Fate/Zexal Order   作:鳳凰白蓮

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祝!100話突破!
Fate/Zexal Orderも無事に100話を突破しました。
これも皆さんの応援のおかげです、ありがとうございます。

さて、今回は遊馬とアストラルと天草との対話です。
世界を救った遊馬とアストラル、世界を救おうとした天草との対話となります。
色々悩みながら書きましたがもし違和感や違っていたら遠慮なく言ってください。


ナンバーズ100 人類と世界を救う者

第六の裁きの間の支配者……天草四郎時貞。

 

その男はジークとルーラーが経験した聖杯大戦の黒幕だった。

 

天草はルーラーを弄り、満足したように清々しい笑顔をすると遊馬とアストラルとアヴェンジャーに目線を向けた。

 

「さて。改めて名乗りましょう。私の名は天草四郎時貞。クラスはルーラーです」

 

「俺の名は九十九遊馬!異世界から来たデュエリストだ!」

 

「我が名はアストラル!遊馬の相棒だ!」

 

「私の名は語るつもりはない。もっとも、ルーラーなら既に私の真名は分かっているだろ?」

 

「ええ、アヴェンジャー。斯様な場所でなければ、違うカタチで出会う可能性もあったでしょうが。復讐のクリストを名乗る貴方には、最早、祈りも言葉も届かないのでしょう。だが、一方で私は貴方を信じてもいます。これ以上ないほどに。この世の地獄を知る者ならば、真に尊きモノが何であるかも同時に知った筈。魔術王の策謀にも貴方は乗らなかった。ならば……」

 

「──黙れ。アレは怨念を持たぬ者だ。恩讐の外に在る存在と馴れ合う道理はない」

 

アヴェンジャーは魔術王……ソロモンと面識があるらしく、そのことにアストラルは静かに耳を傾けた。

 

(怨念を持たない……それは心を持たないと同義だ。つまり、ソロモンは怨みや憎しみなどの感情から人類を滅ぼそうとしたわけでは無さそうだな……)

 

益々ソロモンが『本物』なのかという疑惑を深まる中、アヴェンジャーは天草への答えを示す。

 

「勘違いされては困るな、天草四郎。オレは世界を救う手伝いなぞした覚えはないぞ?」

 

「……確かに、そうでしょう」

 

「だが、世界を救うつもりはないが、今オレが興味があるのは……お前とオレの目の前にいる二人との『対話』だ!」

 

「対話……?」

 

「聞け、天草四郎。ここにいるマスターとその相棒の精霊は異世界からの来訪者だ。そして、この二人は人類と世界を滅ぼそうとした邪神を倒し、人類と世界の全てを救ったのだ」

 

「何と……!?邪神から人類と世界を救っただと……!?」

 

アヴェンジャーの説明に天草は目を見開くほどに衝撃を受けた。

 

精霊を相棒にしている時点で只者ではないマスターだとは思っていたが、まさか異世界からの来訪者で人類と世界を救った本物の英雄だとは思いもよらなかった。

 

天草が生前に島原の乱の総大将として活躍したのは十代半ばでちょうど遊馬と同じぐらいの年齢だった。

 

自分とは比べほどにならないほどの素晴らしい偉業を成し遂げた遊馬とアストラルに対し、天草は深い敬意を抱いた。

 

「素晴らしい……!まさか貴方たちが、人類と世界を救った本物の英雄だとは……貴方たちに敬意を称します」

 

天草はそんな二人に頭を下げて敬意を称した。

 

「へへっ……故郷の有名な英雄に褒められるなんて照れるぜ」

 

遊馬は天草に褒められて嬉しい気持ちになったが、アストラルは目を鋭く細めて静かに尋ねる。

 

「……天草四郎。アヴェンジャーから君は世界を救おうとしていたと聞いた。そして、先程ジークとルーラーは君が聖杯大戦の黒幕で、二人は君が起こそうとした野望を食い止めるために戦ったと言った……君は聖杯を使って何をしようとしていたのだ?」

 

キリシタンだった天草が一体聖杯に何を願おうとしたのか?

