Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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いよいよ私の大好きなサーヴァントである彼女の登場です!

後半はまた色々ぶっ飛んだネタを組み込みましたのでお楽しみに!


ナンバーズ124 師弟の再会と未知の出会い

遊馬とアストラルに魔術王ソロモンと対峙し、DARK ZEXALになった時以来の危機に陥っている。

 

「ダメです……体のどこにも異常が見られません」

 

ナイチンゲールは遊馬の体を隅々まで検査をしたがどこも異常は無かった。

 

そしてもう一人、遊馬とアストラルの体を調べている者がいた。

 

「こっちもダメよ。二人の体を隅々まで調べたけど全く異常が無いわ」

 

それは……カルデア所長のオルガマリーだった。

 

魔術を使って二人の体を隅々まで調べたが、ナイチンゲールと同じ答えで異常が見られなかった。

 

そして、アメリカに来たのはオルガマリーだけではなかった。

 

「オルガマリー所長……遊馬は……遊馬とアストラルは、大丈夫ですよね……?」

 

「小鳥、落ち着いて。遊馬とアストラルはきっと目覚めるから」

 

涙を浮かべて心配そうに二人を見つめる小鳥と、後ろから小鳥の肩に手を置いて落ち着かせている武蔵だった。

 

何故アメリカにオルガマリーと小鳥と武蔵がいるのかと言うと、それは遊馬とアストラルの緊急事態に駆けつけたのだ。

 

遊馬とアストラルが亡霊と戦い、ラーマとシータを離別の呪いから解放したその直後に意識を失い、倒れてしまった。

 

急いでナイチンゲールが遊馬の体を調べたがどこも異常が無く、アストラルも調べたかったが精霊を検査できるわけもなく手の施しようが無かった。

 

精霊使いのジェロニモでもアストラルを調べることはできず、マシュ達には何もできなかった。

 

カルデアにいるオルガマリーは一刻も早く遊馬とアストラルを救う為にレイシフト適性を得た自分自身が向かうことを決めた。

 

遊馬とアストラルを心配した小鳥も志願し、オルガマリーは迷ったが遊馬とアストラルが目覚めた時の活力源として連れて行くことにした。

 

オルガマリーと小鳥の護衛として何故か妙にアメリカに行きたがっていた武蔵を選び、すぐにレイシフトを行なった。

 

アルカトラズ島にレイシフトを無事に行われ、マシュ達と合流したオルガマリーはすぐに遊馬とアストラルの検査を行う。

 

しかし、どれほど調べても異常は見当たらず、二人が目を覚ます気配がなかった。

 

「脈もしっかりしているし、呼吸もしている……では何故目覚めないのでしょうか……」

 

原因が分からずナイチンゲールは悔しそうに地面を叩いた。

 

「何が原因なのよ……マスターが倒れたままじゃ話にならないわよ!」

 

『こちらも色々調べているけど原因が特定できないね』

 

『普通に眠っているようにしか見えないね……』

 

カルデアにいるロマニもダ・ヴィンチちゃんも出来る限り調べているがこちらでも分からず仕舞いだ。

 

「頼む……目を、覚ましてくれ……」

 

「私達の為に……こんな事になって……」

 

ラーマとシータは自分達の所為で遊馬とアストラルが目を覚まさないと思い込んで深い責任感が出てしまい、必死に祈りを捧げることしかできなかった。

 

マシュ達も不安で見守る中、小鳥はある可能性を思いつく。

 

「あの……もしかしたら、疲れているのかもしれません」

 

「はぁ?何を言っているのよ、疲れて眠っているのなら私達の声に反応するぐらい──」

 

「体じゃなくて、魂が疲れていると思います」

 

「……魂?」

 

オルガマリーはその単語に反応して真剣に小鳥の話を聞く。

 

「えっと、私は魔術とか詳しくないから上手くは話せませんけど、遊馬とアストラルの側で沢山のデュエルを見てきて、二人が何度か意識を失うこともありました。肉体が傷ついて意識を失ったりもありましたけど、それ以外には肉体があまり傷ついてないのに意識を失うこともあったんです」

 

小鳥は人間界で起きた遊馬とアストラルが関わったデュエルで実際に意識を失ったケースを思い出しながら説明する。

 

