~~ジャグラー~
「今日はこれぐらいにしておくか」
「「「ありがとうございました!」」」
エレイン達が自警団を作ると宣言してから一月近くが経過した。俺はこの一月ほどエレイン達に稽古をつけてやっていて、今日もその稽古を追えてモミジ達の待つ家へと帰る準備をしていると稽古に浸かっていた道具を片付けているエレイン達の会話が聞こえてきた。
「聞いてくださいよエレインさん。ボベルが昨日向こうの山に山菜を取りに行ったらしいんですけどデカいナメクジみたいなのが出たらしいんすよ」
「デカいナメクジ?ボベルの奴あの図体でナメクジにビビったのか?」
「俺も最初はせいぜい指ぐらいの長さ程度のナメクジだと思って話を聞いていたんですけど・・・そのナメクジ、怪獣ってほどじゃないですけど人2人分ぐらいはデカかったらしいんですよ」
人の2倍は大きさのあるナメクジだと?
「その話、もう少し詳しく教えろ」
「兄貴っ!う、うすっ。・・・俺の知り合いのボベルってのが向こうの山に住んでいるんすけど、その山から動物が減ってるような気がするってボベルが山を探索したらしいんですよ。そうしたら人の倍ぐらいあるデカいナメクジが鹿を丸飲みにするのを見たらしくて」
「鹿を丸飲みにするほどのナメクジか」
怪獣というほどの大きさではないが、鹿を丸飲みにしてしまう凶暴性はいつ人に危害が及んでしまうか分からないな。早急に手を打っておくべきだろう。
「エレイン、まだ『自警団』ではないお前達は動くな。そのナメクジは俺だけで対処する」
「水臭いことを言うなよ兄貴。確かに兄貴と比べりゃまだ弱いが戦えなくはないぜ」
過信は自身を殺すことになるのでエレイン達にはまだ参戦してほしくはないのだが、巨大なナメクジがもし複数いたとするとを考えると俺だけで対処しきれない可能性もある。
「分かった。・・・エレイン達も来い」
「そうこなくっちゃ!」
「さて・・・行くか」
巨大ナメクジが出るという山に到着してすぐ、エレイン達には1人では行動させずに最低5~6人で行動するように伝えたのちにまず俺が先に山奥へと確かめに歩みを進めていると少し奥に人影が見えた。
「あれはまさか・・・」
見知った横顔だと思った俺は急いでその人物へと近づいていくと・・・・背中に背負う籠に大量の薪を詰め込んでいたモミジがいた。
「あっ!ジャグラー!」
「・・・何故お前がここにいる?」
「えっ?そろそろ寒くなっていたから薪を集めにきたんだけど・・・ジャグラーはどうしてここに?」
確かに冷えてきたが・・・寄りにもよって巨大ナメクジが目撃されているこのタイミングでここに拾いに来ているとはな。
「ここに怪物が出たらしくてな。・・・っ!!」
いきなり飛んできた触手からモミジを庇った俺はそれが伸びている先へと視線を向ける。そこには確かに話に聞いていた通り大きいナメクジのような怪物がいた。
「スペースビーストか・・」
「スペースビースト?何それ?」
「恐怖や恐れなどの負の感情を好物とする宇宙の獣だ。危ないから下がってろ」
モミジを俺の後ろに下げた俺は闇の中から蛇心剣を引き抜くと全身に『闇』を纏う。
「フンっ!!」
魔人態へと姿を変えた俺は蛇心剣を振り下ろしてスペースビーストを真っ二つにする。
「大丈夫か?」
「う、うん。ありがと」
しかしこんなところにまで何故スペースビーストが現れた?この宇宙にスペースビーストが現れるなんて報告は聞いていないぞ。
「兄貴!大丈夫か!?」
「俺は何ともない。お前らは大丈夫か?」
「何人かは怪我をしてるけど、兄貴に鍛えられたおかげで前より丈夫になったからな!死んじまったのはいないし、命に関わるような怪我はしてねぇぜ!」
「そうか・・」
今にして思えばこれまで現れなかった巨大怪獣や今回は小さめの個体だったがスペースビーストが現れるなどとこの星に変化が起きている。それも俺がこの星に来てからだ。
「・・・しかしいったい何故?」
