Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回は桜ちゃん達ちびっ子達との1日です。

最近ロリ桜の擬似サーヴァントのカーマに戦慄している私です。
ここでは希望の光を手に入れているので初めて情報を見た時マジかよと思いました。


ナンバーズ111 少女の願いと想い

カルデアの遊馬の部屋。

 

早朝……遊馬がまだ眠りについている頃、部屋に小さな四つの影が侵入した。

 

しかし、アストラルが侵入者対策用にセットされた罠カードが発動せず、四人は抜き足差し足で遊馬のベッドの横についた。

 

「くかぁ〜っ、くかぁ〜っ……」

 

大きなイビキをかいて未だに眠りの中にいる遊馬。

 

四人は互いを見て頷くと手を繋ぎ合う。

 

「「「「せーの……!」」」」

 

そして……。

 

「「「「起きろ〜!」」」」

 

ボスン!!!

 

「ウボアァッ!!?」

 

四人の渾身のボディプレスが遊馬の体に容赦なく伸し掛かる。

 

そして、朝から元気な幼い声が部屋に響く。

 

「お兄ちゃん、朝だよー!」

 

「早く朝ごはんを食べましょう!」

 

「おかあさん、早く遊ぼー!」

 

「マスターさん、速やかに迅速に動きましょう!」

 

謎の侵入者……それはカルデアのちびっ子達、桜と凛、ジャックとナーサリーの四人だった。

 

「よ、四人共……分かったから、早く……どいて、くれ……ガクッ」

 

「あれ?お兄ちゃーん?」

 

「お兄様?」

 

「おかあさーん?」

 

「マスターさん?」

 

流石に幼女四人の容赦ないボディプレスのダイレクトアタックに不意打ちを受けた遊馬の心身ともに大ダメージを受けてしまい、再び眠りの中に落ちてしまった。

 

 

幼女達のボディプレスから何とか復活した遊馬は着替えて食堂で朝食を取る。

 

「イテテ……全国の子持ちの父ちゃん、それも日曜日の朝の気分を味わった気分だぜ……」

 

遊馬は元気いっぱいな子供達に振り回される全国の父親の気分を味わった気分になりながら小鳥特製のデュエル飯を食べる。

 

「予想外な襲撃者だったな」

 

「ってか、アストラル。お前がセットした罠、発動しなかったじゃねえか。まあ、桜ちゃん達だったから発動しなくて良かったけど」

 

「あれはあくまで遊馬に夜這いをかけようとする不届き者限定だからな。無垢で純粋な子供達には発動しない」

 

「何だその設定は!?まあ、それにしても四人とも朝から嬉しそうだったな」

 

「それもそうよ。だって、みんな遊馬と遊ぶのを楽しみにしていたんだもん」

 

そこに普段からちびっ子達の相手をしている小鳥が卵焼きを持って遊馬の前に置く。

 

「遊馬君、ロンドンの後に監獄塔と羅生門の戦いでとても忙しかったから、ようやく休みが取れて一緒に遊べるのが嬉しいんですよ」

 

モーニングセットを注文してお盆に乗せて持ってきたマシュが遊馬の隣に座る。

 

今は特異点の戦い続きでなかなか休めなかった遊馬の久々の休暇期間で、今日はちびっ子達と一日中遊ぶ約束なのだ。

 

ちびっ子たちはこの日をずっと楽しみにしており、早起きして遊馬の部屋に突撃したのだ。

 

「それだけ君があの子達から慕われている証拠だ」

 

「慕われているか……へへっ、それなら今日は思いっきり遊ばなきゃな!」

 

「もういつからカルデアは託児所になったのよ……」

 

疲れ切った枯れたような声が響き、遊馬達は周りを見渡すと近くのテーブルにぐったりと突っ伏している女性がいた。

 

「所長……?どうしたんだよ、そんな疲れた顔をして……」

 

カルデア所長のオルガマリー……多忙を極める彼女だが、これまで見たことないほどに疲れた様子だった。

 

