Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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今回はマシュちゃんと武蔵さんが暴走します(笑)
遊馬くんが色々ピンチです!
書いててとても楽しかったです。


ナンバーズ106 酒気暴走!酔いに満ちた京の都!

遊馬はこれまで数多の敵と対峙し、かっとビング精神の元、それを最後まで諦めずに戦い抜いてきた。

 

しかし、そんな遊馬はある意味人生最大の危機を迎えていた。

 

それは……。

 

「遊馬君、大丈夫ですよ。私が必ず守ってあげますからね!」

 

ムギュッ!

 

「お姉ちゃんに任せてね。私の二刀流が火を吹いてどんな敵もバッサバッサと薙ぎ払うからね!」

 

ムギュッ!

 

マシュと武蔵が遊馬の両腕に抱きついてそのたわわに実った胸を押し付けていた。

 

流石の鈍感な遊馬もこれはあまりにも恥ずかしく、緊張感マックスでまともに動けない状況だった。

 

「誰か……誰か助けてくれぇえええええっ!!」

 

遊馬の悲痛な絶叫が京の都の空に響き渡った。

 

 

今から少し前……遊馬達は謎の酒気に覆われた京の都に到着した。

 

都に入って街の様子を伺うが、人々は酔っているのかどんでもなく滅茶苦茶に騒ぎまくっていて、言うなればあまりにもカオスな状況だった。

 

「やべっ……俺も酔いそうだ……」

 

未成年で酒に弱い遊馬は酒気に鼻と口を押さえて苦しそうにすると、アストラルはナンバーズの一枚を取り出して遊馬に渡した。

 

空中に『41』の刻印が浮かぶと酒気による遊馬への不快感が全て無くなった。

 

「アストラル?」

 

「酒好きのモンスター、『No.41 泥睡魔獣バグースカ』の力を使った。これで酒気による君への影響は無くなった」

 

「サンキュー、アストラル。助かったぜ」

 

「ああ。しかし、この状況……酒気の所為でこれほど人々がおかしくなるとは……」

 

「言ってるこたぁ物騒だが、まだ理性はある方だ。刃物を持ち出さないうちはかわいいモンだがよ……気づいてるか?どんどん濃くなってきてやがる」

 

金時は都に漂う酒気が街に入ってからどんどん濃度が高くなっていることに気付いた。

 

「つまり、濃度が高い方に敵である鬼がいる可能性が高いな」

 

「ここでこれだ。こりゃあ気を引き締めないとな」

 

アストラルと金時の言葉に一同は緊張感を高めて行動を心がける。

 

しかし、マシュはあちこちに点在する桜から舞い散る桜の花弁に見惚れていた。

 

「相変わらず桜は綺麗ですが──」

 

少し強い風が吹き、桜の花弁が一気に飛んでその内の数枚が遊馬の頭に乗りそうになった……その時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………っ!?遊馬君、危ないっ!」

 

ムギュッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……え?」

 

「どうした、マシュ……?」

 

アストラルがマシュの危機を知らせる声に振り向いたが、目に映った光景は……。

 

「ふう、危ないところでした。遊馬君の頭の上に桜の花弁が落ちてきたので」

 

「えっ!?な、何で!?花弁が落ちたぐらい……って、抱きつくなよ!恥ずかしいじゃねえか!?」

 

マシュは頰を赤く染めて遊馬に抱きついていた。

 

目がとろんと緩んでおり、明らかにいつものマシュでないことはすぐに分かった。

 

「遊馬君は大役を担っておられる身。その遊馬君を邪魔し、危害を加えようとするものを見逃すわけにはいきません。マシュ・キリエライトは遊馬君の力になりたいのです。もっと、もっと、もっともっと」

 

マシュは遊馬を守りたいと言うシールダーとしての役割に準じているが、その想いが明らかに暴走している。

 

「……おや?大変です遊馬君、少し顔が赤いです。ひょっとして熱でも──いえ、風邪ではありませんか?」

 

「いやいやいや、熱でも風邪でもないから!むしろ監獄塔で体は一週間眠っていたから元気有り余ってるから!」

 

「そうですか?大丈夫ですか?お辛くないですか?なでなでしますか?」

 

「マシュちゃん!?一体何があったの!?お願いだからいつものマシュに戻って!!?」

 

「そう言えば、レイシフト前の小休憩で少しお腹を出して寝ておられました。不覚。ですが、私がいればもう大丈夫です。今日は……いいえ、今日から私が添い寝をして温めてあげましょう」

