ダンジョンに勇者がいるのは間違っているだろうか   作:とぅいか

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第2話【元英雄がオラリオを目指すそうですよ?】

一ヶ月前恐らく人生のトップ10に入るぐらいの最悪な出来事を経験した俺は今カタカタと揺れるお世辞にも乗り心地がいいとは言えない馬車に揺られていた。

理由は簡単である。

あんな一方的な命令を聞きたいと思う人間が果たしているだろうか?物語の主人公ならば気持ちを切り替えこの世界で二度目の人生を送ろう!とか思うのだろうが、生憎俺は主人公なんて大層なものではないのだ。異世界召喚何てものを二度も体験しているが俺は強さ以外はただの一般人。その強さも異世界生活の中で手に入れなければいけなかったから手に入れただけで欲しくて手に入れたものではない。別に立派な志があるわけでもなく、人が倒れてようと自分が一番大事と言う凡人なら当たり前の考えを持ってる普通の人間なのだ。故に神からの命令に従うわけもなく死ぬ方法を色々試した。別に生きる理由がある訳でもないので死ぬことに対しての恐怖は欠片もなかった。魔王討伐の旅でそうゆう目には何度もあっていたせいもあると思う。結果は、こうして思考を続けられている事が答えだ。

焼死、凍死、圧死、出血死、溺死、毒死、エトセトラエトセトラ。

ありとあらゆる事を試したがその全てを神の恩恵とやらは跳ね返した。

体を燃やした時は燃え続けながら再生し続け身体中に多少のやけどが残ったが普通に生きていた凍死を試した時も3日間凍っていたが氷が溶けると同時に目が覚めた。これも多少の凍傷があったがそれだけだった。

出血死しようとしたときは貧血で頭がくらくらしたが血は無限に湧いてきた。以上の事から恐らくこの神の恩恵(呪い)はあの神が言っていた通り文字通り死なないものであり、死に対する対処が出来る最低限の体調まで戻すというものなのだろう。死なないだけで再生能力ではないところがきもだ。

糞神の言葉によるとこの世界に今の俺を殺せる手段があるらしい。不死身だったらこうはいかなかっただろう。そしてその方法がある場所を予想するのは簡単だ。この世界で一ヶ月も生活すれば俺の耳にも入ってきていたある都市の話。今はそこに向かっている。その為に目的地が一致した商人と交渉してその馬車にゆられているというわけだ。

 

 

 

 

 

 

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迷宮都市オラリオ。

迷宮都市(オラリオ)と呼ばれる街には溢れんばかりの冒険者と呼ばれる者達がいる。ある者は力を。ある者は名声を。またある者は夢を。他にも金や愛などを求めてやってくる者もいる。

この世界唯一の迷宮に期待を寄せ冒険者を目指す。

冒険者とは何かと知りたいならばまずは超越存在について知る必要がある。

神と呼ばれる超越存在はこの世界にも存在している。1000年程前神々は天界に飽き娯楽を求めて下界へとやって来た。そこで見つけたのが人類。彼らにとっての子供たちだった。彼等は完全な存在であるが故に不完全な存在である人間に惹かれそして、共に生活を送るようになっていった。

神々は人類と同じ立場での生活を送るために神が神たる所以であるその力の殆どを封じた。

それから神々はこの下界で生活するために自身の眷属である神の眷属(ファミリア)を作った。簡単に言えば神の家族、或いは仲間。そのようなものだと認識していればいい。

神は自身の眷属となったものに神の恩恵(ファルナ)を与えた。

神の与える恩恵は神が地上で許された力。子供たちの背中に神の血(イコル)を触媒としてステイタスを刻む。

ステイタスを刻まれたものは経験値(エクセリア)を積むと身体能力を引き上げることが出来、神が認める偉業を果たすとランクアップすることができ、場合によってはスキルや魔法などと言った特殊な力も使えるようになるらしい。

いい経験値にはそれに見合う成長を。

神が認める偉業にはそれに見合う飛躍を。

 

人類の無限に広がる可能性を、永遠に終わることがない成長を神々は見守ってくれている。

 

 

 

 

 

 

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 

 

 

 

「にいちゃん、あんたもオラリオで冒険者になりに行くのかい?」

 

空を見ながらぼーっとしているとこの馬車の持ち主であるおっさんが話しかけてきた。

 

「まあ、一応そうなるかな?冒険者にならないと叶わなそうな夢があんだよね」

「はっはっはっ!いいねぇ若いのわ!でも、冒険者になるってことは死ぬかも知んねぇぞ?」

「…そうだな、まあ大丈夫だろ」

 

だって俺死なないし。そもそも、死ねるならぜひ死なせてくれと言う感じだ。

 

それ以降はほんとにたわいも無い世間話をしつつ到着までの時間を潰す。

まだまだ時間はかかりそうだ。

 

 

 


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