毎日が日曜日の朝に   作:まさきたま(サンキューカッス)

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シリアス回に見えなくも無い、妹回です。


第四話「闘う理由とオカマバー」

とある、その筋の人にとっては有名な歓楽街。

普段この街が活気付くのは、サラリーマン達の仕事が終わり夜の帳が下りてからである。

 

昼のこの街は、チラホラと暇な人間が通るものの、騒がしいキャッチや泥酔した酔っぱらいは目に付かない。今、1人の高校生程度の年の男が、寂れた店の扉に手をかける。

 

「いらっしゃい。貴方が最後よ。」

 

その暇な人間の1人として昼間から歓楽街を歩いていた藤子朗は、closedと看板が立てかけられた彼のよく知る店に上がり込んだ。

 

「ママ、ご機嫌よう。もう皆揃っていたか、失敬失敬。」

「時間には間に合ってるネコ、問題無いネコ。」

 

此処は世界を守ると誓った戦士の集団、“装甲騎士団”のアジトの1つとなっている店。

 

オカマバー「母の愛」、その筋では有名なこの街に、古くから根を張る老舗である。

 

 

 

「まあ席に着けネコ、藤。さて、諸君。聞いてるとは思うが、今日の議題は非常に繊細な話ネコ。」

 

猫博士の言った通り藤も、前もって今日はどう言う理由で皆が召集されたかは聞いていた。促されるまま、とある少女が座っているカウンター席の隣に腰掛ける。

 

「さてと、その聞いた話が未だに信じられないんだが・・・本気か?妹ちゃん。」

 

藤が語りかけた相手である、隣にチョコンと足を浮かせながら腰掛けていたのは、学友の妹で、先において自身の命を助けられた少女。やや色素の薄いさらさらの髪をうなじを隠すか隠さないかと言った長さに丁寧に切り揃え、中性的で整ってはいるが、幼さも残す顔貌と、ソレを引き立てるボーイッシュな服装。

 

即ち、照東真帆その人である。

 

「はい、よく考えたんですが。」

 

年の割にはハキハキと、下手したら兄貴より理性的に話す少女は、ハッキリとこう言った。

 

「ボクも、戦士として共に闘わせて下さい。」

 

ソレは、命を賭けんとする戦士の誓いの言葉であり、俺やママさんが初めて装甲を纏う時に交わした約束である。

 

ママさんや俺、猫博士の溜息が店内に零れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「その、まずは理由を聞いても良いネコ?」

「・・・怖くなったんです。今まで当たり前の様に過ごしてきた日常が、何時自分の知らないところで崩壊してしまうかもしれないと知って。」

「要するに、俺達が頼りねぇから手を貸してやるって事か?」

「いえ、その、違います! ただ・・・ボクにも何か出来るなら、と思って。」

「うーん。その気持ちは、とっても嬉しいんだけどねぇ・・・。」

 

俺達に訴えかける、その少女の眼差しはとても真摯なモノだ。だからこそ、タチが悪い。

 

「真帆ちゃんが時々魔力を供給しに来てくれるだけで大助かりネコよ? 真帆ちゃんの魔力は(ウルフ)のざっと5倍は有るネコ。そう、なんと5ウルフネコ。」

「そうよ、5ウルフも大量の魔力の援助してくれてるじゃない。闘うのは素人なんだし、そっちは私達に任せて貰えないかしら?」

「でも、前に貸して頂いた・・・あの特殊装甲ベルト? みたいな奴、ボクしか起動出来ないんでしたよね! つまり5ウルフもの量の魔力が無いと起動出来ないと言う事なら、ボクも闘った方が効率が良いのでは?」

「それが危険だってのが分からねぇのか? 素人のお前がやられたら最悪そのベルトもぶっ壊れちまうんだぞ。それと当然の様に俺を魔力値の単位にするのやめろや。」

 

皆の反応は当然、渋い。

正直、前回の闘いを見てる限りではこの娘はバトルセンスが有るとは思えないからだ。銃の腕はいまいちで、戦場でのとっさの判断力に欠け、頭が真っ白になると立ち尽くす。

最後のハッタリの話を聞いて、確かに機転や度胸には光るモノが有るとは思うが、自力で経験と理論に裏打ちされた判断が出来ない現状では、この娘はいつ何をしでかすか分からぬ爆弾でしかない。

 

それに。

 

「ハッキリと言わせて貰うか。スマンが、子供(ガキ)のお守りをしながら闘うのは2度と御免だぜ俺。常に背後に気を向けて守りながら闘って結構大変なんだ。この前奴等に負けたのも、大怪我したのも。半分は妹ちゃんのせいってもんだ。」

「ちょっと! 藤ちゃん、そんな言い方無いんじゃ無いの!?」

「いや、言う。勘違いさせてちゃいけない。俺達が守らなきゃ、死んじまう人が居るんだ。子供のヒーローごっこに付き合う余裕が今、有るのかよ?」

「ボ、ボクは・・・。」

 