 

いつものマシュなら絶対に言わないであろうとんでもない爆弾発言に遊馬も血の気が引く思いだった。

 

「アアア、アストラル!マ、マシュがおかしいんだ!?一体何が起きているんだ!!?」

 

「こちらの宝具を使えばしつこい風邪のウィルスも杉の花粉も完全ガード。あらゆる外敵、悪い虫をシャウトアウトなのです!」

 

「風邪も花粉もガードだって!?それは是非とも春の季節には使いたい──って、その盾にそんな機能は無えよな!?」

 

マシュの渾身のボケに思わずボケツッコミをしてしまう遊馬。

 

この緊急事態にアストラルは冷静に状況を分析して答えを出す。

 

「……遊馬、結論を言う。マシュは……『酔っている』」

 

「……はぁ!?酔っている!?え、でもロンドンの時の魔霧は大丈夫だったじゃねえか!」

 

第四特異点のロンドンの魔霧はマシュの体に特に影響はなかった。

 

しかし、何故かこの酒気ではマシュの体に大きな影響を与え、酔ってしまった。

 

そして、その酔いによってマシュの遊馬への想いが爆発してしまったのだ。

 

「十中八九、この空間に満ちている酒気の所為だ。街の人間達もおかしくなっているこの酒気がマシュを酔わせている。ゴールデンは逆に力が溢れているようだかな」

 

「た、対処法とかは……」

 

「無い。バグースカは君に与えてしまったからな」

 

「ガクッ……マジか……」

 

流石にバグースカと同じ酒に対する抵抗力を与えるナンバーズは他に無いので今のマシュを酔う前の元に戻すのは不可能である。

 

最も、想いが暴走しているとは言え、シールダーとして遊馬を守ろうとする意思が強くなっており、マスターである遊馬の指示には従うので大丈夫だろうと結論付けた。

 

しかし……暴走しているのはマシュだけでは無かった。

 

「遊馬〜!」

 

「えっ?どわあっ!?」

 

ムギュッ!

 

「ふあっ!?む、武蔵さん!?」

 

「えへへ〜、お姉ちゃんも混ざるよ〜!」

 

「むむむ、武蔵姉上!?」

 

遊馬を正面から抱きついているマシュに対し、何と武蔵が遊馬を後ろから抱きついた。

 

武蔵もマシュと同じように頬が赤く染まって笑みを浮かべていた。

 

「ま、まさか……姉上も……?」

 

遊馬は更に血の気が引いて顔が青くなっていく。

 

「これは……武蔵も酔っているようだな」

 

「嘘だろ!?だって姉上はセイバーとして能力はかなり高いはずだろ!?」

 

セイバークラスである武蔵は魔力こそ低いが、それ以外のステータスは高く、更に対魔力がAで酒気など無効化できるはずだが……。

 

「ん〜?どうしたの、遊馬?ほらほら、お姉ちゃんにもっと甘えてよ〜!」

 

どう見てもスキルが役に立っておらず、遊馬に甘えて欲しいとせがんでいる。

 

「ダメです武蔵さん!遊馬君は私に甘えてもらうんですから!」

 

「じゃあ、同盟組もうよ!」

 

「ど、同盟?」

 

「うん!ほら、カルデアには遊馬を狙う奴も多いじゃない。例えば、清姫とかネロとか、そう言う奴から遊馬を守ろうよ!」

 

「そのための同盟ですか、なるほど……シールダーの私とセイバーの武蔵さんで攻守共に完璧ですね!」

 

鉄壁の守りを誇るシールダーのマシュと日本最高の二刀流剣士セイバーの武蔵……確かにこの二人が組めば攻守共に優れたコンビとなる。

 

「分かりました、一緒に遊馬君を守りましょう!」

 

「うん!ありがとう、マシュ!」

 

遊馬に抱きつきながら熱い握手を交わすマシュと武蔵。

 

かれこれ長い時間マシュと武蔵に抱きつかれ、遊馬も羞恥心で限界に近づいていた。

 

「ア、アストラル……助けてくれぇ……」

 

「仕方ない……」

 

アストラルはマシュと武蔵を一時的に抑える為に二人のフェイトナンバーズを取り出し、強制的に収納しようとしたが……。

 

ヒュン!!

