Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回の話で種族って難しいなと少し思いました。
人と異形……中々難しいですよね。


ナンバーズ107 平安の古き因縁、金時と酒呑

平安時代の京都にて特異点の元凶と思われる存在……伝説の鬼、茨木童子が現れた。

 

しかし、何故か鬼の首領と呼ばれる酒呑童子が眠らされていた。

 

まるで茨木童子が酒呑童子から力を奪っているように見え、金時は全身から怒気が溢れてサングラス越しでも怒りを露わにしていた。

 

「おうおう、怒髪天を衝くというヤツか!その目隠しごしにも分かるぞ小僧。眼光爛々と光らせおって、よほど腹に据えかねたか?──ふん。だが不愉快千万は吾が上よ。貴様ごときが酒呑の身を何故案じるか。騙し討ちした貴様が今更?この、まさに吾に喰われようとする酒呑をなぜ気遣う?」

 

「バーカ、気遣ってねぇよ!テメェらが何をしようと知った事か!」

 

茨木童子は金時が酒呑童子を気遣うことに疑問に思うが、すぐに金時は否定した。

 

しかし、遊馬達は金時が酒呑童子に対して宿敵以上の何か特別な想いを持っていると感じた。

 

「仲間割れなら余所でやりやがれ!だいたいなぁ、テメェ──そのクソ女がどんだけヤバイ奴か、分かってんのか?テメェ程度じゃ喰った後に内側から喰い返されるぞ?」

 

「──フン。確かにな。以前の吾なら、酒呑を倒すことすらできなんだ。だがなあ?──走れや、叢源火!!」

 

次の瞬間、茨木童子の右手が燃え上がり、腕から切り離されると、巨大化して勢い良く放たれて金時を吹き飛ばした。

 

「金時!?何だよあれ……腕!?」

 

「茨木童子は渡辺綱に名刀『髭切り』によって腕を斬られた逸話がある……まさか、それが宝具となったのか!?」

 

「然り。然り然り然り!これこそが我が怪腕!名付け改め、『羅生門大怨起』よ!」

 

「ただのロケットパンチじゃねえか!?」

 

「まさか、生前使っていた道具や能力ではなく斬られた腕を宝具として使うとは……」

 

茨木童子の使う予想外の宝具をアストラルが的確な推理をする。

 

すると、茨木童子は金時以外に視線を向け、人間でもサーヴァントでもない存在……アストラルに目を付けた。

 

「……おい、そこにいる青白い亡霊よ!」

 

茨木童子はアストラルを指差して呼んだ。

 

「……私のことか?」

 

「そうだ!いや、亡霊とは違う……貴様は何だ!?何故人間の小僧といる!?」

 

アストラル……異形とも呼べる存在が遊馬の隣にいることに疑問と同時に怒りを出していた。

 

「私はアストラル世界の使者……精霊だ。そして、遊馬は私の大切な相棒だ。私は遊馬と共に戦うためにここにいる」

 

「相棒?共に戦う?ふざけるな!!人と異形が共に手を取り、戦うなど愚かな行為だ!!人は鬼よりも最低で卑怯な存在だ!信じてもすぐに裏切られるだけだ!!!」

 

茨木童子は遊馬とアストラル……人間と精霊……本来なら相容れぬ、種族の異なる者同士が一緒に戦う事に対して憤怒を露わにした。

 

特に茨木童子は金時達に酒を飲まされて討伐されたことから人への嫌悪感が特に強い。

 

「そうだな……人は欲望の強い存在だ。それは紛れも無い事実だ。だが、私は人の持つ光を信じている。それは、希望と言う名の光だ」

 

「希望だと?」

 

「私はその希望を信じている。そして……遊馬は私の希望の光だ!」

 

相変わらず遊馬への思いを恥ずかしがらずに堂々と言うアストラルに対し、遊馬は少し照れ臭そうにしながら感謝する。

 

「へへっ、サンキュー、アストラル。おい、茨木童子。言っておくが、俺とアストラルはただの相棒じゃねえぜ」

 

「何?」

 

「俺とアストラルは長くは一緒にいられなかったけど、大切な時間を過ごして来た。アストラルは俺にとって、親友で、家族で、ライバルで……色々な関係のある大切な存在なんだ!」

 

遊馬にとってアストラルは最早相棒という枠を超えた唯一無二の最高の存在である。

 