かなり険しい表情を作り、隣に座り目を伏せる無垢な少女にハッキリと告げる。

 

「ヒーローになりたい。そんな綺麗な言葉を実行するにはな、外道に落ちる覚悟が必要なんだ。魔女って奴等の正体は不明だが、たた精霊の手先の人間と言うだけで無く。その言動から“決して解けない洗脳をされたか、完全に騙されたかしている少女”の可能性も考えられている。」

 

そう、ひょっとしたら彼女達も、本来俺達が守るべき存在かもしれない。そう言う意見も存在はするのだ。確かめる術は現状無いのだが。

 

「そうで有ったとしても。精霊の手先となっている以上、俺達は殺す。その娘に罪は無かったとしてもだ。その覚悟は有るか?」

 

この、自ら闘う意思を固め志願してきた少女は、幼い。

まだ汚れを知らず、人の善性を信じ、疑うことを知らない。

 

「お前は、誰かにとって大切かもしれない(ひと)の命を奪う時に。躊躇わず引き金を引けるのか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に良いの? あんな言い方しちゃって。多分嫌われちゃったわよ?」

「良いんですよ。ママさん、苦いコーヒーください。熱々の。」

「難儀な子ね、貴方も。偉そうなこと言って、貴方だって誰かを殺す覚悟なんて無い癖に。」

「・・・方便ですよ。あの娘だけは巻き込めないんだ。」

 

俺が(マホ)ちゃんに凄んでも、暫くはじっと堪えて話を聞いていたが、やがて我慢できなくなったのか目に涙が浮かべ、そのまま無言で走り去ってしまった。

 

空席となったバーのその角席に、どさりと今度はマザーさんが腰掛ける。コトンと音を立て、湯気を立て波打つコーヒーが俺の前に置かれた。

 

「学友の妹さんなんですってね?」

「ああ、散々聞かされたよ。ソイツ、仮面ライダーに命賭けてる様な奴でな、喋ってても話題は基本2種類しか出て来ない、ホントに下らない男さ。」

「2種類、ねぇ。つまり?」

「仮面ライダーの話と、妹自慢の2つさ。恐らく妹自慢の比率の方がやや高い。真性のシスコンだよ。・・・巻き込めねぇよ、あんなに大事にされてる女の子。」

 

そう言ってロクに冷まさず、オレは湯気だらけのコーヒーを口に流し込んだ。

 

「さっきのお前の説教、サマになってたネコよ。ただ、言ってることは俺の言った台詞をマルパクリしただけネコがね。」

「うるせぇ。」

「藤ちゃんは確かあの時、こう言ったわねぇ。」

 

そう、今の俺の言葉はソックリ昔、猫博士に問われた通りの言葉だった。

 

「“敵かもしれないってくらいで人を殺す覚悟なんてねぇよ! 俺が持ちたいのは、誰も殺さねぇ覚悟だ! 皆が笑えるハッピーエンドを、絶対に諦めない覚悟だ!”だったっけネコ、ぷくくく。実に、実に青臭いネコねぇ。」

「あんらぁ? 私は格好いいと思ったわ、トキメいちゃったぁ。」

「だー! ほじくり返さないでくれ!恥ずいから!!」

 

あの娘に、重荷を背負わせたくはない。そう言うのは、俺達のような大人の仕事だ。

例え妹ちゃんに嫌われてでも、いや、妹ちゃんを傷つけてしまったのだとしても、それでも俺はあの娘を守りたかった。

だってこれが、俺のヒーローになるときに誓った“覚悟”なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日は非常に珍しい日だ。

 

「なんかレアだな、真壁と2人で帰るのって。」

「そ、そうね。藤君、大事な用事があるってすぐ帰っちゃったし。そもそも照東君がバイト急に無くなるってのも珍しいかも。」

「あー、臨時で入るはずだったんだが珍しくシフト埋まっちゃっててなー。たまには早く帰って真帆に構ってやるか。」

 

そう、非常に稀なのだ。照東君との2人きりでの帰宅は。

普段学校では、私と藤君と照東君の3人で連んではいるのだが、放課後となると話は変わる。ほぼ毎日の様にバイトを入れている照東君と一緒に帰る機会は多くなく、たまにそうなっても藤君が照東君の横に居る。

 

降って湧いた幸運。

 

ひょっとしなくても今は、千載一遇のチャンスなのだ。

 

万一の為、と用意しておいた“アレ”が財布に有ることを確認する。うん、大丈夫。

 

 

「照東君? その、先日はサチが迷惑かけてその、悪かったわね。詳しく話を聞いたら、照東君は単にサチのおままごとに付き合ってくれてただけみたいだし。私、とんでもない誤解しちゃって・・・。」

「あぁ・・・。いや、過ぎた事さ。オレも多分妹が似たような状況になってたら問答無用で男の方を炊き上げるし、しょうが無いよ。」

「そう言って貰えると助かるわ・・・え、炊き上げるの?」

 

