とある妖怪の運命操作   作:rockzero21

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大変遅れましたが少々書く時間がなくて…あと上条の台詞が大変だったので。また、同日、新作を公開するかも…今後とも宜しくお願いします。今回に限らず話の構成はトレスっぽいこともあり楽ですが、口調を合わせるためにほぼそのまま…ということも。
 其れと言い忘れましたが、この作品は作中においてラッキースケベを超す程度の猥談が行われる可能性があります。登場人物たちは日常の一場面と捉えていますが、苦手な方は右足を前にだし、踵を軸に半回転したのち、足を揃えて進むことをお勧めします。


§1(1) 魔導書との邂逅

 此処は寮の一室。そこまで広くはないが、部屋は片付いておりそこまで窮屈さが感じられない。カチッ、カチッという独特な二天府式時計が快いリズムを奏でる。文月の猛暑もこの部屋だけ心なしか和らいでいるようだった。

 そんな長閑な雰囲気を破ったのは枕元の携帯から流れる電子音だった。私ーー上条レミリアは其処で寝惚け眼のまま電話をとった。

「上条ちゃーん、上条ちゃんは馬鹿だから補習です。」

担任の小萌先生からの連絡網(ラブコール)だった…不幸ね。

 そう、不幸。私は生まれつきずっと不幸が付き纏っている。世の中には人間万事塞翁が馬という言葉があるが、私の場合兵役を免れたと思ったら病床まで襲撃が来たくらいの不運さだ。否、不運というより、もう其れは呪いの域にまで達しているのではなかろうか。

 まあ補習があるというのなら受けない訳にはいかない、と私は考え、先ず腹拵えをすべきと冷蔵庫を開けると温風と共に腐敗臭。先日超連装砲とかそんな名前の奴の所為で、雷が起こっていたらしい、家電の殆どが落ちていた。気分転換にでもと布団を干すことにし、私は着替えて今さっき入っていた布団を運び出した。キャッシュカードは破壊されており、インスタント拉麺は現在下水道を漂っている。今日は朝食抜きの様だ。御空はこんなに青いのに御先は真っ暗…声に出ていたかしら。如何にもこうにも、せめて此のシーツの様に先の見通しがつけばなぁ。

 ん、私はまだシーツなど干してはいない筈。だとしたら『此れ』は何なのだろうか。よく覗き込むと其れは少女だった。其の姿を見るにシスターなのだろう。顔は外国人の様で、英語のスピーキングで何故かサンスクリット語しか出ず、そうと分からなかった英語教師に鎖国を推奨された私は少し不安を覚えた。すると彼女の口から何やら言葉が聞こえてきた。

「……ォ…………………」

 オ?

「おなかへった」

 今お腹減ったと聞こえたのは気の所為だろうか。

「おなかへった」

「……」

「おなかへった、って言ってるんだよ。」

 少なくとも日本語が喋れるのは間違いない様だ。そして彼女の言動から察するに、

「つまり、貴女は行倒れであると言いたいのかしら。」

「倒れ死に、ともいう。」

「……」

「おなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな。」

そう言われ私は動かず部屋を見回した。するとこの前貰ったが口をつけていない焼き蕎麦麺麭を取り少女に差し出した。とても酢く(私は御飯派であるため食せず放置していた)到底食えたものでもない。ただ人というものは飢えた時は本能的に食料を欲するものだ。此の腐った麺麭も食べてくれるだろう。そしてその味のために私は関わり合いにならず済むだろう。今思えば食物を寄越さないべきだった。少なくとも此処までの考えは確かであり正しかった。ただ、一つの誤算…此奴の異様なまでの食欲を除けば。

「ありがとう、そしていただきます。」

 其の儘奴は、丸ごと、私の手も巻き込み、口を閉じた。そして私を不幸が襲った。

 

「まずは自己紹介をしなくちゃいけないね。」

「默れ。貴女は私の質問に答えさえすれば良い。」

「私の名前はね、インデックスって言うんだよ。」

「默れと言ったのが聞こえなかったかしら。其の頭カチ割って直接入力しても良いのだけれど。それでインデックスだって?僞名ね。もし本名だというならば其の名をつけた人の氣が知れないわ。恐らく貴女が目録だか配列(array)だかを操る力でも持っていたんじゃない?」

