ULTRAMISSION ORB   作:彩花乃茶

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ルサールカより愛を込めて

~~ガイ~

 

 プリズ魔を何とか撃破できてから半月ほどが経過した。

「ねぇガイ。いっつも演奏してるその曲は?」

 

 俺がハーモニカを奏でているとアンジェリカがこの曲のことを尋ねてきた。最初の頃は話しかけても物陰に隠れてしまっていたアンジェリカだがそれは最初の1~2か月程度で済み、今では普通にアンジェリカから話しかけてくれるようになった。それどころかここ最近は2人きりでいる時には親しい人が呼ぶ『アンジュ』と呼ぶように言ってくるようになってしまっている。

「これか?これは俺の故郷の曲なんだ」

 

 数千年も帰っていない故郷の曲。

「へぇ、でもそのハーモニカ、だいぶボロボロだね」

 

「言われてみれば確かにボロボロだな。300年前作ったばかりなんだけどなぁ」

 

「えっ!?300年も使い続けていたの!?そりゃボロボロになるでしょ。ねぇガイ!これをあげる!」

 

 そう言ったアンジェリカは俺が使っていたハーモニカより少し大きめのハーモニカを手渡してきた。

「それね。この前私が作ったんだ!」

 

「へぇ・・。アンジュが自分で・・」

 

「・・ごめん。ちょっと不格好だよね。やっぱりもっとちゃんとしたのを・・」

 

「いや、これでいい。アンジュが作ってくれたものなんだろ。お姫様からの貰い物を無碍になんてしないさ」

 

 アンジェリカが作ってくれたハーモニカを受け取った俺はさっそくそれを使って演奏してみせた。

「・・・うん。何度聞いてもいい曲だよね」

 

「アンジュ。そろそろ時間なんじゃないのか?」

 

アンジェリカが13歳となってからいよいよ次期女王としての公務や外交などを始めるようになった。そしてそろそろその公務の時間というわけだ。

「え~、もう?・・・それでは行ってくるのじゃ」

 

 普段はそんな話し方をしないアンジェリカだが、女王と普段の自分を切り替えて行動するためにまずは形からということでとりあえず仕事中の喋り方を威厳があるようにしてみているらしい。・・・だがまだ14歳になったばかりのアンジェリカには喋り方を変えたところでそれほど威厳があるようには感じられないな。

「・・頑張れアンジェリカ」

 

 

 

 

~~ジャグラー~

 

 バリアの外、城の中庭を見下ろせる大きな樹から今日もお姫様といるガイの様子を眺めていた。

「え~、もう?・・・それでは行ってくるのじゃ」

 

「・・頑張れアンジェリカ」

 

 ガイの愛しのお姫様は仕事のためにわざわざ口調を変えて城の中へと戻っていく。ガイと監獄惑星で決別してから数千年・・俺は幾度となくガイを絶望させてやろうと様々な手を使った。しかし現状はなんだ?俺が1人闇を彷徨い、ガイは人々に称えられ栄光の道を歩んでいる。

「オーブの光に選ばれなかっただけでこうも俺達の運命は違うものなのか?」

 

 悔しさと妬ましさの感情に包まれているとバリアへと向けて怪獣が歩いてくるのが見えた。

「超コッヴか・・」

 

 宇宙戦闘獣超コッヴ。元々のコッヴはさほど危険な怪獣ではないが様々な条件が重なってパワーアップされたのが超コッヴだ。

「シュァ!!」

 

 ガイはいつも通りウルトラマンオーブへと姿を変えてバリアの外で超コッヴとの戦闘を開始し始める。

「オォォォォッ!!」

 

オーブの振るう剣が超コッヴの鋭い爪を切り裂く。超コッヴもかなり強い怪獣だというが、これまで数千年間怪獣達と戦いを繰り広げただけはあり超コッヴに引けを取らない戦いぶりをする。

「まぁこれから光の魔王獣を解放するつもりなんだから、あれぐらいの相手にピンチになるようなら話にならんがな」

 

「オーブフレイムカリバー!!シュァ!!」

 

 火のエレメントの力を解放して炎の輪で超コッヴを包み込み、今回もオーブの活躍によって怪獣が撃破される。

「ふん・・・」

 

 俺は倒された超コッヴのエネルギーをダークリングで回収すると、そのエネルギーは超コッヴのカードとなる。それも3枚目となる光属性の怪獣カードだ。

「ふふ・・これでようやく3枚目の光が集まったな」

 