そりゃあね。真帆にそんなことさせたら尋常な殺し方だと納得しないよ。少しずつ高温により体を赤く腫らしていく炊き上げが1番だ。

 

そう言って笑う照東君。流石にドン引きである。

 

「妹が可愛いのは真理だし気にしなくて良いよ。幸いにも、オレに前科は付かなかったし。」

「う、うん何かホントにゴメンね・・・。 」

 

とは言え、確かに悪いことをした。これは、他意が有る訳では無く、あくまで迷惑かけたお詫びと言う形で。

 

そう、心の中で誰かに言い訳しつつ、覚悟を決めて話し掛ける。

 

「その、照東君、良かったらなんだけどね? 妹の事のお詫びを兼ねて、その、一緒に映画とかどうかな? たまたま、お母さんがね、その、半券くれたの! 2人まで使える奴!」

 

と、自腹でコッソリ買っておいた“アレ(映画チケット)”を取り出す。

 

「仮面ライダーの新作だっけ? 確か上映中なんでしょ?」

「真壁・・・お前、良い奴だな!! ホントに良いのか!? やった、是非行こう!!」

「う、うん!」

 

やっぱり釣れた! 照東君はバイトばっかりで時間もお金が無いから、いくら大好きな仮面ライダーとは言え映画なんて行ってる暇が無いと踏んでいたけれど。どうやら大正解みたいね。

 

ふふふデートよ、まごうこと無く放課後デートよね、これは。

それも相手の好みど真ん中な映画デート。一応は仮面ライダーの映画の評判も調べたけど、ファンの反応は上々の様子。つまり失敗もほぼ有り得ない。

 

「決まりだな! んじゃ、映画館有る隣町まで歩くか。真壁はよく映画とか行くのか?」

「えっとね、私は・・・。」

 

生き生きと目を輝かせる照東君の隣で私は、彼と他愛ない雑談をしながら一駅程歩いて行く。

 

うん、今日は、きっと良い日になりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっちゃった。」

 

ボクは、来たときより少しだけ人が増えている街の通りを1人、とぼとぼと歩いていた。

 

今日は連絡先を交換しておいた猫さんに連絡を取り、わざわざ皆に集まって貰ったのに、そのボクが無言で飛び足してきちゃうなんて礼儀知らずにも程が有る。

 

 

・・・ボクはさっき、藤さんの言葉に、恐怖してしまったんだ。

 

そのせいで、何も考えられず、何も言い返せずに、気が付いたら店の外へと全力で走り出してしまっていた。

 

良くない、これは実に恥ずべきボクの悪癖だ。感情がいっぱいいっぱいになると頭が真っ白になって短絡的に動いてしまう。

 

でも。

 

「藤さんだってあそこまで言う事、無いじゃないか・・・。」

 

俺達が負けたのは、怪我したのは、半分妹ちゃんのせい。

 

つまりボクが居なければ、子猫を突っついたりしなければ。藤さんもマザーさんも、怪我をせずに済んだと言うことなの?

 

実際に、そうだったのかもしれない。でも、

 

「ぞんなこと、言わなくでもっ・・・」

 

声が震え、裏返る。

 

頬に熱い雫が伝う。

 

 

────誰かにとって大切かもしれない(てき)の命を奪うとき。お前は躊躇わず引き金を引けるのか?

 

 

「ボクは、役に、立でたらな、て、思っだだけでぇ・・・」

 

そんな覚悟なんか無い。それはつまり、藤さんにヒーローごっこと言われても仕方が無かったのかもしれない。だってテレビの中みたいに、ボクもヒーローになれるかなって期待してしまっただけだったのだから。

 

見知らぬ人のためじゃなく、ボクをいつだって守ってくれる兄さんや、ボクを受け止めてくれたなっちゃんを守る事が出来ると言うなら、十分に命を賭ける価値はあると思ってしまっただけだから。

 

最初からボクに、ヒーローの資格なんて無かったのかもしれない。

 

でも、でも、でも!!

 

「だって、藤さんも、マザーさんも、猫さんも、凄く、格好良がっだ、んだものぉ!」

 

周りの通行人の人達が、ボクを見てギョッと息を呑むのが聞こえた。

いきなり女の子が泣き出したのだ。今ボクは、それはそれは目立ってしまって居るだろう。

 

走ろう。このまま誰かに声をかけられてしまう前に、家まで、涙が枯れるまで全力疾走しよう。

 

そう鈍い頭で判断し、目を拭い駆け出す。

 

同級生の中でボクは足が速い方では無いけれど、持久走なら上位なんだ。家まで走り続ける事くらい出来るだろう。

 

そう思ったのだが。

 

「ふぐっ・・・うああああん!!!」

 

いけない。

思ったより感情の抑えが効かない。走り出したは良いが、益々哀しい気持ちが溢れ出して、号泣してしまった。

すぐに息が出来なくなり、立ち止まってしまう。

 

