印を解き、No.96は歓喜の叫びを上げながら遊馬とアストラルに力を貸す。
「ククク……約束通り、お前達を勝たせてやる。さぁ、俺の分身を召喚しろ、遊馬!」
遊馬は嫌々な気持ちだったが、デュエルに勝つ事が先決で幸か不幸か遊馬のドローカードとフィールドと手札と墓地には既にブラック・ミストを使った勝利の方程式が出来上がっていた。
遊馬はブラック・ミストをエクシーズ召喚し、戦闘ではほぼ無敵の効果を持つ効果でアンフォームドボイドの攻撃力を奪ってブラック・ミスト自身の攻撃力を高めた。
「ふははははっ!これで奴をぶちのめせるぜ!分かったかい?アストラル、お前には俺の力が必要なのさ、悪の力がな……」
ブラック・ミストの攻撃でアンフォームドボイドを打ち砕き、影の巨人とのデュエルに勝利した。
そして、影の巨人とのデュエルが終わった瞬間に再び運命の扉が遊馬とアストラルの前に現れた。
「こ、これは……夢の中に出てきた……!」
『思い出せ、アストラル……お前の使命を……!』
運命の扉が光を放つと遊馬とアストラルは不思議な通路を通っていた。
それは運命の扉が見せているアストラルの真の記憶への道だった。
通路の先にアストラルの真の記憶があり、映し出された光景は広大な銀河のような不思議な世界だった。
「はっ、そうか……そうだった!思い出したよ、遊馬!」
そして、アストラルは運命の扉によってナンバーズに秘められた真の記憶を取り戻した。
遊馬とアストラルの前に青く輝く板のパズルが組み合わさったカードのような姿をしているものが浮かんでいた。
それはとても不思議で時折七色に輝きながらパズルがバラバラになるとすぐに元のカードに戻ったりしていた。
アストラルはこれが何なのか静かに語り出した。
「これは世界の全てを記したカード。このカードの中には、世界がどうやって出来たのか。そして、どこへ向かうのか……その過去と未来が全て記されている」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!一体何を……!?」
突然の事に遊馬の頭が混乱し始める。
「このカードはあらゆる世界の運命を全て決める力がある。君には信じられないかもしれないが、世界はたった一枚のカードから生まれた。全ての世界を創り上げた神のカード」
世界を創造した神のカード。
まるで神話の世界のような話に遊馬は困惑しながらアストラルはそのカードの名を告げる。
「それが『ヌメロン・コード』」
「ヌメロン・コード……?」
「私がまだ手に入れてないナンバーズにその在処が記されている。私の使命はバリアンより先にこのカードを手にいれること」
アストラルの使命は全てのナンバーズを回収するだけではなかった。
ナンバーズにはヌメロン・コードの在処が記されているものがあり、それを元にヌメロン・コードを手に入れること。
バリアンもまたヌメロン・コードを手に入れる為にナンバーズを回収しようとしており、その為にバリアン世界の敵対勢力である遊馬とアストラルを倒そうとしているのだ。
つまり、これまでのナンバーズ争奪戦は戦いの序章に過ぎなかったのだ。
この戦いの真の目的はナンバーズを手に入れた先にある、ヌメロン・コードと言う大いなる力を手に入れる壮大な争奪戦だったのだ。
これまでの戦いが使い方によっては新たな世界を創造することも、世界を自分の思い通りに出来る神のカード……ヌメロン・コードの争奪戦と言う、そのあまりの想像を絶するものに内容を断片的にしか知らなかった者たちは口をあんぐりと開けて絶句するほど驚愕していた。
万能の願望器とされる聖杯が霞んで見えるほどの恐ろし過ぎる力を秘め、魔術世界では魔術師が目指す『根源』とほぼ同一のものと言っても過言ではないヌメロン・コード。
カルデアにいるエルメロイII世を始めとする魔術師達の頭を悩ませるヌメロン・コード。
そして、ただ一人……ヌメロン・コードに大興奮の人物がいた。
「アハッ……アハハハハッ!世界を創造した神のカード……過去と現在と未来が記されている、私が導き出したアカシック・レコード以上の力を秘めたヌメロン・コード!そして、この戦いは強大な力を持つナンバーズ争奪戦ではなく、世界を創り変えることすら可能な神のカードであるヌメロン・コード争奪戦!!まさか異世界とはいえ、この現代よりも少し未来とも呼べる世界で神話の如き戦いが繰り広げられているなんて!!マハトマよ、実にマハトマだわ!それに映像とは言えヌメロン・コードを見れるなんて最高だわ!!しかもこれからユウマの魂と同化しているヌメロン・コードの一部を調べられるんだから!!まさかサーヴァントとなったこの身で異世界のアカシック・レコードを調べられるなんて……なんて私は幸運なのかしら!?ああもう、私はユウマに何を捧げれば良いの!?ただサーヴァントとして戦うだけでは物足りないわ!これはもう私の全てを捧げるぐらいじゃないと割りに合わないわ!!」
それはヌメロン・コードと同質のものと言っても過言ではない宇宙と数多の世界の全て……その過去と現在と未来が記されていると言われるアカシック・レコードの概念を世に出したエレナは発狂したように大喜びをしていた。
そのあまりの大喜びの様にみんながドン引きするレベルだった。
「ナ、ナイチンゲール嬢!エレナに鎮静剤を頼む!このまま興奮しきっていたら彼女の身が保たない!」
「くっ!?落ち着け、エレナ!」
大興奮してキャラ崩壊しまくっているエレナをエジソンとニコラは抑え込んだ。
「お任せください、エレナ!うるさいですよ、少しは落ち着きなさい!」
「ハウッ!?」
ナイチンゲールは鎮静剤の注射をエレナに打ち込み、投与してエレナを強制的に落ち着かせた。
「ヌメロン・コードか……この魔術世界の最終到達地点でもある『根源』と同質のモノ。全く、マスター達め、とんでもないものを見つける戦いをしていたのだな……」
一方、エルメロイII世は煙草をふかしながらヌメロン・コードについて頭の中で整理して考えていた。
やはりなんだかんだ言って魔術師としてもヌメロン・コードに興味があるのだ。
遊馬とアストラルが皇の鍵から外に出ると大量の黒い霧が溢れ出した。
「約束通り、解放させてもらう……覚えておけよ、アストラル。お前には必ず、悪を必要とする未来が待ってるってことを……ふははははっ!!」
それはNo.96はアストラルとの約束通り、解放してもらって不吉な言葉を残しながら外の世界へと飛び出していった。
ナンバーズ争奪戦からヌメロン・コード争奪戦という大きな戦いが始まろうとする中、遊馬達の日常に小さな恋物語が始まった。
それは遊馬の家で居候しているお掃除ロボットのオボミとカイトが発明したサポートロボットのオービタル7。
人工知能を搭載したロボット同士であるが、それが何とオービタル7がオボミに恋をしてしまった。
オボミへの恋心から遊馬達から虐待を受けていると勘違いをし、遊馬とデュエルを行った。
デュエルの果てにオービタル7は敗北してしまったが、遊馬を倒す為に衛星兵器を呼び出して宇宙空間からレーザービームを放ったのだ。
「馬鹿な!?衛星兵器はSFフィクションではなかったのか!?」
「そんな危ないものまで異世界にはあるの!?」
現代人として映画などのSFフィクションの知識を持つエミヤとイリヤはまさかの衛星兵器からのレーザービームがあるとは思わずに驚愕するが、更に驚愕の映像を目の当たりにする。
