俺は北上にからかわれたい。   作:LinoKa

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第6話 嫌いな食べ物はいくつになってもダメ

 

 

何かおかしい。少し、北上と話せれば良いと思っていたのに、なんかいつの間にかデートの約束をしてしまっていた。いや、北上とデート出来るのはグラブルでSSRが当たった時よりも全然嬉しいんだけど、何か違う。普通にお喋り出来れば良かったはずなのに……。

デート行くのは確定として、さりげなく声掛けられるようにならないとダメだ。このままじゃ、デートに行っても何も話せなくなるのがオチだ。

 

「…………いや、落ち着こう」

 

大丈夫、まだ日曜日まで何日があるんだ。焦って昨日みたいなことになれば今度こそ終わりだ。それより、デートの日のために仕事やらないと。

しばらく、書類に目を通してはなんか色々書き始めて、三時間くらい経過した。うん、俺にしては、良く集中力保ったもんだよ。

仕事増えるから出撃はない。開発と遠征と演習だけしちゃおう。

執務室を出て、まずは遠征メンバーの元へ。えっと、天龍と龍田に人選は任せよう。あいつ、面倒見良いし。

軽巡の部屋に向かい、天龍龍田の部屋をノックした。

 

「はぁ〜い」

 

龍田の声が聞こえて「俺だ」と答えた。

 

「あら、オレオレ詐欺かしら〜?」

「提督だって。天龍もいる?」

「いますよ〜。今、開けますね〜」

 

扉が開き、龍田がにこやかに出迎えた。

 

「あの、遠征の旗艦二人に頼みたいんだけど……」

「お話はお茶でも飲みながら中でしませんか〜?」

「へ?いやそんな気を使わなくても」

「良いから良いから〜」

「入っても良いって事?」

「大丈夫ですよ、私は見られても困るものありませんから〜」

 

龍田に言われ、俺は部屋の中へ。

部屋の中では、天龍が抱き枕しながら昼寝していた、まだ午前中だけど。龍田を見ると、すっごく良い笑顔だった。こいつ、ほんと良い性格してんのな。

 

「………お茶もらえる?」

「提督も中々良い性格してますね〜」

 

ニコニコしながら、龍田に緑茶を淹れてもらった。ズズッとお茶を飲みながら、天龍の寝顔を写真撮ると、龍田に聞いた。

 

「これ、青葉にいくらで売れると思う?」

「ダメですよ〜?天龍ちゃんをいじるにも、やって良いラインというものがありますから〜。流石にそれは見過ごせません〜」

「なんだ、一応姉のこと守ってあげるんだな」

「青葉にはもう私が売りましたから〜」

「お前すげぇな!よくさっき、いじるラインだの何だの言えたな⁉︎」

「写真を売ることはやっても良いラインですから〜」

「見過ごせないんじゃないの⁉︎てかやって良いラインなのか?」

「私だから良いんです〜」

「横暴!」

 

ホント、妹にいじられるとか天龍可哀想な。そんな事を話してると、横から「んっ……」と声が漏れた。直後、龍田は録音機を取り出した。

 

「たつたぁ……いつも、ありがとう………」

 

それを録音すると、龍田はすごく良い笑顔になった。

 

「お前のそういうとこ、ほんと尊敬するよ」

 

お茶を飲みながらそう言うと、龍田はそれを鮮やかに無視して聞いて来た。

 

「それで、何のお話でしたっけ〜?」

「ああ、そうだった。遠征。お前と天龍旗艦でボーキ輸送とタンカー護衛」

「了解しました〜」

「メンバーは……好きな奴連れてって良いから」

 

そう言って、お茶を飲み干した。

 

「ご馳走様、俺もう行くわ」

 

直後、また「んっ……」と、吐息が漏れて、天龍が起き上がった。

 

「ふわあぁあ〜……おはよう、龍田ぁ………」

 

すると、龍田は俺の方を見た。俺はため息をつくと天龍に言った。

 

「おはよう〜、天龍ちゃん〜」

「龍田ぁ?お前なんか声低くね……」

 

言いながら、俺の方を見た。すると、ギョッとした天龍は、後ろに手をついた。

 

「て、提督っ⁉︎なんでここにっ⁉︎」

「あら、天龍ちゃん〜?私は龍田よ〜?」

「はぁっ⁉︎な、何ふざけてんだよ⁉︎龍田ならそこにっ……」

「ああ、天龍……。実は、俺達入れ替わっちまったっぽくてな……」

 

自分で言うのもなんだけど、龍田の奴、俺の真似上手いな……。

 

「んなっ……⁉︎ま、マジかよ⁉︎なんでだよ!」

「いや、ちょうど前を通りかかった時にぶつかっちまってな」

「申し訳ありません〜。私がちゃんと周りを確認しなかったばかりに〜……」

「いや、俺もスマホいじりながら歩いてたから。龍田は悪くないよ」

 