「なんでぇっ・・・どうじでぇっ!!」

 

何もかもが思うように行かない。それが辛くて、そのままうずくまってしまいそうになり────

 

 

 

突然誰かに、思い切り、力一杯に後ろから抱き締められた。

 

「何があった?」

 

幾ら泣いているとは言え、断りもせずに女子を羽交い締めするとは。

うるさい、貴方は一体誰ですかと声を上げようと振り向いた所で、

 

 

「兄、さん・・・。」

 

 

普段からは想像も付かないような真剣な表情でボクを見つめていた(ボクの味方)と、バッチリ目が合った。

 

 

「聞かせろ、真帆。嫌なこと言いたいこと、オレが全部受け止めてやるから。」

 

 

ぐっ、とボクを抱き締める腕に力が入り、兄さんの腕にに体全体が包まれて、徐々に頭がクリアになっていく。

 

「今こそオレを頼れ、真帆。」

 

本当に、兄は頼れる人だ。

胸を掻きむしっていた哀しい気持ちが、いきなり弾けたかのように萎んでいき、今までとは反対に涙が溢れるのとリンクして心が温かくなっていく。

 

 

「ねぇ、教えて欲しいんだ兄さん。」

「ああ、何でも聞くと良いぞ真帆。」

「とっても変なことを聞くよ、良いかい?」

「勿論だ。どんな質問でも、真面目に答えるさ。」

 

兄さんはいつもこうだ。何故かボクが挫けそうになると、その気配を予知でもしているかの如く必ず現れる。そして、いつもボクを、支えてくれるんだ。

 

「・・・ありがと。あのさ、兄さんは誰か、見ず知らずの他人を守るために罪の無い誰かを殺さなきゃいけないとき、そんな時。兄さんならどうするの────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

情けない所を兄さんに見られてしまった。

 

顔をクシャクシャにして、しゃくり上げるボクを兄さんはヨシヨシとあやし、涙を拭き、ずっと無言で抱き締め続けてくれた。ボクは自分で思っていた以上に甘えん坊だったらしい。

 

そうやって兄の腕の中でぐずる事、数分間。

 

ボクはようやく落ち着きを取り戻し、今度はボクを抱き締めたまま離そうとせず「このまま帰ろう!! 今日は一緒にお風呂入ろうじゃないか! そして夜は一緒に同じ布団で寝るぞ! 真帆ー!」と叫ぶ兄さんを引き剥がすのに苦労していた。

 

その時に兄と一緒にいた女の人の死んだような目が忘れられない。

 

その女の人に協力して貰い、兄さんを引き剥がす事に成功したボクは、もう一度あのバーに向かうことに決めた。

 

兄さんの“答え”を聞いて、ボクも覚悟を決めたから。

 

兄さんに、ボクが選びたかった道を教えて貰ったから。

 

 

・・・にしてもあの兄さんと同じ高校の制服の女の人は何者なのだろう。

 

引き剥がしてなお抱きつこうとしてくる兄を、流れるような動作で縛り上げて拘束して居たけど、よく考えるとなんで女子高生が縄なんか持ち歩いて居るんだろうか。

 

仮に、アレが兄さんのデートだったとしても、相手は選んだ方が良いよと言った方が良いかもしれない。いや、帰ってから一応言っておこう。

 

 

・・・別に兄さんを取られちゃうかもなんて、ボクは考えちゃ居ない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、駈けること10分。もう一度マザーさんの経営するバー入り口の前に着いた。ボクは一息吸い込んでから、再びそのバーのドアを開けようと手を伸ばす。冷たい取っ手を握り、グッと力を込めるが、

 

「・・・あれ? 締まってる。」

 

ドアに備え付けられた冷たい取っ手は、微動だに動かなかった。何度かノックをしたけれど、反応は無い。

 

これは、絶対に妙だ。ボクが逃げ出してしまったから話すことが無くなり、猫や藤さんが早々帰ってしまったと言う事までは頷ける。だが、マザーさんまで店から出ているのは流石におかしくないか?開店までさほど時間も無いというのに。

 

気に留めていなかった、ドアの傍に立て掛けられた札に目をやる。

 

「臨時休業中、ね。・・・まさか。」

 

ボクはしっかりと覚えていた。

 

猫にこのお店に案内して貰った時も、藤さんがバーに来るまで皆が待っている間も。マザーさんはずっと、忙しなく料理の仕込みをしていた筈だ。

 

つまりマザーさんは今日も普通に営業するつもりだったはず。なのに、臨時休業中と言うことは。

 

 

 

 

─────小さな見覚えのある子猫が、駈けていくのが見えた。

 

 

 

「やっぱり出たんだ、魔女の奴らが!」

 

ボクは、もう覚悟を決めた。

 

だから迷わずに、その子猫を捕まえる。それが非日常への入り口だと知っていたから。

 