命の樹の力を持つ俺に引き寄せられた。・・・というわけではなさそうだ。もしそうだとしたら奴らは真っ先に俺を狙ってくるはずだ。
「俺に・・・この星に引き寄せられてきたのではないとすると・・・他の星から逃げてきたという可能性もあるか」
引き寄せられた考えを逆転させ、逃げてこの星にたどり着いた可能性を考える。この星ではなく他の星で何かがあった可能性をだ。
「奇械天使・・」
立て続けにこの辺りの星に異変が起きているとすれば・・・他の星々の生態系を滅ぼさんとしているのはおそらく奇械天使だろう。その過程で『恐怖』という感情に引き寄せられる形でスペースビーストがこの宇宙にも表れるようになってしまった。・・そう考えれば色々なことが繋がる。
「俺が変われてない間に・・・世界は変わっていくということか」
その夜、俺は変わっていく世界に対して変わる事のできない自分に悩み・・・倉庫の前で雲がかかり星すら見えない夜空を見上げていた。
「どうしたのジャグラー?最近少し寒くなってきたんだからここにいたら冷えるよ?」
俺に気づいたモミジはここにいては冷えると言って俺に声をかけてきた。
「この程度で体調を崩してしまうほどヤワじゃないことぐらい知ってるだろ?」
「まぁ・・・そうだけどさ・・。ところでジャグラーは何を悩んでいるの?」
どうやら悩んでいるのが顔に出ていたようだな。・・いや、それでもこいつに隠し事はできなさそうだ。
「世界はどんどん変わっていく。これまでこの星にはいなかったはずの怪獣が現れるようになっちまったどころじゃなく、本来ならこの宇宙にいないはずのスペースビーストまで現れるようになっちまった。・・・いや、怪獣という突然の出来事でなくてもめくるめく時の中で世界はその季節を・・・天候を変化させていく。常に世界は変化し続けているというのに俺はここに来て何も変われていない・・」
俺は変わっていく世界に対して変われない自分が嫌なことをモミジへと話す。
「ジャグラーはどうして変わろうとしているの?」
「俺は光の戦士となるために己を磨き上げた。だが俺は光の戦士には選ばれず・・・あげくある星を守るために、その星の者達の『希望』を斬った。その結果争いは収まりはしたが、その星の者達から敵として扱われた。俺の正義は間違いだったということだ。・・・俺はその後も失敗に失敗を繰り返し、戦士にも傭兵にもなれず・・・『光』からどんどんと遠のいた。・・・何にもなれないまま・・・ただ光から遠のき闇へと堕ちていく。俺はそんな自分が嫌だったんだ」
「なるほどね。・・・光の戦士ってのが何なのかはわからないけど、今の自分が嫌ってことなんだね」
今まで話してなかった俺の心情をモミジへと話すと・・・モミジからは予想もしなかった答えが返って来た。
「別に変わらなくてもいいんじゃないかな?」
「それはどういうことだ?」
「何が本当に正しくて何が間違ってるだなんて・・・やってる本人には分かりっこないでしょ?だったら正義とか悪だとか、光とか闇だなんてどっちでもいいじゃん」
どっちでもいい・・・か。どちらかにならないといけない。そう考えていた俺にとってその答えは盲点というべきものであり、同時に革新的だった。
「ジャグラーは戦いたいから戦っていたんじゃなく、戦わないといけないから戦ってきたんでしょ?だけどそのしがらみから解放されちゃった。長い間戦いを続けていたから何をすればいいのか分からなくなっていたから傭兵になって・・・あんな怪我をしてここまで来ちゃった。これがここに来た経緯だったよね?」
「あぁ、その通りだ」
モミジの言う通り・・俺は『光の戦士』になるために訓練に明け暮れて長きに渡って剣を振るい続けた。だからこそ俺は本当の意味で『俺の戦う理由』を見失っていた。
「わざわざまた戦いの毎日に戻らなくてもさ・・・いいんじゃない?ここにいてもいいんだよ?ジャグラーが望むなら・・ずっと・・」