 

本当に世界を救うつもりなら誰よりも優しく、他人を思いやる気持ちを持つジークとルーラーが本気で止めようとは思わない筈だ。

 

つまり、天草が聖杯で叶えようとした願いはとんでもない大きな事象と言うことになる。

 

「良いでしょう。世界を救った貴方たちに是非とも聞いてもらいたい。私の願い……それは『全人類の救済』です」

 

「全人類の……」

 

「救済だと……?」

 

全人類の救済。

 

それは人類が永遠に望み、そして打ち砕かれてきた叶うことのない果てなき夢。

 

「私の思う人類救済は、至極単純です。人類共通の根源的欲求の充足。即ち、死への恐怖を取り除くことです」

 

天草の口から語られた言葉に遊馬とアストラルは背筋が凍った。

 

「死への恐怖を取り除くだって……!?」

 

「まさか……天草四郎、君は全人類を不老不死にするつもりか!?」

 

「ええ。ですが、貴方たちが考えている不老不死とは少し異なります。私が行うのは『第三魔法』……『魂の物質化』です」

 

「「魂の物質化……?」」

 

この世界の魔術や魔法の仕組みをまだイマイチ理解していない遊馬とアストラルに対して天草は丁寧に説明する。

 

「少しレクチャーしましょう。物質界において唯一永劫不滅でありながら、肉体という枷に引きずられる魂を、それ単体で存続できるよう固定化する。精神体のまま魂単体で自然界に干渉できるという、高次元の存在を作る業。魂そのものを生き物にして、次の段階に向かう生命体として確立する……それが魂の物質化です」

 

「魂そのものを生命体に……?」

 

「そう言うことか……遊馬、仙人は知っているな?」

 

アストラルは魂の物質化にいち早く理解すると遊馬に分かりやすいように説明する。

 

「お、おう。中国で大昔から伝わる不老不死で不思議な術を使う奴らだろ?日本にもいるよな?」

 

「仙人は厳しい修行の末に不老不死の術を得て、死んだように見せかけて肉体から脱出し、肉体は消滅させることにより、仙人になる……つまり、滅びゆく肉体を無くすことで魂だけで生命体と同じように行動出来るようにするんだ」

 

「それって、全人類がお前やアストラル世界の住人みたいになるって事か?」

 

「いや、アストラル世界の住人は不老不死と言う訳ではない。歳は少しずつ取るし、死はもちろんあるからな……」

 

高次元の存在であるアストラルやアストラル世界の住人は大人や子供まで幅広くおり、アストラル自身は一度死を経験しているので不老不死の存在ではない。

 

「アストラル世界……?なるほど、あなたのような美しい精霊が住む世界があるのですね。でしたら、あなたにも分かるでしょう?人間はあまりにも不完全な存在だ。だからこそ、あなたのように肉体を捨てさせ、魂だけの不老不死になるべきなのです!」

 

天草は人類救済の為にアストラルに向けて熱く語っている。

 

人間が不完全な存在……それは紛れも無い事実。

 

ある意味ではアストラルは天草から見れば完全に近い存在である。

 

異世界の精霊であるアストラルなら分かってもらえる……そう確信していた。

 

アストラルは目を閉じて少し考え、静かに目を開いて答える。

 

「天草四郎。残念だが、私は君の考えに賛同できない」

 

アストラルの返答に天草は動揺を見せた。

 

「何……?何故だ……あなたは人間よりも高次元の存在だ。それなら分かるはずだ!私の目指す人類の救済を!」

 

「……天草四郎。君は人間を嫌っているのではないか?」

 

人類の救済を願う天草だが、島原の乱で人間の邪悪で残酷な一面を見た出来事や、その後も様々な争いを見続けたことから『人間は嫌いだが、人類を深く愛する』という歪んだ考えになってしまった。

 

「……まさか。そう言うあなたはどうなのですか?少年……九十九遊馬と仲良さそうにしていますが」

 

「……確かにあなたの言うように人間は不完全な存在だ。それは紛れも無い事実だ。しかし……私は人間に無限の可能性を持っていると知っている」

 

「無限の可能性……」

 

「ここにいる私の相棒……遊馬や我々が出会ったライバル、仲間達……出会った人間は私の想定を大きく超える可能性を秘めている。それは神と呼ばれる存在すらも凌駕する力だ。だが、あなたが行おうとするそれはその可能性を、力を全て無に帰す行いだ。私はそれを認めるわけにはいかない!!」

 

アストラルは自分の想定を超える人間の持つ無限の可能性を尊重しており、魂の物質化はそれを否定する考えであると否定した。

 

次に遊馬が天草の願いに対する答えを自分なりに考えて言う。

 

「天草さん……確かにあんたの計画で人類はある意味救われるかもしれねえ。みんな、家族や友達や仲間とずっと一緒にいられるからな……だけど、俺もそんな世界は嫌だな」

 