 

「……えっ?」

 

アストラルの手にあったフェイトナンバーズが消えてしまった。

 

「ふふふ……アストラルさん、邪魔しないでくださいね♪」

 

「今、遊馬とお姉ちゃんとの大切な時間だからこんな横暴は許さないよ♪」

 

マシュと武蔵はアストラルが瞬きをする一瞬でフェイトナンバーズを奪い取り、強制収納を出来なくした。

 

そして、再びマシュと武蔵は遊馬に抱きつく。

 

フェイトナンバーズを奪われ、これではマシュと武蔵を抑えることは出来ない。

 

「……ふぅ」

 

打つ手が一瞬で無くなり、アストラルは腕を組んでため息をつく。

 

そして、遊馬に背を向いて申し訳なさそうに言った。

 

「遊馬、すまない……非力な私を許してくれ……」

 

「諦めんなよ、アストラルゥウウウッ!!!」

 

アストラルに見放され、遊馬は涙目で絶叫を上げた。

 

アストラルが無理ならマシュが可愛がってるフォウと武蔵のライバルの小次郎に最後の望みをかけるが……。

 

「フォウ、フォウフォウフォウフォウフォウフォウフォウフォウ」

 

小次郎の肩に乗っかっているフォウは何を言っているか分からないが言葉を並べ、全く遊馬を助ける気は無かった。

 

ちなみに……フォウ自身はこんな事を言っていた。

 

(遊馬、もういい加減に正直になった方が良いよ。お酒の力でマシュがあんなに大胆になってるんだからさ。夢と魅力が詰まっているマシュと武蔵の胸部にしっかり触れているんだから男としては喜ぶべきだと思うよ。いくら君が幼いからとはいえ、君も男だからそろそろ欲望のままに楽しんだらいいと思うよ。そしたらマシュは幸せになれるから僕的には万々歳だから頑張ってね)

 

小次郎はフォウを肩に乗せながら静かに遊馬達から距離を取っていた。

 

「すまない、マスターよ……今の武蔵を止められる気がしない……」

 

男絡みの女は強い事を特に知っている小次郎は下手に被害を受けない為に下がる事にした。

 

「悪りぃ大将……オレも無理だわ」

 

「申し訳ありません。私はただの物書きですのでお二人を止められません」

 

金時も紫式部も止められないと白旗を上げ、遊馬は絶望に追いやられた。

 

側から見れば羨ましい限りの光景だが、慣れてない遊馬は顔を真っ赤にしており、体が沸々と熱を帯びてこのままだとオーバーヒートしそうな勢いだった。

 

そんな時だった。

 

「ヒャッハー!新鮮な田舎者やぁー!」

 

「金子おいてけー!」

 

どこぞの世紀末の悪者達みたいな都の物盗り達が現れて遊馬達に襲いかかろうとする。

 

「置いていきません!遊馬君は私たちと行くのですから!」

 

「その邪魔をするなら……覚悟は出来ているよね?」

 

「遊馬君、障害を排除しますね!共同作業です!」

 

「お姉ちゃん達に任せてね、遊馬には指一本触れさせないから!」

 

マシュと武蔵はそれぞれ盾と刀を構えて戦闘態勢を取り、ギロリと京人を睨みつける。

 

「お、おう!頑張れ、かっとビングだぜ!」

 

「はい!マシュビングです!行きます!」

 

「ははは、良いね。私も何か考えようかな?さあ……一気に行くよ!」

 

マシュと武蔵は京人の撃退……もとい、殲滅を始めた。

 

もう二度と悪事が出来ないように、殺さない程度に痛手を与え、大きなトラウマを与えると言う……恐ろしい戦いだが。

 

「……酒に酔って支離滅裂という訳でもない、一見普通に見えるのが不思議だ……この酔い方には何か理由があるのか?」

 

アストラルは今のマシュと武蔵を見て酒気に何かあると睨む。

 

 

一方、カルデアではマシュと武蔵の酒気による暴走で……。

 

「許しませんわ、マシュさん!武蔵さん!二人だけで旦那様とあんな風にイチャイチャと!」

 

「おのれマシュと武蔵め!ならば妻である余が遊馬を奪い取ってやるぞ!」

 

「待っててください、遊馬君!もう一人のお姉ちゃんが行きますから!」

 

「遊馬は私が守るからあんたは下がってなさい、ショタコン聖女!」

 

「だから事ある毎に暴れるんじゃないわよ、この色恋ボケのダメサーヴァント達がぁあああああああああっ!!!」

 