オボミが遊馬に近づき、オービタル7がとっさにオボミを押し出したが……その直後にレーザービームが遊馬とオービタル7に襲いかかった。
しかし……レーザービームの威力が大したことなかったのかどうかは不明だが、遊馬は頭がアフロになる程度で済み、オービタル7もボディが焦げ付く程度だった。
「「「えぇえええええーっ!??」」」
衛星兵器のレーザービームはとても危険な代物のはずが遊馬とオービタル7にはあまりダメージが無く、一体どうなっているんだ!?ともはや理解不能なレベルだった。
小鳥はオービタル7がオボミのことが好きなのだと察知し、まずはお友達からとアドバイスをしてオービタル7とオボミの交流が始まるのだった。
「人工知能搭載ロボット同士の恋か……面白い、やはりあの世界のロボット技術は素晴らしいね!」
ダ・ヴィンチちゃんは異世界のロボットの無限の可能性に心を踊らせた。
ハートランド学園では年に一度の学園祭が行われた。
遊馬のクラスでは生徒一人一人がモンスターのコスプレをして接客をするモンスターカフェを行った。
メニューは食べ物をモチーフにしたデュエルモンスターズのイラストを元にした特製メニューで、選んだカードを引いて注文するようになっている。
ちなみに小鳥はガガガガールでキャッシーはキャットガール、そして遊馬は太鼓魔人テンテンテンポのコスプレをしていた。
遊馬としてはフェイバリットモンスターのガガガマジシャンのコスプレをしたかったが、等々力にジャンケンで負けてその権利を取られてしまったのだ。
「おお〜!みんなどれも衣装のクオリティが凄い!中学生の学園祭のコスプレでここまで出来るなんて!」
可愛い服のコスプレに興味があるイリヤは遊馬達のモンスターのコスプレにとても中学生の学園祭で行うレベルではないと興味を持つ。
そこに何とアンナが学園祭があると聞きつけてフライングランチャーで教室の壁をぶっ壊しながらダイナミックに入店してきた。
「相変わらずとんでもないな、あの子は……」
町中で派手にランチャーをぶっ放したことがあるアンナが今度は教室の壁をぶっ壊して入り、キリツグは遠い目をしながら将来有望だなと思うのだった。
すると真月が『ダンディライオン』というタンポポの可愛らしいモンスターの格好をしながら急いで教室に入ると遊馬にデュエル大会があることを知らせた。
特別ゲストでプロデュエリストの羽原飛夫と海美夫妻が来ていた。
二人はタッグデュエルで無類の強さを発揮する名コンビなのだ。
しかしその大会はカップルデュエル大会で、出場するには男女のカップルでなければならない。
するとアンナは遊馬にカップルデュエル大会に一緒に出てくれと頼んだ。
アンナは海美とどうやら何か関係があるようでデュエルをすると意気込んだが、遊馬のクラスメイトで小鳥の友人のセイとサチがアンナはハートランド学園の生徒じゃないからデュエル大会には参加出来ないと指摘した。
カップルデュエル大会に出られなくて落ち込むアンナだったが、それからしばらくしてアンナは私服からハートランド学園の制服に着替えて遊馬の前に現れた。
実は更衣室に忍び込んで小鳥の制服を勝手に借りてきてしまったのだ。
「あれー?でも小鳥ちゃんのサイズじゃあ、アンナちゃんの胸のところが小さ──」
ゴォン!!!
「──グボァッ!?」
アンリマユは女性の体で特に指摘しては行けない事をうっかり口にしてしまい、目を光らせた小鳥が背後に忍び寄る。
次の瞬間にはフライパンによるフルスイングがアンリマユの後頭部にダイレクトアタックし、アンリマユは一撃で撃沈した。
「アンリマユさん、日本には口は災いの元って言う諺があるんですよ?あんまり女の子の体の事を言わない方がいいですよー?」
小鳥はドス黒いオーラを纏いながら背中に絶望皇ホープレスの幻影が現れ、手に持っているフライパンをクルクルと器用に回しながらアンリマユを見下ろす。
「はい、ごめんな、さい……ガクッ……」
アンリマユは謝罪しながらそのまま気絶して床に伏せてしまう。
乙女の逆鱗に触れて完全に自業自得なので誰も同情しなかったが、自称最弱のサーヴァントとは言え特に力も能力もない一般人である小鳥がフライパンでアンリマユを撃沈したのは地味に凄いので他のサーヴァント達は感心するのだった。
「遊馬、やはり小鳥には逆らわない方が身のためだぞ」
「ああ……そうだな……」
その光景にアストラルと遊馬は小鳥には逆らわないと心の中で強く誓った。
アンナはフライングランチャーを構えて遊馬を脅迫し、一緒にカップルデュエル大会に出場することになった。
アンナはフライングランチャーで飛び、無理矢理連れてこられた遊馬はアンナの腰にしがみ付きながらカップルデュエル大会の会場に乱入した。
アンナがどうしてもカップルデュエル大会に出場したかったのは海美がデュエルを辞めると勘違いしているらしく、海美も事情を話そうとしてもアンナは聞く耳を持っていない。
二人の間に行き違いがあり、遊馬はデュエルでぶつかり合えば誤解も解けると意気込み、それを聞いた飛夫は流石はWDCのチャンピオンだと褒めた。
こうして始まった遊馬とアンナ、飛夫と海美のタッグデュエル。
飛夫と海美は夫婦ということもあって息の合ったデュエルをしていく。
更には海美はアンナのデュエルの師匠らしく、アンナと同じ機械族の超弩級の大きさを誇るモンスターを駆使し、その余りの大きさにフィールドを圧倒していく。
一方の遊馬とアンナだが、これまで凌牙やカイトなどと共に戦ったタッグデュエルで相方にナイスアシストする事に定評のある遊馬は問題無く、むしろカード効果を熟知したデュエルタクティクスでプロの飛夫と海美を感心させるほどだった。
問題は相方のアンナだった。
アンナは烈車デッキのド派手な戦略とモンスターを繰り出すために断りもなく遊馬のモンスターを勝手に使ったりと自分勝手なデュエルをしていた。
それを見ていた海美は怒りが沸々と湧き上がり、ドローしたあるカードで全てが変わり出す。
「アンナ……何にも分かってない……それなら……私が分からせてあげるわ!!!」
海美の額にバリアンの紋章が浮かび上がり、飛夫が驚愕するほどにまで海美の性格が豹変した。
そして発動したのはバリアンズ・フォース……デュエリストを洗脳してバリアンの刺客として放っていたギラグは倒したはずなのに何故海美がバリアンズ・フォースを持っているのか遊馬とアストラルは分からなかった。
バリアンズ・フォースで羽原夫婦の愛の宮殿と称した戦艦のモンスターであるガンガリディアがカオス化して『CX 超巨大空中要塞 バビロン』となり、遊馬とアンナに一気に襲いかかる。
海美はまずアンナからトドメを刺そうとしたが、遊馬のアシストで自分のライフを犠牲にしながらアンナを守り切った。
アンナは自分勝手なデュエルをして見捨てられても仕方ないのに守ってくれた遊馬に心を打たれ、最後にドローしたカードを見て何かの決断をした。
続く飛夫のターンでアンナを守る為にフィールドにモンスターも伏せカードもない遊馬にダイレクトアタックが迫った……その時だった。
「速攻魔法!『献身的な愛』……発動!」
それは戦果の中、愛し合う二人が抱き合う姿が描かれたカードだった。
その効果は相手のバトルフェイズ中に発動出来るカードで、バトルを終了させ、相手に1枚カードをドローさせる。
タッグデュエルの場合、ドローする相手は遊馬となる。
しかし、その代償として自分のライフポイントはゼロとなってしまう。