遊馬は微笑みながらアストラルに向けて右拳を向けると、アストラルは微笑んで左拳を作って軽くぶつけ合った。

 

「人だろうが精霊だろうが関係無い!そいつとの想いが、心が通じ合えば種族の壁なんて簡単に超えられるんだ!」

 

「その通りだ!人には些細なことから国、人種、宗教……様々な要因が壁を作り、争いを生む事になる。だが、私と遊馬は何度もぶつかり合いながらも絆を深めた。その絆が数多の奇跡を起こしてきた!」

 

「あんたが人々から恐れられてきたすげぇ鬼だろうが、関係ない!」

 

「その畏れに屈するほど、我々は弱くない!」

 

威風堂々……まさにその言葉が似合う遊馬とアストラルの姿に茨木童子は歯を噛み締めて苛立ちを見せる。

 

「……なればその身の内に刻むがよい。死出蟲喰らう腑の代わりに詰めるがよい。荒ぶること獣の如く、怖ろしきこと神の如く、浅ましきこと蟲の如く!人の弱さを知らず、武者の誇りも知らず。腐れの腕すら卑しく拾うて振り回す!それが鬼よ。在るだけで人の怖気を起こす、人喰いの天魔と知れ!!」

 

茨木童子はまず狙いを遊馬に定めて右手に火炎を纏わせる。

 

「手始めにその小僧から喰ろうてやる、羅生門大怨起!!!」

 

ロケットパンチの巨腕を繰り出して遊馬を捕らえようとするが、遊馬にはその身を守るために戦う最高のシールダーがいる。

 

「『仮装宝具 擬似展開/人理の礎』!!!」

 

マシュが遊馬の前に立ち、盾を地面に突き刺すと光の壁が形成され、巨大な城壁となって巨腕を弾き返した。

 

「馬鹿な!?」

 

「よっしゃあ!流石はマシュだ!」

 

「はい!私は遊馬君のシールダーです!この盾に誓って、必ず守ります!」

 

瞬時に盾の宝具を展開出来るまでに成長したマシュに遊馬は喜ぶと武蔵がポンと遊馬の頭に手を乗せて撫でる。

 

「よし、次は姉上に任せて!フェイトナンバーズ、やるよ!」

 

「やる気十分だな、姉上!」

 

「うん!頼むよ、遊馬!」

 

「ああ!行くぜ、姉上!」

 

遊馬は武蔵をフェイトナンバーズに入れ、デッキからカードをドローする。

 

「俺のターン、ドロー!よし!魔法カード『増援』!デッキからレベル4以下の戦士族を手札に加える!『フォトン・スラッシャー』を手札に加え、特殊召喚!更に『レスキュー・ラビット』を通常召喚!レスキュー・ラビットの効果でこのカードを除外して、デッキからレベル4以下の同名通常モンスター2体を特殊召喚する!来い、『ちびノブ』達!」

 

一気にレベル4のモンスターが3体並び、遊馬は武蔵のフェイトナンバーズを掲げる。

 

「行くぜ、姉上!俺はレベル4のフォトン・スラッシャーと2体のちびノブでオーバーレイ!!3体のモンスターでオーバーレイ・ネットワークを構築!エクシーズ召喚!!」

 

フォトン・スラッシャーとちびノブ達が光となって地面に吸い込まれ、光の爆発が起きる。

 

「二つの刀剣にて数多の未来より勝利を掴め!一刀繚乱!未来を斬り開き、空の境地へと進め!!」

 

光の爆発から二つの斬撃が天へと登り、天下無双の二刀流剣士の姿が現れる。

 

「現れよ!!『FNo.39 天元百花 宮本武蔵』!!!」

 

現れたのは蒼く光輝く着物の衣装に動きを阻害しない純白と金色の装甲を身につけ、両手には愛刀の二刀を構える武蔵だった。

 

しかし、その装甲は同じ『FNo.39』のアルトリアや沖田とは細部が異なっていた。

 

同じ希望皇ホープの力を宿しているが、武蔵のは明らかに別の希望皇ホープの力だった。

 

それは武蔵が目指している『空』の概念に対し、希望皇ホープが持つ複数の進化の中でも『原初の記憶』が共鳴してその力を貸しているのだ。

 

「更に魔法カード『オーバーレイ・リジェネレート』!このカードは自分のモンスターエクシーズのオーバーレイ・ユニットとなる!」

 