あの時と同じ様に、景色がセピア色に染まった。

 

 

 

 

 

「・・・やっぱり居た!」

 

いきなり雷が落ちてくるかもと身構えては居たのだが、幸いにもまだ闘いは始まっていない様だ。

 

こっち(セピア色の世界)に降り立ったボクのほんの数メートル前に、装甲を展開した2人の戦士と、妙に毛深い足を生やしたゴミ箱が道の端で何やら会議をしているのが目に映った。意を決して声を掛けようと口を開こうとして、その前に。

 

「って急に魔力反応ネコ!? ま、まさか奇襲!?」

「・・・いや、違うぞ猫。やっぱりな、おい妹ちゃん。何でこんなとこに居る。」

 

まだボクは一歩だって動いていないというのに、既にボクが居る事に気付かれてしまった。

 

最初から隠れる気は無かったから、それでも構わないのだけれど。

 

「ボクはここに闘いに来ました、ウルフさん。」

子供(ガキ)のヒーローごっこには付き合わねぇって言ったよな俺? もう一度聞くぞ、何しにここに来た? 照東真帆。」

 

・・・怖い。

 

怒気を隠そうともせず、不機嫌そうに腕を組んだウルフさんに凄まれ、流石に気圧されそうになる。

 

でも、引く訳にはいかない。引きたくない。

 

ボクは心を落ち着かせるため、軽く息を飲み、決意の焔を心に灯す。

 

「ウルフさんと闘いに来たんです! ボクは!!」

 

コレは、ボクなりの、闘いの誓い。

 

「前に魔女さん達と闘ったとき! あの娘の目は歪んで居るようには見えなかったから!! ウルフさんが殺すって言うなら、ボクが守ります!」

 

ボクは確かに感じたんだ。

 

あの魔法少女は何か悪巧みをしている様な雰囲気じゃない。必死で、命より大切な何かのために闘っているんだと。

 

魔女は、きっと根っからの悪党なんかじゃないと。

 

だから。

 

「ボクは、ヒーローごっこと蔑まれても良い! 誰かを殺したりする覚悟なんか無いです!」

『真帆、罪も無い誰かを殺す時点でそんな方法は間違っているんだ。少なくとも兄さんはそう思う。』

 

「例えウルフさんが魔女を殺すしか無いと言っても、ボクは別の方法を探します!」

『世の中はな、やってやれない事の方が少ねぇんだぜ? 探せば良いだろ? もっとクールな方法をよ。』

 

「だってボクは、」

『だってオレは、』

 

 

 

「『誰もが傷付かず、幸せなハッピーエンドを目指す、その覚悟を持つって決めたから!!』」

 

 

 

 

 

ぽかーん。

 

仮にもウルフさんに敵だと名乗り、思い切り啖呵を切って喧嘩を吹っ掛けたと言うのに。

 

肝心のウルフさん達の空気が凍っている。どう言う事だ? ・・・あっ。

 

ボクは今、ひょっとしてとても恥ずかしく、かつ馬鹿らしいことを言ったのでは無いか? 兄さんにまんまと乗せられてしまったけれど、ボクも割と納得してしまっていたけれど、あの兄さん(ヒーローバカ)の言葉を借りてしまったんだぞ?

 

ぶはっと。堪えきれぬかのように、マザーさんからくぐもった笑い声が漏れてきた。釣られるように、猫の居るゴミ箱からも笑い声が零れてくる。

 

ボクは自分の顔が段々真っ赤に染まって行くのを自覚した。

 

「ウフッ、ウフフフ。ねぇウルフ、これは、これはもう仕方ないんじゃないかしらぁ?」

「にゃ、にゃははははは!! ウルフが小学生と、全く同じレベルだったって事ネコ! にゃははは!!!」

「うるせぇ! うるせぇうるせぇ!! もー、何だってんだよぉ・・・。」

 

羞恥のあまり、皆が何を言ってるのかよく理解出来ないままその場で立ち尽くして居ると。

 

いつの間にか足を生やしたゴミ箱がのっそのっそと近付いて来ており、蓋がズレて出来た僅かな隙間からベルトがズルリと、外周から生えた手で引き抜かれた。

 

そしてボクは、猫からしっかりとベルトを手渡された。

 

「まだまだお嬢ちゃんは戦闘技術が未熟だが、今は戦力が不足しているからあまり贅沢は言えないネコ。これからしごいて一人前に育ててやるネコよ。」

 

そう言って、ゴミ箱妖怪は、手でボクにベルトを付けろと促す。

今回は、猫はベルトを巻いてくれないようだ。

 

「これから、危険な位置で闘って貰うかもしれない。誰かを守る為に体を張らせるかもしれない。」

 

ベルトを、1人で巻けに促された意味を何となく理解したボクは、自分のか細い手で腰に巻く。

 

思ったよりずっとベルトは重たく、硬かった。

 

それでも、自分の意志で巻いた。

 