「疲れたもんじゃ無いわよ……もう限界よ……復活して絶好調なこの体も疲労困憊になるほどヤバイ状態よ……」

 

「な、何があったんだ……?」

 

「あの女よ……」

 

「あの女?」

 

「紫式部……あの女の所為で余計な仕事が……ああもうダメ、今日はもう寝るわ。何かあったらロマンかダ・ヴィンチに後を任せたから……」

 

そう言い残すとオルガマリーはフラフラと立ち上がりながら自分の部屋へと帰って行った。

 

「どうしたんだ?所長……」

 

「紫式部の名を言っていたが……何か問題があったのか?」

 

「でも、紫式部さんは何か問題を起こすような人じゃないと思うけどな……」

 

サーヴァントの中には己の欲のままに動いて奇行に走る者が確かにいるが、紫式部は常識的な人物なので問題を起こすとは考えにくい。

 

「今は考えても仕方ないだろう。今日は子供達と楽しい時間を過ごすことだけを考えよう」

 

「そうだな。何かあったら後で対処すれば良いよな」

 

遊馬はデュエル飯の残りを一気に食べ終え、ごくんと呑み込んだ。

 

「さて!飯も食い終わったし、早速行くかな」

 

「あ、遊馬!私も一緒に行こうか?」

 

小鳥が一緒に桜達と遊ぶと名乗り出た。

 

「小鳥?」

 

「遊馬一人じゃ、小さな女の子の相手は難しいでしょう?」

 

小鳥は普段から遊馬がいない間、桜や凛の遊び相手になっているので姉の一人として慕われている。

 

「で、では!私も一緒に!私も桜ちゃんや凛ちゃんのお姉さんですから!」

 

マシュも姉として慕われているので、遊馬の相棒として共に特異点に向かっているので桜達と触れ合う機会が少ないので、是非とも一緒に遊びたかった。

 

「助かるぜ、二人とも!流石にあのちびっ子達のパワーには俺も参るからな……」

 

「そうと決まれば早速行動だな。それで、何をするのだ?」

 

「うーん、内容はちびっ子達に任せてるから今から聞く」

 

遊馬達は食べ終えた食器を片付けると待っていた桜達と合流する。

 

「それで、まずは何して遊ぶ?」

 

「私たち、行きたいところがあるの!」

 

「行きたいところ?どこ?」

 

桜達は互いに目線を合わせて声を揃えて行きたいところの場所をいう。

 

「「「「せーの……図書館!」」」」

 

「「「「図書館?」」」」

 

あまりにも平凡な場所の名前だが、このカルデアに図書館なんて場所が存在するのか?と遊馬達は首を傾げた。

 

桜達は遊馬達の手を繋いで引っ張って行き、その図書館がある場所へと向かう。

 

 

ちなみに、普段から桜達の世話や遊び相手になっているメドゥーサとアタランテは……。

 

「旦那様!旦那様ぁあああああっ!」

 

「清姫、今日はあなたをユウマの元へは行かせるわけには行きません!」

 

「我々に敗れて大人しくしてもらおうか!」

 

遊馬の元へ向かおうとしている清姫を全力で足止めして桜達の大切な時間を守っているのだった。

 

 

カルデアの地下には特に施設はなく、使われていない倉庫しかないので遊馬達も来たことがない。

 

しかし、地下に向かうにつれて本を持つサーヴァント達とすれ違い、更なる疑問が出てきた。

 

カルデアでは主に電子書籍が使用されており、一応図書室は存在しているがそこまで充実していない。

 

それなのにサーヴァント達は本を手に楽しそうに色々な話を交わしていた。

 

「ここだよー!」

 

そして、桜達が案内した場所……それは近代的なカルデアの施設には程遠い古びた大きな木の扉がそびえ立っていた。

 

カルデアではあまりにも異様な光景に目を疑いながら恐る恐るその扉を開いた先には……。

 