武蔵のオーバーレイ・ユニットが4つとなり、ここで武蔵の効果を発動する。

 

「そして、姉上の効果!オーバーレイ・ユニットを一つ使い、手札・デッキからモンスターを1枚墓地に送る!送ったモンスターの属性によって姉上は効果を発動する!」

 

武蔵はオーバーレイ・ユニットを二刀で斬り、遊馬はデッキからモンスターを1枚選んで墓地に送る。

 

「俺はデッキから光属性『虹クリボー』を墓地に送る!光属性を墓地に送った時、姉上の攻撃力は2倍となる!」

 

次の瞬間、武蔵の体から眩い光が解き放たれ、膨大な光の力の濁流が辺りを包み込む。

 

「これがフェイトナンバーズの力か……凄い、今なら何でもできる気がするよ。遊馬!」

 

「ああ!姉上で茨木童子に攻撃!この瞬間、姉上のもう一つの効果!姉上はオーバーレイ・ユニットの数×1回、相手に攻撃出来る!」

 

「今の私のオーバーレイ・ユニットは3つ……つまり、4回攻撃だよ!」

 

武蔵は二刀を鞘に納めて目を閉じる。

 

「南無、天満大自在天神」

 

すると、武蔵の背後に巨大な影が現れ……その姿に茨木童子は目を疑う。

 

「ば、馬鹿な……貴様、神を、仏を呼び出したのか!?」

 

それは憤怒の形相を浮かべ、四つの腕で宝剣を持つ仁王だった。

 

その仁王は本物ではなく、武蔵の剣圧によって見せた幻のようなものである。

 

しかし、その手に持つ宝剣は幻ではすまない。

 

「『仁王倶利伽羅仰天象』!」

 

仁王は茨木童子の間合いに立つと四つの宝剣で斬りかかる。

 

しかし、その四つの宝剣の攻撃はあくまで相手の気勢を削ぐための威圧。

 

真の一撃……それは武蔵が鞘から抜いた一刀を構え、全ての力を込める。

 

「行くぞ、剣轟抜刀!」

 

一刀に力が収束され、天を衝くような巨大な光の刃となる。

 

そして、武蔵の背後に一瞬だけ蒼く輝く希望皇ホープの姿が現れ、武蔵は渾身の一刀を振り下ろす。

 

「『伊舎那大天象』!!!」

 

振り下ろされた光の刃が茨木童子を呑み込み、膨大なダメージを与える。

 

「はぁあああああああああっ!!!」

 

武蔵は振り下ろした一刀を更に動かし、光の刃を連続で茨木童子に当てていく。

 

光属性を墓地に送り、攻撃力2倍になったが、そのデメリット効果としてダメージが半分となってしまう。

 

しかし、連続攻撃をする事でダメージを蓄積していき、最後の一撃で茨木童子をぶっ飛ばした。

 

茨木童子は羅生門に激突し、あれだけの攻撃を受ければタダでは済まない……そう思った矢先だった。

 

「くはは、くははは!滾る、滾るな!」

 

茨木童子は体と着物についた砂埃を払いながら何事も無かったかのように出てきた。

 

「う、嘘でしょ……私の剣が……」

 

「ふざけるなよ……武蔵姉上の攻撃が効いてないのか……!?」

 

「どういう事だ……!?」

 

武蔵と遊馬とアストラルは何故茨木童子にあまりダメージが与えられてないのか困惑していた。

 

「やるな、女剣士よ!汝の剣と仏の剣はなかなか効いたが、今の吾はそう簡単にはやられん!ひとまず仕切り直しといこうかッ!」

 

「逃すか阿呆!吹き飛べ、黄金──」

 

「くはな、急ぐな、こう急ぐな!吾らが酒宴はまだ続くぞ!くははははは!」

 

茨木童子は金時が黄金喰いを繰り出す前に一瞬で羅生門の奥へと走っていき、消えてしまった。

 

「ゴールデン、ここは一時撤退しよう。茨木童子のあの強さは尋常ではない。こちらも手を考えないといけない」

 

「ちっ……分かったぜ、アストラル」

 

「一度、京都から離れよう!あの桜の木の元でキャンプだ。かっとび遊馬号!!」

 

遊馬はかっとび遊馬号を呼び出し、みんなを連れて一気に京の都から離れて撤退した。

 

 