「見ての通り教会の者です、ここ重要。あ、バチカンじゃなくてイギリス清教のほうね。」

「……(何かが切れる音)」

「あっ、インデックスってのは禁書目録のこと。魔法名ならDedicatus545だね。」

「やっと聞く氣になったようね。で、何?『捧げられてしまった』だっけ?というより日本語(ひのもとことば)で喋ってくれないかしら。それに此方の事情も分かって貰いたいわ。」

私はこれから補習に行かなければならない。此のようなところで油を売っている場合ではない。そもそも人っ子一人とて匿う気すらない。名前?どうでもいい、どうせ必要なくなるのだから。これも私の不幸が運んで来たものかしら。本当にジェンガ艦橋でもあるんじゃないかと疑いたくなるわ。

「それでね、このインデックスにおなかいっぱいご飯を食べさせてくれると嬉しいな。」

「シスターならもう少し遠慮というものを辨えなさい。というより人の家に上がりこんで食㕝を作ってやったらどう考えても此處に住み着くつもりでしょう。此の五月蠅いシスターに好感度を上げられでもしたらバッドエンドルート眞っ逆(massacre)さまで死ぬ未來がみえるわ。」

「えっと…流行語(スラング)、かな?何を言っているかわからないかも。」

 さすがにこういう知識はないのだろう。流石外国人。このまま外に出てその辺にでもいる蝉でも食って食いつないで欲しい。かなり美味そうだし。

「けど、このまま外に出たらドアから三歩で行き倒れるよ?」

「鄰人にでも助けて貰いなさい。貴女は餓鬼なだからきっと好待遇よ。」

「そしたら最後の力を振り絞ってダイイングメッセージを残すね。君の似顔絵付きで」

「な、何ッ?貴様ァァァァ。」

「仮に誰かに助け出されたら、そこの部屋に監禁されてこんなにやつれるまでいじめ倒されたって言っちゃうかも。……こんなコスプレ趣味を押し付けられたとも言う。」

「この尼‼︎こんな姑息な手を使いやがって。眞面で殺そうかとも思ったわ。分かった、何か作れば良いんでしょ。」

 と言いつつ私は平鍋を持って考え事を始めた。彼女からは、『学園都市の匂い』がしない。少なくとも外の者であることは確実だ。だが、此処で学園都市の環境がネックになる。普通の人なら大学が立ち並ぶ街を想像するだろうが、此処は逆に学校の()()街があると言った感じだ。否、学校というにも程遠い。此の都市の中は外より数十年の先の技術が使われている。そして其の技術を出さないために周囲は高い壁で囲まれ、出るにも入るにも認証が必要。不正に入ったら、三台の静止衛星により其の姿がとらえられ、学園都市の侍所である警備員(アンチスキル)風紀委員(ジャッジメント)に捕まる。そんな中此処まで来たのだとすれば、例の88cm砲(ビリビリ)による異常気象が功を成したのだろうか。

 そう考えながら生塵を加工して野菜炒めという名の残飯を作り。インデックスに与えた。コンポストには十分使えるようだ。

「ところで」ブラウスを着ながら私は聞いた。「何故貴女はベランダの手すりに引っ掛かっていたのかしら。非現実的な考え方なのだけれど。風に吹かれて引っ掛かったとかはないでしょう。」

「…、間違ってはいるけど似てるかも。屋上から屋上へ飛び移る時に落ちたんだよ。」

「何故そんな藝當をしていたのかしら。メリットとデメリットが釣り合わないわ。」

「でもそうするしかなかったんだよ、追われてたからね。」

 

 

 …彼女、追われていると言ったの?

「ホントはちゃんと飛び移れるはずだったんだけど、飛んでる最中に背中を撃たれてね。ゴメンね。落ちる途中で引っ掛かったみたい。」

「擊たれた…大丈夫なの?」

「うん?ああ、傷なら心配ないよ。この服、一応『防護結界』の役割もあるからね。」

 防護結界?電磁バリアだか防弾チョッキだかと同じようなものなのかしら。ただ少なくとも其の言葉が戯言ではないのは確かだ。だとすれば彼女の裏に何があるのか。しかしこの笑顔の少女からは何も読み取れない。しかし、八階の屋上から落ちてきて、本来ならアスファルトに打ち付けられるところを運良くベランダに引っ掛かった、それは紛れもない事実。其れだけは理解できた。

「おいしいね、この料理。でもさりげなく酢で味付けしてるのがにくいね。」

なるほど、此処に居座るというならお前は今日から残飯処理機だ。

 

