~~ガイ~
「中々情報が見つからないですね」
惑星メーテルでの出来事から3日後、俺達は様々な星々を巡って機械天使の情報を・・・正確には機械天使に指示を告げる大元の存在の情報を集めようとしていたんだが・・・中々大元に行きつく情報を集めることはできていなかった。
「大元の名前が分からないんじゃ事件解決まではいけないんだよなぁ・・」
「・・・大奇械天使ミカエル。名前からそれっぽいのは大天使ミカエルだよな。・・・確か天使で一番階級が高いのって・・・」
ヒカルさんはこのままじゃ事件解決をすることができないと困った表情をしていると弧門さんは天使の階級について考えていた。
「熾天使セラフィムというのが最も位の高い天使だったはず」
「確かにミカエルって名前を考えるとそれっぽい気がするよな」
セラフィムというのが最有力候補だと考えながらも次の星へと移動しようとすると・・・いきなり空から赤い雷撃が飛んできた。
「「「「「ッ!!」」」」」
俺達は一斉にウルトラマンへと変身してその雷撃から身を守る。すると空からはゆっくりとミカエルの4~5倍はある大きさの真っ白な球体が降りてきた。
『私はセラフィム。熾械天使セラフィム』
熾械天使セラフィム・・・それが機械天使を差し向けた大元ってわけか。
『光の戦士達よ。同じ光の者同士、私達が争う必要はありません。鎮まるのです』
同じ光の者同士鎮まれだと?
「光の者同士っていうなら何故様々な星々に住む人々を苦しめているんだ!」
『苦しめてなどいません。この宇宙を浄化しているのです』
宇宙の浄化?
『宇宙には多くの命があります。しかしその思考はまるでバラバラで争い事が絶えません。ならば争いの続く『文明』ある星の者を浄化して宇宙の意思を1つにするべきなのです』
こいつ・・・サイキと同じで宇宙から意思を無くす形で1つにしようってやつか。いや、浄化って言葉に浸かっているがこいつの言う『浄化』はその星の文明・・・人々を滅ぼすって意味だ。
『全ての文明は一度全て浄化し、宇宙は私が統治する』
「黙って聞いてりゃふざけたことを抜かしやがって!」
ギンガさんは右腕から白く輝く光の剣を展開するとセラフィムへと飛び上がってその刃を振るう。しかしその光の剣はセラフィムが展開したバリアによって防がれてしまった。
「みんな違ってみんないいんだよ!なんでそれが分からないんだ!!」
『自由意志など不要』
「この分からず屋が!!ギンガファイヤーセイバー!!」
光の剣を紅く変化させ炎の剣へと変質させたギンガさんはバリアを力づくで壊そうとするも、そのバリアは砕けるどころか傷一つついていなかった。
「ビクトリウムエスぺシャリー!!」
ビクトリーさんは光り輝く無数のエネルギー弾を各部のクリスタルから放ってギンガさんを援護するも・・セラフィムはバリアとともに少し後ろへと下がるぐらいでそのバリが砕けることはなかった。
『ウルトラマン・・光の戦士は我らと同じ導き手』
「同じってんなら俺らを捕まえてエネルギー原にしてくれたことについてはどういうつもりだ?」
『自由意思など不要。それは光の者も同じ』
光すらも自由はいらないってことか。
「お前に・・・誰もみんなの自由を奪う権利なんてない!」
『権利など不要。我々にあるべき信念はただ一つ。正義のみ』
飛び上がってオーブカリバーを振るった俺はセラフィムに自由を奪うなと告げるも・・・本人すら権利を放棄していたようだった。
「そんなもの、正義じゃない!」
ティガさんは右脚に光を集束させてバリアの反対側から蹴り込むと、それをバリアで防げなかったセラフィムはバリアの位置がズレた。
