俺は北上にからかわれたい。   作:LinoKa

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第12話 たまには錯乱する事も大切である。

 

 

夜中。俺は一人で部屋でゴロゴロしていた。

しかし、温泉旅行か……。前々から思ってたけど、温泉旅行って意味分からないんだよな。なんていうか……同性の友達と行くのなら分かるけど、異性と二人で行っても温泉の前で男女別れるし、後は部屋でのんびりするだけでしょ?温泉の場所によっては観光も出来ないだろうし、本気でただのんびりするだけのイベントになりそうだ。

まぁ、北上が行きたいなら、俺は付き合うだけだけども。

 

「………温泉の場所調べるかぁ」

 

どうせなら、北上に楽しんでもらわないと。高校の時にデートのイメトレをしてたから大丈夫だ。女の子を誘う勇気がなかったから本当にイメトレだけだったけど。

チケットに書いてある文字を読んだ。○○温泉……露天風呂付き客室とかいうイカれた客室か。すごいな。

近くに川があって釣りも出来て、バスに乗れば遊園地がある。中々すごくね?

北上はなんだかんだ、プリクラとか好きだし、悪くないかもしれない。

………けど、デートをしたことがない奴がデートプランを確定しても、それは俺の自己満足になるだけで、向こうが楽しめるかは別だ。最終決定は北上に決めてもらうべきだな。

 

「……………」

 

つーか、さっきから予定決めてるけど、北上と行こうなんて約束してねーな。正確な日にちとか。まぁ、近いうちに行くのが正解なんだろうけどね。最近はたくさん出撃したから、しばらく休みだし。

………つーか、明日からで良いか。一応、北上に連絡しよう。俺は床に落ちてる充電中のスマホを拾った。

 

午後T督『起きてる?明日から3日間暇?』

 

寝てたら、仕方ないから明後日から行こう……と、思ったらもう既読が付いた。はえーよ。

 

スーパー北上様『暇だよー。ていうか休暇くれたの提督じゃん』

午後T督『じゃ、明日から温泉な』

スーパー北上様『は?』

スーパー北上様『本気で言ってんの?』

午後T督『え、暇なんじゃないの』

スーパー北上様『あのさ、ちょっと急過ぎるよ』

スーパー北上様『そういう事は、せめて夕方に言ってくれないと』

 

ふむ、なるほど。そういうもんか。

 

スーパー北上様『と、いうわけで明後日からね』

 

明後日からなら良かったのかよ。いや、まぁ1日あるだけで大分違うかもしれないけどね。

 

午後T督『把握』

スーパー北上様『じゃ、おやすみー』

午後T督『おやすみ』

 

よし、じゃあ寝るか。明後日楽しみだわ。

俺はパソコンをシャットダウンして寝た。………待てよ?部屋に露天風呂付きって………混浴って事ですか?

 

「…………」

 

エロ本読みまくって精神でも鍛えるか。←錯乱気味

 

 

++++

 

 

翌日。エロ本、と言ってもどんなものを読めば良いのか分からん。←まだ錯乱してる。

………そういえば、そういうのに詳しそうな人がいたな。俺はスマホで電話した。

 