「それで、知識が無いなりに考え付いたのがアストラル世界やバリアン世界が高エネルギーの世界で、ランクアップした魂が向かう世界の住人なら何かあった時に肉体の代わりに魂が疲れるのかなって思って……遊馬とアストラルは普通の戦いとは違う戦いをしていたから余計にそう思ったんです」

 

遊馬とアストラルと誰よりも常に一緒にいた小鳥だからこそ感じて考えたその答えにオルガマリーは納得したように頷いたが同時に険しい表情を浮かべた。

 

「魂なんて……そんなものをどうやって癒せば良いのよ。治癒魔術はあくまで肉体損傷にしか使えないし、アイリスフィールや玉藻の宝具もあくまで回復や魂と生命力の活性化ぐらいだし……」

 

魔術は万能ではなく、回復の宝具を持つアイリスフィールと玉藻を考えたがそれでは二人が目覚めるには足りないと判断し、オルガマリーは悩みながら頭を必死に巡らせて考える。

 

すると、ふと目に付いたのは二人のそばに置かれている聖杯だった。

 

「そうだわ!聖杯を使えば望みが──って、何よこのくすんだ色は!?」

 

金色に輝いているはずの聖杯はその美しい輝きが消えてくすんだ色になっていた。

 

「それが……ラーマさんとシータさんを助けた後に聖杯がそんな色に……」

 

マシュ達も遊馬とアストラルが倒れた後から気づいた事でどうやら離別の呪いを解くのにその力を使い過ぎてしまったようだ。

 

よく見ると少しずつだが周囲の空間から魔力を吸収しているので、しばらくすればまた元の輝きを取り戻すと推測出来るがこれでは使い物にならない。

 

遊馬とアストラルが自然に目を覚ますの待つしかないと……万事休すかと思われたその時。

 

「──っ!?みんな、外にサーヴァントの気配よ!」

 

レティシアは刑務所の外にサーヴァントの気配を察知し、オルガマリーは立ち上がって指令を出す。

 

「遊馬とアストラルの代わりに私がマスター代行をします!皆さん、行きましょう!」

 

オルガマリーはサーヴァントのマスター代行として宣言し、マシュ達は頷いて共に向かう。

 

外に出るとアルカトラズ刑務所に向かって歩く一人の女性がいた。

 

黒い戦装束を身に纏い、二振りの真紅の魔槍を携えていた。

 

「あの槍は……」

 

その槍の形には見覚えがあり、マシュはその槍と同じ槍を持つ一人のサーヴァントをチラッと見る。

 

そして、その女性の姿に誰よりも驚いたのはそのサーヴァントで、震えながら声を荒げていた。

 

「嘘だろ……何で、何であんたがここに居るんだ!??」

 

「おぉ……もしやと思ったが、お前は本物だな。久しいな、我が弟子。セタンタよ……」

 

女性はクー・フーリンを見ると嬉しそうに笑みを浮かべていた。

 

セタンタとはクー・フーリンの幼名。

 

「では、他の者もいることだし、自己紹介だ。我が名はスカサハ。そこにいるセタンタの師だ」

 

スカサハ。

 

ケルト・アルスターの伝説の戦士。

 

そして、異境・魔境『影の国』の女王にして門番。

 

「いやいやいや、絶対にあり得ねえ!あんたがサーヴァントになってるのがあり得ねえ!だってあんたは不老不死のはずだろ!?」

 

クー・フーリンの言葉の通り、スカサハは人の身で人と神と亡霊を斬り過ぎた事で、神の領域に近づいてしまい、不老不死となってしまった。

 

本来は死ぬことができないために英霊の座にもいない、サーヴァントとして召喚できないはずの存在。

 

「確かに私は影の国で長いこと門番をしていた。だが、人類史が全て燃え尽き、私の国も燃え尽きた。その結果、こうして『死んだ者』として召喚された。まっとうな歴史であれば私は生者と話すことすら出来ん」

 

「マジかよ……」

 

「人理焼却が影の国をも燃やし尽くしていたなんて……」

 

人理焼却はこの世界のみならず異界である影の国すらも燃やし尽くした。

 

その結果、不老不死のスカサハがサーヴァントとして召喚されると言う、ある意味奇跡に近い現象が起きた。

 

「その点で言えば今回の事変はありがたいとも言えるが……いや、ありがたい筈も無し。ただでさえ阿呆な弟子の輪をかけて阿呆な無様をみるはめになったからのぅ」

 