 光の魔王獣が封印されている場所はこのルサールカだと確定している。つまりあとは3枚の光属性の怪獣カードを生贄に捧げ、光の魔王獣を解放するだけだが・・・ただ封印を解除するだけでは芸がない。

「やはりあいつの目の前で光の魔王獣を解放してやらないとな」

 

 

 

 

~~アンジェリカ~

 

 ガイがこの王国にやってきてから6年の時が経っていた。初めて見たときから私はガイに心惹かれるものを感じていた。それが一目ぼれだったと自覚したのは13の誕生日を迎えた頃だ。

「帰ってきたぞ!聖剣の勇者様だ!」

 

「勇者様!!」

 

 国を守る兵達が怪獣を倒して城へと戻ってきたガイを称える。

「よくやったなガイ!褒めてつかわす!」

 

 私は兵達の前ということで女王様口調でガイを褒め称える。

「お褒めに預かり光栄です。姫様」

 

 普段はお父様とお母様以外に敬語で話さないガイも私の威厳を保ってくれようと敬語で返してくる。

「聖剣の勇者様さえいてくれてばどんな怪獣が来ても安心だよな!」

 

「あぁ!聖剣の勇者様が負けるはずないからな!」

 

 ガイが負けるはずがないと疑わない兵達は『無敵の英雄』として見ている。もちろん私やお父様もこの時は確かにそう思っていた。・・・そう、この時までは・・。

 

 

 

 

 

「ねぇガイ。ちょっと話があるんだけど・・・いいかな?」

 

「え?・・・まぁ、構わないが・・」

 

 17歳の誕生日を明日に控えた私は夕食を食べ終えたガイを中庭へと飛び出した。

「それで話っていうのは何なんだ?アンジュ」

 

 2人きりの時はアンジュと呼ぶように約束させているガイは私に呼び出した理由を尋ねてくる。

「あのねガイ、お父様やお母様と昨日話して・・・もしガイがいいっていうなら・・」

 

「ん?何だよもったいぶって?」

 

 もったいぶってるんじゃなくて恥ずかしくて言いにくいんだよ。前から思っていたけどガイってそういうところは鈍いよね。昔っからそうだったのかな?

「ガイ・・この国の王様に・・・」

 

 この国の王様になる気はない?そう尋ねようとした途端、中庭から見える空に怪しい黒い雲が広がった。

「ガイ!」

 

「あぁ、ただの自然現象じゃないな。アンジュは絶対外に出るなよ!」

 

 そう言い残したガイは事の真相を確かめるべくバリアの外へと駆けていく。

「まだ大事な事・・・言えてないのに・・・」

 

 言いたいけど言えなかった事、恥ずかしく照れくさくて言えなかった事・・・この想いを大切な人に告げることが出来なかった。

 

 

 

 

~~ジャグラー~

 

「やっぱりお前か!ジャグラー!!」

 

「ようガイ。デート中だってのに呼び出して悪いなぁ」

 

 夜だってのに中庭デートをしてやがったガイに苛立った俺は水属性の怪獣カードであるぺスターの力を発動して天候を操作してガイをバリアの外へとおびき寄せた。その誘いに乗ってくれたガイは素直にバリアの外へと出てきてくれた。

「何をする気だジャグラー」

 

「何をする・・・か。そんなことは1つしかないだろう」

 

 俺はガイの目の前でダークリングを取り出してみせると、ガイはそれを驚いた反応を見せる。

「それはイシュタールでホテップが・・・あの包帯の正体はお前だったのか」

 

「鈍いなぁ。光の戦士だってのにお前は鈍すぎる。よくそれでオーブなんかをやれているなぁ。・・・このリングはダークリング。ガイ、お前の持つオーブリングと対になる存在だ」

 

「対だと・・。お前、イシュタールでの時のようにまた魔王獣を復活させる気なのか?」

 

「当然だ。そのためにこの地でお前が倒す怪獣達の力を集め続けたんだからな。お前のおかげでそれなりに溜まったぞ!」

 

 ガイにこれまでこの地で集めた怪獣カードを見せびらかした俺はそのうちの3枚以外をポケットへとしまう。

「キングザウルス二世」

『キングザウルス!』

 

「プリズ魔・・」

『プリズ魔!』

 

「させるか!!」

 

