転生した時の特典がおあつらえ向きだったんだけど   作:けし

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出来上がりました!七つの大罪要素をついに入れて見ました!

さて、テストとは一体なんぞや(哲学)


第74層〜後編〜

「《スターバースト・ストリーム》……!」

 

キリトの持つ2振りの剣がグリームアイズを切り裂いた。

 

キリトのHPバーは半分より少ない程度、被ダメージはこれ以上なく抑えられた形で決まった。倒したと思い、安堵した。身体の力を抜いた。

 

だが、ここは戦場だ。ゲームといえどそれは変わらない。ならば、終わったと分かってもないのに、気をぬくことがどう言う結末に至るか、想像はできるだろう。

 

「があっ…!」

 

キリトは身体の力を抜いた瞬間、真正面からぶん殴られた。武器を持たない手での一撃。殴るという原始的攻撃でありながら、ボスが振るえば相応の威力を持つ。一発でレッドゾーンに突入するHPバー。キリトは殴られた勢いで転がり続け、ステージの端まで吹っ飛ばされた。

 

アスナが呆然としながらも、駆けつける。その手には回復アイテムがあった。結晶系のアイテムは使えずとも、普通のアイテムは使えるようだ。

 

キリトに回復アイテムを与え、HPバーが3分の2ほどに回復したのを確認すると、立ち上がり、ボスと対峙した。

 

「やらせない…キリト君は私が守る…!」

 

手に持つ武器を振りかぶる。瞬間、グリームアイズの腕の筋肉が隆起し、その力でもって、武器が振り下ろされた。

 

自分が真っ二つになる瞬間を思い描き、咄嗟に眼を瞑るアスナ。

 

ギィン!!

 

だが、いつまで経っても衝撃が来ないことを不思議に思い、目を開けた。そこにいたのは、

 

「…悪かったな。待たせちまった。あとはゆっくりしといてくれ。キリト…ありがとな」

 

振り下ろされた武器を受け止めたカエデが立っていた。彼は立ち尽くすアスナと目を開けないキリトに視線をやってそういったのち、叫ぶ。

 

「さてさてさーて、いっちょやって見るか」

 

 

 

 

 

◆◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 

 

カエデは右手に握った《ロストヴェイン》を顔と同じ高さまで上げて水平に構え、刃先に左手を添える。同時に、ある言葉を口にする。

 

「神器、発動」

 

その瞬間、《ロストヴェイン》から光が溢れ、カエデを包み込む。その光は眩しくも神々しく感じられた。アスナやクラインは思わず目を閉じる。そして光が収まって、目を開けた。そこには、驚くほどすごい光景があった。

 

「「「「「一人じゃなくても、5人なら、なんとかなるよな」」」」」

 

5人に増えたカエデがいた。

 

姿形が全く同じ。声もその手の武器も同じ。魔法などあるはずのないこの世界ではあり得ない光景。誰もが絶句した。

 

「さて、やることはわかってるな?」

 

「「「「ああ!」」」」

 

「んー、ちょいテンションが高すぎね?」

 

少し苛立った口調でボソッと口にするカエデ。おそらくは指揮を取っている一体が本体だろう。直後、カエデたち5人はグリームアイズを囲むように散開する。

 

「よし、じゃあ行ってこい」

 

本体と思われる一体を残して全てのカエデが突っ込んでいく。

 

分身体のカエデたちの能力はアスナたちが見る限り本体よりも劣っている。だが、それでも十分すぎるほどの力を持っている。

 

全員での時間差攻撃や一体が仕掛けている間にほかのカエデが別の箇所を攻撃するなど、人数差によるメリットを活かした攻撃を繰り出す。その練度は戦いながら話し合ってるのではと思わせるほどだ。

 

そうして群がってくるカエデたちに苛立ちを覚えたのか、グリームアイズが手に持った武器を、体を大きく捻って水平に振り回した。二体が吹っ飛ばされ、光の粒子となった消えた。どうやら、カエデの分身はボスクラスの強力な攻撃を受けると消えるようだ。消えなかった残りの二体が、グリームアイズの足を斬りつけ、その場に留める。最後に、《ロストヴェイン》をグリームアイズの爪先に突き刺して動きを止め、全速でその場を離脱する。アスナはその瞬間、今まで動かなかった本体のカエデが、弾かれたように突っ込んで行ったのを見た。

 

「ダメよ!あいつには普通のソードスキルじゃダメージが与えられないわ!」

 

そう、アスナの全力の一撃でも、僅かしかダメージを受けなかったボスだ。キリトの切り札であろう謎のソードスキルを以ってしても削りきれなかったほどの頑丈さ。そのことが咄嗟にアスナの脳裏によぎり、叫んだ。

 

しかし、カエデは止まらない。そして、またもやアスナは目を見開く。この戦いだけで、何度驚いたのだろうか。そろそろ驚き疲れてきたと、内心そう思った。

 

《ロストヴェイン》が()()ライトエフェクトを纏う。

 

「《リベリオン(反逆剣)》!」

 

グリームアイズの手前で大きく跳び上がり、胸ほどの高さまで跳ぶと、アスナがやっと視認できる程の速度で剣を振った。

 