「叔父貴が言っていた俺の偽物、狂王だな」

 

「フェルグスと既に会っていたか。師として首輪をかけて連れ戻しに来たのだが、どうもアレにも何か思うところがある様子。この時代ごと一刺絶断しようとも考えたが、その時不思議な力を感じた」

 

「不思議な力……ああ、それは多分うちのマスターだな」

 

「マスター……そこの娘か?」

 

スカサハはこの中で唯一の人間であるオルガマリーを見るが、オルガマリーは首を左右に振って否定する。

 

「私じゃないわ。ここにいるサーヴァントのマスターはこの建物の奥にいるわ……そうだわ、あなたなら……!」

 

オルガマリーは何かを思いつくとスカサハに近づく。

 

「どうした?娘よ」

 

スカサハから無自覚に放たれる強者のオーラにオルガマリーは圧倒されながらも堂々と話しかける。

 

「私はオルガマリー・アニムスフィア。あなたの力を借りたいの!あなた、弟子のクー・フーリンにルーン魔術を教えたのよね?」

 

「そうだが、それが?」

 

「あなたの力で目覚めさせて欲しい二人がいるの。私たちにとって、いいえ……この世界の最後の希望とも言える大切な存在なのよ。だから、お願い!!」

 

ケルト神話の伝承が正しいならスカサハは強大な力を持つ戦士。

 

カルデアにいるサーヴァントの中でも群を抜くであろうその能力なら遊馬とアストラルを目覚めさせることができる可能性がある。

 

「良いだろう、その者達の元へ案内しろ」

 

「ええ!ありがとう!」

 

スカサハはオルガマリーの頼みを了承し、マシュ達と共に刑務所の中へと入る。

 

遊馬とアストラルが眠っているところへ向かうと、スカサハは二人の姿に驚いた。

 

「人間の子供と精霊だと……?」

 

まさか目覚めさせる相手が人間の子供と精霊だとは思いも寄らずに目を丸くした。

 

そして、遊馬の手を握って祈るようにしている小鳥にスカサハは声をかける。

 

「娘よ、お主はその子供の恋人か?」

 

「えっ!?いや、その……私は遊馬の幼馴染で……」

 

突然現れた見知らぬ美女に突然遊馬の恋人と言われて顔を真っ赤にして慌てて手を離す。

 

マシュ達はギロリとスカサハを睨みつけたかったが、グッと堪えて我慢した。

 

「ほぅ、幼馴染か」

 

スカサハはマシュ達の視線に気付き、小鳥の反応を微笑ましく思いながら腰を下ろし、遊馬とアストラルに向けて手をかざす。

 

「……随分と魂が弱っているな。後は任せろ、二人を目覚めさせる」

 

「は、はい!」

 

小鳥はその場から下がり、スカサハは指先を光らせて文字を描く。

 

それは普通の文字ではなく、古代から伝わる意味が込められた文字の「ルーン文字」で、空中に描いたルーンを遊馬とアストラルの中に宿す。

 

ルーン魔術は呪文の詠唱ではなくルーン文字を刻むことで魔術的神秘を発現させる。

 

「癒しのルーン」

 

遊馬とアストラルの体に純白の光を纏わせる。

 

スカサハが二人に施したのは疲弊した肉体と魂を癒す事ができる癒しのルーン。

 

スカサハの使うルーン魔術は原初のルーン文字で、それは神代の領域でありとても強力なものだ。

 

それにより極限まで魂が疲弊した遊馬とアストラルが癒され、肉体と魂が最高潮にまで回復する。

 

「……んぁ?」

 

「……むっ?」

 

遊馬とアストラルは同時に目を覚まして起き上がる。

 

「あれ?俺、どうしたんだっけ?」

 

「確か亡霊を倒して……」

 

「遊馬!アストラル!」

 

「えっ?こ、小鳥!?何でここに!??」

 

「遊馬とアストラルが心配だったからオルガマリー所長と武蔵さんと一緒に来たのよ!」

 

「ええっ!??」

 

遊馬とアストラルは小鳥から何故ここにいるのか、何があったのかを詳しく聞いた。

 

「それでね、このお姉さんが二人を目覚めさせてくれたのよ」

 