そんな話をしてると、天龍が口をパクパクしながら後退りし、そのまま部屋を飛び出した。

 

「だっ、誰かぁー!て、提督と龍田がっ……提督と龍田が混ざり合ってるぅー!」

「「ぶふっ⁉︎」」

 

俺と龍田は揃って吹き出した。そのまま天龍は「だ、誰かー!」と、どこかに走り去った。俺と龍田は顔を見合わせ、走って部屋を飛び出した。

 

「ま、待てええええ!その言い方はマズイ!その言い方は不味いから!」

「て、天龍ちゃん、落ち着いて!からかっただけ、からかっただけだからぁ〜‼︎」

 

慌てて追いかけて、なんとか広まる前に止められた。

 

 

++++

 

 

遠征を頼みに行っただけなのに、随分と疲れてしまった。続いて、肩をコキコキと鳴らしながら執務室に帰ってると、球磨型の部屋からちょうどバッタリと北上が出て来た。

 

「あっ」

「おっ、てーとく」

 

ヤバい、何話そう。

 

「なんか天龍が叫んでたけど、なんかあったの?」

「いや、何もない、けど……」

「ふーん……。ま、天龍が叫んでるのはいつもの事か」

 

いつも叫んでんのかあいつ……。まぁ、バカは騒ぐ事とか好きそうだし。

って、違う違う違う!どうする?こんなチャンス滅多にないぞ!何か、何か言え俺!

俺は心の中で深呼吸して、勇気を振り絞ると、北上に言った。

 

「あ、のさ………」

「んー?」

「飯、まだだよね?」

「うん。これから行こうかなって思ってたとこ」

「じゃあ、その………いっ、一緒に、食べない……?」

 

あああああああ!言っちまったああああああ‼︎これで断られたら俺明日から一ヶ月部屋に引きこもる!なんなら提督やめるまである!いや、提督やめるどころか人間やめて海の藻屑になって、もういっそのこと深海提督になるまで……!

 

「良いよー」

「………深海の対応になってや………今なんて?」

「え?良いよって」

「ま、マジで?」

「うん。早く行こうよ」

 

北上は俺の手を取って走り出した。

 

「………そうか、俺は死ぬのか……」

「何バカ言ってんの?早く行こうよ」

 

そのまま、食堂に到着した。北上と最初から二人きりで食事なんて、多分初めてじゃないか?しかも、今回は俺から誘ってるんだぞ?何これ、奇跡?

 

「提督、何食べんの?」

「うどん」

「へー、やっぱそういう感じかー」

「え?ど、どういう風に見えてたの?」

「いや、私も同じだからさー。大井っちがいると『栄養バランスを考えて(以下略)』だのなんだの言われて定食にしないとうるさいんだけど、一人の時はテキトーに麺類にしちゃうからさー」

「あ、それ分かるわ。麺類最強だよな」

「そうそう。ラーメン然りうどん然り焼きそば然りパスタ然り………あ、でもトマトラーメンだけは無理」

「それな。いやほんとそれ。トマトラーメンって何?ナメてんの?」

「ていうか、もうトマトが無理」

「そうか?単品なら美味いだろ」

「単品なら、ね。でもさ、ほら……ソースとか塩とか付いただけでゴミカスみたいになるのに、タンメンとか味噌汁に入ってたりもするじゃん……。なんでトマトを別の何かと融合させちゃうのかな……」

「それ分かる。あいつ何かとしゃしゃり出て来て全部台無しにするんだよな」

 

そんな話をしながら、食券を買ってカウンターに出した。

…………あれ?なんか、話せてない?いいんじゃないこれ?普通に調子良いんじゃないの?

そんな話をしてると、うどんが完成したのか、カウンターの奥から二人分のうどんが出て来た。………トマトが5個ずつ乗った。

 

「「…………へっ」」

 

間宮さんはニコニコしながら俺と北上を睨んでいた。

 

「残したら、お説教ですからね」

「「………………」」

 

俺と北上はうどんの器を持ち上げた。

 

「…………提督の所為だからね」

「トマトの話題を出したのお前だろ⁉︎」

「責任とって、私のトマト全部食べて」

「おまっ……!入れんなよこっちに!」

 

北上は自分の方のうどんに入れられないように、俺の前を走って移動した。

で、振り向くと、目の下に指を当てて舌を出した。

 

「へへーんだ」

「っ………!」

 

あ、あのやろっ……!そんな、仕草されたら………‼︎

 

 

可愛過ぎて許しちまうだろうが!煽られてんのに!

 

 

俺は仕方なくため息をついて、北上の後を追った。

この後、「食べ物で遊ぶな」と間宮さんに超怒られた。

 

 


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