これは普通の一対一のデュエルなら使用すれば確実に自分が敗北するカードだが、タッグデュエルでは自分を犠牲にしてパートナーを守り、逆転の一手を導くカードとなる。
アンナはライフポイントがゼロとなり、後の事を遊馬に全て任せた。
実はこのカード、羽原夫婦の結婚式に海美からのブーケトスに混ぜてアンナにプレゼントしたカードなのだ。
アンナは当初はこのカードは使えないと断言したが、海美はいつかそのカードの意味をきっと理解できる日が来ると信じていた。
そして……アンナは今までの自分の身勝手な行いを反省し、そのカードに込められた使い方と意味を理解して遊馬を守る為に『献身的な愛』を使ったのだ。
「献身的な愛ね……ふーん、タッグデュエルでそんなことも出来るのか……良いわね」
レティシアは男女のタッグデュエルにおけるパートナー同士の愛の育みを感じ取った。
遊馬がアンナの想いを受け取ってドローしたカード……それはリミテッド・バリアンズ・フォースだった。
そのカードを初めて見たアストラルは目を疑いながら遊馬に問う。
「遊馬、さっき君がドローしたカードはなんだ?何故君がバリアンのカードを持っている!?」
「えっ、ええと……それは……ギ、ギラグからぶんどったんだよ。あいつを倒した時に手に入れたんだ」
遊馬は真月に秘密にすることを固く約束されたことからアストラルに『嘘』を言ってしまった。
「……旦那様……」
遊馬が付いてしまった嘘に清姫は口元を開いた扇子で隠しながら静かに見つめる。
遊馬は希望皇ホープをエクシーズ召喚し、リミテッド・バリアンズ・フォースを手に取る。
アストラルはリミテッド・バリアンズ・フォースを使うことを危惧するが、デュエルに勝つ為にはバリアンのカードでも使うしか無いと遊馬は発動した。
リミテッド・バリアンズ・フォースで希望皇ホープは希望皇ホープレイVに進化し、初めてその姿を目にするアストラルが驚く中、遊馬は既に一度使用してその効果を理解しているのでここから一気に逆転の反撃に出る。
ホープレイVの効果で攻撃力が3800もあるバビロンを爆殺し、その効果ダメージで飛夫のライフポイントは一気にゼロとなる。
続く海美へのダイレクトアタックを行い、ライフポイントをゼロにした。
ホープレイVの強力過ぎる効果でまたしても危機的状況のデュエルで見事な勝利を飾った。
ダイレクトアタックで吹き飛ばされた海美に飛夫は慌てながら身を呈して海美を受け止めて守った。
海美の額からバリアンの紋章が消え、バリアンの力で性格が豹変したが……本人曰く頭が熱くなったみたいな感じだったらしい。
デュエルの後、アンナと海美はキチンと話し合うと海美はデュエルを辞めるのではなく、しばらくの間お休みするだけだった。
それは海美のお腹には小さな命……赤ちゃんが宿っていたのだ。
デュエルは時には先程のように吹き飛ばされて激しいダメージを体に受ける可能性があるので赤ちゃんが無事に産まれて落ち着くまでデュエルをお休みするのだ。
「確かにお腹に赤ちゃんがいる状況でデュエルであんな風にぶっ飛ばされたら大変だからね……」
ブーディカを始めとする子持ちサーヴァントの女性陣は女性にとってのデュエルの持つ危険な一面にうんうんと頷いていた。
海美はアンナが献身的な愛のカードに込められた本当の意味を理解してくれて心から喜び、遊馬と結ばれるように応援するのだった。
一方、皇の鍵の中にいるアストラルはリミテッド・バリアンズ・フォースで進化したホープレイVの力にバリアンとの戦いで大きな戦力になると感銘を受けていたが、それと同時に得体の知れない胸騒ぎを感じていた。
ある日の夜、遊馬は真月から緊急連絡を受けて急いで向かうとそこにはフードとマントを羽織ったバリアンと思われるデュエリストが真月を襲っていた。
「奴は我々が長年追ってきた最も凶悪なバリアン、ベクターだ。遊馬巡査、私は奴の後を追う。私のいない間、この世界の平和は頼んだぞ。このカードを君に預ける」
真月は5枚のバリアンの力を込めたカードを遊馬に渡した。
そのカードの事もアストラルには秘密にしてくれと遊馬に何度も何度も念を押して言い、遊馬も流石にそろそろ言ったほうがいいと思ったが結局はアストラルに秘密のままにしてしまった。
翌日、新しく手に入った5枚のバリアンのカードにテンションを上げていると、突然巨大なエネルギーの球体が現れて遊馬達に襲いかかってきた。
その中から現れたのは昨日の夜に出会ったベクターだった。
「ハハハハハ!我が名はベクター。バリアン最強の戦士だ。貴様らもろとも、この世界をぶっ潰しに来たぜ!」
ベクターは真月の次に遊馬とアストラルを狙いに強襲をかけてきた。
ベクターはバリアンズ・スフィア・フィールドを展開して自分自身と遊馬とアストラルを閉じ込めた。
「クククク……お前らとデュエルするのは久しぶりだな」
「何が久しぶりだ!俺はお前のことなんか知らねえ!」
「忘れちまったのかよ!お前たちと楽しいデュエルをしたじゃねえか!
ベクターは遊馬達がハートランドタワーの地下でDr.フェイカーとデュエルをした時、カイトの説得でデュエルをやめようとしたDr.フェイカーを無理矢理操ったバリアンだったのだ。
その恨みを晴らす為に遊馬達の前に現れたのだ。
「全てを徹底的に叩き潰してやる。
「ふざけるな!お前の好きにさせてたまるか!」
「さぁ、よからぬことを始めようじゃないか!」
遊馬とベクターのデュエルが始まり、ベクターは『アンブラル』と言う不気味な悪魔族モンスターを召喚してエクシーズ召喚したのは角の先端が偶然か必然か遊馬の持つ皇の鍵の形をした黄金のカブトムシ『No.66 覇鍵甲虫 マスター・キー・ビートル』だった。
ベクターはマスター・キー・ビートルと魔法・罠カードを組み合わせたコンボで遊馬のリミテッド・バリアンズ・フォースを封印し、尚且つ自分のフィールドの戦力を増やしたりするなどの巧みなタクティクスで遊馬が召喚した希望皇ホープを破壊して一気に遊馬を追い詰めた。
「遊馬君、諦めちゃダメだ!デッキを……デッキを信じて!」
「行くぜ、かっとビングだ!俺!来たぁ〜!!」
遊馬が真月の想いとデッキを信じて引いたカードは一発逆転の可能性を秘めたカードだった。
「俺は『Vサラマンダー』を召喚!」
現れたのは四つの首を持つ火を司る精霊のサラマンダー。
その効果は召喚時に墓地から希望皇ホープを復活させるもので、ただのバリアンのカードではなく希望皇ホープのサポートカードとしても優秀なものだった。
遊馬はリミテッド・バリアンズ・フォースで希望皇ホープを希望皇ホープレイVにランクアップさせるが、Vサラマンダーの更なる効果を発動する。
VサラマンダーはホープレイVの装備カードとなり、ホープレイVのモンスター破壊効果を1体ではなく相手フィールド全体にすることが出来る超絶効果だった。
「行っけー、ホープレイV!Vサラマンダー・インフェルノ!」
ホープレイVは背中に装着した四つの砲台から地獄の業火を放ち、ベクターのフィールドのモンスターを全て焼き尽くし、ベクターのライフポイントを一気にゼロにした。
「Vサラマンダー……なんと言うカードだ……」
「どうだ!俺とアストラルの力、思い知ったか!」
「フッフフフ……!」
ベクターは左手を前に突き出すと突然巨大なエネルギー体の手が現れて遊馬を捕まえようとした。
「遊馬君!」
「真月!?」
真月が遊馬の前に出ると巨大な手に捕まってしまう。