「な、な、なんだこれぇええええええーっ!??」

 

「これは……!?」

 

「すごいです……」

 

「う、嘘でしょ……?」

 

遊馬達が驚くのも無理はなかった。

 

何故なら扉の先には巨大な空間が広がっており、それらを埋め尽くすのは大量の本だった。

 

数百や数千どころの数ではなく、数万は軽く越えるほどの本が本棚に納められてズラッと並んでいる。

 

「これは……!世界に名だたる図書館、アムステルダム図書館やストラホフ修道院図書館をも連想させる見事な図書館だ……!」

 

アストラルは世界的に有名な図書館をも連想させる謎の図書館に感嘆の声を漏らした。

 

「ここは確か地下の倉庫だったはず……それがなんで図書館に……?」

 

マシュはカルデアに長くいるが、これほどまでに立派で本格的な図書館の存在を知らなかった。

 

そもそも明らかにこの図書館だけ異質な雰囲気と空気を出していた。

 

するとそこに……。

 

「いけませんよ。図書館で騒いだら」

 

「えっ?む、紫式部さん!?」

 

図書館の奥から歩いて遊馬達を注意したのは紫式部だった。

 

ゴシックドレスの上に市松模様の半纏を羽織り、眼鏡をかけて知的なイメージを上げており、アンバランスながらとても似合っていた。

 

「あら、遊馬様とアストラル様、マシュさんに小鳥さん。それから、桜ちゃんと凛ちゃん、ジャックちゃんにナーサリーちゃん。ようこそ、我が地下図書館へ」

 

「我が地下図書館?」

 

「はい。ここには古今東西、様々な本を取り揃えてございます。史書に伝記、神話に伝説、悲劇に喜劇、古典に新作、御伽噺に童話、時代劇に西部劇、低俗劇に政治劇、オクシデンタルにオリエンタル……中世に近世、古代に現代、虚構に現実、図鑑や地図もございます」

 

最早ほぼ全てのジャンルを取り揃えていてもおかしくないほどのラインナップだった。

 

「よりどりみどり過ぎじゃね!?」

 

「ああ、それと──復讐譚に恋物語も、もちろんそろえてありますので」

 

「え?じゃあ、巌窟王はある?」

 

遊馬は復讐譚と聞いてアヴェンジャーのエドモンの話を読んでみたいと思ったので思わず聞いた。

 

「巌窟王……モンテ・クリスト伯ですね。もちろんございますよ」

 

「おお!じゃあそれを後で借りるぜ!」

 

「遊馬、今聞くべきことはそれではないだろう?」

 

アストラルに戒められ、ハッと気づいた遊馬は慌ててマスターとして紫式部に問い質す。

 

「え、えっと、コホン!紫式部さん、この図書館はどういう事なんだ?」

 

「どういう事、と申しますと……?」

 

「そこからは僕たちが説明するよ!」

 

紫式部が返答に困っていると台車に大量の本を積んで運んでいるロマニとダ・ヴィンチちゃんが来た。

 

「ここは元々使われていない地下室の倉庫だったんだけど……」

 

「紫式部君が日本の魔術……陰陽道の力で部屋を再構築してこんな立派な図書館にしたんだ。そして、カルデアのデータベースにある電子書籍を全て本に変換したのさ」

 

ロマニとダ・ヴィンチちゃんの説明に遊馬達は驚愕した。

 

たった一人でこれだけのものを構築するとはサーヴァントでもなかなか出来る事ではない。

 

「ええっ!?じゃあ、この図書館は紫式部さんが全部作ったのか!??」

 

「はい。ですが、かつての平安の折には、さほど陰陽道に長けていた訳ではありません。ですのでこうして、サーヴァントとして成立して、初めてあれこれと多くの技を振るえている状態です」

 

必ずしも生前の能力=サーヴァントと同等と言うわけではない。

 

サーヴァントはクラスや知名度など色々な要因で時には生前以上の力を発揮する事もあるのだ。

 