「……何故です?大切な人と一緒に居られるならそれが当たり前の事では?」

 

「俺は世界を救う戦いで沢山のものを一度失った。友達と仲間、敵だったけど分かり合う事が出来た仲間……ここにいるアストラルと見守ってくれた幼馴染以外の全てだ……」

 

「全てを……失った……!?」

 

「だからこそ、大切な人を失いたくない。ずっと一緒にいたいと願う。永遠にこの時間が流れれば良いと思う……」

 

何度も大切なものを失い、その喪失感に遊馬は数え切れないほどに嘆き、苦しんだ。

 

大切な人だからこそ守りたい、ずっと一緒にいたいと誰よりも強く願う。

 

そして、自分と大切な人たちと一緒にいる『世界』を壊すモノを遊馬は絶対に許さない。

 

全てを守り抜くために遊馬は己の全てをかけて戦い、勝利を手にする……それはアヴェンジャーが指摘した遊馬の強欲の罪である。

 

「たけど、それじゃあダメなんだ。人は……いつか別れが来るからこそ、その一秒、一瞬が愛おしいんだ。人間は悲しみを背負っても一歩前に踏み出す事が出来るんだ」

 

遊馬とアストラルは最初で最後のデュエルを繰り広げ、最後には別れを告げた。

 

二人は出来る事ならもっとずっと一緒にいたかった。

 

一度だけでなく沢山デュエルがしたかった。

 

もっと喜びを分かち合いたかった。

 

一緒に色々な事を経験したかった。

 

しかし、二人は互いのそれぞれの歩む『未来』の為に別れることを決意した。

 

「だが、人類は未だに不毛な争いを繰り返している。このままだと世界はいずれ滅びの道を辿ることになる……第三魔法で、魂の物質化で不老不死になれば人類は救われるのです……!」

 

「確かに今でも人と人は争っている。だけど、誰にだって良い心と悪い心が戦ってるんだ。でも、そっから逃げ出さなきゃ、きっとどんな事だってやり直せる。誰とだって、分かり合えるんだ……俺は、俺とアストラルはそう信じている!!」

 

「天草四郎!確かに君の目指す理想は人類の救済の一つの答えとして正しいのかもしれない。だが、我々は目指しているんだ。誰もが分かり合える、光り輝く希望の未来を!!」

 

遊馬とアストラルが信じる希望の未来。

 

それは天草が追い求める『終わりのない夢』であることには変わりなかった。

 

自分では考えられなかったその夢に天草は笑みを浮かべた。

 

「……どうやら、私とあなた達の道は交わりそうにはありませんね。しかし、その揺るぎない信念で貴方達の世界を救ったのですね」

 

天草は自分の信念と遊馬とアストラルの信念が交わらないことは分かった。

 

しかし、その信念で世界を救った遊馬とアストラルに対し、自分では成し得ることのできない、紛れも無いまさに『英雄』と呼ぶに相応しいその姿に天草は心から改めて敬意を評した。

 

「……本当なら、貴方たちに微弱ながら私の力を貸してあげたいところですが、今の私はこの裁きの間の支配者……」

 

今の天草はこの監獄塔の第六の支配者として遊馬とアストラルの前に立ち塞がらなければならない。

 

「心苦しいですが、今だけは貴方たちの敵として戦わせてもらいます。さあ、真なる英雄よ……私と言う壁を超えて見せなさい!!」

 

天草は吹っ切れたような表情を浮かべて刀を構える。

 

戦う事を決めた天草に対し、遊馬とアストラルはアイコンタクトを交わしながら互いの拳をぶつけ合う。

 

「見せてやろうぜ、アストラル。世界を救う……俺たちの力を、覚悟を!!」

 

「ああ!共に行くぞ、遊馬!」

 

「おう!俺は俺自身と!」

 

「私自身で!」

 

「「オーバーレイ!」」

 

二人の体が赤と青の光となって飛び、裁きの間を駆け抜ける。

 

「「俺達/私達二人でオーバーレイ・ネットワークを構築!!」」

 

そして、二つの光がぶつかると、『X』の大きな光となって輝き、二人の魂が一つに融合して垂直落下する。

 

「どういう……ことだ……!??」

 

あまりの予想外の事態に天草は呆然としてしまう。

 

今まで様々な戦いを潜り抜けてきた天草でさえ、今の遊馬とアストラルが起こしている事態に頭が混乱している。

 