少し顔を紅くしながらもそう言ったモミジに俺は何かを言わなければと思い言い返そうとすると、チヒロがこちらへとやってきた。
「兄ちゃん!姉ちゃん!夕飯ができたよ!」
「う、うん!今行く!」
モミジはチヒロを横切ってスタスタと先に家の中へと戻っていく。
「あれ?僕なにか邪魔しちゃったかな?」
「・・・さぁな」
俺はモミジの言っていた言葉の意味を薄々は察しながらも・・・それを受け入れるかどうか悩みつつ家へと戻った。
~~ガイ~
「・・・探したぞセラフィム」
俺達はギンガスパークとビクトリーランスから発せられる光の線を辿って名もない無人の星へとたどり着くと、そこにはセラフィムとともに大量の奇械天使たちがいた。
『個を捨てて共に歩む決意が決まったのですね』
「そんなはずないだろ」
「セラフィム。お前を倒しに来た」
セラフィムによる支配からこの宇宙を守るために・・・俺達はそれぞれの宇宙からここまで来たんだ。
『光の者が光を倒すと言うのですか?』
「確かにお前は『光』に属するものだろうな。だがお前が行おうとしているのは間違った正義だ。暴走する正義を野放しにするわけにはいかない」
『ならば貴方達の正義を私に示してください』
そう告げたセラフィムは奇械天使たちとともに大量のビームを放ってくる。
「ティガァァァァ!!」
「絆・・・ネクサスッ!」
『ウルトライブ・ウルトラマンギンガ!』
「ギンガァァァァァ!」
『ウルトライブ・ウルトラマンビクトリー!』
「ビクトリィィィィ!!」
「オォォォォォブ!!」
俺達はそれぞれウルトラマンへと変身してビームを防ぎきると、その爆炎から出つつも光の刃を奇械天使たちへと飛ばした。
「シュァ!!」
「ゼィァ!!」
復元しようとする端末たちの間を突き抜けて俺達はセラフィムのもとへと近づいていく。
「行くぞショウ!」
「俺達の絆、見せてやる!」
ギンガさんとビクトリーさんはまるで共鳴するかのように輝きを増す。
「ギンガァァァァァ!」
「ビクトリィィィィ!」
「「ギンガビクトリー!!」」
ギンガさんとビクトリーさん。お2人の光が重なり合うとその光の中からそれぞれの特徴を持つウルトラマンが現れる。あれがお2人が1つに融合したウルトラマン・・・ウルトラマンギンガビクトリーさんか。
「「シュァ!!」」
体当たりをしてきた奇械天使を回し蹴りで蹴り飛ばしたギンガビクトリーさんは光を纏いながら奇械天使たちへと突撃すると、本体と端末の数を一撃で大きく減らした。
「「ウルトラマンゼロの力よ!」」
「「ワイドゼロショット!!」」
ウルトラ10勇士全ての技が使えるギンガビクトリーさんはゼロさんの光線を放って更に奇械天使の数を減らす。
「ヒカルさん!ショウさん!ここは俺達に任せてセラフィムをお願いします!」
ギンガビクトリーさんの力ならきっとセラフィムを倒すことが出来る。そう考えた俺はギンガビクトリーさんをセラフィムの元へと行かせることを考えた。
「分かった。なるべくすぐに終わらせて来る」
セラフィムの元へと向かって飛んだギンガビクトリーさんが飛び上がると、それを阻むように金色の龍の形をしたロボット・・・宇宙龍ナースが飛びかかって来た。
「シュァ!」
そうはさせまいと紫色をした素早い姿・・・スカイタイプへと変わったティガさんは高速飛行で一気にナースとの距離を詰めるとすぐさま赤く力強い姿であるパワータイプへと姿を変えて燃え盛る右拳を叩き込んで地上へと突き落とした。
「この龍は僕が・・ッ!」
ティガさんはナースの足止めをしてくれるそうなので俺達もなるべく奇械天使の数を減らしてギンガビクトリーさんの加勢に向かおうと思っていた矢先・・・『それ』は現れた。
『浄化スル』
白いドラゴンのような見た目に両腕だけでなく尻尾にも鋭いクローがつけられているロボット怪獣は目の前に現れるなり俺とネクサスさんにそう告げてきた。
「デュァ!!」