 俺がダークリングに2枚のカードをリードするとガイは光の魔王獣の復活を阻止しようと俺に殴り掛かってくる。

「ぐっ・・!もう遅いッ・・・」

『超コッヴ!』

 

 ガイの拳を避けずに受けた俺は後ろに倒れそうになりながらも3枚目の怪獣カードをリードする。

「さぁ現れろ!!光の魔王獣マガゼットン!!」

 

 3体分の光のエネルギーをルサールカの空へと放つ。すると暗雲から落ちてきた落雷とともに青白く輝く光の魔王獣、マガゼットンがテレポートでルサールカの地に現界した。

「くっ・・!!オーブグランドカリバー!!」

 

 ガイはオーブカリバーを空へと掲げてウルトラマンオーブへと姿を変えるとほぼ同時に土のエレメントの力を解放してマガゼットンへと攻撃を仕掛ける。

「ゼェェェトォォン」

 

 大地を辿る2つの光線がマガゼットンへと迫っていくと、マガゼットンは全身を包み込むバリア・・ゼットンシャッターで左右から迫る光線をあっさりと受け止めた。

「シュァ!!」

 

 ならば先にバリアを砕こうとオーブカリバーを構えたオーブはマガゼットンへと剣を振るおうとするも、マガゼットンは右腕で剣を受け止めて左脚でオーブを蹴り倒した。どうやら格闘能力も光の戦士と張り合える・・・いや、上回るほどのものらしい。

「オーブウインドカリバー!!」

 

 オーブは風のエレメントの力を解放して竜巻を巻き起こしてマガゼットンを空へと飛ばした瞬間・・・マガゼットンはテレポートですぐ地上に戻って来た。

「オァ・・!?」

 

「ゼェェトォォン」

 

 風のエレメントの力でもまるでダメージになっていないマガゼットンに驚いたオーブは警戒して数歩後ろへと下がるとオーブカリバーのリングを1回転させる。

「全てを解放するオーブスプリームカリバーを使う気か?」

 

 オーブスプリームカリバー・・・それはガイが変身するウルトラマンオーブ最強の光線技だ。カリバーに宿る4エレメントと自身に宿る光と闇を全て解放することで放たれる光線は凄まじい破壊力があり、個別のエレメント攻撃が通用しなかった闇の魔王獣であるマガタノゾーアを一撃で撃破したほどだ。

「だがあいつはあの技をマガタノゾーアとの戦い以降使っていなかったはずだ。・・・どういう心境の変化だ?」

 

 マガタノゾーアとの戦いから数千年間、ガイはその技の威力に怯えてかあれ以降一度たりともオーブスプリームカリバーが使われることがなかった。今それを再び使おうとしているのだからついつい俺もビビッてしまう。

「っ・・・」

 

 せっかくスプリームカリバーを使うと思ったのだが、やはりオーブはあの技を使いこなせる自信がないようでその動きを止めてしまった。

「どうせ後ろのお姫様たちを巻き込んじまうってビビったんだろうな」

 

 自分のせいでバリアが壊れ、王国にまでダメージを与えてしまうかもしれない。どうせあいつはそんなことでビビッて手を止めたんだろう。心境が変化したかと思えば結局いつも通りだ。

「ジュァ!?」

 

 攻撃を躊躇ったところにマガゼットンの火球を受けたオーブはバリアのすぐ前に倒れ込む。

「ゼェェトォォン」

 

 その倒れているオーブへとマガゼットンは胸部に光を集めながらゆっくりと近づいてくる。

「シュァ・・・」

 

 立ち上がったオーブはバリアの向こう側にある城を守るつもりなのか守りの構えで身構える。

「ゼェェトォォン」

 

「ダァ・・・ッ!?」

 

 身構えてるへとマガゼットンは溜めていた光弾を放つ。その一撃はオーブの変身を解くとともに王国を包んでいたバリアを粉々に砕いた。

 

 

 

~~アンジェリカ~

 

「ダァ・・・ッ!?」

 

 これまでどんな相手にも負けることのなかったオーブが負け、王国を守っていたバリアも砕かれた。その事実は国の民達はおろか城の兵を動揺させるには充分だった。

「そんな・・・無敵の聖剣の勇者様が負けるなんて・・・!?」

 

「しかもあと数百年は大丈夫って言われてたエメラル鉱石のエネルギーで形成されていた光のバリアまで壊されちまった。・・・どうなるんだよこれ?」

 

