――――佐為に打たせてやればよかったんだ。はじめっから……
誰だってそういう。オレなんかが打つより佐為に打たせた方がよかった!
全部!全部!全部!!
オレなんかいらねェ!もう打ちたいって言わねェよ!だから
神さま!お願いだ!はじめにもどして!
アイツと会った一番はじめに時間をもどして!!――――
――――その願い、確かに聴き受けた――――
突然自分から離れた自身の半身とも言える存在の幽霊、藤原佐為を探しに東京と広島を2日で往復したその夜。
何の考えもなしに日本棋院へと足を運んだ少年、進藤ヒカル。
今までずっと一緒に居た故に一度も見たことがない「本因坊秀策(幼名:虎次郎)」の棋譜を折角だからと見ることにした。
秀策はヒカルの前に佐為が共に道を歩んだ現代の棋士でも勝てない天才と呼ばれる人物である。
しかし、その秀策は囲碁に関して無知であった故自分で打ちたがったヒカルとは違い、囲碁を知るが故に佐為の力を見抜き、己の全ての対局を佐為に打たせた。
職員とのやりとりからの何気ない気持ちで棋院の資料室にて見た一枚の秀策の棋譜。それは耳赤の一局と呼ばれる秀策の代名詞とも言える一局であった。
その棋譜の中の強烈な一手。そこから彼は永遠に一緒だと思っていたのに消えてしまった平安囲碁幽霊の気高き力と果て無き魅力、そして真の美しさにようやく気付いた。
気付いてしまった。
如何に自分が愚かな存在であったかを。
そしてそれらに全く気付けなかった自分を恥じた。責めた。
もっと自分が囲碁を知っていれば自分を優先などせず秀策同様に全ての対局を佐為に打たせたと言うのに、その方が周りも佐為も満足出来ただろうに、と。
彼は涙を流しながら自分の全てを引き換えにしてもいいから、再びあの素晴らしき存在に、藤原佐為に逢いたいと神に願った。
そしてその逆行の願いは叶うことにはなるのだが、記憶を保ったままの逆行という叶うはずのない願いとの引き換えに、「彼」は「彼女」として二度目の道を歩むことになった。
これは、囲碁の神に愛された天才少年が、自分をとことん怒り、憎み、恨み、追いやった上で二度と間違いなど起こさないからとその記憶を抱えたまま女として記憶を頼りに過去を廻る物語である。
そして今彼は眠りにつき、その精神は15歳の男子として、身体は11歳の女子として、今目覚めようとしている。
しかし、本当に時を戻っただけですべてが元通りとなるのだろうか。
それは誰にも神にさえもわからない。
「過去」、「現在」、「未来」。
時の流れは常に変化を遂げるのだから。
注意:
ネットでSSを書くのは初めてのことなので変な表現があったり文字数少なすぎということがあったりするかも知れません。
出来るだけ更新速度は早めでいくつもりですが、「これだ」という文章が思いつかないことや病気、テストなどの都合で更新できないがことあると思いますので、そこの所はご勘弁を。
誤字脱字やキャラクターの言葉遣いの違和感などお気づきになられたことがありましたらご遠慮なく申し付けください。
最後に、この作品ではヒカルが色々と変な事になります。そこは意図してやっている場合が殆どですので、不愉快に感じた場合は申し訳ございません。