殴り掛かりながらジュネッスへと姿を変えたネクサスさんはその白いドラゴンへと拳を振るおうとすると盾のように大きいクローによって受け止められてしまう。
「シュァ!!」
俺はネクサスさんとは反対側からオーブカリバーを振るい下ろそうとすると、俺のカリバーを白いドラゴンは尻尾のクローで挟む形で受け止めた。
「「・・・・ッ」」
雰囲気で何とかなくヤバいとは気づいていたが・・・これは想像以上にヤバい奴だ。
「「シュァ!!」」
俺とネクサスさんは蹴りを入れながら後ろへと跳び下がり、即座に光の刃を飛ばすも・・・白いドラゴンは赤く輝く魔法陣のようなバリアでそれを防ぐ。2人のウルトラマンの同時攻撃でも傷がつかないバリアか・・。こいつの防御能力はセラフィムと同じぐらいありそうだな。
「「っ?!」」
腹部の赤いクリスタルから光線を放ってきたので俺とネクサスさんはそれを避けると、光線が当たった山には巨大な魔法陣が広がる。いったい何が起きるのかと思った瞬間・・・魔法陣の輝きとともに山が爆発し、地形が大きく変貌した。
「とんでもない破壊力をしてやがる・・」
「直撃したら不味いけれど・・・迂闊に避けるのも不味いね」
「ですね・・」
既にセラフィムに浄化されてしまった後の星とはいえ・・・下手に避けると上でセラフィムと交戦してるギンガビクトリーさんや少し離れた場所でナースと戦うティガさんに当たりかねない。いやそれ以前にあれをバンバン撃たれたらこの星すらもいずれ壊れかねないぞ。
「・・・あの白いドラゴンは何だと思う?」
「新型機というよりも試作品を持ちだしてきたって感じですね」
白いドラゴンのボディはまるでまだ完成品とは言えないような動くたびに今にも剥がれてしまいそうな装甲に長さもバラバラで各部からはみ出ている配線はまるで作り立てで調整を一切していない機体のように思える。
「もし本当に試作品だとしたら・・・あの兵器に付け入る隙はあるな」
「そうですね」
あの白いドラゴンが俺達を倒すために持ち出してきた未完成品だとすると・・・その未完成さが付け入る最大の隙だ。
「デュァ!」
ジュネッスブルーへと姿を変えたネクサスさんは光の剣を右腕に展開してその隙間目掛けて剣で突きかかろうとするも、魔法陣のバリアに阻まれてしまう。
「今だ!」
「オォォォォォォ!!」
全身に光を纏った俺はバリアを展開している反対側から体当たりをぶつけようとするも・・・その攻撃もバリアによって受け止められてしまう。
『浄化・・世界ヲ浄化スル』
尻尾のクローで俺の首を掴みあげた白いドラゴンは再び光線を放とうと腹部のクリスタルにエネルギーを溜め始める。
「っ!!」
その光線が放たれようとした瞬間・・・白いドラゴンは展開していたバリアを一度消してから放とうとしてきた。
「シュァ!!」
このチャンスを待っていたと言わんばかりに駆け出したネクサスさんは光の剣でクリスタルを切り裂くと、白いドラゴンのパワーが鈍ったのかクローによる拘束からあっさりと抜け出ることができた。
「オォォォ・・・セイッ!!」
カリバーで装甲の隙間を突き刺した俺は力づくでその隙間を広げると、力づくでその装甲を剥がす。
「デュァ!!」
その装甲が剥がされた部分にネクサスさんは光の矢を打ち込むと白いドラゴンの動きが鈍る。今の一撃で配線のいくつかが断絶されたからだろう。
「シュァ!!」
俺はつかさずオリジウム光線を装甲の剥がれている部分へと放つと・・・白いドラゴンは内側から爆発するように爆散した。
「タァッ!」
パワータイプとなっているティガさんは全身を使って押さえつけているナースの尻尾へと光球を投げつけて、尻尾の一部を破壊する。
「ダァ?!」
しかし暴れ狂うナースに引き剥がされてしまうと、ナースは再び空へと飛び上がった。
「ッ!!」
再びスカイタイプへと変わったティガさんはナース目掛けて5連続で光弾を放つと、その光弾はナースの各部を撃ち抜いて爆散させた。