「デュァ!!」
そのチャンスを狙っていたネクサスさんはジュネッスへと変わると即座に光線を放ちセラフィムへと浴びせた。
「やったか?!」
「いいや・・少し掠ったぐらいだ」
ギンガさんはネクサスさんの攻撃で倒せたかと期待するも・・・爆炎から少ししかダメージを受けていないセラフィムが出てきた。
「一番上の天使ってだけあってやっぱり他の天使達よりタフだね」
ティガさんのいう通りセラフィムの強度は間違いなくミカエル以上だ。だがネクサスさんの光線で僅かにながらダメージはあるのだから俺達全員の光線でなら倒せなくはない相手のはずだ。
「1人では無理だとしても5人でなら何とかなりそうだ。一気に勝負をかけるぞ!」
ビクトリーさんがそう告げると共に俺とギンガさんは着地する。
「「「「「ッ!!!」」」」」
タイミングを合わせて一斉に光線を放つ。俺達はこの時・・・自分達の勝利を疑わなかった。
~~ジャグラー~
あのチンピラ共・・・エレイン達の件から3日後、俺は今日も畑の手伝いをしていた。しかし今更ながら・・・今時全てを手作業で行う農業がある星があるとは思ってなかったな。
「トマトを美味しく育てるコツは厳しい環境においてあげる事。ギリギリまで水を与えずにおくと自然と旨味を蓄えるものなのよ」
「そうなのか」
俺にトマトの収穫の仕方を教えてくれている婆さんはトマトの育て方をおしえてくれた。長年の知恵というべきか、流石長年農家を続けているだけはあるな。そう言ったことは何1つ知らなかった。
「水を与え過ぎてしまうとトマトが裂けてしまうからねぇ」
トマト1つを育てるのにも相当手間がかかっているということか。
「トマトも人間も同じだ。辛く厳しい時期を乗り越えてこそより逞しくなる」
爺さんの言いたいことが・・・何となく分かった。今はつらいかもしれないがそれを乗り越えれば強くなれると爺さんなりに俺に渇を入れているんだ。
「・・・まぁ、それを乗り越えられるかはお前さん次第だがな」
「そうだな・・。これはあっちに持っていけばいいのか?」
「あぁ、持って行ってくれ」
俺は収穫し終えたトマトが入ったかごを持って倉庫へと歩いていくと、倉庫の前に数人の人だかりが見えた。
「はぁ・・・何しに来たんだお前ら?」
その人だかりに見覚えがあった俺はそいつ等へと話しかける。先日のチンピラ共・・・エレイン達だ。
「お疲れさんッス兄貴!」
「「「お疲れ様です!!」」」
エレイン達は俺のことを『兄貴』と呼びながら頭を下げてくる。理由を知らない奴がこの光景を視れば・・・俺はこいつ等のボスだと勘違いされてしまうんだろうな。
「お疲れのところ悪いんだが・・・手を貸してくれ」
「何かあったのか?」
雰囲気的にこいつ等じゃ対処しきれない何かがあったようだな。手を貸すかどうかは別としてまずは話だけは聞いてやるか。
「実は俺らが今住んでいるエリアから2つ山を越えた海に海老みたいな体系をした尻尾が二つある怪獣が現れたんだ」
海老みたいな見た目で尻尾が2つとなると・・・古代怪獣ツインテールか。
「その怪獣はゆっくりとだけど俺達のエリアに近づいてきていて・・・とてもじゃないが俺らじゃ手に負えない。だけどこの前のデカい鳥を剣だけで倒したアンタならと思って・・・アンタを頼ることにしたんだ」
確かに生身で怪獣を相手にするとなればそれなりの訓練と実践を詰んでいなければいけないがこいつ等はそのどちらもないからな。俺に頼るというのは正しい判断だろう。
「他の仲間はどうした?お前らで全員じゃなかったはずだろう?」
まさか避難させずにそこで待たせているだなんてことはないだろうな?