一撃目。

 

「俺は、キリトを凄い奴だと思ってる」

 

二撃目。

 

「あいつはこの世界を、俺たちを助けるために動いている」

 

三撃目。

 

「今だって、ここまでお前にダメージを与えてくれた!」

 

四撃目。

 

「俺は、あいつに負けたくない。…だから!」

 

五撃目。

 

「あいつと戦う前に、こんな所でやられるわけにはいかない!」

 

六撃目。

 

「だから、お前はここで終わりだ!」

 

そして最後に弓を引き絞るようにして上体を捻り、今までよりも強力な突きをグリームアイズの身体に突き刺した。

 

アスナは刮目した。グリームアイズの体力ゲージがなくなっている。たったの7連撃でそれだけのダメージを与えた。キリトと同じ、新たなスキル。そうとしか思えなかった。

 

様々な疑問を残して、ここに、第74層は攻略された。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、意識を取り戻したキリトと共に迷宮区を出て、74層主街区『カームデット』に戻ったキリト達。そこで、キリトとカエデは先のボス戦で使用したスキルについて問い詰められた。

 

「おいキリの字!何だよあのスキル!見たことねえぞ!カエデもだ!」

「そうよ!私も知らなかったわ!」

「ああ…誰にも言ってなかったしな。でも、情報は公開してるぞ」

「なに?……ホントじゃねえか!でもコレ、お前以外持ち主がいないってことは…」

「ああ、恐らくはエクストラスキル……いや、ユニークスキルだろうな」

「マジかよ…」

「ユニークスキル《二刀流》。片手剣を2本同時に扱うことのできるスキルだ」

「すごい……。というか、カエデくんは!?」

「俺のも同じだ。公開はしてないがな」

「お前のはキリの字よりもよくわからねえぞ」

「同じくユニークスキル《全反撃》。自分に向けられた攻撃を倍以上にして跳ね返すスキルだ。……使ってる本人が言うのも何だが、魔法みたいでチートじみてるぞコレ」

「全くだ」

 

スキルについて一通り談義したのち、キリト達の関心はカエデの武器に移り変わった。相当あっさりした性格してるなとカエデは思った。竹を割ったような、とも言うが、そうでなければカエデやキリトとは付き合っていけないのだろう。

 

「カエデくんの武器って何?どこで手に入れたの?キリトくんのは50層のLAと、リズのプレイヤーメイドだけど、カエデくんのそれは見たこともないよ」

「だろうな。こいつは《はじまりの街》のNPCの店で買ったもんだしな」

 

その言葉はユニークスキルの時よりも大きな衝撃だった。

 

「それ、ホントかよ…!?」

「ああ。片手短剣《ロストヴェイン》。俺の相棒だな」

「あの分身って…」

「この武器の特殊能力だな。こいつ、【神器・魔剣】とか言うアホみたいなジャンルの武器でさ。諸々のステータスも高い上に、《実像分身生成》とかいう力を持ってる。ま、使ったのは初めてだったが」

 

やはりカエデは、キリトよりもチートじみていた。

 

「「「さすが、【白の魔王】だな」」」

「やめろ吹っ飛ばすぞ」

 

全員の心が一致した瞬間だった。

 

「そういえば、LAって何だったのかしら?」

「たしか、カエデがボーナス獲得したのか?」

 

アスナとクラインが目を輝かせてそう聞いた。とっさに身を引くが、この場では意味をなさない。冷や汗が頬を伝った。

 

「…LA……か。ちょっと待ってろ…」

 

右手を振ってメニューを開き、アイテム欄に目を通していく。

 

少しして、カエデはメニューを動かす手を止め、顔を引きつらせた。

 

(ま、マジかよ………!?)

 

その様子を見て、クラインとアスナが詰め寄る。

 

そこに書かれていたのは、二つのアイテム。

 

「《スケープゴート》と《リターン・インベイション》……?」

 

クラインとアスナは頭にハテナを浮かべるが、カエデは顔を引きつらせていた。

 

(またまた…。神様ってのはお節介焼きだな……。はは、笑えねえ……)

 

内心では少し喜んでいるのだが、それを表に出さず、カエデはそっとメニューを閉じた。

 

 

 

 





アイテム解説

《スケープゴート》
第74層LAボーナス。えんじ色のマントのアイテム。自身のアイテム一つを身代わりに自分へのタゲやヘイトを外すことができる。また、身代わりにするアイテムのレア度が高いほど、成功確率は上がる。敵の索敵能力が高いと無効化されることがある。

《リターン・インベイション》
投擲用武器。ダガーとしての利用が可能。その際の性能は普通だが、投擲する際に特殊効果を持つ。《強制スタン》。攻撃した相手を確率で数秒〜十数秒の間強制的にスタンさせる。イメージはfateシリーズの黒鍵。能力的にはゴウセルの【悪夢語り(ナイトメア・テラー)】。

さて、こんなもんですかね(・Д・)ノ

てか、白の魔王っ……どこの魔法少女だお前。

魔神じゃないのは、カエデくんはその辺りの力を扱えないからで、強いて言うなら魔神の一歩手前的な感じ。

無茶苦茶ですかね?

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