「遊馬君、良かれと思って……」
「フフフ……私が、貴様らに敗北などありえるものか。貴様の代わりにこいつを頂いていく」
そして、ベクターは真月を捕まえた代わりにマスター・キー・ビートルのカードをアストラルに投げ渡した。
「そいつが俺たちの再会へのキーとなる」
「遊馬君!」
「真月!」
真月はベクターと共に背後に現れた異世界の扉の中に消えてしまった。
真月が連れ去られ、心を乱す遊馬の前に凌牙とカイトが現れる。
「真月がバリアンに連れて行かれちまったんだ!奴らの居場所を探し出してくれよ!」
心を乱す遊馬にカイトは遊馬の頬を思いっきり叩いた。
「落ち着け、見苦しいぞ」
「カイト……」
遊馬を落ち着かせる為にカイトは心を鬼にして頬を叩いたのだ。
「カイトさん……その発言は少々ブーメランでは?」
「あんた、弟のハルトが大変だった時も同じ感じだったじゃない……」
ジャンヌとレティシアはWDCの時、ハルトが誘拐されて危険な目にあった時に精神状態が不安定だったカイトの時のことを思い出しながら突っ込んだ。
アストラルは皇の鍵の中でベクターから取り戻したマスター・キー・ビートルのカードを見つめていると、マスター・キー・ビートルがニュートラル体のクエッションマークの鍵の姿となると飛行船の中にある舵輪の中央にセットされた。
すると、マスター・キー・ビートルに込められた記憶にとある異世界への場所への道標が刻まれており、船内に立体的な地図が映し出された。
遊馬は凌牙とカイトと共にハートランドタワーの一室でベクターの情報を教えていた。
相変わらず凌牙とカイトの性格が合わないのか互いに言い争っていると突然警報音が鳴り、オービタルからタワーの上に強い重力波を感知したと知らせた。
遊馬達が急いでまだ修理中のタワーの頂上に向かうと空に暗雲が広がり、皇の鍵から眩い光が放たれると……空から巨大な飛行船が現れて頂上に衝突した。
そこにアストラルが現れ、マスター・キー・ビートルのカードが飛行船を起動させる鍵となり、人間界に出現出来るようになったと説明した。
更にある場所を示す座標も分かり、そこは……人間界とアストラル世界とも異なるもう一つの異世界・バリアン世界。
ベクターは飛行船を使ってその座標のある異世界に来いと言うメッセージだが、遊馬は真月を助ける為にも一人でも向かう覚悟を決めた。
凌牙とカイトもベクターによって人生を狂わされた事への決着をつける為に共に行くことにしたが、飛行船のエネルギーがチャージ完了となるのは明日の朝なので遊馬達は一旦解散した。
翌日の早朝、家族には何も告げずに家を出ようとするが……遊馬の様子がおかしいと気付いていた明里と春とオボミは既に起きていた。
オボミが投げ渡したのは遊馬の大好物である春が作ったデュエル飯。
明里と春とオボミは遊馬が戦いに行くと悟り、止めずに家族として見送った。
ハートランドタワーの頂上には既に凌牙とカイトとオービタルと璃緒が待っていた。
璃緒は昨夜自分もついて行くと言って、言い出したら聞かないと凌牙も既に諦めていた。
飛行船から内部に入るための光のリングを遊馬達に当てるとその瞬間に隠れていた小鳥達も入って真月を助ける為に一緒に行くと言い出した。
小鳥達を巻き込むわけにはいかなかったが、小鳥達も友である真月を助けたいと言う意思から仕方なく同乗を許可した。
飛行船の内部は最新式のコンピューターシステムで構築されており、オービタルが操作する。
そして、遊馬が船長として舵輪を握って舵を取って出航の宣言をし、異次元ゲートを開いて異次元空間に突入し、座標の示すバリアン世界へと向かう。
異世界へと続く道・異次元トンネルを進んでいくと、突如大量のモンスター達が現れて飛行船に攻撃してきた。
遊馬とアストラル、凌牙とカイト、璃緒と鉄男は表に出てそれぞれのエースモンスターである希望皇ホープ、銀河眼の光子竜、シャーク・ドレイク、シルフィーネ、ブリキの太公を召喚して応戦して行く。
しかし、モンスターの手応えが無いのに気付くと飛行船の進路上に巨大なブラックホールが実現し、遊馬達は飛行船ごと吸い込まれてしまった。
気絶した遊馬をアストラルが呼びかけて目覚めるとそこはバリアン世界ではなく、沢山の壊されたボロボロの船が漂う不気味な世界だった。
「ようこそ、サルガッソへ!待っていたよ、九十九遊馬。そして、アストラル!」
そこに現れたのはベクターだった。
先程のモンスターの大群はベクターの仕業でここは異世界の墓地、サルガッソだと告げた。
「くっ、ベクター!真月は、真月は何処だ!?」
「ふふふ……そんなに会いたいかい?なら、会わせてやろう。貴様のお友達にな!ふははははっ!」
ベクターが指パッチンをして出したのは倒れている真月だった。
「真月……?おい、真月!真月!!ベクター、てめぇ!真月に何をした!?」
「残念だが、お前のお友達は二度と目を覚ますことはない!」
「う、嘘だ……そんな、嘘だろ!?」
心臓が止まりかけるほどの衝撃を受ける遊馬にベクターは嘲笑って答えた。
その時、遊馬の脳裏には初めて出会った時からの真月との思い出が過った。
しかし、二度と真月は目を覚さない……一緒に過ごすことも出来ない。
目の前で大切な親友が奪われ、ベクターへの遊馬の怒りが爆発する。
「許さねえ……絶対に許さねえ!ベクター!お前を必ず、叩き潰す!!」
怒りと憎しみで感情が爆発した遊馬はベクターとデュエルをし、凌牙とカイトもそれぞれバリアンの戦士であり纏め役でもあるドルベと銀河眼使いのミザエルとデュエルを行う。
「ユウマ……これが、あなたが憎しみを抱いた時なのね……」
遊馬が初めて見せた憎しみに心を囚われた姿にブーディカは心配そうに見つめた。
遊馬は希望皇ホープ、凌牙はシャーク・ドレイク、カイトはギャラクシオンをエクシーズ召喚するが……その時、突然暗雲から落雷が降り注いで遊馬達のライフポイントに500のダメージが与えられた。
それはこの世界……サルガッソそのものがフィールド魔法として存在していたからだ。
フィールド魔法『異次元の古戦場 - サルガッソ』はエクシーズ召喚に成功する度にそのコントローラーに500ポイントのダメージを与えるものだった。
ベクターの卑劣な罠が遊馬とアストラルにダメージを与えていく。
一方のベクターもアンブラルモンスターを召喚して素材を揃え、今度は自身のエースモンスターを召喚する。
「出でよ!No.104!その眩き聖なる光で愚かな虫けらどもをひざまずかせよ!『仮面魔踏士シャイニング』!!」
現れたのは仮面を被った魔術師でベクターのオーバーハンドレッド・ナンバーズ。
ここでサルガッソの効果でベクターにダメージが与えられるが、速攻魔法『サルガッソの灯台』でサルガッソの効果ダメージを無効にするカードを使ったのだ。
「何よそれ、そんなの卑怯過ぎるじゃない!!」
自分のデッキのカードとしてちゃんと発動するならともかく、最初からサルガッソを発動していて、しかも自分だけサルガッソの効果を無効にするカードを使うことにレティシアは憤慨する。
凌牙とデュエルをするドルベもサルガッソの灯台でダメージをゼロにし、バリアン世界を救う為には仕方なしと苦渋の決断をしながらドルベもエースモンスターをエクシーズ召喚する。
「現れろ!『No.102 光天使グローリアス・ヘイロー』!」
現れたのは金色の鎧に身を包んだ天使でドルベのオーバーハンドレッド・ナンバーズ。