「もう駄目だ。おしまいだぁ・・」

 

 既に戦意喪失してしまっている兵達の何人かは既に『生きる』ことを諦めてしまっているのまでいる。

「皆の者!諦めるでない!!あれを見よ!!」

 

 兵達の前へと立ったお父様は立ち上がろうとするガイを示す。

「聖剣の勇者は・・・ガイはまだ諦めてはいないのだぞ!我らが生きることを諦めてどうする?」

 

 お父様の言う通りだ。私達が諦めたらそれこそ終わりだ。

「とはいえバリアが破られてガイが満足に戦えないのは事実。兵達は民を最優先で避難させよ。この城は放棄する!!」

 

 この城を放棄する。・・・お父様の言葉で周囲にどよめきが走る。

「王よ。城を放棄するなどと・・・」

 

大臣は城を放棄する発言に抗議しようとするも、お父様は首を横に振った。

「命あってこそ、民がいてこその王国だ。城など壊れても建て直すことができる。まずは生き延びることを、命を守ることを優先するのだ!!」

 

「「「「ハッ!」」」」

 

 士気を取り戻した兵達はすぐさま避難誘導をするために城下へと駆け出して行く。するとガイが一度私達の元へと戻って来た。

「王様、王妃様。アンジェリカ・・・。奴は必ず倒す。だからここから早く離れてくれ」

 

「ガイよ。何か策はあるのか?」

 

「1つ策があります。俺が用いる最強の技、オーブスプリームカリバーなら勝機があります」

 

「もしかして・・・さっき使おうとしていた技?」

 

 ガイは私の問いかけに頷くと聖剣を取り出した。

「オーブカリバーに宿る4つのエレメントと俺に宿る力を全開放して放つ必殺技・・それがスプリームカリバーです。ですがさきほどは自分がその技を使う事でバリアを壊し、王国に被害が及ぶのではないかと思って躊躇ってしまいました」

 

 どうやらその技はあまりにも強力過ぎてガイが躊躇ってしまうほどのもののようだ。

「ですが次は躊躇わず放ちます。ですからそれを放つ前に・・・」

 

「ふむ・・。このルサールカの地から離れて欲しいというわけか」

 

 頷いたガイはゆっくりと歩いて王国へと入ってくる怪獣の方へと向き直す。

「奴は光の魔王獣マガゼットン。これまでこの地に現れた怪獣とは格が違う相手です。・・・ですがこの国のみんなが逃げるぐらいの時間は稼いでみせます」

 

「・・・っ」

 

 そう告げたガイは再びマガゼットンという怪獣へと挑もうと歩き出すと、私は無意識のうちにガイの袖を掴んで止めていた。

「姫様?」

 

「ガイ、絶対帰ってくるよね?」

 

 まだ兵達がいるにも関わらず、私は『次期女王』としてではなく1人の女として問いかける。ガイが・・・愛しい人が帰ってこないかもしれないと不安になってしまったからだ。

「あぁ、必ずマガゼットンを倒して帰ってくる」

 

 そう言ったガイはまだ民が逃げ切っていない城下へと責めるマガゼットンへと駆け出しながら聖剣を空へと掲げて再び光の戦士へと姿を変えた。

「頑張って・・・ガイ。必ず・・必ず帰ってきて」

 

 ガイと約束した「必ず帰ってきて」という約束は守られることはなかった。

 

 

~~ガイ

 

 

「ゼェェトォォン」

 

 ジャグラーによって封印が解かれた青白く輝く光の魔王獣マガゼットンに対して俺はオーブへと変身すると再び戦いに挑んだ。しかし俺のすぐ後ろには守るべき国があり、それを巻き込まないためにも力を抑えていたので押しきれずに苦戦を強いられていた。

「シュァ!!」

 

 力を抑えて戦わないといけないうえに国の人達が逃げ切るまで時間を稼がないといけない。

「ジュァ・・・」

 

 光の斬撃を飛ばすと全方位バリアで防がれ、近づくと力強いカウンターを受ける。かといって距離を取り過ぎてもテレポートで距離を詰められたり、最悪王国を守っていたバリアを一撃で粉砕するほどの光弾を放たれてしまう。時間を稼ぐとは言ったものの八方ふさがりなのは確かだ。

「・・・ッ!」

 

 ルサールカの森を抜けたところから青と赤の光が交互に点滅するのが見えた。万が一の時の避難完了の合図だ。これでオーブスプリームカリバーを使える。

「オォォォ・・・セイッ!!」

 