「まあ、レイシフトやカルデアの電気とか重要なものには影響はなかったんだけど……」

 

「ただ……電子書籍から本に変換したものには今後のレイシフトに必要な資料やデータも含まれていたから、今こうしてかき集めているのさ……」

 

特異点のレイシフトには当然歴史関連の資料が必要になるのだが、紫式部はそれさえも本として変換してしまったので、ロマニやダ・ヴィンチちゃん達が急いで集めているのだ。

 

「その所為でマリーは心労で部屋に引きこもっちゃってね……」

 

「……規格外の英霊、魔術王の出現でストレスがマッハに積み重なったからね」

 

その代償として所長であるオルガマリーは本来必要のない仕事が増えて精神的ダメージを受けてしまい、数日は不貞寝することを決めたらしい。

 

その話を初めて聞いた紫式部はまさか自分の行動でオルガマリー達大勢のカルデア職員に迷惑をかけることになるとは思いも寄らなかったので、慌て始める。

 

「あ、あの、その……すみません、私、そんなつもりじゃ……ご、ごめんなさい!

 

やがて紫式部の両目から大粒の涙が流れて申し訳なさそうに二人に頭を下げた。

 

「えっ!?いや、その、君を責めているわけではないから、謝らなくても良いんだよ!?」

 

「そ、そうだよ!カルデアとしては、職員やサーヴァントの新しい娯楽施設が出来て喜ばしい事だから!ほら、私も天才発明家だから本は読むからね!」

 

麗しの平安美人を泣かしてしまい、ロマニとダ・ヴィンチちゃんは慌てて紫式部を慰める。

 

「……我々が何か指摘する必要も無いな」

 

「そうだな。紫式部さんも反省してるからな」

 

紫式部が心の底から反省しているのでマスターとしてこれ以上追求する必要も無くなった。

 

少々トラブルはあったが、結果的にこの大図書館はカルデアにとってとても有意義な施設となったことには変わりない。

 

紫式部にはこの大図書館の司書として勤めてもらうこととなった。

 

「お兄ちゃん、この本読んでー!」

 

「おかあさん、これ面白そうだよ!」

 

とててー、と可愛らしい足音を立てて桜とジャックは大きな本を持ってやって来た。

 

紫式部たちの話が難しくつまらなかったのでその間に目当ての本を探していたのだ。

 

「マシュお姉様、難しい文字があるので一緒にお願いします!」

 

凛は自身の中にいる英霊……エレシュキガルが登場している古代メソポタミア神話の本を持ってきた。

 

「小鳥さん!この絵本を読んでー!」

 

ナーサリーはまだ見たことない世界の絵本を持ってきた。

 

本を一緒に読むことを頼まれ、遊馬達とは笑顔で応える。

 

「よし、じゃあ読んであげるか!桜ちゃん、ジャック、順番に読むからな!」

 

「凛ちゃん、少し難しいですが一緒に古代メソポタミア神話を学びましょう」

 

「ナーサリーちゃん、沢山の物語を読みましょう」

 

遊馬達は図書館に置かれた椅子に座り、それぞれ選んだ本を開いて読んでいく。

 

「とても美しい光景ですね……」

 

その光景に紫式部は微笑みながら呟く。

 

子供達の好奇心や楽しみ、そして知識を向上させて成長を促す、これこそ図書館の役割の一つである。

 

遊馬達は時間が経つのを忘れるほど楽しい読書の時間を過ごし、いつのまにかお昼時になったので読んでいた本を借り、図書館を出て食堂へ昼食にする。

 

昼食を食べ、食休みをしてから今度は体を動かす遊びをする。

 

「それじゃあ、鬼ごっこをやるぞー!」

 

「「「「おー!」」」」

 

鬼ごっこは古くから日本の子供達の屋外遊びとしてポピュラーなものであり、いわゆる追いかけっこである。

 

誰が鬼をするか決めようとしたその時……。

 