「・・・・タァッ・・」
基本のマルチタイプに戻ると同時にカラータイマーが赤く点滅し出したティガさんが地上へと着地すると、俺とジュネッスへと変わったネクサスさんもその横に並ぶ。
「「「シュァ!!」」」
そして残る奇械天使たちを同時光線で一掃すると・・・俺とネクサスさんのカラータイマーも点滅し出した。
「これで残るはセラフィムだけか・・・」
俺は空で激闘を繰り広げているギンガビクトリーさんとセラフィムの戦いを見あげる。
「「ウルトラマンメビウスの力よ!」」
「「メビュームシュート!」」
ギンガビクトリーさんはメビウスさんの光線技を放つも、セラフィムは翼で弾く形でその光線を撃ち消す。
「やっぱりシンプルな光線じゃバリアを貼られてなくても傷をつけられないか」
「どうするヒカル?フュージョンシュートで勝負に出るか?」
「・・・いや、あの技を出したら大幅に消耗しちまう。今はまだ粘ってみようせ」
「分かった。なら・・・」
『ウルトランス・ハイパーゼットン!シザース!』
ゼットンの中でも特に強力な強化態であるハイパーゼットンをウルトランスしたギンガビクトリーさんはその右腕をハイパーゼットンの腕へと変化させる。
「「ショォラ!!」」
ギンガビクトリーさんはその右腕を振り下ろすと・・流石にそれはマズイと思ったのかセラフィムは翼ではなくバリアでそのチョップを防いだ。
「「ゼィァ!!」」
右腕から至近距離で火球を放ったギンガビクトリーさんはその反動で少し後ろへと跳び下がる。すると爆炎の中にはバリアでそれを凌ぎ切っていたセラフィムがいた。
「くっ・・・やっぱり大したバリアだな。これでもぶっ壊せないのかよ」
「いや・・よく見ろヒカル」
ショウさんは何かに気づいた反応をしていたので俺も爆炎の中にいたままのセラフィムを見上げてみると・・・セラフィムのバリアには僅かながらヒビが出来ていた。
「至近距離のこいつでようやくか」
「奴のバリアも絶対ではないということだな」
「絶対じゃないってことが分かっただけでも十分だ!一気に畳みかけていくぜショウ!」
「ガレット!」
一気に畳みかける宣言をしたギンガビクトリーさんは光を纏った体当たりを仕掛けるとバリアと激しくぶつかり合う。
「「タァァァァァァ!!」」
バリアに連続パンチを叩き込むギンガビクトリーさんは右手に光を集めると左手を地面へと向ける。
「「シュァ!!」」
ギンガビクトリーさんは右手にギンガスパークランスを握り、左手にシェパードンセイバーを手にするとその切っ先に光を集束させた。
「「ウルトラ十勇士の力よ!!」」
光り輝く一剣一槍を持つギンガビクトリーさんの後ろに半透明な8人のウルトラマンさん方が出現する。その中にはこの場で戦うティガさんとネクサスさんの姿もある・・。あれはあくまでも光の力の虚像であって本人ではないはずだが・・・まるで本人達と思うほどの『光』を感じる。
「「ウルトラフュージョン・・・アルティメイタム!!」」
8人のウルトラマンさん方がギンガビクトリーさんへと重なると一剣一槍から青白く輝く強力な光線が放たれる。その光線は5人の同時光線を防いでも傷一つ付かなかったバリアを砕いてセラフィムを撃ち貫いた。
『これが貴方達の正義ですね。・・・争いを生まない正義ではなく、命を守る正義。その考えは理解できなくはありません』
命を守る正義が理解できるんだったら・・・どうして滅ぼす正義を選んだんだよ。
『光と闇は表裏一体。闇がある限り・・・光も常にあり続けます。完全に闇を宇宙から消滅させるには個の思想を消失させるほかないのです。ですが今は貴方達の示した『光』を認めて私の正義の敗北を認めましょう。ですが忘れないでくささい。宇宙に闇があるかぎり・・・私はいつかまた・・復活を・・』
そう言い残したセラフィムは光の粒となって消滅する。俺達はセラフィムの掲げていた『正義』からこの宇宙を守りきれたんだ。
次回「夜明けの闇に」