「俺らじゃ敵わないってのは分かってたから、ひとまずこの辺りまで逃げとけってのは伝えてるから大丈夫だとは思う。だが放っておいたら怪獣はこっちまできちまいそうなんだ。だから兄貴、何とかしてくれ」
俺としてもこの辺りまで来られるのは遠慮してもらいたいからな。手を貸してやることにしよう。
「断片的な情報だがおそらく現れたのは古代怪獣ツインテールだろう。だとすると少し惜しいな」
「惜しい?」
「あぁ、幼体のツインテールは海老のような味がして食べることが可能なんだが・・・成体となると食えないことはないんだが・・・幼体の時ほどではなくて、せいぜい尻尾の部分となるんだ」
以前試しに成体を食してみたことはあったが尻尾の部分以外は食えたもんじゃなかったな。
「兄貴、色んな怪獣を食ったことがあるんすか?」
「そんな訳ないだろ。食えるって情報があるものだけだ」
ガイの馬鹿が食ってみたいってのに付き合わされて色んなのにチャレンジさせられたというのはあるが・・・俺はそこまで酷い雑食ではない。
「俺はまだこの星に来て日が浅く地理に疎い。お前らのアジトまで案内を頼む」
「ウッス!」
トマトが入ったかごを倉庫へとしまった俺は一旦トマト畑にいる爺さんのところへと戻る。
「悪い。・・・ちょっと出てくる」
「・・・あぁ。見つかるといいな。お前の答え」
爺さんに後押しされた俺はさっそくエレイン達とともにツインテールの移動予測地であるアジトへと向かおうとするとモミジとすれ違った。
「あれ?どっか行くのジャグラー?」
「あぁ、ちょっと海老を狩ってくる」
「え?海老を買ってくるの?この辺で海老を売ってるところってあったっけ?・・・まぁいいや。いってらっしゃい!まだ病み上がりなんだから気を付けてね!」
ツインテールを狩ってくることをモミジに伝えたが何故だろうか?言葉のイントネーションに違和感を感じたんだが。
「あぁ。行ってくる」
~~モミジ~
「あぁ。行ってくる」
ジャグラーはこの間の人達と一緒に海老を買いに出かけてしまった。
「ジャグラーったらそんなに海老が食べたかったのかなぁ?」
大方この間の人達が海老を売ってる場所を見つけて、その場所をジャグラーに伝えたらさっそく買いに出かけたって感じだとは思うけれど・・。まさかジャグラーの好物が海老だなんて思わなかったよ。
「この辺は山に囲まれてる場所で海からは遠いからね~。海老どころか海産物なんてそう簡単に手に入らないもん」
魚を食べるとしたらせいぜい川魚ぐらいで、海のものを食べる機会はほとんどないからね。
「あれ姉ちゃん。兄ちゃんは何処にいるの?」
「ジャグラーならついさっきこの間の人達に案内されて海老を買いに行ったよ。よっぽど海老が食べたかったんだろうね」
「へぇ兄ちゃんって海老が好きなんだ」
さぁて、今晩は海老を使った料理になると思うし・・・せっかくだからお母さんから海老の料理の仕方を教えてもらおうかな。
~~ガイ~
「くっ・・・逃がしたか」
結論的に言うと俺達はセラフィムに勝つことはできなかった。俺達が同時光線を放とうとした瞬間、セラフィムはロボット怪獣達を呼び出して俺達はそれらの対応に追われてしまった。俺達がキングジョーブラックやインペライザー達との戦いに追われている間にテレポートされて逃がしてしまった。
「だが敵の大元がどんな相手かは分かった。これは大きな収穫だ」
奇械天使の親玉であるセラフィムの目的・・・それはこの宇宙の文明を浄化と称して滅ぼし、自身がその宇宙の『正義』になることだった。
「1体1体はさほど強力じゃないっぽいから別にどうにでもなるんだが・・・やっぱり問題は数だよな」
本体さえ倒せれば端末たちも機能を停止するのだが・・・それを踏まえても数が多い。本体達を指揮していたミカエルは既にコアにされていたヒカルさん達を助け出す過程で3体全てを破壊したのでもういないのだが・・・セラフィムが前線に立つようになってしまったことで指揮能力は回復されるだろう。いや、それどころかキングジョーブラックやインペライザーといった奇械天使ではないロボット達を操作しているところをみるにより強力な指揮統率力があるとみていいだろう。