「な、何故じゃ!?何故吾が子供の遊びに付き合わなければならぬのだ!??」

 

純血の鬼である茨木童子に鬼役をやってもらうことにした。

 

「だって暇そうにしてたから」

 

「暇だからといって何故吾がお前や小娘達と遊ばねばならぬ!」

 

「鬼ごっこやるからさ、そこにちょうど茨木が来たからな。茨木はリアルの鬼だから適役だろ?」

 

「ふざけるな!真なる鬼である吾が何故!?我慢ならぬ、立ち去らせてもらうぞ」

 

「ちなみにこの鬼ごっこで勝てたら3時のオヤツのパンケーキは特別の大盛りになるぜ」

 

メディア・リリィが上達してきたパンケーキを作ると言っていたので、せっかくなので大盛りを頼んだところ喜んで引き受けてくれた。

 

「それを早く言わんか!!良いだろう、今回だけは吾が全力を持って貴様らを捕らえてやろう!!」

 

酒や肉よりも意外に甘いものが大好きな茨木童子はパンケーキが食べると聞いて一瞬でやる気を出した。

 

「うん、ちょろいな」

 

「ああ、これがあの茨木童子とはな……」

 

羅生門の戦いから感じていたとても鬼とは思えない性格の茨木童子に遊馬とアストラルは失礼だがちょろいと感じた。

 

「む!?貴様ら、今何か無礼なことを言ったか!?」

 

「いえいえ別に」

 

「それよりも早く鬼ごっこを始めたらどうだ?」

 

「おっ、そうだな。それじゃあみんな……鬼の茨木から逃げろー!」

 

「「「「わぁーっ!」」」」

 

「では、小鳥さん、私たちも!」

 

「うん!茨木さん、負けないからね!」

 

みんな一斉に逃げ出し、遊馬とアストラルも走り出す。

 

「まさか本物の鬼にこの言葉を言えるなんてな。鬼さんこちら!手の鳴る方へ!」

 

「ふっ、茨木童子の名にかけて貴様ら全員を必ず捕まえてやるぞ!!」

 

こうして茨木童子が鬼役となったリアル鬼ごっこが始まった。

 

大盛りパンケーキが掛かってるとあって茨木童子は大人気なく本気を出し、次々とタッチをして捕まえていく。

 

体力や速力に自信がある遊馬ですら捕まってしまい、茨木童子は意気揚々と鬼役を務める。

 

しかし、一人だけ捕まえることはできなかった。

 

「へへへっ!残念でしたぁ〜!このロンドンの殺人鬼、ジャック・ザ・リッパーのスピードには本物の鬼さんも勝てないみたいだねぇ〜!」

 

「待たぬか!この小童がぁあああああっ!」

 

ジャックはあっかんべーをして茨木童子を挑発して逃げていく。

 

かつてロンドンを震撼させた伝説の殺人鬼の名を持つジャックは子供達の霊の集合体とはいえ、アサシンとしてのステータスはとても高い。

 

敏捷はAでとても高くて動きは幼女の姿なので軽快、更にはアサシンのクラス特性の気配遮断はA+、鬼ごっこではある意味最強無敵の存在とも言える。

 

結果、ジャックが見事に逃げ切ったことでジャックの優勝となり、大盛りパンケーキはジャックのものとなった。

 

鬼としてのプライドをズタボロにされ、大盛りパンケーキを手に入れられなかった茨木童子は拳を握りしめ、最早血の涙を流しそうになるほど悔しそうな表情を浮かべた。

 

「ぐっ……おのれ、小童がこの吾にこれほどまでの屈辱を……!絶対に許さんからな!次こそ必ず吾が勝つ!!」

 

「うん!私も負けないよ!」

 

茨木童子は鬼としてのプライドを守るために鬼ごっこで再戦して勝つ決意を固めた。

 

「それって、次もジャック達と鬼ごっこをしてくれるってことか?」

 

「そうみたいだな。桜達と遊んでくれるならそれに越したことはないな」

 