「お姉さん?」

 

小鳥に紹介されて振り向くとそこには見たことないサーヴァントであるスカサハがいた。

 

「えっと……お姉さん、どちら様でしょうか?」

 

遊馬にお姉さんと呼ばれ、スカサハは少し嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「ほぅ、この私をお姉さんと呼ぶか?」

 

「え?だって、うちの姉ちゃんぐらいに若いし……美人さんだよな?」

 

遊馬はアストラルと小鳥に同意を求め、二人は頷く。

 

「まあ、確かに……」

 

「うん!とっても綺麗よね!スタイルも良いし、髪も長くて綺麗だし!」

 

「そうか……嬉しいことを言ってくれるな、子供達よ」

 

遊馬達に若くて美人と褒められスカサハは上機嫌となるが……。

 

「子供にそんな事を褒められて嬉しがるなよ、師匠。あんた、歳を考えろよ」

 

「黙れ、馬鹿弟子」

 

「グボァッ!??」

 

クー・フーリンに軽く指摘された瞬間にスカサハの目が鋭くなり、軽く振るった槍の一撃でクー・フーリンは対抗する間も無くぶっ飛ばされて壁に激突する。

 

「あ、兄貴ぃいいいいいっ!??」

 

「あのクー・フーリンが瞬殺された……!?それにその槍はクー・フーリンが持つゲイ・ボルグに似ている……ま、まさか、あなたはクー・フーリンの師匠で影の国の女王、スカサハ……!??」

 

突然クー・フーリンがぶっ飛ばされて遊馬は思わず叫び、アストラルはその強さと槍からスカサハの正体がすぐに分かった。

 

「私のことを知っているか、精霊よ」

 

「だが、あなたは神殺しの影響で不老不死になっているはず……サーヴァントにならないはずだ!」

 

「それには特別な理由があってな……」

 

スカサハは先程マシュ達にも説明した事情を説明し、遊馬とアストラルは取り敢えず納得した。

 

一方、先程ぶっ飛ばされたクー・フーリンは崩れた壁が瓦礫となってそのまま生き埋めになっていた。

 

助けようとしたがスカサハはそんなことをしなくても良いと止めた。

 

「あ、あんたがクー・フーリンの師匠なのか……?」

 

「その通りだ。しかし、その師匠に対して敬意もない馬鹿弟子には困ったものだ」

 

「物凄くぶっ飛ばされているけど……やり過ぎなんじゃ……」

 

「馬鹿を言うな。あれぐらいで死ぬようなヤワな鍛え方をしてはいない。もしも弛んでいるなら、私がもう一度死ぬほど稽古をつけてやる」

 

「あ、はい……そうすか……」

 

遊馬はクー・フーリンに対して恐ろしいまでに厳しい雰囲気を出すスカサハに唖然としながら頷く。

 

「ユウマ!アストラル!」

 

「ユウマ様!アストラル様!」

 

遊馬とアストラルが目覚め、ラーマとシータは二人に嬉しそうに近付く。

 

「おっ、ラーマ!シータ!二人共、ちゃんと一緒にいられているんだな!」

 

「離別の呪いも無事に解けたようだな」

 

ラーマとシータを苦しめていた離別の呪いが無事に解けていることを再確認した遊馬とアストラルは良かったと安心する。

 

すると、ラーマとシータは真剣な表情を浮かべて二人の前で突然跪いて頭を下げた。

 

「えっ?お、おい、何してるんだよ?」

 

「ユウマ、アストラル……いいえ、ユウマ様、アストラル様、この度は私とシータの為に力を貸していただき、誠にありがとうございます」

 

「御二方には感謝しても仕切れません。このご恩は私達二人の全てを尽くしてお返しします」

 

王であるラーマとその妻のシータ、二人が全身全霊を込めて跪いて頭を下げている……その相手は神といっても過言ではない。

 

「き、気にすんなって。俺たちが勝手にやったことなんだし……」

 

「私達も君達が無事に呪いが解けて嬉しく思っているのだからそれで……」

 

「そうはいきません。あれ程強く、恐ろしい呪いを命懸けで解いて下さった二人に、何のお返しも出来ないなど私達の気が収まりません」

 

「どうか私達に何なりとご命令を……どのような事でも全力を尽くします」

 

遊馬とアストラルは二人の行動に困り果てた。

 