「で、貴女は何に追われていたのかしら。」

「名前はわかんないなぁ。連中はそこまで名前に意味を見出してないからね。」

「連中、とは?」

「魔術結社だよ。」

 一瞬何を言ったか分からなかった。

「魔術結社?私は空想の話をしているのではないのよ。」

「私のこと馬鹿にしてるね。」

「ええ、生憎ね。ただ、その類のものに對して耐性があることは自負しているわ。此の街には所謂發火能力(パイロキネシス)透視能力(クレアボヤンス)等の『異能の力』があるから。ただ其れは飽くまでも科學の産物、魔術と聞くと急に現實味が薄れるわ。」

 そう、『異能の力』。常識人なら其れを即座に否定するだろう。しかし此の街は違った。此の街の学生は能力の強弱はあれど、皆何かしら能力を持っている。レミリアとて例外ではない。彼女の右手には幻想殺し(イマジンブレイカー)という『異能の力』であれば総て打ち消す能力がある。尤も其れは別の『能力』のカモフラージュみたいな物だが。

「此の街には、藥品打ったり腦信號を弄ったりすれば能力が得られる。それ以上聞かれてもどうとも言えないわ。貴女が崇拜しているという神樣にでも聞いてみなさい。少なくとも此の街では當然なの。當然だ當然です、とさらに弎段活用で強調しておくわ。」

「…でも魔術だって当然だよ。』

「なら魔術は何をどう變化させて發動しているの。能力はそれがきちんと理論立てて説明されているわ。」

「……、けど魔術はあるもん。」

 流石に言いすぎたもしれない。彼女は魔術こそが中心と考え生きてきたのだろう。

「まぁ私も頭ごなしに否定する気はないわ。それで、何故追われていたの。」

「私が禁書目録であり、十万三千冊の魔道書を手にいれるためだと思うな。」

「解説を弎行で。」

「えっと…魔道書っていうのは、まぁ魔術のやり方とでもいえばいいかな。

 つまりそれを見られるってことはどんな魔術も使えてしまうわけ。

 その魔道書を私が持っているから狙われたんだよ。」

「で、その魔道書はどこに。」

「そんな表だったところにはないよ見られちゃまずいし。」

「うー☆流石にそこまで信じきることはできないわ。」

利己的であるものの信頼はできない。ひょっとすれば彼女の空想のこととも考えられる。

「超能力は信じるのに魔術は信じないなんて変な話。そもそも能力が使えるのがそんなに偉いの。そんな天然を捨てた合成着色がそんなに偉いの。」

「……そのて點については全く同意ね。別に能力の有無がそのまま優劣につながる譯ではないわ。ただ根據が明確なだけ。それに能力を《《持っているが使えない》》人だっている。それでよ、私も無能力者(レベル0)とはいえ能力を持っているわ。異能の…幻想の力であれば神のシステムだろうと何だろうと打ち消す代物で、私はこの能力を幻想殺し(イマジンブレイカー)と呼んでいるわ。ドラッグ何かに因るものじゃあない、天然素材(生まれつき)よ。若し䝿方が魔導具か何か持ってきてくれれば實演できるんだけど。」

「だったらこれを使うといいんだよ。」

と言ってインデックスは胸を突き出し、所謂『胸を張る』体勢となった。胸に詰め物でも仕込んでいるのだろうか。然し其れは小さく、少なくとも現状着衣中である私の胸は初期位置で、明らかにインデックスの其れを超えている。

「この服!これは『歩く教会』っていう極上の防御結界で、トリノ聖骸布をコピーして縫目一つ一つにこだわって作られた、『服の形をした教会』なんだよ。」

「でもそんな代物をぶっ壞していいのかしら。」

「さっきもいった通りこの術式は法王級だからね。」

それなら、と言いつつ私は彼女の服に手を近づけた。成る程、縫目が相互作用を起こしている様だ。魔術は本當にあったのだと感心しつつ私は部屋の隅にある槍を手に取り

 

 

彼女に向けて振るった。始めインデックスは状況が読めないと言った風に戸惑いの表情を浮かべたが、それは本の僅かな間だけだった。というのも

 

 

瞬間彼女の霊装が破けたから。

 瞬間、私は頭に激痛を覚えた。

 

 