京の都を脱出した遊馬達は最初に出会った桜の木の下でキャンプをして対策を練ることにした。

 

金時の推測によると茨木童子は眠っている酒呑童子の力を得て生前以上の力を得てかなり強力な鬼となっているとのこと。

 

武蔵の渾身の一刀を受けても耐えられたのはその所為だった。

 

「くっ……全力で戦ったのに鬼を倒せないなんて、まだまだ私も修行不足だな……」

 

そして、武蔵は茨木童子を倒せなかったことに深く落ち込んでいた。

 

「それにしても……」

 

武蔵は目を閉じて茨木童子と酒呑童子の姿を思い浮かべた。

 

一般的な鬼のイメージとはかけ離れた鬼とは思えない美少女とも言えるその姿に武蔵はその思いを呟く。

 

「伝説の鬼達が──あんなに見目麗しいなんて……」

 

「姉上?」

 

「武蔵?」

 

武蔵はフッと笑みを浮かべてからその場に崩れ落ち、ガクッと項垂れて悔しそうに地を叩く。

 

「私は、生まれる時代を間違えた……」

 

「あ、姉上……?」

 

「こやつはこれほどまでに大馬鹿だったか……」

 

遊馬は唖然とし、小次郎は額に手を当てて大きなため息をつく。

 

武蔵は隠れた趣向として美少年好きで茨木童子と酒呑童子の鬼の美しさに平安時代に生まれたかったと落胆した。

 

落胆する武蔵は放っておくことにし、遊馬達はカルデアから送られてきた食材で料理をして夕食を取り、明日に備えて休むことにした。

 

そして……遊馬は当然寝ることになるのだが、酒気に酔っているマシュが宣言通りに添い寝をし、更には武蔵も参加して二人で遊馬を挟むように寝ることになった。

 

緊張したが流石に疲れたので遊馬もすぐに眠りについてしまった。

 

眠りについた遊馬は夢を見た……それは遠い古い時代の昔の記憶。

 

それは森の中にいる一組の男女……金時と酒呑童子だった。

 

二人は宿敵同士のはずだが、まるで互いを想っているように言葉を交わしており、そして……楽しそうに戦っていた。

 

そして、夢が終わると遊馬はパチッと目を覚まして起き上がった。

 

「今の夢……」

 

遊馬は両隣にいるマシュと武蔵を起こさないように立ち上がると、皇の鍵で休んでいたアストラルが現れた。

 

二人は桜の木に寄りかかって京の都の方角を見つめている金時の元へ向かった。

 

「──チ。起こしちまったか。すまねえな」

 

「ゴールデン、さっき夢で……」

 

「オレも気が抜けちまってた。うたた寝で昔話とか、いい笑い話だっつーの」

 

「やはりあれは君の生前の記憶……」

 

マスターは睡眠時に契約しているサーヴァントの記憶を夢のような形で見る事がある。

 

マスターである遊馬と、遊馬と魂で結ばれているアストラルは金時の生前の記憶の一部を夢で見た。

 

「ま、ようはアレだ。酒呑のヤロウとは何度も因縁があってな。本気で打ち合っても勝負はつかねえ、遊びで賭け事をしても勝負はつかねえ。お互い、こりゃあ引き分けしかない相手に出会っちまったなあ、と観念したもんだが……頼光の大将が出張ってきてな。鬼を相手に何をしている、ってよ」

 

金時と酒呑童子は不思議な関係だった。

 

化け物を討つ頼光四天王の一人でありながら酒呑童子を憎く思っておらず、そんな酒呑童子も金時を気に入っていた。

 

しかし、頼光はそれを認めるわけにはいかなかった。

 

鬼は人に仇なす存在……退治しなければならない。

 

「大将は酒呑に毒の酒を飲ませて、鬼たちをまるごと眠らせた。後は分かるだろ。オレは眠った酒呑の首を、後ろから断ち切ったんだよ。なのに、あのヤロウ……死ぬ時まで、うっすら笑いやがった。“お先にな?”なんて呟きやがって。最期までテメェの人生ってヤツを愉しみやがった」

 

「……凄い奴だったんだな、酒呑童子って」

 

「ああ。ホント、すげえ女だぜ、実際。オレゃあ、いまだに勝てる気がしねえ」

 

金時は酒呑童子の事を思い出し、小さく笑みを浮かべた。

 