つまりボクは今、自分で闘いの意志を示したのだ。

 

「1つ、覚悟しておいて貰うネコ。ウィザードは人を殺す覚悟なんかは無いようネコが・・・。」

 

巻き終わるのを待っててくれた猫は、ボクの前に来て改めて、と言った雰囲気で語りかけてくる。何のつもりなんだろうか? と思っていたら。

 

がたん。と音を立て、ゴミ箱の蓋が地面に落ちた。

 

頑なに蓋を開けようとしなかった猫が自ら、蓋を開け立ち上がったのだ。

 

初めて見る、猫の素顔。

そして初めてボクと正面から相対し、真っ直ぐにボクを見据え、こう言葉を続けた。

 

「命を賭けてでも。誰かの為の、誰もが笑えるハッピーエンドを猫達と一緒に探してくれると言う覚悟をして貰いたい。きっと厳しく、辛い覚悟になるだろう。本当に、それでも良いネコね?」

 

その問いに、ボクは、

 

「そんな夢みたいな結末を探し続けて良いならば、ボクも共に闘わせてください。」

 

そう言って力強く頷いたのだった。

 

「ありがとうネコ。俺は非力な猫に過ぎないが、俺も命を賭けて君をサポートし、共に闘い、共に守る事を誓うネコ。よろしく、ウィザード。」

 

そう言って、手を差し出して笑う彼女にボクは。

 

 

 

 

「・・・ヴェエエ!? 嘘ぉ!? 猫って女の人だったの?」

 

あんぐりと口を開けて恐れ(おのの)いていた。

 

 

蓋が開いたゴミ箱の中から動かず立っている、猫博士とおぼしきその女性(ひと)は。ボサボサの長髪を束ねようとせず膝の高さまで伸ばし、群青色の地味なジャージ姿で差し出してない方の手をポケットに手を突っ込んでいる、見るからに眠そうな目をした胸のデカい女の人だった。

 

ってゴミ箱から生えてる手足は何だったんだ!? もしやあれも作り物だったのか!? ならなんであんなに毛深くしたんだ!

 

「あ、猫博士って俺の実のねーちゃんだぞ。」

「もっと嘘ぉ!!?」

 

サラッとウルフさんから混乱する情報の更なる追撃を貰い、いつもの如くテンパって頭が真っ白に。猫の手を何とか握り返すのが精一杯だった。

 

この悪癖早く直さなきゃなぁ。

 

混乱している間に、猫さんはゴミ箱の蓋をひろい、また中へと隠れてしまった。そもそもなんで隠れてるんだろうこの人。

 

「ウィザード、ベルトは付けただけでは意味が無いネコ。起動して、装甲の展開を早くするネコ。魔力反応、近いネコよ!」

「は、はい!!」

 

 

 

何にせよ、これで指を咥えたまま、誰かが命懸けで保ちつづけてくれていた日常を漠然と享受するのはもう終わり。

 

ボクは自らの意志で再び装甲を纏い、走り出す。

 

理由も分からず襲い来る魔女との闘いを身を投じる為。

 

人類を滅ぼそうとする魔女の真の目的を理解する為。

 

今度は頼りになる2人の仲間と、“肩を並べて”ボクは戦場へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それで、今回の襲撃の結果はと言うと。

 

以前ボクが相対したあの「災厄級」が隠れもせず単騎で空から襲いかかって来て、距離が遠くなかなか決定弾を撃てず苦戦から始まる。

 

だけど、ウルフさんの蒼い炎柱で弾を隠して見えざる位置から狙撃すると言う荒技で何と撃ち落とす事に成功。

 

ここで災厄級を捕らえてしまおうと3人で落下位置に走って行くが、姿を見せていなかった仲間の赤い魔女と黒タイツの魔女に待ち伏せされ、ウルフさんが負傷してしまう。

 

その隙を付かれて逃げられ、結局誰1人として魔女を捕まえることは出来なかった。

 

つまりまぁ、彼女達のことは何も分からないままなんだが。とりあえず今回も魔女を撃退できたのでそれで良しとしよう。

 

 

 

 

魔女との闘いの後、アジトに戻るとマザーさんがボクにホットミルクを出してくれた。のども渇いて居たので有り難く頂戴し、バー(アジト)の角席に座って闘いの疲れを癒しながら味わう。

 

そこで、昼に藤さんのした話の真相を聞いたのだった。

 

「なんだ、結局藤さんのアレって脅しだったんですか。藤さんも、ボクと同じように誰も殺したりしないって誓ってるんですね。ふふ、良かった。・・・あっ、だから皆笑ってたんですね?」

「そうネコ、せっかくだからアイツの装甲ベルトを付けるときの声聞くネコ? 録音してるから何時でも言ってくれネコ」

「おいこら猫ぉ!! ヤメロォ!! って痛たたた!」

「ほらほら、動かないの。」

 