カイトはギャラクシオンの効果で銀河眼の光子竜を召喚し、それに応えるようにミザエルも銀河眼の時空竜をエクシーズ召喚したが、サルガッソの灯台をデッキに入れていなかった。
ミザエルはサルガッソの灯台を使うのは臆病者でカイトとは同じ条件で勝たなければ意味がないと言う、銀河眼使いとしての崇高な戦いを示す。
遊馬はベクターを倒す為にダメージを受ける覚悟でリミテッド・バリアンズ・フォースを使い、ホープレイVをエクシーズ召喚する。
ホープレイVの効果でシャイニングを破壊し、その攻撃力分のダメージを与えてベクターにダメージを与える。
すると、ダメージの爆発からの煙が消えるとベクターの姿がいなくなっていた。
ベクターは今のダメージで異空間に飛ばされたのかと思ったその時、死んだと思われていた真月が目を覚まして起き上がった。
「生きていたのか、真月!」
遊馬は真月が生きていたことに喜んだ。
「ククク……ククク……ククク……な〜んちゃって。おかしくて、腹痛いわぁ」
その時、この映像を見ている誰もが雷を受けたような衝撃と凍りついたような感覚を同時に受けた気分となった。
「お前、何言って……」
「面白いやつだな、お前。本当に俺のことを……ククク……なら見せてやろうか?もっと面白いものをよ!バリアルフォーゼ!!」
真月が不気味な笑顔を浮かべながら光を纏うとそこに現れたのは倒したはずのベクターだった。
「貴様、真月に化けてやがったのか!?それじゃ、おい、本物の真月はどこだ!?」
「本物?誰それ?俺、ベクター。鈍いなぁ、俺が真月だよ!」
「そんな馬鹿な!だってさっきまで、ベクターは俺とデュエルしてた!この前だって、ベクターは俺とデュエルして、真月を……」
「まだ分からないのかよ?この前デュエルしたのも、さっきまでデュエルしたのも俺が生み出した分身だよ!本物の俺はお前の親友、真月零に化けてたって訳さ!じゃんじゃじゃ〜ん!今明かされる衝撃の真実ぅ〜!」
真月……否、ベクターはマヌケな転校生を演じて遊馬に近づき、友情を深めて親友となり、分身を生み出してサルガッソまで誘き寄せたのだ。
ベクターは真月がバリアンだった事をみんなに黙っていたことも、貰ったバリアンのカードがデッキに入っている事をバラしてアストラルや小鳥達に不信感を募らせていく。
「なんて……なんて卑劣な……!はっ!?と言うことはアリトさんを闇討ちしたのは本当に真月さんって事……それに、同じ仲間のはずのギラグさんも……それじゃあ、遊馬君を陥れる為に、仲間まで騙して、犠牲にしたって事じゃないですか!!」
マシュはベクターの卑劣なやり方だけでなく、仲間のはずのアリトとギラグも平気で傷つけたやり方に怒りを露わにする。
「フォウ……!」
これにはフォウも怒りを覚え、これを見ている他の者たちも怒りが沸々と湧いてきている。
ベクターは遊馬の精神を追い込み、ここで罠カード『Vain - 裏切りの嘲笑』を発動し、デッキに眠るVサラマンダーを始めとする5枚のバリアンのカードが墓地に送られ、更にその数かける5枚のカードをデッキから墓地に送る効果で遊馬のデッキが一気に25枚も墓地に送られた。
これはデュエルモンスターズの敗北条件の一つであるデッキからカードをドローできなくなった時に敗北する『デッキ破壊』を狙ったカード。
つまり、ベクターが与えた『V』のバリアンのカードはこのデュエルで遊馬のデッキを破壊してデッキ破壊で敗北させる為のものだったのだ。
ベクターはこの状況はお前が招いた結果で、関係ない奴らを巻き込んだ……みんな生きては帰れないと遊馬に絶望を与えていく。
「このままではベクターのペースに巻き込まれるばかりだ、どうすれば……」
アストラルは冷静になって打開策を練ろうと考えたが、突如胸に大きな痛みが走る。
「これは……何だ?この言い知れぬ不安は……これはまるで……闇の欠片が生じたような……」
アストラルは初めて感じる謎の感情に不安が過ぎる。
ベクターは魔法カード『グローリアス・ナンバーズ』で破壊されたシャイニングを復活させ、シャイニングの効果で遊馬のデッキから更にカードを墓地に送り、敗北へのカウントダウンを進める。
一方、凌牙は肉を切らせて骨を絶つギリギリの戦法をしながらシャーク・ドレイクをシャーク・ドレイク・バイスに進化させて奮闘する。
カイトは銀河眼の光子竜を超銀河眼の光子龍に進化させると、ミザエルはこの時を待っていたかのように罠カードを駆使して銀河眼の時空竜をランクアップさせる。
「逆巻く銀河を貫いて、時の生ずる前より蘇れ!永遠を超える竜の星!顕現せよ、CNo.107!『超銀河眼の時空龍』!!」
現れたのは銀河眼の時空竜のランクアップした真の姿……三つ首の巨大な金色の龍・超銀河眼の時空龍。
ここに超銀河眼の光子龍と超銀河眼の時空龍の二体のネオギャラクシーアイズが揃うのだった。
遂に揃った二体のネオギャラクシーアイズにカイトとミザエルは自然と心が熱くなっていた。
すると突然、空間に大きな渦が発生して飛行船を呑み込もうとしていた。
サルガッソでは生贄を求めるのか時々ブラックホールが発動するらしく、中には小鳥達がいるのでこのままだと消滅する可能性がある。
すると、ベクターはナンバーズを全て寄越せばサルガッソの灯台の効果を増幅させてブラックホールを止めてやると言う最低最悪な取引を持ちかけた。
アストラルか小鳥達、どちらかの命を選ぶしかない。
しかし、遊馬に選べるわけがない。
遊馬はただ、大切な仲間を、みんなを助けたい……その想いに遊馬をいつも信じ続けている小鳥が応えた。
「何を迷ってるの、遊馬!アストラルと一緒にデュエルを続けて!」
「何言ってんだ!?」
「私たちは大丈夫だから!」
「小鳥……?」
「私たち、遊馬の足を引っ張る為にここへ来たんじゃない。あなたの使命はアストラルを守る事、そう誓ったはずよ。勝って!絶対にこのデュエルに勝って!人を信じることや、友達や絆を大切に思うことが間違ってないってことを、あなたが間違ってないって事を証明して!」
「小鳥……」
「かっとビングよ、遊馬!」
小鳥はみんなに飛行船を動かす為の指示を出し、そこにオービタルも駆けつけて共に飛行船を再起動させる。
小鳥は必死にみんなを励ましながら飛行船を操作し、遂にブラックホールから脱出した。
小鳥達の無事に安堵すると、凌牙とカイトは不器用ながらも遊馬を励ました。
「小鳥さん……流石です」
マシュは小鳥な遊馬を支える大きな存在だと改めて認識するのだった。
ようやく元気を取り戻した遊馬はアストラルに謝罪し、アストラルは遊馬を許してこのデュエルの勝利を目指す。
遊馬とアストラルは気持ちを一つにしてオーバーレイし、ZEXALへと合体する。
しかし、そこに遊馬とアストラルの絆を葬るためのベクターの最後の魔の手が迫る。
「アストラル!本当に遊馬と一つになれるのか?お前は今、心の底から遊馬を信じているのか?疑っているんじゃないのか?お前に嘘をついていた遊馬の事を?自分の心の奥までよーく覗いてみるんだ。よーくな……」
「アストラル?」
「遊馬、私は……」
「そうだ、お前の心に小さな黒いシミが出来てんだろ?そいつを素直に認めるんだな。今まで執拗に遊馬を責めてきたのはな、アストラル……その裏でお前の心に自分を裏切った相手への疑いの根を張らせ、怒りと言う芽を出させる為だったんだよ」
「な、何だと!?」