遊馬の元へ行こうとする清姫、ネロ、ジャンヌ、レティシア達を止める為にブチ切れたオルガマリーはマスター代行として他のサーヴァント達の力を借りて全力でレイシフトを阻止していた。

 

ちなみに……小鳥とブーディカはと言うと……。

 

「ねえ、ブーディカさん。私達もあの同盟に参加するのはどうですか?」

 

「うん、良いね!マシュが一緒なら同盟もありかもね!」

 

マシュと武蔵の同盟に密かに参加しようと目論んでいた。

 

 

マシュと武蔵で襲ってきた京人を瞬殺し、二度と悪事を働かないと約束させて遊馬達は都の奥へと向かう。

 

「チ……匂うな。そりゃあ酒にも良い悪いがあるがよ……コイツはとびきり悪い酒だ。まっとうな人間に振る舞うもんじゃねえ」

 

「やはりこれは紫式部が見た鬼が放った酒だと断定しても良いな」

 

「はい。特に……この時代にいた鬼は酒とは深い因縁がありますから……」

 

紫式部はチラッと金時を見ながらそう言った。

 

奥に進むにつれて酒気が更に強くなり、周囲の空間が不気味な赤紫色に染まっていく。

 

そして、見事な巨大な門が見えてきた。

 

「あれは……羅生門?」

 

「羅生門?」

 

「平安京……都の一番南にあったとされる都城の正門だ。だが、次第に荒廃し、羅生門には死骸が捨てられていたと記される」

 

「ここに鬼が……っ!?みんな!」

 

遊馬は門にいる大きな気配に気づいてデュエルディスクを構えた。

 

マシュ達も構えて戦闘態勢を取ると、金時が誰よりも前に出て口を開く。

 

「まさかとは思っていたが、本当にテメェが来るとはな……」

 

そして、金時の言葉に反応するように羅生門にいた気配の元である人影が近づいてきた。

 

「く、は。くははは、くははははははははっ……!」

 

狂ったように笑い出して現れたのは着崩した黄色の着物を着た金髪の少女。

 

しかし、その額には鋭利な二本の角が生えていた。

 

それは……日本を代表する妖怪……鬼であった。

 

「おう、でやがったな茨木童子ッ……!」

 

「茨木童子だと!?」

 

「あの子供が!?」

 

茨木童子。

 

平安時代に京を荒らし回ったとされる伝説の鬼の一人である。

 

「誰かと思えば。おうおう、誰かと思えば。汝は坂田金時ではないか!久しいな!ああ久しいな!汝ひとりか?頼光は?綱はどうした?」

 

綱とは渡辺綱で金時と同じ頼光四天王の一人で茨木童子の腕を切った因縁の相手である。

 

「見ての通りだぜ。だがテメェは……一人じゃねぇようだな」

 

次の瞬間、ビキッと血管が浮き出すほどに金時は全身の力を入れていた。

 

金時は体を震わせながらまるで自分を押さえ込むように茨木童子に問うた。

 

「聞かせろ。ソリャ何だ。『テメェの背に浮かぶそいつは何だ』?」

 

金時のサングラスの奥にある瞳が見つめているもの……それは茨木童子の背後に浮かんでいる小さな影だった。

 

それは茨木童子と同じように紫色の着物を着崩し、腰に酒が入っていると思われる大きな瓢箪を携え、額に二本の角が生えている美しい少女……鬼だった。

 

「知れたこと!これなるは吾が主君にして吾が生贄!吾ら没落の鬼の王、酒呑、酒呑童子のこの様よ!」

 

酒呑童子。

 

平安時代、鬼を束ねた頭領にして玉藻の前と並ぶ日本三大妖怪の一角。

 

日本で一番有名な鬼といっても過言ではない伝説の鬼である。

 

その酒呑童子は眠らされているのか深い闇の霧を纏いながら宙に浮いており、その姿に金時は拳を握りしめて怒りに震えていた。

 

「ゴールデン……?」

 

その後ろ姿に遊馬は呆然としてしまった。

 

宿敵同士であるはずの金時と酒呑童子。

 

しかし、何故か遊馬の瞳には……金時が一番大切な人の尊厳を踏みにじられ、その事に怒りに震えているように見えてしまった。

 

 

 




現れましたよ、最強の鬼、酒呑童子&茨木童子。
茨木童子はめっちゃ強いですから一回では決着はつかないんですよねこれが。

次回は金時と酒呑童子の関係と、それに関する遊馬とアストラルの考えや未来への答えを書こうと思います。

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