ダンジョンに勇者がいるのは間違っているだろうか   作:とぅいか

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第3話【不幸】

オラリオまで後ほんのわずかと言うところまで来て緊急事態がおきた。それは、唐突にやってきた。

何事もなくオラリオにたどり着くと思っていた、いや何かが起きるわけがないと思っていたのかもしれない。この世界は良くも悪くも優しい世界だ。前の世界と比べてもその差は天と地の差があると言ってもいい。故に忘れていたのだ例えどんな世界だったとしても絶対など有り得ないということを。

 

馬車を囲うように陣取っているのは涎をダラダラと垂らした狼が10匹。

本来なら狼程度どうということは無い。勇者としての力が封印されていたとしても当時培った体術等の技術は体が覚えている。狼程度ならどれだけ掛かってきても倒せる自信がある。問題は数週間前に自殺しようとした結果身体中に傷が残っている事だ。それは、外傷内傷問わず色々あって控えめに言って日常生活を送るのが限界なのだ。我慢すれば動けない事もないが戦闘をできるかと言われれば無理!

 

どうしようか考えているといきなり背中に衝撃が走る。

受け身をとって地面に着地したと同時に理解するああ、そういう事か、と。

 

「俺は悪くねぇぞ!俺が生きるためなんだからしょうがねぇよな!せいぜい俺が生きる為の囮になってくれや!」

 

馬車を放置しオラリオの方向に1人で逃げ出していくおっさんがこちらに向かって大声で叫ぶ。

 

「…当然と言えば当然か。」

 

数時間前にはたわいもない雑談なんかして友好を深めたと思っていたが、しかし人間はやはりこういうものなのだろうと確信することができた。人間誰だって我が身が一番大事で誰かを身を呈して守るなんて事をする人間はアホか馬鹿なのだろう。

そういう観点で見ればあの商人は当たり前の行為をしただけだ。誰だってそうする。俺もそうする。

だから、責めやしない…が、次見つけた時は本気で殴る。

 

二兎追うものは一途も得ずというのを理解しているのか狼は逃げていく人間よりこちらに狙いを定めてきている。

このままでは、死んでしま…う?

あれれ?死ぬ?そう言えば何かに食われて死ぬというのはまだ試していなかったような……。

バラバラになって胃袋に入った場合どうなるのだろうか。

試して見る価値は、

 

「ねーな。ったく、冗談のセンスなさすぎて涙がチョチョ切れるぜ」

 

死にたいとは願っている…が、痛いのはゴメンだ。

死ねるならばと、今まで痛みをこらえて自殺を敢行してこれたが今回は死なないと分かっている。ただ痛みだけしか得るものがない事をやるほどマゾではない。

 

ナツが拳を構える。

その行動がどういうものかは理解していないのだろうがそれが敵対行動なのだろうということは獣でも理解出来た。

何を合図にするわけでもなく1匹の狼が背後からとびかかる。

半歩体を時計回りに回すことにより回避しそのど出っ腹に思いっきり蹴りを入れ、狼を道の端っこまで蹴り飛ばす。

ただの獲物だと思っていたものからの反撃に対処できなかった狼はなす術なく内蔵を潰されそのまま死にかける。

狼に表情があったのなら恐らく呆けているのかもしれない、なんせただの獲物に襲いかかったと思ったら仲間がひとりやられたのだから。数秒程動きが止まる。

その数秒はただの人間にとっては短いがあらゆる武を収めているナツにとっては動くには充分な時間。

1番近い狼に近づき左足の蹴りをお見舞いする。右上に蹴り抜かれた足は狼の顔を正確に蹴り砕く。

その隣にいた別の狼に対してはローキックを繰り出し相手の前足を蹴り砕く。

今、一番重要なのはいかにこの場から脱出するかであり仕留める必要はない。

もう既に身体中が軋んでかなり厳しいので速攻で済ませようと一気にほかの狼に肉薄する。

フリーズしたままの狼を相手にするのは非常に簡単でそのまま1匹、2匹と順調に潰していき残り4匹になった所でようやく目の前の敵はやばいと理解したのか撤退していく。

 

「…ふぅ。何とかなったか」

 

……痛ええええええ!痛い痛い痛い!まじ痛い!骨が軋む!筋肉が痛い!体の有りと有らゆるところが痛い!1年運動してなかったのにいきなりアスリート並みに運動した時並にいたい!

 

顔には出ていないが心の中で叫ぶ。顔に出ない理由は戦闘中に表情を読まれると何かと不自由することがあるという理由から意識しているうちに戦闘中は顔が鉄仮面のようになり口数も激減するようになっている。ナツは戦闘に役立つことならば有りと有らゆる技術を体得していた。

しかし、そんなナツでも痛みをどうこうすることは出来ず身体中が悲鳴を上げるこの状況に叫ばずにはいられなかった(心で)。

しかし、こんな事になるなんてなんと不幸なことか。これも、あの糞神のせいでは無かろうか。…何となく有り得そうだ。

 

ああ、こっからオラリオまで歩きで行かなければならんとは全くついてないぜ。

痛む体を引きずりつつ、ゆっくり、ゆっくり歩みを進めていく。

先が長すぎて死にそう。




初めての戦闘描写を書いてみました!下手くそかも知れませんが。…下手くそですまない。これおかしいだろ!って言うのがあれば是非是非教えてください!

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