「貴様は純潔で疑う事を知らない。そして裏切られる事に免疫がない。だから、僅かな黒い小さなシミで十分。それだけで命取りだ。今、その小さなシミを無限の絶望の闇に広げてやるよ!」
ベクターの闇の言葉とバリアンの力によって生まれたホープレイVの力によってアストラルの中に芽生えた心の闇が増幅され、ZEXALの合体が解除されてしまった。
アストラルの左胸から大量の闇が溢れ出て、脳裏にNo.96から聞かされた悪を認めると言う言葉がアストラルを支配する。
そして、闇に呑み込まれたアストラルは闇を宿しながら遊馬に近づき、強制的に合体した。
闇の心が芽生えたアストラルと遊馬が合体して現れたのは……闇を操る絶望の使者……『DARK ZEXAL』。
希望を司るZEXALとは正反対の最低最悪の存在となってしまった。
「DARK ZEXAL……あれは魔術王と対峙した時の……!」
マシュはロンドンで初めて魔術王ソロモンと対峙した時、遊馬とアストラルが闇に囚われてDARK ZEXALになった時のことを思い出した。
DARK ZEXALは光では無く、カードを闇に染めるダーク・ドローでホープレイVを強化させる闇に染まったゼアルウェポン……『DZW 魔装鵺妖衣』を召喚した。
魔装鵺妖衣をホープレイVに装備してシャイニングに攻撃し、魔装鵺妖衣の効果で攻撃力を2倍にして攻撃を続行して行く。
しかし、ベクターの伏せていた罠カード『ハンドレッド・オーバー』戦闘破壊を無効にし、ホープレイVはもう一度攻撃出来るが、攻撃された時にシャイニングはホープレイVの100を加えた攻撃力となる。
これでDARK ZEXALは100の反射ダメージを受けるが、DARK ZEXALは力を求めるが故に暴走を起こしてホープレイVの攻撃力を高めて攻撃を続けてしまう。
これによりDARK ZEXALは戦闘を行う度に100のダメージを受けていき、このままでは敗北してしまう。
その頃……DARK ZEXALの中にいる遊馬の心が目覚めるとそこにはアストラルの心象風景を現した巨大なアストラル像の前にいた。
遊馬がアストラル像の中に入って登ると、そこにはアストラルがいた。
遊馬はアストラルに謝ろうとしたが、アストラルは遊馬を拒絶した。
初めて芽生えた悪の心……それがとても大きな力だと言う事にアストラルは深い快感を得ていた。
悪が自分を強くさせる、憎悪が全てを壊す力を与えてくれると。
「悪……憎悪……」
ブーディカはアストラルの言葉にローマに復讐しようとして悪の心と憎悪で戦っていた事を思い出し、胸が苦しくなった。
遊馬はアストラルの言葉に心が痛みながらもこのままではいけないと走り出す。
「やめろー!アストラル!!」
遊馬はアストラルに突撃しながら抱きつき、そのままアストラルの背後にあったステンドグラスを破壊してアストラル像から外に落下する。
それにより、力を求めて暴走していたDARK ZEXALの合体が解除され、ホープレイVの攻撃力が既に83200まで上昇してライフポイントも残り僅かになっていた。
凌牙とカイトの呼びかけで遊馬は慌ててバトルを終了させ、サルガッソの効果でダメージを受けて残りライフポイントは100になり、もう少し遅かったら遊馬とアストラルは敗北になっていた。
残りライフポイントは100でデッキのカードも1枚と言う絶望的な状況の遊馬だが、アストラルと小鳥達を守る為に最後まで諦めずに立ち上がった。
ベクターは最後まで遊馬の絶望した姿を見るためにバリアンズ・フォースを発動させる。
「現れろ、CNo.104!混沌より生まれしバリアンの力が光を覆う時、大いなる闇が舞い踊る!『仮面魔踏士アンブラル』!」
シャイニングをカオス化させ、不気味な仮面の魔術師を呼び出す。
「遊馬……私との絆が絶たれてもなお、君は一人戦うと言うのか……?」
アストラルは僅かな意識の中で一人で戦う遊馬の姿を見続ける。
アンブラルの効果で魔装鵺妖衣を破壊し、ホープレイVの攻撃力を元に戻し、アンブラルでホープレイVを攻撃するが遊馬は罠カード『エクシーズ・リベンジ・シャッフル』でダメージをゼロにし、ホープレイVをエクストラデッキに戻して希望皇ホープを墓地から復活させる。
サルガッソの効果で遊馬に効果ダメージが与えられるが、デッキ破壊で墓地に送られた『プリペントマト』の効果でダメージを無効にした。
エクシーズ・リベンジ・シャッフルの効果でアンブラルはもう一度攻撃出来るが、遊馬は墓地の『マジック・リサイクラー』のデッキからカードを一枚墓地に送り、墓地の一番下にある魔法カードをデッキに戻す効果を使う。
遊馬はデッキに残ったカードが何なのか覚えており、そのカードを墓地に送り、代わりにデッキに戻したのは『リミテッド・バリアンズ・フォース』。
そして、墓地に送ったカード『エクシーズ・エージェント』の効果で自身を除外して自分のモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットを使用する効果を発動させ、希望皇ホープのムーン・バリアでアンブラルの攻撃を無効にする。
ベクターはアンブラルの効果を2回使って遊馬のライフポイントを半分の半分の25にし、手札を2枚墓地に送った。
これでライフポイントは25で手札はゼロ、そしてデッキは残り1枚。
ここまで追い込まれても遊馬は諦めずに立ち上がり、ベクターはその姿を嘲笑う。
「ヘッ!相棒との絆を無残にやられても、まだやる気か?」
「ベクター、確かに俺とアストラルの絆はお前に葬られちまった。けど分かったんだよ、たとえ汚い手で墓地に送られたとしても、積み重ねた思いの力を信じている限り、希望と言う名のカードは俺を助けてくれるんだってな!」
「はっ……!?」
遊馬の希望を信じて戦い続けるその姿にアストラルの中で何かが変わり出す。
「ハッ!知った風な事言うじゃねえか。けどよ、てめえに最後に残った希望とやらはあのカードなんだぜ?お前と真月の友情の証のな!」
「確かに、そうだ……けど、今の俺はこのカードを引くしかねえ。希望を信じて引くしかねえんだ。俺のターン、ドロー!」
遊馬が祈るように願いを込めるように希望を信じて引いた最後のカード……それはやはり『RUM - リミテッド・バリアンズ・フォース』。
フィールドには希望皇ホープがいて、ホープレイVはエクストラデッキにいるのでエクシーズ召喚することは出来るが、サルガッソの効果があるので使用した瞬間に敗北してしまう。
今の遊馬にとっては希望では無く、絶望のカードとなってしまい、遂に力尽きて倒れてしまう。
「ゆ、遊馬……」
アストラルは必死に体を動かして遊馬に近付く。
「アストラル……」
「遊馬、私はもうこれまでのように君を信じることはできない。だが、どんなに窮地に陥っても希望を信じて戦う君を、私は信じたい……!」
アストラルは裏切られたと思って一度は遊馬の事を信じられなくなってしまった。
しかし、遊馬の諦めずに希望を信じて最後まで戦う姿を見て、アストラルは改めて遊馬を信じたい……新たな絆を結びたいと強く願った。
「遊馬……」
「アストラル……」
遊馬とアストラルはそれぞれ左手と右手を伸ばして重ね合う。
「俺と……」
「私で……」
「「かっとビングだ……!」」
遊馬とアストラルの重ねた手から奇跡と希望の光がサルガッソ全体に広がる。
「希望に輝く心と心、二つを結ぶ強い絆が奇跡を起こす……!」
璃緒は遊馬とアストラルが放つ光に大きな希望を感じた。
「貴様!」
まだ戦おうとしている二人にベクターに焦りの色が見え始める。