ラーマとシータの呪いを解いてあげたい、呪いを解いて二人に笑顔と幸せをもたらしたいという気持ちで自分達の全てをかけて離別の呪いを解いた。

 

お陰でラーマとシータは無事に再会し、笑顔となって幸せをもたらした。

 

その幸せな姿を見れただけで遊馬とアストラルは満足だったが、ラーマとシータはそうはいかなかった。

 

遊馬とアストラルは恩人どころか、ラーマとシータにとっては救いの神に等しい存在となっていた。

 

その救いの神に何のお返しも出来ないなど二人には考えられない。

 

必ず何かをお返しして恩に報いる気持ちだった。

 

そんな二人の想いをなんとなく察した遊馬は頭をかきながら仕方ないと言った様子で口を開く。

 

「分かった。じゃあ、二人には三つの誓いを立ててもらう」

 

遊馬は三本指を見せて二人に誓わせた。

 

「「はい」」

 

「一つ目、俺たちと一緒にこのアメリカをケルトから救う為に戦ってくれ」

 

これは元々ラーマを救う目的の一つであり、ラーマの心臓に抉られたゲイ・ボルグの呪いも解かれて無事に修復されている。

 

「「はい」」

 

アメリカ軍にいる最高クラスのサーヴァント、カルナにも匹敵するであろうラーマは必ず打ち倒す決意をする。

 

「二つ目、このアメリカの戦いが終わった後……俺たちと一緒にこの世界の未来を取り戻す戦い、人理修復の戦いにも協力して全力を尽くす事」

 

「「はい」」

 

マシュ達から既に遊馬達の戦いの目的を聞いていたので、世界の未来を取り戻す為、もちろんその力を貸すつもりである。

 

「そして三つ目。これが一番重要だからな」

 

遊馬が今までで一番真剣な表現をして二人はドキッと心臓の鼓動を上げたが、その直後に遊馬はニッと笑みを浮かべて宣言する。

 

「ラーマ!シータ!絶対に生前以上にたくさん幸せになる事!呪いで苦しんでいた分、離れ離れになっていた分、二人で新しい未来を歩いて幸せになれよ!!」

 

必ず幸せになる事、それが遊馬から課せられた最後の誓い。

 

「えっ……?」

 

「ユウマ様……?」

 

「どんな命令でも受けるんだろ?ちゃんと守れよな?」

 

「「……はい!」」

 

ラーマとシータは遊馬の自分以外の誰かを思いやるその心に涙を浮かべて頭を深く下げた。

 

すると、ラーマとシータの覚醒していない二枚のフェイトナンバーズが光り輝き、一枚に合体して新たなフェイトナンバーズとなった。

 

そして、ラーマとシータの新たなフェイトナンバーズは二人は幸せそうに抱き合っている姿が描かれており、真名は『FNo.70 永遠の愛と絆 ラーマ&シータ』。

 

スカサハは初めて見るフェイトナンバーズを興味深そうに見つめると、それを持つ遊馬にも興味を持ち出す。

 

「ふむ……良い眼をしている。それに……その体に影響は出てないが、神殺しをしているな?」

 

人のみならず神や亡霊を葬って来たスカサハは遊馬が神殺しをしたとすぐに気付いた。

 

「神殺し?まあ、俺とアストラル、それにホープと一緒に色んな神を叩き切ったり、ぶっ飛ばしたりしたけどな」

 

「色々な神と戦ったか、それは興味深いな……それに、中々いい体つきをしている。鍛えているのか?」

 

スカサハは軽く遊馬の体を服の上から軽く触り、その体つきを確かめる。

 

「おう。カルデアって言う施設にいるサーヴァントのみんなから鍛えてもらっているんだ。肉体はレオニダス、無手はマルタの姉御、そして剣術はそこにいる武蔵姉上から教わってるぜ!」

 

「剣か……」

 

スカサハは目を細めると武蔵に目線を向ける。

 

「なるほど、お主……初めて見たときから感じていたが、中々の使い手のようだな」

 

スカサハの強い視線を軽く受け流しながら武蔵はいつもの笑みを浮かべて話す。

 

「んー、まぁ、それなりにね。私なんてまだまだだけど、一応は二刀流剣術の使い手でね。愛弟の遊馬に私の剣を叩き込んでいるよ」

 