 マガゼットンに光を纏ったカリバーを振り下ろすも、やはりバリアによって弾かれてしまう。

「シュァ!!」

 

 続けざまに光線を放つと、マガゼットンはゼットン特有の光線吸収能力を用いてそれを吸収してしまった。だがあれには吸い切れる限界というものがある。オーブスプリームカリバーならその限界を超えてマガゼットンにダメージが通るはずだ。

「・・・・」

 

 確かめるべきことは確かめることができた。スプリームカリバーを確実に命中させるにはやつが攻撃をしてきた直後・・・そう、光弾を撃った直後を狙うしかない。バリアや吸収ならどうにかなるがテレポートをされたら元も子もないからな。だからそのチャンスがくるまで・・・耐えるんだ。

 

 

~~アンジェリカ~

 

「ガイ・・っ」

 

 ガイがマガゼットンの攻撃をひたすら受け止めていた。きっと何か策があってのことだと思うが・・・私はいても経ってもいられなくない気持ちでいっぱいだった。

「アンジュ、気持ちは分かるが耐えるのだ」

 

 お父様は険しい表情をしながらもガイの勝利を信じて戦いを見上げている。でもやっぱり私は・・・

「やっぱり私は・・・ッ!!」

 

「アンジュ!!」

 

「アンジュ様!!」

 

 私はお父様や兵達の制止を振り切って城へと戻ろうと駆けていく。するとルサールカの森に入る直前にお母様と出くわしてしまった。

「行くのね・・アンジュ」

 

「・・・はい、お母様」

 

 どうやらお母様は止める気がないようで、通すように道を開けてくれる。

「止めないのですね」

 

「・・・えぇ。止めても無駄だというのは分かってるわ。私の娘だもの」

 

「ありがとう。お母様」

 

 お母様にお礼を告げた私は急ぎ城へと戻っていく。・・・これがお母様との最後の会話となった。

 

 

 

~~ガイ~

 

「何をしておるのじゃガイ!しっかりせい!」

 

「アンジェリカ!?」

 

 城にはどういうことか一度避難させたはずのアンジェリカがいたので俺は驚いて動きを止めてしまう。

「ゼェェェトォォォン」

 

「デュァ!?」

 

 その隙を突かれて俺はマガゼットンの光球をまともに受けてしまい、その場に転倒してしまう。そしてその攻撃の余波は城にまでダメージを与え、城は崩れてしまい炎上してしまった。

「アァァァ・・うわァァァァ!!!」

 

 俺は怒りに身を任せながらもオーブカリバーの力の全てを解放してマガゼットン目掛けオーブスプリームカリバーを放つ。怒り任せに放たれたスプリームカリバーは制御できなくなり、俺のエネルギーのほとんどが一気に持っていかれてしまう。

「グゥゥウ・・・ジュァ!?」

 

 しかしそのエネルギーにオーブカリバーの方が先に限界へとたどり着いてしまい、オーブカリバーは粉々に砕けてしまった。

「っ!?」

 

 暴走したスプリームカリバーの一撃はマガゼットンを撃破するとともに大爆発を巻き起こす。その爆発は王国を包み込み、ほんの数分前まで綺麗な街並みがあった場所は廃墟と化してしまった。

「アァ・・アァァァァァァ!!」

 

 オーブカリバーを失ったため変身を維持出来なくなったが、そんな事を気にするよりも周囲を見渡してアンジェリカを探すことを優先する。

「アンジェリカ!返事をしてくれアンジェリカ!・・・アンジュうぅぅぅぅぅ!!」

 

 どれだけ探しても崩れた城にアンジュの姿は見えない。

「・・・・」

 

 守りたいと思っていた人を失い・・俺自身も聖剣を失ったウルトラマンとなることができなくなった。

「・・・・っ」

 

 マガゼットンのマガクリスタルから光の封印エネルギーを抜き取る。そのエネルギーは光の力を宿す1枚のカードへと変化する。

「ウルトラマンさん・・・」

 

 栄光の初代・・怪獣退治の専門家と呼ばれるウルトラマンさんのカードだ。俺に残されたものはオーブリングに加えてウルトラマンさんのカードとティガさんのカードのみ。仲間、守るべき場所、守りたかった人、守るための力。それらのすべてを失ってしまった。

 




最終話「太陽と三日月」

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