ダンジョンに勇者がいるのは間違っているだろうか 作:とぅいか
「ダンジョンに案内をするのは明日にするとして今日は取り敢えずステイタスを刻もうか」
ヘスティアに促され服を脱いだ上半身裸の状態でベットにうつ伏せになる。冒険者になるには神の手によってステイタスを刻まなければならない。大体の者は初めてのステイタスに心を踊らせ自分の英雄のように強くなるなる姿を想像する。ナツもステイタスというものに興味はあるがそれ以上に不安要素がある。
一つは駄神の手によって施された封印自体がどのような形でステイタスに現れるか不明な点。同じ理由で死なない呪いも不安だ。
2つ目は封印された勇者の力自体だ。何処まで使えないのか全く不明なのだから。
何も無いまっさらな状態が望ましいが恐らくそれは無いだろう。あの神も全ての力を封印はできなかったみたいな事を言っていた気がする。…あの神が本当の事を言っていたらの話だが。
元々俺は、接近戦を主体に魔法でサポートする戦い方が好きでそれが一番得意だった。別に魔法が使えなくてもこの身さえあるなら戦いに支障はないだろう。だからお願い!駄神以外の神よ!俺のステイタスがまっさらでありますように!
そんな、ナツの内心など知る由もないヘスティアがベットの横に立ってナツの背中にステイタスを刻もうとする。ベルのステイタスを更新させる時はベルに跨ってやるが流石に初対面の相手に跨るようなことはせず普通に隣からナツの背中に指を走らせる。
ナツの背中に神聖言語が微かな光とともに刻まれる。神聖言語は神々が使う言葉でそれは、神にしか読むことは出来ない。神聖言語を教わって読むことが出来るものも一部にはいる。それを、共通語に翻訳して紙に書いて渡すのが当たり前。しかし、翻訳をする前に背中のステイタスを見てヘスティアの動きが固まる。
――5秒後
「ど、どうしたんだ?なんかあったか?」
――10秒後
「お〜い、ヘスティアさん?」
――20秒
「神様ぁ?無視は寂しいんだが」
――30秒
「っ!な、なんだい?」
ヘスティアが動きを止めてから反応するまでにたっぷり30秒。その間色々な呼びかけ方をするがその全てが聞こえていなかったようだ。
そして、その反応が如実に語っている。
―お前のステイタスおかしいぞ、と。
もう、この時点で未来はある程度分かってしまった。しかし、まだ、希望はある。神の呪いではなく勇者としての、魔法やスキルがステイタスに現れているならまだ、言いようはある。最初から魔法やスキルがあるのもかなり珍しいと思うが、半不死身とかよりは圧倒的にましなはずだ。
ヘスティアが翻訳した紙をこちらに渡してくる。
不安な気持ち1杯で善良な神に神頼みをしながら紙を薄目で少しづつ覗く。
ナツ・東城
力・・・I 10
耐久・・・I 10
器用・・・I 10
敏捷・・・I 10
魔力・・・I 10
《魔法》
【想像錬金】
「我、世界の理を覆すもの。願う物あればそれに見合う代償を。――想像錬金」
【魔法模倣】
「我にできぬことなし」
その後詠唱を付け足すことにより完成。
《スキル》
【武技天賦】
・全ステイタス成長率に上方補正
・戦闘を行う度に器用値の成長率に大幅な上方補正
【闘気乱闘】
・気を使うことが出来るようになる。
・気の強さはレベルに応じて強くなる。
・内に流せば身体能力の強化が可能。外に流せば内から攻撃することが可能。しかし、形を持たないため外に流す際は直接触れている必要がある。
・他対1の場合ステイタスに上方修正。
【超絶封印】
・強力な封印。レベル、ステイタスが全て超絶下方修正。
【死亡回帰】
・死ぬと活動できる最低限の体まで戻る。
基礎的ステイタスついては全く問題ない。至って普通。至って平凡。だが、それ以外が異常すぎる。最初から、魔法を持っていることも恐らくレアスキルと思われるものをいくつも持っていることも。すべてが。
この結果を見てナツはかなり死んだ目をしていた。
ヘスティアは驚愕していた。
まじかよ。ここまで多いとは思っていなかったなぁ…せいぜい魔法とスキル合わせても二つぐらいが関の山だと思っていたがその倍以上。予想なんて意味なかったんや。
神の言っていた封印しきれなかった力がこれとは、実際に数字として見てみると俺はかなり異常のようだ。これでもまだ一部なのだから。自分の力として使っている時は普通だと思っていたし誰も指摘してくれはしなかった。だが、力を失いこうして一部の力しか使えなくなるとどれだけ強力な力を使っていたか思い知る。そして、死なない呪いがステイタスに出てしまった。こんなものどう説明せよと?
まあ、これだけで済んで良かったと思うべきなのだろうか。基礎能力までやばかったら本当にやばかったな。そう考えないとやっていけそうにないぞ。
ヘスティアが何かを聞きたそうにこちらを見ている。
何が聞きたいのかは分かる。
「ナツくん…君は一体何者なんだい?」
ファミリアに入ると決まった時のような表情とはとは打って変わって真剣な表情で問いかけてくる。その問いに答えることは簡単だ。しかし、それをするには過去の事も話さなければならない。勇者としての過去が俺はあんまり好きではない。元々過去を誰かにベラベラ喋るのは嫌いな質なのだ。
だから、ここは答えない。答えたくない。それに、答えなくてもファミリアとして、やっていくことは出来るだろうし。
「…さてな。主神様のご想像にお任せ致しますよ」
ダンまちはssしか読んだことないので間違いがあればビシビシ教えて下さると助かります!