ボクの後ろではウルフさんが、ソファに寝転んでマザーさんから怪我の治療を受けていた。不意打ちで真後ろから電撃を貰い、猫から機械で治療を受けたもののまだ痛いらしい。腰の辺りに、湿布を貼って貰っている。

 

「ビリビリしやがる。まるでケツに電極突っ込まれた気分だぜ。」

「コラコラ。小さな女の子が新しいメンバーに入ったんだから、下品な言葉は慎んで頂戴。」

「あん? あー。すまんかった。」

「あはは・・・。どうぞ、お気になさらず・・・。」

 

ボクはどう反応していいか分からずに苦笑いして、こくん、と滑らかで濃厚なマザーさんのホットミルクを飲みきる。

 

「マザーさん、ご馳走様でした。あまり遅くなってしまうと兄さんに心配かけてしまうので、そろそろお暇いたします。」

「はいな。これからよろしくね? 真帆ちゃん。あ、私はマザーじゃなくて装甲展開してないときは鎌池って苗字か、ママって呼んでね? どちらかと言うとママの方が嬉しいわん。」

 

そう言えばマザーさん、じゃなかった、ママさんの名前とか全然聞いていなかった。普通にマザーさんって呼んでたな。危ない危ない。

 

「分かりました、ママさん。では、さよなら!」

「んー。素直な娘って良いわぁ。それじゃ、また会いましょ? バイバイ。」

「また追って連絡するネコ。グッバーイ。」

「じゃーな、妹ちゃん。」

 

そう仲間たちに挨拶して、帰路へ付く。

 

その足取りは、昼にバーから飛び出して来たときよりずっと軽やかだった。

 

やっぱり、猫さんや藤さん、ママさんはヒーローだった。それが嬉しかったのだ。

 

ボクはまだ弱いけれど、きっとあの人達と一緒なら強くなれるだろう。

 

今まで支えて貰ってばかりだった兄さんを、ボクが今度は守ってあげられる。

 

 

「取りあえず直近の問題は、兄さんに今日の泣いてたのをどう言って誤魔化すかだなぁ。」

 

取りあえず何もかも藤さんって人が悪い事にしてしまおう。

 

ボクはあれやこれやと微妙に鋭い兄さんにも通じそうな言い訳を、道を歩きながらゆっくり考えるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

人生とは上手くいかない事の連続だ。

 

「折角勇気、出したんだけどなぁ。」

 

今日は、普段何かと忙しい照東君と距離を縮める滅多にないチャンスだったは間違いなかった。

 

そう、例えば。

 

興奮して映画の感想をまくし立てる照東君、その傍らにニコニコ頷いて理解を示す私。そして、映画の感想も一段落し少し言葉が途切れた帰り道に、

 

「ねぇ、コレってなんかデートみたいだね♪」

 

とか言いつつ、私からそっと触れ合るかどうか程度に肩を寄せてみたり、

 

「夜は危ないから、良ければ送っていって欲しいな?」

 

とか何とか言って手を握って、そのまましっとりした雰囲気のまま家まで歩いたり。そんなこんなで間違いなく照東君に多少なりとも私を意識させる所までは持っていける筈だった(処女特有の妄想)。

 

道中に何故か泣きながら照東君の妹さんが駆け出してきたのは驚いた。急にシスコンを爆発させて家に帰ると騒ぎ出した照東君を宥めるのに苦労した。まさか縄を使うハメになるとは・・・。なるべく性癖(こういうの)は隠したいと言うのに。

 

なんとか彼を説得して、いざ映画館に入ろうとしたところで照東君の携帯が鳴り響いたのが決定的な不幸だった。

 

何やら急に仕事(バイト)が入ったとかで、何度も私に謝りながら彼は帰ってしまった。

 

照東君を「なら、しょうが無いよ」と笑って見送ってしまい、1人ぽつんと隣町に残されてしまった私は、折角長いこと歩いて映画館まで来たのだからとその場で適当に選んだ映画を見ることにした。だが、その見る映画のチョイスがいけなかったのだ。

 

『空が茜色に染まる頃』とか言う洒落たタイトル、学園で部活の先輩との甘い恋愛!なんて謳い文句に釣られ批評サイトの評価もよく見ずに適当に決めてしまったのだ。少しやさぐれていたのもあり、明らかに私以外の客が少ない事にいざ上映されるまで全く気付かなかった。

 

その映画の中身はと言うと“男子生徒が口先で丸め込んで女の先輩からパンツを巻き上げては部屋に飾るの繰り返し”と言う、作った監督の頭のネジが粉砕されていたとしか思えない狂気に満ちた内容だった。恋愛要素も学園要素も何も無かった。

 

私も即座に席を立てば良いのに、お金を払ってしまったからと無駄に意地を張り居座ってしまった結果。延々2時間もパンツの話を垂れながされ気が狂いそうになった。

 

精神修行だと割り切って耐え、人生で最も長かったと感じた映画の上映が終わって席を立つと、ちらほらと散見していた筈の他の客は全て居なくなっていた。

 