「そうだなー」

 

知らぬうちに茨木童子は桜達の遊び相手へとなってくれたことに微笑ましく思うのだった。

 

 

全力で走って鬼ごっこをし、再び食堂に赴いてで3時のオヤツを食べる。

 

オヤツはメディア・リリィのパンケーキで、鬼ごっこ優勝者のジャックは大盛りのパンケーキを幸せそうに頬張っていた。

 

すると、そこに一人の来客が現れた。

 

「おお、サクラよ!待たせたな、遂に完成したぞ!」

 

「ネロ?」

 

そこに現れたのは布に包まれた大きな物を抱えて持ってきたネロだった。

 

「ユウマもいたか!ちょうど良いな、これのお披露目だな!」

 

ネロはニッと笑みを浮かべるとテーブルにそれを置いて布を解いた。

 

中から現れたのは白銀と金色に輝く長物……両刃の剣だった。

 

その剣に遊馬とアストラルは見覚えがあった。

 

「あれ?この剣……ホープONEのホープ剣じゃねえか?」

 

「確かにこれは……ネロ、どういう事だ?」

 

それは希望皇ホープONEの持つホープ剣と瓜二つで刃から柄の形まで忠実に再現されていた。

 

「そういえば二人には言ってなかったな。実は、この剣はサクラに頼まれて作ったのだ」

 

「えっ!?なんで、桜ちゃんが……!?」

 

桜に理由を聞こうと遊馬が振り向くと、パンケーキを食べ終えた桜は椅子から降り、胸に手を置いて静かに告げた。

 

「開放召喚」

 

桜がその身から溢れる漆黒の魔力を身に纏うと、その体が約十年後の姿へと成長し、漆黒の軽装の鎧を装着する。

 

目を覆うバイザーを上げ、恐る恐る剣を手に取ると手の内から真紅に輝く血管のような模様が全面に浮かび上がる。

 

「ちゃんと宝具は発動している……」

 

「宝具?」

 

「それは、桜の中にいる英霊の宝具か?」

 

「うん。アルトリアさんが教えてくれたの。私の宝具……それは手にした武器を自分の宝具として自由自在に扱えるんだって」

 

それは遊馬達が何度も対峙したとある漆黒の騎士が持つ宝具である。

 

桜曰く、自分に力を貸してくれている英霊は黒髪の悲しそうな謎の女性らしいが……何故それが桜の宝具なのかは不明である。

 

「だから、ネロちゃまにお願いしてホープONEの剣を作ってもらったの。剣ならやっぱり大好きなホープONEのが良いから……」

 

「麗しい美少女の頼みを断るわけにはいかないからな。作るからには最高の剣を作らないといけないが……この剣を作るには少々苦労したぞ。余と遊馬の原初の火と同じ隕鉄を素材として使おうと思ったが、入手出来なかったからな」

 

遊馬とネロの持つ原初の火はただの金属ではなく、宇宙から飛来した鉄……隕鉄を素材として作られた特別な剣。

 

ネロは当初隕鉄で剣を作ろうとしたが、流石に隕鉄が早々手に入れるものではないので、同じく天才であるダ・ヴィンチちゃんに依頼して剣を作るに適した最高の金属を用意してもらったのだ。

 

「希望皇ホープONEの剣を忠実に再現する為にダ・ヴィンチちゃんと一緒に寸分の狂いもない設計を立ててから共に作り、ついでにメディアがサクラを守る為に様々な魔術を施し、完成に至ったのだ!」

 

メディアは桜の為に剣に色々な魔術を施し、剣の耐久性を高める、幸運を呼ぶなどの効力を与えた。

 

至高の芸術家のネロ、天才発明家のダ・ヴィンチちゃん、神代の魔術師のメディア……夢のトリオによって完成されたホープONEの剣。

 

剣としてはこの時点で既に宝具クラスの品が完成したのだ。

 

「ネロちゃま、ありがとう!これで……私にも戦える力が手に入った……!」

 