アストラルは遊馬の腕を自分の肩に回して共に立ち上がり、ベクターを見つめる。
「行くぞ、遊馬!」
「おう!」
「俺は俺自身と!」
「私で!」
「「オーバーレイ!!」
二人は再びそれぞれ赤と青の光を纏いながらサルガッソを駆け抜ける。
「俺達二人でオーバーレイ・ネットワークを構築!!」
そして、二つの光がぶつかると、巨大な赤い『X』の光が輝き、二人の肉体と魂が一つに融合する。
「真の絆で結ばれし二人の心が重なった時、語り継ぐべき奇跡が現れる!」
肉体と魂が融合すると共にその力を光の中でランクアップしていく。
「「エクシーズ・チェンジ!ZEXAL!!」」
遊馬とアストラルの絆が深まったことにより、ZEXALが新たな姿……ZEXAL IIへとランクアップした。
「くっ、新たなZEXALだと!?だが、今更進化しても、遅えんだよ!」
「「それはどうかな?」」
「何!?」
ZEXALの能力はドローカードを創造するシャイニング・ドロー。
しかし、進化したZEXAL IIは更なる奇跡を起こす。
「「重なった熱き想いが、世界を、希望の未来に再構築する!リ・コントラクト・ユニバース!!」」
掲げたリミテッド・バリアンズ・フォースのカードの絵柄が一瞬だけ崩壊した次の瞬間、新たなカードへとその姿を変えた。
「何ぃっ!?カードを書き換えただとぉ!??」
リミテッド・バリアンズ・フォースが新たなカードへと書き換えた事にベクターはかつて無いほどの驚愕した表情を浮かべた。
既にドローしたカードを新たなカードに書き換えるなどデュエル史上あり得ない出来事なのだ。
「奇跡の光が闇を払い、リミテッド・バリアンズ・フォースの真の姿を呼び覚ました!」
新たなカードを創造するシャイニング・ドローに続くZEXAL IIの新たな能力、手札にあるカードを書き換えるリ・コントラクト・ユニバース。
これこそが遊馬とアストラルの新たな絆が生み出した奇跡、ZEXAL IIの力。
「俺は『RUM - ヌメロン・フォース』を発動!」
ZEXAL IIがリミテッド・バリアンズ・フォースを書き換えて作り出したのはヌメロン・コードの姿が描かれたZEXAL IIだけのランクアップマジック。
「このカードは自分のモンスターエクシーズをランクアップさせ、カオスエクシーズを特殊召喚する!!」
「俺はランク4の希望皇ホープでオーバーレイ・ネットワークを再構築!」
希望皇ホープが光となって天に昇り、光の爆発が起きる。
「「カオス・エクシーズ・チェンジ!!現れろ、CNo.39!!」」
「未来に輝く勝利を掴む!」
「重なる思い、繋がる心が世界を変える!!」
希望皇ホープの周りにZEXAL IIの装甲に似た数多の鎧のパーツが現れ、それが次々と希望皇ホープに合体していき、最後に兜が装着され、希望皇ホープの真紅の瞳に新たな光が宿る。
「「『希望皇ホープレイ・ヴィクトリー』!!!」」
『ホォオオオオオープ!!!』
バリアンの力で進化した希望皇ホープレイVとは異なる遊馬とアストラル……ZEXAL IIの力で正統な進化を遂げた勝利の名を持つ希望皇……希望皇ホープレイ・ヴィクトリー。
「そっか……ホープレイ・ヴィクトリーはユウマとアストラルが新しく結んだ絆で生まれたんだ……」
ホープレイ・ヴィクトリーに特に強い想いを抱くブーディカはその誕生経緯に何度も頷きながら見惚れていく。
「ホープレイ・ヴィクトリーだと!?くっ、だが、サルガッソの効果で貴様はお終りだ!!」
ホープレイ・ヴィクトリーの召喚に驚くベクターはサルガッソの効果でZEXAL IIに効果ダメージを与えようとしたが、ヌメロン・フォースの効果はモンスターエクシーズのランクアップだけではない。
「ヌメロン・フォースが発動された時、フィールドで表側表示のカード全ての効果は無効となっている!」
「何ぃ!?」
ヌメロン・フォースで召喚したホープレイ・ヴィクトリー以外の表側表示のカード、つまりこれまで遊馬とアストラルを苦しめていたフィールド魔法のサルガッソとベクターのアンブラルは効果を無効化されている。
「行くぜ、ホープレイ・ヴィクトリーでアンブラルを攻撃!この瞬間、ホープレイ・ヴィクトリーのモンスター効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、このモンスターがバトルする時、相手モンスターの攻撃力を自分の攻撃力に加える!ヴィクトリー・チャージ!!」
ホープレイ・ヴィクトリーはオーバーレイ・ユニットを胸の水晶に取り込むと両腕の内側から第三と第四の腕が現れ、四つの腕で背中に装着されている四つのホープ剣を引き抜く。
ホープレイ・ヴィクトリーの攻撃力はアンブラルの攻撃力である3000ポイントアップし、自身の攻撃力の2800と加えて5800になる。
「5800……!??」
ベクターは希望皇ホープレイ・ヴィクトリーの攻撃力と自分の伏せた罠が全て打ち砕かれた事に恐怖で震える。
「これが俺たちの…」 「「絆の力!」」
「「行け、ホープレイ・ヴィクトリー!」」
「アンブラルを……ベクターをぶった斬れ!!!」
「「ホープ剣・ダブル・ヴィクトリー・スラッシュ!!!」」
希望皇ホープレイ・ヴィクトリーは四つの剣で重なる二つの『V』の斬撃を放ち、アンブラルをぶった斬る。
ぶった斬られて破壊されたアンブラルが大爆発を起こし、そこから引き起こされた大爆発にベクターはぶっ飛ばされる。
地面を派手に転がり、背中の羽根が壊れて体がボロボロになってしまい、ベクターの姿が無残な状態となってしまった。
ベクターの長い時間をかけた作戦はうまく行くっていたはずだった。
真月として遊馬と絆を結び、バリアンのカードを使わせ、サルガッソに誘き寄せ、真実を伝えて遊馬とアストラルの絆を葬った。
勝てるはずだった、確実に二人に勝利してナンバーズを全て手に入れられるはずだった。
しかし、最後まで諦めずに立ち上がる遊馬のかっとビング、遊馬とアストラルの結ばれた新たな絆……そこから生まれた新たな希望と奇跡に全てを覆されてしまった。
遊馬とアストラルの絆と希望と奇跡によるベクターの完全敗北である。
遊馬とアストラル……ZEXAL IIが勝利した事に凌牙とカイトは安堵するが、突如サルガッソが崩壊していく。
ZEXAL IIの光のエネルギーによってサルガッソのバランスが崩れてしまい、このままだと異次元の狭間に呑み込まれてしまう。
「貴様ら……これで勝ったと思うなよ……!良いか、アストラルの心を穢した苦しみは決して消せやしねえ。穢されたという思いは永久に残り、それがお前達の絆を蝕んでゆく……クッ、クハハハハハ!」
ベクターはボロボロで立ち上がりながら負け犬の遠吠えと言わんばかりの捨て台詞を残しながら異世界の扉を開いて撤退した。
飛行船で遊馬達を回収し、急いで崩壊するサルガッソから脱出して人間界に帰還する。
「アストラル、俺たち勝ったんだよな?」
「ああ。だが、私たちの戦いは始まったばかりだ」
バリアンとの死闘が終わったが、まだこれは戦いの始まりに過ぎない。
まだ見ぬ数多のナンバーズを集め、ヌメロン・コードを手にする戦いはこれから始まるのだ。
「分かってる。俺、もっともっと強くなる!やってやる!かっとビングだ、俺!」
遊馬は気持ちを新たにアストラルと仲間達を守る為に強くなると誓うのだった。
ベクターとの戦いの記憶を見終わり、遊馬は椅子から立ち上がるとアストラルに向けて頭を深く下げた。