「………もしもし?」

『ああ、どしたん?』

「お前、飛龍さんとヤッたんでしょ?」

『バッカお前、そういう事大声で言うなよ……。飛龍さん、エロスイッチ入ってない状態でそういう話するの超嫌いでさ、ガチでキレられるから』

「バレなきゃダイジョーブ。………それでさ、」

『え、何。お前北上とそういう事したいの?』

「いや、そうじゃなくて、その……北上と温泉行くことになったんだけど、部屋に露天風呂があるっていうイカれた構造なんだよね」

『ああ、一緒に入りたいんだ?』

「違っ……!いや、違くないけど、万が一、入る事になった時に、興奮して鼻血出るなんて事になりたくないじゃん?」

『そうだな』

「だから、精神鍛えるためにオススメのエロ本無い?」

『何でそうなるんだよ。何で俺に聞くんだよ』

「だってヤッたんでしょ?」

『ヤッてる奴全員エロ本持ってるみたいな言い方すんな。大体、飛龍さんとヤッたんだからエロ本なんて必要ないからね』

「………確かに?そういうもん?」

『そりゃな。いやぁ、ヤッてる時の飛龍さんマジエロいのな。もう激しくするたびにあんあんと』

「おいやめろ、聞きたくねーんだよそんな話」

『良いじゃん、今飛龍さんいないからこういう時に発散させろよ。それで飛龍さんって実はドMで……』

『提督?何話してるの?』

『あっ……やべっ』

『もうっ!人にそういうこと話すのやめてって言ってるじゃん‼︎』

『や、待っ……‼︎』

『今日という今日は許さないから‼︎友永隊‼︎』

『待て待て待て待て!かわいい奥さんくらい自慢して良いだろ‼︎』

『かっ、かわっ……⁉︎』

『だ、だから怒らないで………今夜、激しくするから』

『…………こ、今回だけですからね』

『ふぅ……で、なんの話だっ』

 

俺は通話を切った。すっごいイライラして来た。何だこいつら、死ねば良いのに。しかし、こうなると誰に相談すれば良いのか………。

とりあえず、ネカフェにでも行くか。ネカフェならアダルトコーナーとかあるだろ。

俺は原チャリに跨って出かけた。

 

 

〜二時間後〜

 

 

ネカフェから出た。

俺は今の二時間、何をしていたんだろうか……。←正気に戻った

ていうか、AVって頭おかしいだろ……。女の性器ってあんな風になってたのか………。なんかもう……カルチャーショックだよこれ………。異国の異文化よりビックリだ。

………いや、でもこれで女の全裸への耐性は出来た。それに、温泉に入るだけで、性器の中に性器を突っ込む性器のマトリョーシカみたいな事をするわけではない。

後は明日の荷物を整えるだけ、と俺は鎮守府に戻った。

 

「たでーまー」

 

特に誰に言ったわけでもないが、テキトーな挨拶と共に鎮守府に帰って、執務室に入った。大井が待っていた。

 

「………えっ、何」

 

思わず後退りしてしまった。

 

「あ、帰って来た。どこに行ってたんですか?」

「ネカフェ」

「ふーん……明日、北上さんと温泉行くみたいですね」

 

ブフォッと吹き出した。何で知ってるんですか。

 

「こ、殺す気………?」

「別に殺しませんよ、殺したいけど。それで、どんな服で行くんですか?」

「ほっ……え?殺したいの?」

「どんな服で行くんですか?」

 

この女やっぱ怖ぇ………。

 

「服って……普通のだよ。タンスの中入ってるのテキトーに選んで」

「銀河の彼方まで殴り飛ばしますよ。なんですかテキトーって」

「ぎ、銀河の彼方……?」

 

なんか発言がバカっぽいのに怖いんだけど……。北上のためならマジで出来そうで怖い。

 

「とりあえず、提督のお部屋を見せてもらっても良いですか?」

「それは良いですけど。なんで?」

「明日以降の服は私が決めます。北上さんとお泊りなんですから、それなりの格好をしていただきます」

「それなりって……何、タキシードとか?」

「頭の悪いこと言うのやめてくれませんか?」

 

銀河の彼方に言われたくない。

大井と自室に入った。そこそこ綺麗な部屋なので、ここで怒られはしないだろう。

大井さんは部屋の中を見回したあと、タンスとクローゼットを開けた。中の服をジロジロと見た後、ホッとした様子で呟いた。

 

「なかなか良いじゃない。見直したわ」

 

お、おお……。なんか厳しい母ちゃんに褒められたみたいで嬉しかったんだけど………。

まぁ、前々から外見には気を使ってたからな。ただ、告る勇気がなかっただけで。

 

「これなら、私が口出すことはないですね。明日、頑張って下さいね」

 

大井は出て行った。

なんか、あいつ母ちゃんっつーより姉ちゃんみたいだな。

 

 


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