「二刀流……二つの剣を使うか。奇遇だな、私も二つの槍を扱う。どうだ、後で手合わせをしないか?」

 

「うん、喜んで!異国の強い戦士と戦えるなんて光栄だよ!」

 

二槍のスカサハと二刀流の武蔵……それぞれ二つの獲物を扱う二人の戦士の戦いに遊馬は見てみたいと心を躍らせた。

 

「さて、話はそれたが……ユウマ、いいや。これから私のマスターになる存在なら、マスターと呼んだ方がいいな」

 

「えっ!?スカサハさん、俺と契約してくれるのか!?」

 

「さんはやめてくれ。だが、その代わりに……私の弟子にならないか?」

 

「弟子?」

 

「ちょっと待ったぁっ!!」

 

先程ぶっ飛ばされて軽く伸びていたクー・フーリンが、スカサハの発言に瓦礫を吹き飛ばしながら遊馬の前に滑り込むように走ってきた。

 

「何だ、セタンタ。騒々しいぞ」

 

「師匠!何でマスターをあんたの弟子にしようとしているんだ!?」

 

「簡単な話だ、マスターは見所がある。他のサーヴァント達にかなり鍛えられているが、まだ伸び代がある。それをもっと伸ばしたいだけだ」

 

「マスター、師匠と契約するのは構わねえが、弟子になるのだけはやめとけ!!死ぬぞ!!」

 

「え?死ぬ??」

 

「俺はなぁ、生前にこの人の弟子として鍛えられていた時に何度も死を覚悟した……レオニダスのスパルタなんて生易しいほど恐ろしいんだぞ!!」

 

「失礼な、流石にマスターにはそこまではしない。多少は厳しいかもしれないが死にはしない」

 

「いや、あんたのその言葉が信用できねえんだよ!!」

 

クー・フーリンは何としてでも遊馬をスカサハの弟子にはしたくなかった。

 

その理由は純粋無垢な遊馬をケルト戦士にしたくないからであり、もしも遊馬がケルト戦士になったらたまったもんじゃない。

 

「……なあ、あんたの指導を受けたら強くなれるか?」

 

「マスター!?」

 

「……強くなりたいのか?ただ力を求めるわけではないようだが?」

 

「俺……ロンドンの特異点で人理焼却の黒幕と会って、そこで呪いをかけられて闇に堕とされたんだ。そのせいで小鳥やマシュ達に迷惑を掛けちまった。今さっきだって、亡霊と戦って意識を失っちまったし、こうしてあんたにも迷惑を掛けちまった。不甲斐ないよな、こんなマスターで……」

 

「しかし、お主は人間の子供。マスターとサーヴァントの関係を考えるなら、戦いはサーヴァントに任せるのが普通ではないか?」

 

「確かにそうかもしれねえけど、俺にとってサーヴァントは配下でも使い魔でもない。掛け替えのない、大切な仲間なんだ!仲間が俺を守ってくれるなら、俺も仲間を守る!!」

 

思わぬ発言にスカサハは目をパチクリとさせた。

 

聖杯戦争におけるマスターとサーヴァントの関係は召喚された際に聖杯からある程度の知識は得ているが、まさかマスターがサーヴァントを守ると発言するとは思いもよらなかった。

 

そして、遊馬がスカサハが最も好む存在、ただの戦士でもない、蛮勇でもない……『勇気ある者』だと理解した。

 

スカサハは遊馬のこれからの将来に心を躍らせ、槍を見せながら遊馬に宣言する。

 

「よかろう、お主のその想いに応えられるか分からないが、私も全力を尽くして鍛えてやろう」

 

「ああ!これからよろしく頼むぜ、スカサハ師匠!!」

 

遊馬とスカサハは握手をすると同時に契約を交わし、スカサハのフェイトナンバーズが誕生する。

 

マスターとサーヴァントの関係だけでなく、師弟の関係となった遊馬とスカサハにクー・フーリンは頭を悩ませた。

 

「ちくしょう……恐れていた事が現実に……マスターがスカサハの弟子になっちまったぜ……」

 

「……遊馬が望んだことだ。遊馬のかっとビングなら乗り越えられるだろう」

 

アストラルも不安だったが、遊馬が自ら選んだことを尊重し、見守る事にした。

 

 