酒呑童子の事を語る金時の姿を見てアストラルはある考えに行き着き、静かに尋ねた。

 

「……ゴールデン、君は酒呑童子に好意を寄せていたのか?」

 

「──バッ!?バカなことを言ってんじゃねえ!!どうしてオレがあんな鬼娘を!?」

 

「……顔が赤くなっているぞ?」

 

誰が見ても明らかなぐらいに金時の顔が真っ赤に染まっており、遊馬もあっさり信じて頷いた。

 

「そうか……ゴールデン、酒呑童子が好きだったのか」

 

「ダァーッ!?そんなストレートに言うんじゃねえ!第一、オレは人であいつは鬼だから……」

 

「我々にそんな言い訳は意味無いが?」

 

「だよなー」

 

「ウグッ!?」

 

遊馬とアストラルの種族を超えた強い絆の前では、種族の壁の言い訳は皆無に等しい。

 

金時は大きなため息を吐き、自分の正直な気持ちを話す。

 

「……あいつはオレの初恋で、幼馴染で、ライバルなんだよ……だけど、オレは騙し討ちをしてこの手であいつの首を断ち切ったんだよ」

 

金時は自分の両手を見つめ、その時のことを思い出すと若干手が震えてしまう。

 

鬼とはいえ、一番大切な人を手にかけた……その事が金時に大きなトラウマを与えているのだ。

 

そんな金時に対し、遊馬は上着のポケットからD・パッドを取り出した。

 

「ゴールデン、俺さ……お前のその気持ち、すげぇ分かるぜ」

 

「んだと?」

 

遊馬はD・パッドを起動して写真閲覧モードにし、ある人物を写した写真を見せる。

 

遊馬が隣にいる少年と肩を組んでおり、少年は少し嫌な顔をしながら一緒に写真を撮っていた。

 

「こいつは?」

 

「俺のライバル、シャークだ」

 

「神代凌牙。遊馬のライバルで我々の仲間だ」

 

「それで、こいつがどうしたんだよ」

 

「俺さ、シャークとは本当に色々あって、仲間としてライバルとして一緒に戦ったり、時にはぶつかり合ったんだけど……実はシャークは俺とアストラルが戦わなければならない最大の敵だったんだ」

 

「最大の敵?」

 

「詳細は省くが、シャークの前世はバリアン世界と呼ばれる世界を守る七人の皇のリーダーで、我々と世界の命運を賭ける戦いをする事になった」

 

「マジかよ……」

 

金時は思わず絶句してしまった。

 

まさか遊馬が自分と似た境遇で大切な友と戦うことになるとは思いもよらなかった。

 

「俺はアストラルもみんなも、世界を守りたい。守る為にはシャークを倒すしかない。でも俺はシャークも守りたかった。どっちが犠牲になる未来なんて俺は嫌だったんだ」

 

「大将……だけど、それは……」

 

「分かってる。そんなことは甘い考え、ガキのワガママだって。だから俺は最後まで諦めずに探し続ける答えを出したんだ。だけど……」

 

遊馬は暗い表情を浮かべ、皇の鍵をギュッと練りしめた。

 

「大将?」

 

言い出せない遊馬の代わりにアストラルが説明した。

 

「シャークは……遊馬の事を知り尽くしているからこそ最後の攻撃を防ぐ為の罠を張ったが、遊馬の誰かを犠牲にしたくないその想いに自滅してしまったんだ……」

 

「そうだったのか……」

 

「直接手をかけていなくても、間接的に我々がシャークを倒してしまった事には変わりない。遊馬はその事を悔やんでいるんだ」

 

遊馬も凌牙を倒してしまった事が今でもトラウマになっている。

 

大切な人を手にかけた苦しみ……遊馬と金時は同じ苦しみを背負っていたのだ。

 

「あっ、だけど心配しなくてもいいぜ。最後はシャークやみんなはちゃんと復活したからさ!」

 

「ふ、復活……?俄かに信じられないが、何か裏がありそうだな。そこんところは後で教えてくれよ」

 

「ああ。あ、えっと……うまくは言えないけど、俺は思うんだ。ゴールデンと酒呑童子は少なくとも、敵同士でも心は通じ合ってはいたんだろ?でも、色んなことが重なって結局は退治しなくちゃならなくなった。ゴールデンは人々を守る為に酒呑童子を斬った……」

 