桜は凛とは違い、武器を持たないと宝具が発動しないのでホープ剣を作ってもらえてとても嬉しそうに振るう。

 

桜の中の英霊と宝具のお陰で剣を自由自在に扱い、既に達人の領域にまで剣を振るうことが出来ている。

 

しかし、それを快く思わない者がいた。

 

「……桜ちゃん、その剣は俺が預かる」

 

それは遊馬だった。

 

真剣な面持ちで桜の手から剣を取り上げようとしたが、桜は剣を抱きしめるように持って下がった。

 

「ええっ!?な、何で……!?」

 

「決まってるだろ?桜ちゃんに武器を持たせる訳にはいかない。雁夜さんと時臣さんと約束したから……桜ちゃんと凛ちゃんを守るって」

 

冬木で擬似サーヴァントとなってしまった桜と凛……その二人を間桐雁夜と遠坂時臣から託された遊馬は大切な妹として守ることを誓った。

 

だからこそ人理を救う為の特異点の戦いを勝ち抜き、ソロモンを倒してこの世界の未来を救い、二人をハートランドシティに連れて行き、魔術師ではない新たな未来を作り出す。

 

擬似サーヴァントに目覚めたとはいえ、未来ある幼き少女である桜と凛を戦わせるわけにはいかない。

 

「いや……私は強くなりたい……!だからこの剣は私のものなの!!」

 

「強くなる必要はない、戦う俺たちが強くなって必ず守るから……!」

 

「いや!いやだ!!」

 

遊馬は桜に分からせる為に少し強い口調をするが、桜は嫌々と首を左右に強く振ると剣が光を帯びるとカードになった。

 

「剣がカードに……?」

 

それはダ・ヴィンチちゃんが開発した物質をデュエルモンスターズのカードへとカード化にするもので、桜の持つカードは装備魔法カードで剣の絵が描かれていた。

 

名前は『閃光煌めく希望の大剣(シャイニング・ホープ・ソード)』。

 

桜の心に宿る希望の象徴である希望皇ホープONEの剣で、ネロ、ダ・ヴィンチちゃん、メディアの想いが込められた最高の作品である。

 

桜は開放召喚を解除して元の体に戻ると、カードを優しく持ち、抱きしめながら自分の想いを打ち明ける。

 

「……遊馬お兄ちゃん。私、守られてばかりで何も出来ない。魔術王に呪いをかけられた時も、呪いでずっと眠っていた時も……」

 

いつも元気で暖かくて優しく、そして……誰よりも強い光を放つ遊馬に大きな危機に迫った時、見守ることしか出来なかった。

 

魔術は大嫌いで二度と関わりたくないが、桜は遊馬の為に戦う決意を決めた。

 

自分の中に戦う力を貸してくれた英霊の想いを応える為、そして……。

 

「私……私は、遊馬お兄ちゃんが大好き!大好きな遊馬お兄ちゃんを守りたい!!だから、この剣が必要なの、お願い!!!」

 

誰よりも大好きな遊馬を守りたい為に桜は強くなりたいのだ。

 

桜の遊馬への強い想い……カオスを感じた遊馬は絶句した。

 

カルデアに来てから僅かな期間でここまで強い意志を示し、強くなりたいと願うほどまでに成長したことに驚きと喜びを感じる。

 

そして、自分をこれほどまでに慕ってくれる桜の想いに遊馬は仕方ないと苦笑を浮かべて膝を折って桜と目線を合わせ、頭を優しく撫でる。

 

「分かった。剣は取り上げない。その剣は桜ちゃんのものだ」

 

「本当に!?やったー!」

 

「ああ。でも、剣を使うときは必ずメドゥーサやアタランテとか、大人のサーヴァントが側にいる時じゃないとダメだぞ?危ないからな。約束出来るよな?」

 

「うん!約束する!お兄ちゃん、大好き!」

 

桜は嬉しさが感極まって遊馬に抱きついた。

 