「あら、聖杯も少しは力を取り戻したようね」

 

オルガマリーは金色に戻りつつある聖杯を拾い上げて軽く手で撫でながら思う。

 

「強くなるか……」

 

遊馬の先ほどスカサハに向けた言葉で思うところがあった。

 

オルガマリーはカルデアの所長で時計塔のロードの一人とはいえ、所詮はただの人間で魔術師。

 

世界と人類を救い、歴戦のサーヴァント達からも認められている本物の英雄である遊馬とアストラルに比べれば、自分はその辺にいる人間と変わらないほどの大した力しかない。

 

カルデアの所長としての重すぎる責任は当然あるのだが、一度死んで蘇らせてもらった身としてはそれだけでは足りないと感じている。

 

「私も、せめて……未来を救う為の役に立てられる力があれば良いんだけどね……」

 

遊馬と同じように未来を救う為に力を求めるオルガマリー。

 

すると、聖杯は少しずつ光を放出していくと、金色の輝きを取り戻していく。

 

「な、何……!?」

 

オルガマリーは困惑していると自分の体から何かが抜けていく感覚を覚える。

 

「これは……まさか、私の魔力を吸収しているの!?」

 

聖杯はオルガマリーの持つ魔力を吸収し、消費している力を補おうとしていた。

 

「所長!?」

 

遊馬達も気づいた時には既に遅く、十分に魔力を得たのか聖杯が光り輝くとオルガマリーは光に包まれた。

 

 

光に包まれて意識が遠のいたオルガマリーは目を覚ますとそこは何も無い真っ白な空間だった。

 

「何よここ……ハッ!?」

 

オルガマリーは背後に気配を感じ、右手に魔力を込めて魔弾を撃つ準備をして振り向く。

 

「……誰、あなたは……?」

 

そこにいたのは椅子に座り、虚ろな目をしてスーツ姿に帽子を被った青年だった。

 

『まさか、この私を呼び出すとはな……』

 

青年は手を組み、ため息を吐いてオルガマリーを見つめる。

 

すると、青年の背後に黒服を着た男たちが現れる。

 

『良いだろう、上に立つ者として……この力を役立てるが良い』

 

「えっ……?」

 

青年と黒服たちは光の粒子となってオルガマリーの中に入り、光に包まれる。

 

 

謎の光に包まれたオルガマリーが戻って来ると、胸に手を当てて深呼吸をした。

 

「確か、こう言うんだっけ……?」

 

目を閉じて静かに自分の中にある扉を開ける鍵となる言葉を口にする。

 

「開放召喚」

 

オルガマリーの体から一瞬だけ光を発すると、次の瞬間にはいつもの制服姿が一変し、渋い色のスーツと帽子を着用し、男装した姿となった。

 

「オ、オルガマリー所長……?」

 

遊馬達が唖然として見つめる中、オルガマリーは苦笑いを浮かべながら告げた。

 

「えっと……私、どうやら……デミ・サーヴァントになったみたい……」

 

「「「……えぇえええええーっ!??」」」

 

予想外すぎる展開に遊馬達は声を揃え、驚愕の叫びをあげた。

 

オルガマリーが力を求めた事で聖杯はその願いを叶え、かつて冬木で桜と凛がそうなったように、オルガマリーもデミ・サーヴァントになってしまった。

 

オルガマリーの中に宿る英霊は……このアメリカの短い歴史において、偉大な存在にして最も敵に回したくない男だった。

 

そして、オルガマリーがその男の力を宿す事によって聖杯戦争は一気に加速する事になる。

 

 

 




オルガマリー所長、祝!デミ・サーヴァント化!

エルメロイII世の事件簿のオルガマリーちゃん(12歳)が可愛い→こっちの小説でも活躍したい→頭の中に何かが舞い降りた→所長のデミ・サーヴァントはどうだ!?
みたいな感じでネタが思いついてしまった訳です。

中にいる英霊が誰かは知っている人はご存知のあの方です(笑)
何か良いサーヴァントがいないかなと探していたら、ちょうど今はアメリカ編でタイムリーだと思ったので、それにしました!

ついでに今話題の武蔵ちゃんもアメリカ上陸!
バーサーカー武蔵ちゃんのフラグが立ちました(笑)

次回は……これで戦力が整ったのでエジソンのところにカチコミに向かいます。

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