「・・・今にして思えばゼロさんはセラフィムに警戒されて足止めを受けることになったんだろうな」
俺やユウトは光を受け取ったことで光の戦士へと覚醒し、ヒカルさん達3人はウルトラマンさん方と融合しているのでその身に光を宿す形となっている。だがゼロさんやM78星雲に住まうウルトラマンさん方は言わば『光そのもの』だ。なのでその姿で捕えてしまうとコアとして使うことが不可能だからだろう。最も人に擬態していたり応急措置として現地の人と一体化した場合はどうなるか分からないが・・。
「えっ?ゼロもこの宇宙に来ているのか?」
「えぇ、とはいえゼロさんはおそらくセラフィムが直接差し向けたと思われる大量のロボット軍団と交戦することになってしまっていて・・・おそらくこちらに合流することは難しいと思います」
あの時はゼロさんが後押ししてくれたのもあるが大量のロボット達を「問題ない」と言っていたので任せてきたが・・・もし目的が本当に足止めだけだとしたらロボット怪獣たちの大半はそちらに回されているんだろうな。そうじゃなきゃこちらにまるでロボット怪獣がこないというのはおかしい。
「ゼロはウルティメイトブレスというので光のエネルギーは無尽蔵にあるらしいが、体力には限界があるはずだ」
「だとするとやはりゼロさんと合流するべきですね」
「待つんだガイ」
俺はさっそくゼロさんが単身で戦うこととなった惑星ボレイドへと向かおうとオーブカリバーを掲げようとすると弧門さんに止められた。
「ゼロが足止めを受けているってことはそこにセラフィムはいないってことだ。だったらゼロのためにもロボット怪獣達を操作しているセラフィムを先に倒すべきだ」
「・・・弧門の言う通りだガイ。ゼロを信じているのなら俺達はゼロの元へと向かわないべきだ」
「安心しろって。ゼロはすっげぇ強いからよ」
弧門さんに続いてショウさんとヒカルさんがゼロさんを信じてるなら行かないべきだと告げてきた。ヒカルさんとショウさんの言動から察するにゼロさんはお2人の信頼に足る以上の戦士なようだ。
「・・・分かりました。ロボット怪獣はゼロさんにこのまま任せて俺達はセラフィムを追いましょう。ですけどどうやってセラフィムを追えば・・・」
「奴は自分の事を『光』だと言っていた。ならば奴の場所を特定する術はある」
そう言ったショウさんはビクトリーランサーを取り出した。
「俺とヒカルの持つビクトリーランサーとギンガスパークにはスパークドールズを探知する力がある。そしてガイの話を聞く限りでは俺とヒカルを・・・光を宿す者を探知するということもできたのだろう?なら・・・」
「なるほどな。ギンガスパークとビクトリーランサーならセラフィムの光を辿れるかもしれないってことか」
ショウさんの話を理解したヒカルさんはギンガスパークを取り出すと、セラフィムの『光』を辿ろうと意識を集中する。
「行けそうですか?」
「分かんねぇな。こういうのはやったことがないからな」
「はい・・・」
俺はお2人に集中させるために静かにするとギンガスパークとビクトリーランサーから光の線が放たれ、それが空を示した。きっとこの光の線の先にセラフィムがいるはずだ。
「行こうぜみんな。この宇宙の未来を守るためにな」
ヒカルさんの言葉とともに俺達は『光の戦士』へと変身して光の線の先へと飛び立った。
~~ジャグラー~
「さっすがジャグラーの兄貴だぜ!あんなデカい海老をあんなにあっさりとぶっ倒しちまうなんてよぉ!」
エレイン達のアジトにたどり着きそうになっていたツインテールを寸前のところで撃破した俺は戦利品としてツインテールの尻尾を持って帰りながら家路を辿っていた。エレインの下っ端連中はまるで自分のところのボスを褒め称えている。
「やめろ騒ぐな。あの程度の相手、騒がれるほどでもない」
「あの程度じゃ相手にならないってことかよ!さっすが兄貴だぜ!」
確かにあの程度なら問題なく倒せるといった意味合いで言ったのは間違いではないのだが・・・逆に焚き付けてしまったな。
「しかしお前らは良いのか?別に尻尾の半分を分けてやってもいいんだぞ?