そして、二人の魂が一つとなって限界を超えた力を生み出し、世界を救った真の英雄が姿を現わす。

 

「「エクシーズ・チェンジ!ZEXAL II!」」

 

遊馬とアストラルはZEXAL IIへと合体し、天草は驚愕した。

 

「まさか、人間と精霊が一つの存在へと合体して進化するとは……!?」

 

もちろん天草だけでなくアヴェンジャーとメルセデスも驚愕していた。

 

「フッ……どこまでオレを楽しませてくれるんだ、お前たちは!!」

 

「これが、ユウマさんとアストラルさんの力……」

 

そして、何度もZEXALの力を見てきたジークとルーラーはそれぞれ剣と旗を構えながら静かにZEXAL IIの隣に立つ。

 

「ユウマ、アストラル。俺も二人が言う、人間の可能性と希望の未来を信じたい」

 

「共に力を合わせましょう。私達の力を存分に使ってください。お二人の未来を切り開く為に!」

 

ジークとルーラーは遊馬とアストラルの信じる人間の無限の可能性と希望の未来に心を打たれ、改めて自分たちの力を託すと決めた。

 

「ジーク……ルーラー……!」

 

遊馬はジークとルーラーの思いに心が震えると、ZEXAL IIの胸元が輝き、一枚のカードが現れた。

 

「これは……?」

 

「それはジークとルーラーのフェイトナンバーズだ」

 

本来なら監獄塔には存在せず、カルデアに存在するカード……ジークとルーラーのフェイトナンバーズである。

 

四人の絆が強く結ばれた事により、カルデアからZEXAL IIの元へと現れ、白紙だったフェイトナンバーズがその力を解放した。

 

「行くぜ、二人共!」

 

「ああ!」

 

「はい!」

 

ZEXAL IIはジークとルーラーを粒子化させてフェイトナンバーズにいれる。

 

デッキからカードを5枚ドローして手札にし、新たなフェイトナンバーズの召喚条件を確認しながら右手を輝かせる。

 

「「俺/私のターン!全ての光よ、力よ、我が右腕に宿り、希望の道筋を照らせ!シャイニング・ドロー!『ガガガマジシャン』を召喚!ガガガマジシャンの効果!レベルを4から8にする!更にガガガモンスターが存在する時、手札から『ガガガキッド』を特殊召喚し、ガガガマジシャンと同じレベルとなる!」」

 

ガガガマジシャンとガガガキッドが立ち並び、その効果で共にレベル8となるが、まだこれでは召喚することは出来ない。

 

「「ガガガキッドに装備魔法『幻惑の巻物』を装備!装備モンスターは宣言した属性となる!俺は『光属性』を選択!」」

 

ガガガキッドの前に不気味な巻物が現れ、それをガガガキッドが読むと着ていた子供風の魔法使いの服装が純白に輝いて光属性となる。

 

「「これで条件は揃った!闇属性レベル8のガガガマジシャンと光属性レベル8のガガガキッドでオーバーレイ!!」」

 

『『ガガガッ!!』』

 

二体のガガガモンスターがそれぞれ紫と金の光となって地面に吸い込まれて光の爆発を起こす。

 

「「己が道を切り開く邪竜の少年と愛に目覚めし聖女!今、二人の道が一つに交わり、新たな未来を切り開く!!」」

 

地面から膨大な闇と光が溢れ出し、その中から邪悪な闇の力を持つ勇ましい邪竜と炎に包まれた美しき純白の聖女が姿を現わす。

 

「「現れよ!『FNo.95 邪竜と聖女 ジーク&ルーラー』!!」」

 

現れたのは全身が漆黒の竜鱗の鎧を身に纏い、竜人の騎士のような姿をしたジークと純白の鎧に身を包んだルーラーだった。

 

「さあ、行くぞ……天草四郎!!」

 

「あなたを超えさせてもらいます!!」

 

「行きますよ……ジーク……ジャンヌ!!」

 

再び相見えるジークとルーラーと天草……聖杯大戦から続く因縁の戦いが再び始まる。

 

 

 




今回の話は難しかったです。
人類と世界を救うってとんでもない話ですからね。
遊馬とアストラルは未来を信じますが、天草は人間に絶望したからこそあのような強行手段に出たんでしょうね。
どっちも間違ってないから難しい話ですよね。

次回はジークとルーラーと天草との対決です。
今度はルーラーが消える心配がないのでジークも怒りや恨みがなく戦えそうです。

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