 インデックスは先ほどから安全ピンで修復作業に取り掛かっている。幸か不幸か壊れたのは各々を繋ぎ止める糸だったらしい。一方私は外的衝撃を原因とする頭痛がやっと収まり始めたところだった。インデックスの方にもう一度顔を向けると、修繕が終わったとみられる彼女は安全ピンだらけの修道服を見せつけてきた。然し其の得意げな仕草とは裏腹に、彼女は今にもドーンといった擬態語が付きそうな表情で此方を睨んできた。まるで新手の幽波紋使いが攻めてきたとでも言わんばかりに。

「ねぇ、先の責任は私にあるのかしら。」

「…あれだけのことがあったのにどうして平然としているの!」

「少なくとも此れを使うよう言ったのは䝿女だし、私は再弎確認したわ。其れに、無能力者の私に文字通り鎧袖弌觸にされたのだから、寍ろ着ていた方が危險だったんじゃない。PCにウイル○バスターだけ入れて完璧だと思い込むようなものよ。」

「もっと意味が分かるような身近な例で「英吉利王女のメアリーは、此れが厡因で女王の暗殺計畫がばれて處刑されたわ。」……ッ。」

早々に論破されて不機嫌な様。

「…、いい、出て行く。」

此処で彼女の退室発言が出た。此方としては生塵の量が減るので置いておきたいが、同時に居候を抱え込む羽目になるので願ったり叶ったりだ。ならば、と会話の中で準備した荷物を持って補習に行こうかとしたら戸の枠にしたたかに足の小指を打つけ、其の拍子にポケットから携帯電話が落ちて混凝土の床に当たって液晶が罅割れ、更に手摺に掴まろうとしたところで夏場珍しい静電気を受け、以上の行動で筋肉に異常が生じたのか、脚が攣った。

「…不幸ね…扶桑お姊樣。」

「ふそう、てのが誰かは知らないけど、その手があるんなら不幸なのは仕方ないね。」

「…何ッ、もう一度言って、説明も交えて。」

「詰まりその手が幸福というオカルトを万々消しちゃっているんだよ。抑もその手を持ったことが不幸かも。」

幸福は消すのに不幸は消さないことに対して少々疑問に思ったが、一先ず理由が分かっただけ良かった。

「其れで、䝿女は此れから如何するのかしら。」

「取り敢えずイギリス清教の教会に行く。」

「教会は、この邊にはないかもね。此の國の人は、特定の宗敎を訫仰するって感覺が薄いから。」

「へ?」

「元々科學の街な上、日本では宗敎の融合が進んでるから。例を擧げると、神道の七五弎に十字(伴天連)敎の結㛰式、佛敎の葬式と弌生に日夲の三大宗教を総て経験しているわ。其れに神仏混淆で出雲大社などにも仏壇があったり。あと英吉利清教の教会がそもそも少ないのは貴女も知っての通りよ。まぁ精々頑張りなさい。」

そう声かけして私と少女はそれぞれの目的地へ向かった。

 

 此処で私は幾つか失念をしていた。先ず、相手側は見失った私の部屋を探すだろうこと。そして、意地でも教会を探すべきだったということ。彼女の記憶が断片的且つ曖昧なものだということ。彼女を追うのは敵とは限らないということ。最後に……運命とは切っても切れない鎖の様な物だということ。




上条レミリア(かみじょう れみりあ、Kamijo Remilia)
16歳 高二
 其の容姿は白人の少女でインデックスをそのまま成長させた様にも見えなくもない。だが親は純日本人であり、また彼らは遺伝子的にも親子関係が認められている。神は菫がかった銀髪で話を追うにつれ伸びていく。
体は原作の幼女体系とは違いグラマラス。背は青ピや土御門ほど。メラニン色素の少ない白い肌をしているが、紫外線に弱いという訳ではないし、ましてや太陽から身を隠してきた訳でもない。
 人に傲慢な態度をとったりはするが、其れなりに熱血的。生まれつきの不幸体質だが、人を不幸から救うことについてはよかったと感じている。
 タイトルからしてだが、彼女は生粋の吸血鬼である…が血を吸わなければ生き残れない訳ではない(ドーピングにはなる)し、太陽が苦手な訳でもない。トマトジュースを好いているが、吸血とは全く関係ない。また、レベル0の妹がいる。

能力
幻想殺し レベル0
 其の名の通り『幻想』に対して右手で触れれば消滅させられる。後述の運命操作により一部対象外。
運命操作 レベル5〜6相当
 詳しくは前話を参照。これによってノーリスクで一部の術式が組み立てれる。これにおいて幻想殺しは効かないが、別の人の立てたものなら壊せる。

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