「遊馬?」
「アストラル……本当に、本当にごめん。俺のせいでアストラルに辛い思いをさせて……危険な目に合わせて……」
真月に……ベクターに騙されたとはいえアストラルの心に闇を抱かせてしまい、更には消滅の危機に陥らせてしまった責任を改めて深く感じてしまった。
そんな遊馬の改めての謝罪にアストラルは優しい笑みを浮かべながら遊馬の肩にそっと手を乗せる。
「……遊馬、あの時の事は説明してもらったが、こうして映像として見てはっきりしたよ。君は何も悪くはない」
アストラルは遊馬には何の責任もないと断言した。
「アストラル……」
「君は私を守ろうといつも必死だった。そしてベクターを……真月の事を仲間として、友として大切にしていた。君は……言わば一種の洗脳状態に掛かっていたんだ」
「洗脳状態……?」
「真月は何度も何度も、念を押して私を守る為だと君に言い続けた。秘密を守る事、バリアンのカードを使う事で私を必ず守れると遊馬は洗脳されていたんだ」
現実世界でも言葉だけで相手を支配し、思想や行動を都合よく誘導させる洗脳が実際にあり、それが詐欺や大事件などに繋がるケースは多々ある。
アストラルを守る……そんな遊馬の強い想いをベクターに狙われたのだ。
「ベクターは中々の巧妙な手を使ったものだ。我々の絆を破壊する為に時間をかけてきたんだからな……」
「悪知恵だけは本当に凄えからな……どうやったらあそこまで出来るんだろうな……」
遊馬とアストラルに復讐する為とナンバーズを奪う為にベクターは長い時間をかけて真月として遊馬と絆を結び、バリアンのカードを使わせてサルガッソでの作戦を実行したのだ。
根気のいる巧妙な作戦を行ったベクターに遊馬とアストラルはため息を吐きながら思わず感心してしまった。
「ね、ねえ……遊馬、アストラル……あれ……」
「小鳥?えっ!?」
「これは……」
すると小鳥は何かに恐怖で怯えながら遊馬とアストラルを呼び、振り向いた先には……。
「許せません……遊馬君とアストラルさんをあそこまで卑怯な手で追い詰めるなんて……!」
「私も久々にカチンと来ました……!」
「普通にアリトやギラグに協力すれば遊馬とアストラルに勝てたはず。なのに、二人を踏み台にして自分の欲を満たす為に遊馬とアストラルの絆を弄んだ……絶対にぶちのめしてやるわ」
マシュとジャンヌとレティシアは拳を握りしめてベクターに怒りの感情を向ける。
「ふはははは!よくも、よくも我が夫の心を弄んだな……その罪をその命を持って償ってもらおうか!」
「うん……ちょっとお姉さんも怒っちゃったな。とりあえずまずは正座をさせて説教はしないとね?」
ネロとブーディカも同じ気持ちで遊馬の心を弄んだことに怒りが込み上げていた。
「うふふふふ……旦那様を騙し、心を操って嘘を吐かせた罪は重いですわ……真月さん、あなたを私の炎で灰すら残さず焼き尽くして上げましょう……!」
嘘を何よりも大嫌いな清姫は嘘をついて遊馬を騙し、更には遊馬に嘘を吐かせたベクターを燃やし尽くそうと蛇化しかけながらメラメラと体から炎が燃え上がる。
「そうですね……敵を倒すのではなく、心を弄んで嘲笑うなど言語道断です。これは誅伐すべきですね……」
頼光はバリアンとして敵を倒す為に近づいたならまだしも、遊馬とアストラルの心を弄んでその光景を見て嘲笑うと言う自分の欲を満たす為に動いていたベクターに嫌悪感が爆発し、童子切安綱の鯉口を切った。
「ハ、ハハハ……クハハハハハハハハハハ!何という凶悪で卑劣な男だ!マスターの心をあそこまで追い詰めるとはな!アヴェンジャーキラーのマスターでもあいつは許せないだろう、よし……俺もこの人理の戦いを終えたら人間界に向かうとしよう、そしてマスターと共にあいつに最高の復讐を遂げて見せよう!!」
世界最高の復讐者であるエドモンはベクターのあまりの下衆な行為に復讐者としての逆鱗に触れたのか人間界で遊馬と共に復讐を決行しようと決めてしまうのだった。
「お兄ちゃんとアストラルを傷つけたあの人を許さない許さない許さない……」
「ねえねえ、あのベクターって人を解体してもいいよね?心臓を抉り取ってもいいよね?」
桜は黒化して病んだ目をしてベクターに怨みの言葉を発し、ジャックはナイフを持って純真無垢な目でベクターの心臓を抉ろうと考えていた。
その他にもベクターに対して怒りを露わにするサーヴァントが多数いた。
「み、皆さん……?」
「遊馬、これは我々が戦いを終えて人間界に帰ったらベクターの……真月の命が危ないのでは……?」
アストラルの脳裏にはマシュ達サーヴァントがベクターに会った瞬間に全力で襲いかかり、武器や宝具などをぶっ放して抹殺される未来が安易に想像出来た。
遊馬も同じような未来が想像すると、顔を真っ青にして天井に向けて思いっきり叫んだ。
「し、真月ー!世界の果てでも異世界でもどこでも良いから早く逃げてくれー!!」
百戦錬磨、一騎当千のサーヴァントを相手では絶対にベクターでは敵わないので一刻も早く逃げるように警告した。
しかし、異世界でその声が届くはずもなく、遊馬はベクター……真月を襲うみんなをどうやって止めようかと必死に考えるのであった。
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マシュ「真月さん……いえ、ベクターは正攻法ではなく、時間と手間をかけて遊馬君とアストラルさんの絆を壊そうとしましたが、決して壊れない絆でなんとか勝てて良かったです……」
ジャンヌ「敵の罠とは言え親友だと信じていた方に裏切られるなんて……遊馬君の人生は本当に何度も辛い目にあっていたんですね。そして、アストラルさんも初めての裏切りにあそこまで乱すなんて……」
レティシア「よし、人間界に行ったら必ずベクターを殴り飛ばそう。まずは絶対に絶対に殴ろう。じゃないとこの気持ちが収まらないわ……!」
清姫「ふふふ……許しませんわ、ベクターさん。旦那様とアストラルさんをあそこまで追い詰めるなんて……さて、どうやって焼き殺しましょうかね……?」
ブーディカ「復讐を否定したユウマですら心をあんなにも乱していたから、そこまでユウマは相棒のアストラルや幼馴染のコトリとは違う……“親友”として、あのベクターに心を許していたんだね……」
ネロ「ふむ……さて、あのベクターとやらにユウマとアストラルを傷つけた裁きを下しに向かおうかの?」
武蔵「遊馬と真月の親友同士のやりとりをホクホクしながら見ていた少し前の自分を殴りたい気持ちです……」
桜「許さない許さない許さない……絶対に許さない……!」
ジャック「ねえ……おかあさん、あの人を解体してもいいよね?」
頼光「うふふふふ……あの罪人の首を切り落としても問題はありませんよね?」
アルトリア「人間関係で色々あった私としてはとても心苦しいです……ここからどうなるのか気になりますね……」
エミヤ「マスターとアストラルはよくあの絶望的な状況から勝てたものだ……」
エドモン「ふはははは!やるではないか、あの小僧は!さあ、マスターよ!復讐の時だ、今こそ復讐をするのだ!!」
イリヤ「いやー、あれはショックだよね……親友だと思ってた人が敵だったなんて……」
美遊「あれは辛すぎる……私だったら自決している……」
クロエ「でも最後のベクターがぶっ飛ばされたところはスカッとしたわね!」
次の話は遺跡編でストーリー上の都合で短めになると思います。