遊馬はこれから何を伝えたいのかしっかり聞く為にゴールデンは正面から堂々と耳を傾けた。

 

「……そうだ」

 

「でも、それはもうこの世界にとっては過去の出来事で、過去を変えることはできない。だけど……これからの未来はまだ決まっていない!」

 

「未来……だと?」

 

「酒呑童子は少なくとも、サーヴァントとして召喚されているんだろ?」

 

酒呑童子は茨木童子と同様に英霊となっており、サーヴァントとして召喚されている。

 

「だから、茨木童子から助け出した後に俺と契約するよう頼むんだ。そしたら、ゴールデンと酒呑童子を必ずカルデアに召喚してやる!」

 

遊馬の考えに金時はハッと気づいて目を大きく見開いた。

 

「オレと……オレと酒呑を、大将たちの拠点……カルデアに……?」

 

「そしたら、二人は俺のサーヴァントだから争う必要は無いし、一緒に過ごせるだろ?」

 

遊馬は満面の笑みを浮かべて提案した。

 

過去の出来事は変えられないが、遊馬がカルデアに二人を召喚して新しい日々を与える。

 

それが、遊馬が考えた二人の未来だった。

 

「一緒に飯を食ったり、酒を飲んだり、遊んだり、話をしたり……前に出来なかった事は何でも出来るぜ!」

 

「……い、良いのかよ。酒呑は鬼だぜ?大将、喰われちまうぞ?」

 

「心配するなって。俺にはアストラルやマシュ、みんながいるから。もしもの時は守ってくれる。それに、何だかんだで俺はモンスター達を使役しているようなもんだから、何とかなるって!」

 

「大将……」

 

「それに、君の養い親で上司の源頼光はいない。誰も君たちの関係を咎めるものはいないだろう」

 

寧ろ人と鬼の種族を超えた二人の仲を応援しようとするサーヴァント達がいるかもしれない。

 

「だからさ、必ず取り戻そうぜ。茨木童子からゴールデンの大切な人……酒呑童子をさ!」

 

立ち上がって金時に手を差し伸べる遊馬。

 

その姿に金時は金色に煌めく、希望の光が輝いているように見えた。

 

金時は笑みを浮かべて遊馬の手を取り立ち上がった。

 

「サンキュー、大将。お陰で色々振り切れたぜ!茨木の奴にきつい灸を据えて、必ず酒呑を取り戻す!!」

 

「その調子だぜ、かっとビングだ!ゴールデン!!」

 

「おうよ!かっとビング……いや、『ゴールドビング』だ!!」

 

金時はかっとビングを改良し、『ゴールドビング』と命名して気合いを入れた。

 

思いを新たに遊馬達は茨木童子を倒す為、そして……金時は酒呑童子を取り戻す為の戦いへ向かう。

 

 

 

 




茨木童子は何回も戦うので大変ですが、ここでは省略することにします。

ゴールデンと酒呑童子のカップリングが好きなので少し強調しました。
まあ遊馬とアストラルという人と精霊の種族を超えたカップリングがありますので(笑)

今回のフェイトナンバーズはこちらです。

『FNo.39 天元百花 宮本武蔵』
エクシーズ・効果モンスター
ランク4/光属性/戦士族/攻2500/守2000
レベル4モンスター×3体以上
このカードの属性は「地」「水」「炎」「風」としても扱う。
このモンスターはエクシーズ素材の数+1回、相手モンスターに攻撃出来る。
1ターンに1度、エクシーズ素材を取り除き、デッキ・手札からモンスターを墓地に送る。墓地に送ったモンスターの属性によって以下の効果を発動する。この効果は相手ターンでも使用することが出来る。
・『地』このカードを守備表示に変更し、ターン終了時まで戦闘で破壊されなくなる。
・『水』自分の墓地の魔法カードを1枚選択し、手札に加える。
・『炎』このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した場合、破壊したモンスターの元々の攻撃力分のダメージを相手に与える。
・『風』フィールド上の魔法・罠カードを1枚選択し、手札に戻す。
・『光』ターン終了時までこのカードの攻撃力は元々の2倍となる。この効果を使用したターン、相手の全てのダメージは半分となる。

毎ターンおろ埋出来て更に追加効果を持つかなり強い子になっちゃいました笑
闇属性はルールで出来ませんが。

次回で羅生門編を最終回にします。
色々派手に戦おうと思います。

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