転生した時の特典がおあつらえ向きだったんだけど   作:けし

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本来予定はなかったですが、なんとなく戦闘させて見ます。

ただし、戦闘シーンはもうちょっと先( ̄∀ ̄)

では、どうぞ。


*)ニコラス出現の条件を確認したら日付が書いてあってあったことに気づいて、修正しました。


真夜中のクリスマスクエスト

 12月24日。

 

 現実世界においては今頃、クリスマスパーティーでパーリナイしてるパリピがいるだろう。

 

 いまは日付が変わる数時間前。サチとの食事を早めに切り上げたカエデはサチをホームに寝かせて、35層の中にある森に急いでいた。その目的はクリスマス特殊クエスト。カエデの原作知識では『背教者ニコラス』との戦闘である。何が落ちるかはよく覚えていないが多分貴重なアイテムだったはず。そう思って日付か変わる前に倒そうと目的地までダッシュしていた。

 

「!お前ら……」

 

「お!よお、久しぶりじゃねえか!たまには連絡よこせってんだこのヤロー!」

 

 陽気に話しかけて来たのは、SAOが正式サービスを始める前にキリトと同じく出会ったクラインという男性。今では攻略最前線に名を連ねるギルド『風林火山』のリーダーを務める刀使いだ。

 

「お前ら、何でここに?」

 

 聞かなくても分かっていたが問いかけた。

 

「んなの決まってんだろ!クリスマス限定クエストをクリアするんだよ!」

 

「だよなあ〜」

 

 荒い息を整えようとしていたが、1つため息を漏らす。やはり狙っているやつはいた。しかしまだ終わってないかもしれない。

 

「んで、その結果は?」

 

「いや、だから今から行くんだよ」

 

 あ、そういう感じか。少し肩透かしを食らった気がしたがそれは置いといて、カエデは更にクラインに言った。

 

「じゃあ俺も行こうっと」

 

「マジかよ!?」

 

「何驚いてんだよ。別に珍しかねえだろ」

 

「いやな、カエデってこういうのに興味ない感じだからよお、少しばかし驚いちまった」

 

「なんだよそれ。俺だって立派な人間だってんだ」

 

「ハハハ。ちょっとしたジョークだよ、ジョーク」

 

 意図せず場が和んだところで、カエデは振り返り、闇に包まれた森の奥に鋭い視線を投げかける。特に何かがいるとかは感じなかったが、ふと()()()()()()ような気がしていた。

 

(……なにかいたか?気のせいだといいが)

 

 感じた視線の事は無視することにして、気持ちを切り替え、今はクリスマスクエスト攻略に頭を回す。

 

(1人で行くのがいいな。それなら俺のスキルの実験台にもなるし、見られる心配もない。問題は敵の強さだ。単純に考えてこの階層レベルなら問題はないんだが、今回はスペシャルクエストだからな…。強さを弄られていてもおかしくはない。さて、生憎俺の原作知識にはそこらへんが載ってねえなあ。どうしたものか……)

 

 1人顎に手を添えて考えるカエデ。本人は知らないがそれはカエデの容姿と今立っている景色と相まって、そこにいたクライン以下『風林火山』のメンバーの全員の目を奪ってしまっていた。残念ながら『風林火山』のメンバーは全員男なので、惚れるなんて事はなかったがそれでも下手したら新たな扉を開くやつがいるのではないかと思うほど、その光景は幻想的であった。

 

「「「「………………」」」」

 

「……ん、なんだよ?」

 

「あ、いや、……なんでもねえ」

 

「??まあいいか」

 

 クライン達的に男であるカエデがただ考え込んでる姿に見ほれてたなんて口が裂けても言えなかった。もしうっかり口にしようものなら、それを餌に今後色々な事を要求されるだろう。口が悪い、腹黒い、ずる賢いと三拍子揃ったカエデのことだ。要求されることもそれこそ黒歴史確定の死んでもやりたくないものだ。

 

「…俺は1人で行って見る。お前らはついてくんなよ」

 

「な、1人って!お前なあ!!」

 

「なあに、気にする事はないさ。引き際くらいは弁えて戻ってくるよ」

 

「そこまで言うなら……まあ許してやらんこともないが…」

 

「てかそもそもなんでお前の許可なんているんだ?」

 

 もっともである。

 

 クライン的にはカエデやキリトよりも年上なのでみんなの面倒を見ているつもりだ。実際、ギルドのリーダーを務めているわけで、その包容力というか手腕は馬鹿にできない。ただし、それはいざという時のみであることが多く、基本的にはカエデ達より子供な面が多い。生きた年数で言えば前世も含めてカエデもそこそこ長いのだが。

 

 カエデからしてみれば、自分達はこの世界(現実世界)ではまだまだ子供だと分かっているが、この世界(仮想世界)において、年功序列などというものは存在しない。存在しても意味がない。なぜなら、この世界はそもそも年齢層が薄い上に、生きた年月ではなく、強いか否かで全てが決まるからだ。それこそ、ギルド内での序列や、生死までも。

 

 そういう世界であるがゆえに、カエデやキリト達も、自分達を見守る存在などというものがわかりにくく、曖昧になっている。だから、クラインのような存在が身近にいることの有り難みというか、そういうものが分からない。

 

 まあしかし、カエデ的には自らの能力を把握し、更にレベルアップするためのある種絶好の機会な訳だから、能力を秘匿している身としてはぶっちゃけいない方がありがたい。

 

「とにかく、俺は1人で行ってくるぞ。ああ、一応聞いておくけどさ、……倒してしまってもいいだろ?」

 

「けっ!倒せなかったら代わりに俺たちがぶっ倒してやるよ!」

 

 その返事が耳に入る時にはすでにカエデは森の奥へ駆け出していた。

 




さて、次は戦闘回(予定)。

あまり期待しないでね?|Д・)ノ ピョコ

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