俺はエレインに尻尾の半分を分けてやると話すも、エレインは首を横に振った。
「いやいや、尻尾以外のところを分けてもらっただけでも十分だって」
「だが尻尾以外のところはマズくて食えたものじゃないんだぞ?」
「俺らは農業や釣りなんかせず奪ったり盗んだりで生き延びてきたゴミみたいな連中だったからな。マズいものを食べてでも生き残ろうとしてきた俺らにとって『不味い』ってのは食べない理由にはなんねぇさ。流石に毒があるってんなら食わないけどよ」
つまりこいつ等はあれか、このスラムと化した名もなき星でまともに働くこともままならず略奪行為でしか生きられなかった孤児たちの集まりというわけか。
「安心しろ。確かに不味いが毒があるわけじゃない。・・・ところで1つ言っておくことがある」
「あぁ、言いたいことは分かってるぜ兄貴。もう略奪なんかやめろって言いたいんだろ?」
「・・・あぁ。その通りだ」
「俺らはさ兄貴と出会って少し変われた気がするんだ。なんていうかよぉ・・・今まで奪うことしかできてなかった俺らは全員親を知らないってのもあって人の優しさってもんを一切感じたことがなかったんだ。だけど兄貴に出会って・・・あの家の連中に出会って食い物だけじゃなくもっと別の何かを・・優しさってのを教えられて思ったんだ。こういうのも悪くねぇなってよ」
俺はまだ何も変わりきれてないってのに・・・こいつ等は俺と出会っただけで変わって来たということか。
「俺はまだ変われていないというのにな・・」
「何か言ったか兄貴?」
「・・・いいや。それよりお前達はこれからどうするつもりだ?略奪行為を止めるというのなら今後どうやって生きていくつもりなんだ?」
「そのことなんだが・・・最近この星にもそこそこ怪獣が現れるようになってきちまったからな。自警団的なのを立ち上げようと思うんだ」
確かによほどのことがない限りこのような短期間で怪獣が連続して現れるというのはおかしい。しかもこれまでの反応から察するに少なくともモミジぐらいの世代では怪獣という存在すらもこの星に現れてなかったと思われる。
「そうか。無理はするなよ」
俺はエレイン達にそう言い残して家路を急ぐ。
「えっ?兄貴は仲間になってくれないのかよ?!」
むしろ何故仲間になるという前提で考えているんだ。
「自警団をするのはお前らだろ。それとも何だ?戦うのは俺だけか?」
「そういうわけじゃないけどよ・・・」
「だったら強くなれ。仲間として手伝いはしないがそれで死なれるというのも後味が悪いからな。お前達が鍛えるというのなら手を貸してやらんこともない」
知り合った相手がみすみす死なれるというのは・・・もう見たくないからな。だが俺が常に戦うというのではこいつ等は決意以外は成長しないだろう。それでは強くなることなどできない。ならば俺は極力手を貸さず、よほどの相手でないかぎりは戦わないべきだな。
「そうか!ありがとな兄貴!」
「・・・あぁ」
これぐらいの約束なら今の俺でもしていいだろう。そう自分に言い聞かせながらも俺はモミジ達が待つ家へと到着する。
「この香りは・・・」
普段なら野菜スープの香りが漂ってくるはずだというのに・・・今日はいつもとは少し違う香りがあった。
「お帰りジャグラー!海老は買ってきた?」
「あぁ。狩ってきたぞ」
俺はそう言いながら狩って来たツインテールの尻尾を見せてやると何故かモミジは「あれ?」とでも言うかのように首を傾げた。
「あれ?海老は?」
「こいつだ。ツインテールを倒してきた戦利品だ」
「・・・もしかしてだけどさジャグラーの言っていた海老っていうのはそのツインテールってやつ?」
「そうだが」
どうやらモミジは俺の「狩ってくる」という言葉を「買ってくる」と勘違いしていたようで何だかガッカリしたような反応をしていた。
「・・・すまない。どうやら勘違いさせてしまったようだな」
「気にしないで。勝手に勘違いしたのは私なんだし。それよりさ、それを持ち帰ってきたってことはそれも・・・」
「あぁ、これも食べて問題ない怪獣だ。海老の味がするぞ」
「だから海老って言ってたのね!よかったぁ、今日ね!お母さんから海老の料理の仕方を教わってそれ用のソースも作ってたのよ!無駄にならなくて本当に良かったわ!」
なるほど。この香りはそのソースの香りだったのか。
「ならばさっそく調理してもらうとするか」
成体ということもあり味には少し不安はあったのだが・・・モミジの作ったソースは茹で上げたツインテールの尻尾に合っていて問題なく食すことができた。
俺はこんな平和な世界が続けばいいと思うと同時に、自分はいつまでこのままでいるのかという不安を感じていた。
次回「変わらなくても」