どうやら最後まで見た(バカ)は私だけだった。

 

 

 

映画館を出ると、空は茜色に染まっていた。照東君と楽しく喋りながら歩いてきた道を、1人で寂しく歩いて行く。

もうそろそろ、胡散臭い客引きや怪しい募金グループなどが沸いてくる時間になる。ただでさえ怪しい看板の店が多いこの通りにダラダラと留まりたくはないので、私の足は自然と早くなる。

 

この通りを過ぎると、おねぇ系の店が多い通りになり、そこからは、やや治安も良くなってくるのでそこまでは早歩きだ。まだ時間的に大丈夫とは思うが、変な人に絡まれたりしたら洒落にならない。

 

何人かキャッチに声をかけられたが、私は全て無視してそそくさとその怪しい通りを後にした。

 

「ここまで来れば、安全かしらね」

 

早歩きする事5分。特に妙な人に絡まれたりもせず、おねぇ系の通りまで来られた私は、少し上がってしまった息を整えるため少し立ち止まった。

 

この通りを過ぎれば、私の家までさほど距離は無い。もう安全だろう。

やはり男子を伴わずに、夕方のこの通りを歩くのは危なかったかもしれない。次からはわざわざ映画なんぞ見ないで即座に帰るようにしよう。

 

ちゃんと毎回送っていってくれる藤君(便利なひと)は今日は居ないのだと言うことをスッカリ忘れてしまっていた。

 

ガチャリ。

 

私が息を整えて立ち止まっていた場所の真横の店の扉が突然に開き、私は思わず固まってしまう。

 

 

「あー、イテテ。ママ、もう少し優しく(治療)してくれよう。」

「何よぉ、私はアレでスッゴい優しく(治療)して上げたつもりよ? 男の子なんだから多少荒っぽくても我慢なさいな。」

 

 

そして、その店から出て来た人の声に聞き覚えのあった為、何の気は無しに振り向くと。

 

 

片手で痛むらしい“尻”を抑えながら、“ガタイの良いおねぇっぽい人”に肩を借りて、よろよろと“オカマバー(怪しいお店)”から出て来た藤君とバッチリ目が合ってしまった。

 

それは今日の、デートの事とかクソ映画の事とか、そこら辺のモヤモヤした感情を一瞬で吹き飛ばすのに十分な、衝撃的な絵面だった。

 

「あれ? 真壁? こんな所で・・・ってその顔何?」

 

あっ、ふーん。藤君って、そう言う・・・。

 

今日は確か大事な用が有るって言ってたけど、大事な用って、そっかぁ(納得)。

 

うん、受け止めよう。

 

きっと藤君は、今までずっと悩んでいたのかも。思春期と言う多感な時期に、自らの性癖に関する悩みの辛さはよく分かる。誰にもいえず、抱え込むしないからだ。何せ私も、嫌な思いを沢山した側の人間だから。

 

私はちゃんと受け止めて、理解してあげよう。

 

「その、大丈夫だから。私、偏見とかないし、むしろその、つまり誰にも喋らないから。私黙ってるから安心してね。」

「・・・待って。真壁さん待って、何を言ってるの?」

「その、お尻痛いなら言ってくれたら学校で座布団とか貸すから。幾つか持ってるし。心配しないで、私は味方だから。」

「止めて! 初めて喋って以来、かつて無いほど真壁が優しいけどそれは多分大きな認識の齟齬があると思うな! 話し合おう、少し俺と話をしないか真壁ェ!」

 

藤君は慌てている。無理も無い、この事が学校でバレてしまっては中学時代の私みたいになりかねないものね。

心配しないでも私はそんなことをする気は無いから、別に隠す必要は無いというのに。

 

「大丈夫だよ、黙っててあげるってば。それとその、そっちの人は嫉妬が激しいって聞くから、大事にしてあげた方が良いと思うな。私なんかと喋ってちゃ駄目だよ?」

「違うんだ! 本当に誤解なんだぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

その様子は、店の入り口にぽつんと座っていた猫型の小さなロボットによりしっかり撮影されており、店の中で猫博士が腹を抱えて笑っていたのを(ウルフ)はまだ知らない。




次回は2週間以内を目標に投稿します。
4/1から新社会人になります。従って投稿ペースは恐らく今後一週間に一話を目安に、遅くても2週間程までに投稿させて頂くつもりです。

「空が茜色に染まる頃~」

作者(わたし)の息抜きとして書かせて頂いた短編で御座います。正式なタイトルは「空が茜色に染まる頃、私はパンツを脱ぐ」。

・・・この作品に出て来る“先輩”とは、舞日先輩と言う名前で本作に登場する予定のキャラクターでした。
よく考えたら主人公(頼徒)に部活してる時間が無いのでボツ。でも先輩のキャラクターは好きだったので本編とは一切関係無い話として再利用させて頂きました。

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