「おっと!?桜ちゃん、あんまり無理するなよ?桜ちゃんに何かあったら雁夜さんと時臣さんに申し訳が立たないからな」

 

「大丈夫!私、お兄ちゃんを守れるぐらいに強くなるから!」

 

「はははっ、楽しみに待ってるよ!」

 

遊馬は抱きついた桜をそのまま立ち上がって抱き上げた。

 

妹分と深い絆を結べて嬉しい遊馬だったが、振り向くとそこには背筋が凍る光景が広がった。

 

「え、えっと……マシュさん?小鳥さん?」

 

それはいつも自分に笑顔を見せてくれるマシュと小鳥だが、何故か今は睨まれただけで凍るような絶対零度の冷たい表情と目線で見つめられていた。

 

「遊馬君……流石に6歳の少女に手を出したら犯罪ですよ?」

 

「遊馬の、ロリコンシスコン野郎!!」

 

「はいぃっ!??」

 

突然の性犯罪者扱いされ、耳を疑う遊馬。

 

「な、何で俺がロリコンでシスコンなんだよ!?」

 

「だって!他人から見たらもう性犯罪の事案よ、これは!」

 

「偏見はあるかもしれませんが、6歳の女の子はダメですよ!」

 

「何でさ!?」

 

思わずエミヤと同じ口癖を叫びながら驚く遊馬。

 

すると、桜は得意げな表情を浮かべて言う。

 

「だったら、私が遊馬お兄ちゃんのお嫁さんになる!」

 

「「「ええっ!??」」」

 

「私の十年後の姿は保証されているから、私が綺麗で美人の16歳になったらお兄ちゃんと結婚してお嫁さんになる!」

 

桜の十年後の姿は別世界の間桐桜であるパールヴァティーが証明しており、確かに美人でスタイルの良い女性へと成長している。

 

マシュと小鳥は想像した。

 

桜が16歳の時に遊馬は23歳……法律的に年齢は大丈夫だが、やはり犯罪の匂いがしてしまう。

 

「ダダダ、ダメです!それでは遊馬君が捕まってしまいます!」

 

「そうよ!バカの遊馬がロリコンで捕まったらたまったもんじゃないわ!」

 

「おいぃっ!?さっきから二人とも酷くねえか!?俺何か悪いことをしたのか!?」

 

「これは遊馬君が全面的に悪いのです!」

 

「遊馬の女誑し!現代の光源氏!」

 

「だから何でさぁあああああっ!??」

 

桜の告白からドタバタの喜劇が始まり、遊馬は頭を抱えながら叫び続けた。

 

「何じゃこれ?」

 

「おかあさん達、何をしているの?」

 

「さぁ……?」

 

「少女たちは気にすることではない。うむ、美味いな」

 

茨木童子とジャックとナーサリーは目の前で起きている光景に首を傾げ、ネロはジャックからパンケーキを貰いながら楽しそうに見つめていた。

 

「桜、本当に強くなったわね。私も負けてられないわ!」

 

凛は強くなった桜に負けないよう自分も努力しようと意気込む。

 

「やれやれ……」

 

アストラルは大きなため息をつき、腕を組んで宙に浮きながら横になる。

 

 

 

 




桜ちゃんが希望皇ホープONEの剣をゲットしました!
剣を作るならネロちゃま、そしてダ・ヴィンチちゃんとメディアにお願いしたらとんでもない剣が出来ましたね。

次回はいよいよ遊馬とアストラルの物語、遊戯王ZEXALの戦いををマシュ達サーヴァントやカルデア職員に見てもらいます。
ただ、戦いの映像は三部作にして、第一部は最初からDr.フェイカーとの決戦辺りまでを考えたいます。
理由としてはあまりにも話が長くなるので三つに分けることと、特異点毎にやった方が良いかなと思って決めました。
第二部は第五特異点後、第三部は第六特異点後を予定しております。
この話は執筆に時間がかかりますのでご了承ください。

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